10月31日、2017年9月の住宅着工統計が公表されましたが、賃貸を目的として建築された「貸家」(不動産投資家が建築主のアパートやマンション)において、前年から大きな減少は見られず依然としてきわめて高水準で推移しています。金融規制や税制改革などの特に大きなイベントが無い限りは、下期も上期と同水準で推移することが想定される動きとなっています。
この記事では、着工件数が高水準で推移している背景の解説と今後の住宅着工の動向や空き家問題などについて予測をしていきたいと思います。
- 複数の要因が貸家の建築需要を下支え
- なぜ「貸家」は伸びて、「分譲」は伸びない?
- 地方では新規融資実行の雲行き怪しく黄色信号に
- 空き家問題は今後どうなる?
複数の要因が貸家の建築需要を下支え
現在の貸家の着工件数の水準が続いているのは、2015年1月1日からの相続税改正により、投資用不動産に節税対策手段としての期待が集まったことに加えて、2016年1月に導入されたマイナス金利政策による金融機関のローン融資拡大がその動きを支えていることによるものです。また、2020年に予定されている東京オリンピックや現在の日経平均株価の上昇なども安心材料となり、安定的な需要が生み出されています。
なぜ「貸家」は伸びて「分譲」は伸びない?
「貸家」が着工件数を伸ばす一方で、「分譲」の着工件数が伸びないのはなぜでしょうか? 以下は、新築マンションの建築価格の推移となりますが、2014年から新築価格が上昇し続けていることが分かります。
ここ数年、分譲物件のほうでは、利便性の高さや高機能な住宅が求められるようになり、土地取得費用の上昇やハイグレードな設備のマンションの需要が高まってきています。そのため、開発にかかる費用も大きくなり、資金体力などに余裕がある大手企業に供給の半分近くが占められ、着工件数も自然と低い水準に落ち着いているものと考えられます。
地方では新規融資実行の雲行き怪しく黄色信号に
一方、2017年4月~6月の地方銀行(地銀)のアパートローンの融資新規実行において、個人による貸家業向けの融資(アパートローン)が前年比マイナスに転じたと公表がありました。また、11月1日にもみずほフィナンシャルグループが東北や九州など地方の一部で住宅ローンの撤退を検討しているなどの報道が出たばかりで、来年以降は地方における貸家や住宅への融資状況が厳しくなっていくものと想定されます。
空き家問題は今後どうなる?
最近は空き家問題がクローズアップされることも多くなってきましたが、貸家の着工件数が高い水準で推移していることに問題はないのでしょうか? 以下は、平成25年住宅・土地統計調査の結果で、2013年時点で空き家率は13.5%(住宅ストック数6063万戸に対して、空き家数820万戸)まで上昇してきていることが分かります。
2018年にまた調査結果が公表されるかと思いますが、その際にはこの空き家率が大きく上昇すると考えられており、国も数年前から具体的な対策を講じ始めています。平成26年11月27日に公布された「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況」(空き家法)では、以下の施策が予定されています。
- 国による基本指針の策定・市町村による計画の策定等
- 空家等についての情報収集
- 空家等及びその跡地の活用
- 特定空家等に対する措置(※)
- 財政上の措置及び税制上の措置等
平成29年度末の時点では、上記の「市町村による計画の策定」が全国の市区町村の50%で完了するという段階のため、空き家対策が本格的に動き始めるにはまだ数年の時間が必要だと考えられます。
空き家率の上昇が上記の対策などではどうにもならないと判断される場合には、新規住宅の着工件数に対して総量規制がかけられるなどの強行策が取られて不動産投資に大きく影響する可能性もありますが、次々回の調査結果(2023年)までは空き家問題についてはおそらく大きな動きは無いのではないかと思います。
これから不動産投資を始める方は、都心の物件がおすすめ
貸家の着工件数はまだ高い水準が続きそうですが、今後の動向を考えると地方での投資はリスクが高まっていますので、これから不動産投資を始めたいと検討している方は都心を中心とした入居者の利便性が高い物件を検討されることをおすすめします。
都心の物件を扱っている不動産投資会社のうち、社会人女性にターゲットを絞って高い入居率を実現しているアイケンジャパン[PR]、東証プライム上場グループ企業で高品質な新築・中古のマンションを取り扱うプロパティエージェント[PR]などの会社へ、まずは一度情報収集をかねて話を聞きに行くことを検討されてみると良いでしょう。
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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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