マンションを売却したら税金はいつ払う?納税の時期・税額について解説

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マンションの売却では、多額の税金が発生する場合があります。譲渡所得税や住民税は、翌年以降に納税が発生するため、納税時期や税額を予想し、予め計画的に納税資金を準備しておく必要があります。

この記事では、マンション売却にかかる税金について、納税の時期を時系列に説明し、特に、譲渡所得税の計算方法について解説します。

※記事内の税金・税率などは2023年2月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁などのサイトをご確認のうえ、税理士などの専門家へのご相談もご検討ください。

目次

  1. マンション売却の税金の種類と支払うタイミング
    1-1.売買契約時:印紙税
    1-2.決済・引渡時:登録免許税
    1-3.売却翌年3月15日まで:譲渡所得税
    1-4.売却翌年6月以降:住民税
  2. 譲渡所得税の計算方法
    2-1.取得費の計算方法
    2-2.取得費が不明な場合
    2-3.売却費用の計算方法
  3. マンション売却で使えるマイホームの特別控除と買い換え特例
    3-1.マイホームの特別控除
    3-2.マイホームの買い換え特例
  4. まとめ

1.マンション売却の税金の種類と支払うタイミング

マンションを売却したときにかかる税金は、主に、印紙税、登録免許税、譲渡所得税、住民税の4つになります。

売買契約時には、売買契約書の作成について、売買代金に応じた印紙税がかかり、決済・引渡時には、登記手続きが必要になれば、登録免許税がかかります。

売却について利益が出た場合、翌年以降、譲渡所得税と住民税がかかることになります。それぞれ税金が発生するタイミングと税額について詳しく見て行きましょう。

1-1.売買契約時:印紙税

売買契約書の作成の際には、契約書に収入印紙を貼付して印紙税を納めることになります。
不動産の売買価格によって印紙税の金額は次のようになっています。なお、令和6年3月31日までに作成される「不動産譲渡契約書」の印紙税は、軽減措置により原則の半額となっています。

売買価格 印紙税額
1万円未満 非課税
1万円超50万円以下 200円
50万円超100万円以下 500円
100万円超500万円以下 1,000円
500万円超1,000万円以下 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 10,000円
5,000万円超1億円以下 30,000円
1億円超5億円以下 60,000円
5億円超10億円以下 160,000円
10億円超50億円以下 320,000円
50億円超 480,000円

1-2.決済・引渡時:登録免許税

物件にローンが残っていて、設定されている抵当権を抹消しなければならないなど、個別事情により、登記が必要な場合は、それぞれ規定の登録免許税がかかります。

登記の種類 登録免許税額
抵当権抹消登記 不動産1個につき1,000円 
住所変更登記 不動産1個につき1,000円 
相続による所有権移転登記 不動産の固定資産税評価額×0.4% 
贈与による所有権移転登記 不動産の固定資産税評価額×2%
分筆登記 不動産1個につき1,000円 

1-3.売却翌年3月15日まで:譲渡所得税

マンションの売却について利益が生じた場合、売却した年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告をおこない、その利益(譲渡所得)につき譲渡所得税が課されることになります。不動産の譲渡所得税は分離課税という方式を採用しており、総合課税の所得(給与所得、事業所得、不動産所得など)とは、分離して所得や税額を計算するという特徴があります。

  • 短期譲渡所得(5年以下):30.63%
  • 長期譲渡所得(5年超):15.315%

※復興所得税を含む

1-4.売却翌年6月以降:住民税

マンションの売却について利益が生じた場合、その利益に対して住民税がかかります。住民税は、譲渡所得税の確定申告の計算に基づいて、各市区町村が翌年6月頃に決定し、賦課します。それぞれの税率は、売却した不動産の保有期間に応じて下表のようになっています。

  • 短期譲渡(5年以下):9%
  • 長期譲渡(5年超):5%

2.マンション売却で発生する譲渡所得税の計算方法

ここからは、マンション売却について利益が生じた場合の譲渡所得税の計算方法についてみていきましょう。譲渡所得税のかかる不動産売却の利益(譲渡所得)は、次のように計算されます。

譲渡所得=譲渡価格-(取得費+売却費用)-特別控除

譲渡価格は売却した価格です。取得費は不動産を入手するのにかかった費用、売却費用は売却するときにかかった費用、と考えることができますが、それぞれ、含めることができる費用はある程度決められているといえます。また、建物を売却したときは、減価償却費を取得費から差し引かなければなりません。

以下では、取得費と売却費用の計算方法について解説します。

2-1.取得費の計算方法

譲渡所得における取得費は、次のように計算します。取得価格とは、購入時の価格や建物であれば建築費用になります。

取得価格+取得の際に要した費用+取得後の改良費-減価償却費(建物の場合のみ)

取得の際に要した費用

取得の際に要した費用は、様々な種類のものが考えられますが、主に次のような費用に限定されるといえます。

  • 仲介手数料・登記費用
  • 登録免許税・不動産取得税・印紙税
  • 立退料
  • 土地の造成費用
  • 測量費用
  • 所有権確保のための訴訟費用
  • 建物付き土地の建物取り壊し費用
  • 土地・建物利用開始前の借入利子
  • 購入契約時の違約金

取得後の改良費と減価償却費

取得後の改良費とは、修繕費ではなく、物件の価値を高めるような費用になります。原状回復ではない大規模な修繕支出であれば、取得後の改良費に含めてよいと考えられます。

建物を売却した場合は、減価償却費を差し引かなければなりません。減価償却費というのは、経年劣化によって目減りした価値部分です。減価償却費は、目的や構造によって償却率が決まっていて、次のように計算します。

減価償却費=建物の取得費×0.9×償却率×経過年数

居住用建物の償却率は次のようになっています。ただし、賃貸などの事業用に供していなかった場合、法定耐用年数の1.5倍を用いるものとされています。

構造 耐用年数(法定の1.5倍) 償却率(法定の1.5倍) 
木造 22(33) 0.046(0.031)
軽量鉄骨 27(40) 0.038(0.025)
鉄筋コンクリート 47(70) 0.022(0.015)

2-2.取得費が不明な場合

購入時の売買契約書を紛失してしまったり、相続によって取得した先祖伝来の不動産であったりして、購入時の取得費が不明な場合もあります。その場合、売却価格の5%を取得費とできる概算取得費の制度があります。

しかし、これでは譲渡所得がかなり大きくなってしまい、実態にそぐわないということも考えられます。そのため、合理的な計算方法によって推計された取得費であれば、認められる可能性もあります。

たとえば、国税不服審判所の判断では、土地取得価格については市街地価格指数、建物取得価格については着工建築物構造別単価を用いることを認めたケースもあります。

ただし、これは一事例であり税務慣行とまでは言えませんので、取得費が不明な場合は、税理士に相談するなどして慎重に計算するようにしましょう。

2-3.売却費用の計算方法

売却する時に要した費用として、譲渡所得の計算に含めることができるのは、税務慣行上、次のようなものに限定されているといえます。

  • 仲介手数料
  • 立退料
  • 土地の上にある建物の取り壊し費用
  • 売却に伴って生じた違約金

不動産の売却のために直接要した費用であり、維持または管理のための費用は含まれないので注意が必要です。

3.マンション売却で使えるマイホームの特別控除と買い換え特例

3-1.マイホームの特別控除

マイホームの特別控除は、マイホームを、住まなくなってから3年以内に売却したときに、譲渡所得から3,000万円までの控除を認める特例です。売却した年の前々年から、その年まで、マイホームの特別控除等の適用を受けていないことが条件となり、実質、3年に1度しか利用できません。

マイホームの所有期間が10年を超えている場合、譲渡所得のうち6,000万円までは税率が次のように軽減されます。6,000万円をこえた部分については、長期譲渡所得の通常税率が適用されます。なお、この特例はマイホームの3,000万円特別控除と併用できます。

税目 軽減税率
所得税(復興所得税を含む) 10.21%
住民税 4%

この特別控除を受けた場合、3年以内に新たにマイホームをローンによって取得するときは、住宅ローン控除の適用が受けられないので注意しましょう。

※参照:国税庁「マイホームを売ったときの特例

3-2.マイホームの買い換え特例

マイホームを売却して、その売却価格よりも高い価格のマイホームに買い換えた場合、譲渡所得課税を繰り延べることができる特例があります。主な適用条件は次のようになっています。

  • 売却した人が10年以上住んでおり、所有期間が10年を超えていること
  • 売却価格が1億円以下であること
  • 買い換える建物の床面積が50平米以上であり、土地の面積が500平米以下であること
  • 元のマイホームを、住まなくなってから3年以内に売却すること
  • 元のマイホームを売った前年から翌年までの3年以内に買い換えること
  • 買い換えたマイホームが築25年以内であること
  • 3年以内にマイホームの特別控除等の適用を受けていないこと

また、元のマイホームの売却額よりも新しいマイホームの取得額の方が安い場合、その差額のうち次の算式によって計算した部分が、譲渡所得として課税されます。

(旧マイホーム売却額[イ]-新マイホーム取得額[ロ])-(旧マイホーム取得費+譲渡費用)×([イ]-[ロ])/[イ]

※参照:国税庁「特定のマイホームを買い換えたときの特例

まとめ

マンションを売却したときにかかる税金の主なものは、譲渡所得税と住民税です。譲渡所得は、売却価格から取得費と譲渡費用を引いて計算し、プラスになればそれに対して税率を乗じて課税されます。

譲渡所得における取得費の計算では、購入時の取得価格が不明であると多額の納税になるおそれがあります。購入時の契約書などを可能な限り準備するようにしましょう。

譲渡所得は5年を超え保有すると、税率が大きく下がります。所有期間が5年を超えたタイミングで売却を検討すると課税額を抑えることができます。譲渡所得税の計算において判断に迷うときや、自分で申告することが難しい場合は、税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。

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佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。