新型コロナウィルスの影響により実体経済の先行きが不透明であることを背景に、金やプラチナなどの実物資産へ注目している方も多いのではないでしょうか。金は信用リスクがなく、インフレ対策にも適した資産の一つです。
このような経済的な背景がある中、融資型クラウドファンディングサービスの「クラウドバンク」が2021年6月より金取引のサービスを開始しました。
今回は、クラウドバンクの金取引のメリット・デメリット、注意点などについて解説します。
目次
- クラウドバンクの金取引の概要
- 金投資とは
2-1.純金積み立て
2-2.金ETF・投資信託
2-3.金貨・金地金
2-4.金先物取引 - クラウドバンクの金取引サービスの特徴・メリット
3-1.手数料が安く少額から金取引を始められる
3-2.特定保管によって金が守られる
3-3.年会費・保管料・売却手数料が無料
3-4.取り扱う金の品質が高い
3-5.外部監査によるチェックを行う - クラウドバンクでの金取引のデメリットや注意点
4-1.金取引で利益が発生した場合は課税される
4-2.購入した金の現物を引き出すことはできない
4-3.他社で購入した金の買い取りはできない - 金投資のメリット
5-1.信用リスクがない
5-2.インフレ対策になる
5-3.価値基準が世界共通 - 金投資のデメリット
6-1.配当や利子がない
6-2.元本割れのリスクがある
6-3.特有のリスクとコストが発生する - まとめ
1.クラウドバンクの金取引の概要
融資型クラウドファンディングサービス「クラウドバンク」は、2021年6月23日(水)から、金取引サービスの提供を開始しました。
クラウドバンクの金取引では、最低取引単位が1,000円、購入手数料が購入代金の1.65%(税込)、金の保管料金や年会費などは無料に設定されています。投資家の負担を軽減し、より多くの人が金による資産運用を検討できるサービス設計となっています。
金取引サービスの概要
サービス名 | クラウドバンクの金取引サービス |
URL | https://crowdbank.jp/gold |
運営会社 | 日本クラウド証券株式会社 |
本社所在地 | 東京都港区六本木七丁目15番7号 新六本木ビル 6F |
設立 | 1993年(旧 ディー・ブレイン証券) |
代表取締役 | 神 恭平 |
金融商品取引業登録 | 第一種・第二種金融商品取引業:関東財務局長(金商)第115号 |
資本金 | 1億円(平成31年3月31日現在) |
金取引における最低取引単位 | 1,000円以上、1,000円単位 ※全量売却の場合、最低取引単位の設定なし |
購入手数料 | 購入代金×1.65%(税込) |
売却手数料 | 無料 |
保管料 | 無料 |
年会費 | 無料 |
保管方法 | 特定保管 ※万が一同社が倒産した場合でも、購入した金はすべて返還 |
取引商品 | 純度99.99%の金地金 ※大阪取引所が認定した国内ブランド |
2.金投資とは
金を金融資産として投資することを金投資といいます。第二次世界大戦前は世界の金融政策の中心にあったことや、現在でも多くの国々や個人が金を保有しており、金は低リスクに運用できる投資対象の1つとして認知されています。
金へ投資する方法にはいくつかの種類があります。ここでは下記4つの方法を取り上げて、詳しく見て行きましょう。
- 純金積み立て
- 金ETF、投資信託
- 金貨・金地金
- 金先物取引
2-1.純金積み立て
純金積み立てとは、毎月一定額を積み立てながら金を購入する投資方法のことをいいます。
自動積み立てが可能で投資に対する手間が掛からないことや、購入した金を実際に保有する必要がなく保管コストが掛からないなどのメリットがあります。
また、1,000円単位から投資可能で、個人でも気軽に投資できます。一方で、積み立て先の状況によっては積み立てた金が返還されない可能性があり、一定の利益が出れば確定申告が必要になります。
2-2.金ETF・投資信託
金現物や金に連動するETF・投資信託を購入することでも金に投資できます。
証券会社で購入でき、手数料コストが低いという特徴があります。最低投資額を100円に設定している証券会社もあり、投資信託では自動積み立ても可能で、少額からの手軽な投資ができるというメリットがあります。
また、ETFや投資信託に関わる金融機関が破綻した場合に資産は保全され、保有残高は証券口座に記録されるため盗難のリスクもありません。
一方で、信託報酬や売買手数料などの手数料コストが発生したり、一定以上の利益が上がれば確定申告が必要になったりするなどのデメリットがあります。なお、原則として確定申告が必要ですが、証券会社の「特定口座」で「源泉徴収あり」を選択すると、税の徴収が証券会社により行われ、確定申告が不要となります。(※特定口座の有無は各証券会社による)
加えて、一部の金ETFを除いて、購入したETFや投資信託を現物の金に交換できない点や、売買に関しては投資家としての経験・知識が必要になる点も注意が必要です。
2-3.金貨・金地金
現物の金貨や金の板を購入する投資方法です。実物の金貨を購入し保有する方法で、宝飾店や百貨店などで購入できます
金の板は「ゴールドバー」とも呼ばれるもので、地金商や商社、金属メーカーなどで購入します。グラム単位から投資でき、1g当たり6,000~7,000円前後で購入できます。
金の現物を手元に保有できるメリットがある一方で、盗難や紛失のリスクが発生するのがデメリットです。貸金庫や保護預かりの業者を利用することでリスクは軽減できますが、管理コストが発生することも理解しておきましょう。
2-4.金先物取引
先物取引とは、ある商品を将来の決められた日に、取引時点で決められた価格で売買することを約束する取引です。金の先物取引は、商品先物取引業者や証券会社などを経由して発注を行います。
金の現物投資と比較して取引コストや安いこと、買いだけではなく売りからも取引を始められるなどのメリットがあります。
また、レバレッジを活用した取引が可能で、証拠金を差し入れることで元手の数倍の金額の取引ができ、大きなリターンを得られる可能性があります。
一方で、レバレッジによって大きな損失が発生する可能性も増え、投資リスクは高いといえます。
3.クラウドバンクの金取引サービスの特徴・メリット
クラウドバンクの金取引サービスには、下記の特徴・メリットがあります。
- 手数料が安く少額から金取引を始められる
- 特定保管によって金が守られる
- 年会費・保管料・売却手数料は無料
- 取り扱う金の品質が高い
- 外務監査によるチェックを行う
3-1.手数料が安く少額から金取引を始められる
クラウドバンクでは取引金額に関わらず、購入手数料は税込1.65%に設定されています。これは、純金積み立てによる投資サービスを提供する証券会社と比較して安い水準と言えます。
また、スポット取引では取引可能時間内の好きなタイミングで最低1,000円から、1,000円単位での金の取引が可能です。手数料や最低投資額が低いため、少額から金に投資することができます。
3-2.特定保管によって金が守られる
クラウドバンクでは、投資家が購入した金を「特定保管」によって保管します。
特定保管とは、投資家が購入した金(資産)とサービス会社の資産を明確に区別して保管する方法のことをいいます。
投資家が購入した金の保有権はすべて投資家に帰属しており、運営会社が倒産した場合でも購入した金はすべて返還される仕組みとなっています。
3-3.年会費・保管料・売却手数料が無料
クラウドバンクの金取引サービスを利用するための年会費や購入した金の保管料、金を売却する際の売却手数料はすべて無料となっています。
投資に掛かるコストを低減できるというのは、クラウドバンクの金取引を利用するメリットとなります。
3-4.取り扱う金の品質が高い
クラウドバンクで取り扱う金の品質は大阪取引所の認定を受けており、価値が担保されています。すべて国内の純度99.99%の金に投資することが可能です。
3-5.外部監査によるチェックを行う
クラウドバンクでは、保管委託先の監査法人による金の在庫状況のチェックを、年に4回実施しています。
投資家が購入した金は運営会社が指定する倉庫にて厳重に保管されており、サービスの信頼性向上に貢献しています。
4.クラウドバンクでの金取引のデメリットや注意点
クラウドバンクでの金取引には、下記のデメリットや注意点があります。
- 金取引で利益が発生した場合は課税されるため確定申告が必要
- 購入した金の現物を引き出すことはできない
- 他社で購入した金の買い取りはできない
4-1.金取引で利益が発生した場合は課税される
金取引によって利益(=金の売却益)が発生した場合、その収入は「譲渡所得」となりその他の所得と合わせて所得税の総合課税対象となります。
金の保有期間によって譲渡所得の算出方法が異なり、保有期間が5年以内の場合を短期譲渡所得、5年以上の場合を長期譲渡所得として、以下のように計算することになります。
- 短期譲渡所得の金額=売却価額-(取得価額+譲渡費用)-特別控除50万円
- 長期譲渡所得の金額={売却価額-(取得価額+剰余費用)-特別控除50万円}×1/2
また、金の保有期間が短期と長期の両方に該当する場合は、短期譲渡所得から控除額を引き、控除額が残っている場合はその分を長期譲渡所得から差し引きます。
このように金の売却益とその他の該当する譲渡益を合わせた金額が特別控除50万円を超えた分が課税対象となり、所得税の総合課税の対象となるため、確定申告が必要になります。また、損失が出た際に他の譲渡所得と損益通算する場合も、確定申告が必要になります。
なお、クラウドバンクの口座は証券口座ではないため、特定口座の区分がありません。確定申告の手間がある点も、証券口座での取引と比較してデメリットがあると言えるでしょう。
4-2.購入した金の現物を引き出すことはできない
純金積み立てサービスにおいては、積み立てた実物の金を引き出すことができる場合があります。しかし、クラウドバンクでは2021年7月現在、購入した金の現物を引き出すことはできません。
4-3.他社で購入した金の買い取りはできない
すでに他社で金を購入したり、積み立てをしたりして金を保有している、というケースもあると思います。しかし、そのような金をクラウドバンクで買い取ってもらい、口座をまとめることができません。
あくまでも、クラウドバンクで取り扱う金とは別のものとして、管理していく必要があります。
5.金投資のメリット
ここまでクラウドバンク金取引のメリット・デメリットについて解説してきました。次に、金投資という大きなカテゴリでとらえ、他の金融・実物資産と比較した時のメリットについて見て行きましょう。ここでは下記のメリットを取り上げて解説します。
- 信用リスクがない
- インフレに強い
- 価値基準が世界共通である
5-1.信用リスクがない
株式や国債などに投資する場合、企業や国家が破綻するとそれらの価値はゼロになってしまいます。
一方、金には発行する機関が存在せず、物理的に実在しているもので希少価値があり、腐食しにくく、金に対する共通認識があるために世界でも流通しています。
信用リスクのある法定通貨や株式などの金融資産と比較して、金が何らかの原因で無価値になる非常にリスクは低く、資産保全性を高めるためのリスクヘッジに活用できるメリットがあります。
5-2.インフレ対策になる
物の価値が上がることで、現金の価値が下がることを「インフレ」といいます。インフレが継続すると通貨の価値が徐々に目減りしてしまうため、金のような実物資産へ資産の一部を投資することでインフレ対策となります。
金の価格変動は比較的緩やかであるため、レバレッジを活用しない場合に短期間で大きな利益を得ることはできない点はデメリットと言えます。一方、守りの資産として活用しやすく、インフレ対策として検討する際には適した投資対象の一つと言えます。
5-3.価値基準が世界共通
金は流動性が高く、他の資産と比較して換金しやすいというメリットがあります。
例えば、同じ実物資産である不動産を売却する場合、思うように売却できないことがあります。これは、不動産が個別性の高い資産であり金のように同一規格でないことや、一定規模を持たない不動産では証券化して分割保有するハードルが高いことが要因となります。
一方、金を売買する場合、世界中に市場が開けており、買い手が見つかりやすいため売却(=換金)もしやすくなるのです。実物資産であることに加え、このような流動性の高さは金投資の大きなメリットとなります。
6.金投資のデメリット
金投資には下記のデメリットがあります。
- 配当や利子がない
- 元本割れのリスクがある
- 特有のリスクとコストが発生する
6-1.配当や利子がない
現物の金への投資の場合、配当や利子は発生しません。そのため、配当や利子による収入を得ることを投資の目的にしている場合、金への投資は向いていないといえます。
株式投資の場合は定期的な配当金と売却益を得られ、国債投資の場合は利子を得ながらいつでも換金することができます。自身の投資目的に合わせて比較し、金へ投資するかどうか検討することが大切です。
6-2.元本割れのリスクがある
金は他の金融商品と同じように価格が変動するため、購入時の価格よりも売却時の価格が下がっていれば、元本割れを起こすことになります。
預貯金のように元本保証されたものではないということを理解しておきましょう。
6-3.特有のリスクとコストが発生する
金地金など実物を購入して手元に置く場合、盗難や紛失のリスクが発生し、それらを防ぐための管理コストが必要になります。
貸金庫や管理機関などで管理するとなると、預け入れや引き出し、保管にそれぞれ手数料が発生し、年間数万円程度のコストが発生します。リスクとコストをよく比較して、投資対象を検討することが大切です。
まとめ
今回はクラウドバンクの金取引のメリットやデメリット、注意点について紹介しました。
クラウドバンクの金取引は購入手数料が安く、その他の手数料が無料となっていることや、最低投資額が1,000円に設定されていることなどから、これから金投資を始めたい方や少額から金に投資したい方にとって向いているサービスといえます。
ただし、金投資の特徴や注意点などを理解したうえで、投資判断を下すことが重要です。クラウドバンクの金取引に興味がある方は、本記事を参考に検討してみてください。
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