今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の中村翔太 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。
目次
- NFT関連のノーコードツール
1-1. tihrdweb
1-2. Nouns Builder
1-3. Bonfire - まとめ
ブロックチェーン上でNFTといったトークンを作成するには、スマートコントラクトと呼ばれるプログラムをSolidityやVyperなどの特殊なプログラミング言語を用いて、開発及び展開する必要があります。これらの言語を扱える人材は他の言語と比較すると少なく、プログラミング未経験者が0から習得し、プロジェクトを始めるには学習に時間がかかってしまうことに加え、優良な記事を見つけることにも一苦労してしまうというのが現状です。
本記事では、ブロックチェーン業界への参入障壁を低くするノーコードプロジェクトの特徴とそのユースケースについて扱います。今回取り扱うノーコードツールは先述のような課題を解決することが期待できます。
NFT関連のノーコードツール
tihrdweb
thirdwebは、Web3アプリケーションの開発をスムーズかつ簡単に行うことができるフレームワークを提供しています。
また、thirdwebを通して展開できるコントラクトは、提供されているダッシュボード上で監査済みであるかどうかを確認でき、利用者が新たにプロジェクトを始める際にセキュリティ面に大きなリソースを割く心配をせずに開始することが可能となっています。コントラクトの展開後、権限の更新やリストされている作品の確認等もダッシュボードを通して行うことができ、提供されている埋め込み用コードを利用し、他のノーコードツールと組み合わせることによって簡易的なNFTのミントサイトなどを短時間で誰でも公開することができます。
他にも開発者向けに、SDKを用意しており、ユーザーのウォレット接続、スマートコントラクトの展開と操作、solidityに実装された拡張機能の操作などを可能にしており、Javascript、Python、Go、Unityをサポートしており、将来的には他の言語にも対応できるように開発チームは取り組んでいるとしています。
ユースケースとしてはGalaがサポートしているDREAMWORKS TROLLS VOXというプロジェクトで「Edition Drop」の機能を使用し 8888体の1of1NFTを立ち上げに成功しています。また、Gala運営チームは、「ブロックチェーンの相互作用をゼロから理解することに時間を費やすのではなく、楽しくエキサイティングなゲームの開発に集中できる」とコメントしています。
また、対応しているブロックチェーン数も多いのも特徴であり、執筆時点(2023年1月)ではEthreum、Polygon、Arbitrum、Optimism、Avalanche、Fantom、Binance Smart Chainと各テストネットへ対応しており利用者は柔軟な選択をすることができます。
Nouns Builder
Nouns BuilderはNFTマーケットプレイスプロトコルZoraが提供しているツールであり、Nouns Builderを使用するとNouns DAOという形式であらゆるDAOをフルオンチェーンで作成・管理できるようになります。
Nounsとは、Ethereum上のジェネラティブNFTプロジェクトであり、オンチェーン・アバターコミュニティの形成を改善するための実験的試みを指し、ガバナンスとトレジャリーという付加的なレイヤーにおいてコミュニティとアイデンティティをブーストストラップしようとしています。
Nouns Builderでは、ユーザーが用意したアートワークを利用して、ジェネラティブなNFTを作成することが可能となっています。また、アートワークのスターターキットも提供しており、誰でも簡単にプロジェクトを展開できます。
NounsスタイルのDAOの特徴として、NFTを一定期間ごとに生成し、配布でき、エアドロップによるガバナンスの配布よりも健全な速度でコミュニティが形成されることが見込めます。また、長期間にわたり一貫して新しいNFTを発行することで、持続的な資金調達を行うことを可能にします。
DAOの作成、参加及び提案書の作成など全ての作業がNouns Builderのプラットフォーム内で完結しており、利用者は負担の少ない体験ができます。対応しているブロックチェーンは、Ethereumとそのテストネットのみとなっています。
Bonfire
Bonfireは、クリエイターがWeb3アセット(ソーシャルトークンやNFT)を使って、独自のブランドを持つプラットフォームを構築できるようなインフラを構築し、提供しており、Web3コミュニティがこのポテンシャルを最大限に発揮できるよう支援することに注力しています。クリエイターは、自身のデジタルアセット、コンテンツ、ブランドを原動力として、オーディエンスをコミュニティ化することをBonfire上で簡単に行うことができます。
特徴としては、単なるコントラクトのデプロイや操作ではなく、自身のミントページのデザインから自分で行うことができ、自分でサーバーをたてホスティングする必要もありません。そのため、クリエイターは自身の世界観を反映することが可能となっています。しかし、展示できるNFTのメタデータは、音楽、映像、ライブストリームの3種類となっており、参加できるクリエイターの属性は限定されます。
現在のユースケースとして、音楽アーティストのReo Cragun氏がFrameworksというプロジェクトで使用し、333個のNFTを販売し完売しました。また、Bankless Collectiblesというニュースメディアやポッドキャストを運営するBanklessが、配信したポッドキャストとNFTを紐付け、販売するプロジェクトにも利用されています。
Bonfire運営チームは、Web3におけるクリエイターは、デジタルオーナーシップに関わる新しい機能を活用し、より深く、より直接的なファンとの関係を構築することで、コミュニティは、プラットフォームのように見えてくとコメントしています。
まとめ
ブロックチェーンを活用したプロジェクトはDAOやNFTを中心としたコミュニティを絡めた様々な形のプロジェクトがありますが、それらのほとんどはスマートコントラクトが関わっており、エンジニアリングのスキルが必要となります。そのため、今まではプロジェクトを開始するにあたりエンジニアリングスキルが必要であるため、開発者を探したり、依頼したり、はたまた自分でエンジニアリングスキルを習得するようなことが必要であり、アイデアがあったとしても実現までに手間と時間を費やさなければなりませんでした。
しかし、上記で紹介したプロダクトを利用することにより低コストかつ短時間でプロジェクトを始めることが可能となりました。今までのスタートアップやスモールビジネスを支えていた、ノーコードツールによるLPやホームページ制作と同じように今後、これらのノーコードツールはWeb3業界の発展には欠かせないものになるでしょう。
ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。
Fracton Ventures株式会社
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