世界初のインスタント麺を開発した日清食品は、食を通じて持続可能な社会を目指す企業の一つです。日清食品のESGやサステナビリティに対する取り組み姿勢は、外部機関からも高く評価されているため、ESG評価で企業選びを行いたい方にも対象になる銘柄となっています。
そこでこの記事では、日清食品のESG・サステナビリティの具体的な取り組み内容や外部評価について詳しくご紹介します。また、業績、株価動向、株主優待、配当推移なども併せて解説するので、関心のある方は参考にしてみてください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2023年2月14日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。
目次
- 日清食品の特徴
- 日清食品のESG・サステナビリティの取り組み
2-1.環境方面での取り組み
2-2.社会方面での取り組み
2-3.ガバナンス方面での取り組み
2-4.日清食品のESG・サステナビリティに関する外部評価 - 日清食品の業績・株価動向
- 日清食品の株主優待・配当推移
- まとめ
1 日清食品の特徴
日清食品は、1948年9月4日に安藤百福氏が「中交総社」という社名で設立した食品メーカーで、インスタント麺の製造や販売の事業を行っています。1958年8月25日に世界初のインスタントラーメンである「チキンラーメン」を開発し、同年12月2日に現社名の「日清食品」となり、1970年代には、「カップヌードル」「焼きそばUFO」「どん兵衛きつね」などのインスタント麺を発売しました。
2008年10月1日には、既存の日清食品が「日清食品ホールディングス」に社名変更し、インスタント麺事業を承継した新設会社の社名を「日清食品」とする形で持株会社へと移行しています。
日清食品は、「食足世平」「食創為世」「美健賢食」「食為聖職」の企業理念を掲げて事業経営を行っています。「食足世平」とは、人間の食が足りてこそ初めて世の中が平和になること、「食創為世」とは、世の中に新しい食の文化を創造して、人々に幸せと感動を提供すること、「美健賢食」とは、人々が美しく健康な体になれるような食を提供し、世の中に「賢食」を提唱すること、「食為聖職」とは、人々の生命の根源を支える食に携わる仕事は聖職であることをそれぞれ意味します。
2 日清食品のESG・サステナビリティの取り組み
日清食品グループは、人々に安全でおいしい食を提供するとともに、環境や社会の問題を解決できる製品の開発を推進していくことが使命であるとの考えに基づき、「環境」「社会」「ガバナンス」の各方面でESG・サステナビリティの取り組みを積極的に行っています。具体的に見ていきましょう。
2-1 環境方面での取り組み
日清食品グループは、各製造工場における環境負担低減として、二酸化炭素排出量削減、再生可能エネルギーの使用、廃棄物の削減・リサイクルなどの取り組みを行っています。国内外の事業における二酸化炭素の直接排出量と間接排出量の合計量を、2030年までに2018年度比の30%削減することを目指しています。
国内外の事業活動で利用する再生可能エネルギーの調達比率は、2021年度時点で18.1%となっていますが、2050年までには100%にすることを目標としています。
また、廃棄物の削減やリサイクルを実現するため、製造工程で発生する食品ロス削減やリサイクル可能な紙製容器包装の使用率増加に取り組んでおり、2021年度の紙製容器包装の使用率は、全体の63.4%でした。
物流や社用車における環境負担低減の取り組み内容としては、輸送距離の削減やドライバーへの負担削減があります。輸送距離の削減は、日清食品グループの企業間や他社との共同輸送の方法を採用しており、ドライバーの負担削減は、2016年11月からフォークリフトによるパレット単位での製品積み下ろしに変更する形で行われています。その結果、2020年8月には、全輸送におけるパレット輸送化が完了しています。
2-2 社会方面での取り組み
食の安全・安心への取り組みとして、日清食品では各工場での品質管理と「グローバル食品安全研究所」という部署での品質管理を二重で行う品質保証体制を取っています。
研究開発部門においては、製品の原材料に対する危害物質や放射性物質の分析、遺伝子組み換え農作物やアレルギー物質のコンタミネーションの有無などの確認を行っています。それに加えて、2020年には脂質分析の迅速化に取り組んだり、食物アレルギー物質の分析を自動化したりしました。
また、各部門の担当者が工場生産における課題や製造技術を共有したり、優れた事例を他の場所に取り入れるか否かの話し合いをしたりして、生産の品質向上に努めています。
ダイバーシティ&インクルージョンの推進においては、多様な人材の活躍推進、女性の能力開発、障がい者のある方の社員雇用などに取り組みを行っています。2020年に行った日清食品の社員意識調査では、全体の71%の社員が「社内において国籍、性別などさまざまな違いを尊重し、認め合う風土を作っている」との回答をしています。
女性の能力開発を実現するためには、若手女性社員向け、女性リーダー向けの研修を行っています。日清食品グループでは、2021年4月1日から2026年3月31日までの5年間で、女性管理職比率を10%以上にすることを目標に掲げています。
2-3 ガバナンス方面での取り組み
日清食品グループは、コンプライアンス推進体制の構築のため、「コンプライアンス委員会」「内部通報窓口」を設置した上で、報告・是正措置プロセスと差別やハラスメントに対する防止策を定めています。また、公正な取引の確保を実現するため、お客様、社員、取引先、株主などすべての関係者に対して公平・公正な関係の維持を図り、反社会的勢力からの不当要求の排除にも努めています。
日清食品グループは、今後のESG・サステナビリティ方針として、「消費者志向自主宣言」を掲げ、安心安全な食の提供でお客様の利益が最大化されるように事業を推進することを宣言しており、お客様や社会の要望を踏まえた製品の開発活動、お客様への情報提供の充実などに取り組むこととしています。
また、環境に配慮した容器包装設計の基本指針、2007年5月に制定したグリーン調達基本方針、持続可能な調達方針など製品の環境面に関する指針や方針に沿って、ESG・サステナビリティに取り組むことを約束しています。
2-4 日清食品のESG・サステナビリティに関する外部評価
日清食品のESG・サステナビリティの取り組み内容は外部機関からの評価も高く、以下のESGインデックスにも組み入れられています。
ESGインデックス | 詳細内容 |
---|---|
Dow Jones Sustainability World Index | 財務とESGの双方の側面を調査・分析して、持続可能性に優れた企業を評価して選定される米国のS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社のESG指数。 |
FTSE4Good Index Series | ESGの面で優れた対応を行っている企業を英国のFTSE Russell社が選定するESG指数。 |
MSCI World ESG Leaders Index | ESG評価に優れた企業を選定するMSCI社が作成した世界的なESG指数。 |
SOMPOサステナビリティ・インデックス | SOMPOアセットマネジメント社がサステナブル運用を行う基準となるESG指数。 |
また、日清食品の取り組みは、様々な外部機関から表彰されています。例えば、持続可能な社会づくりに貢献する、優れた環境配慮が組み込まれた製品や技術などを表彰する一般社団法人サステナブル経営推進機構主催の「エコプロアワード」において、環境配慮型容器の採用や持続可能性に配慮されている認証パーム油の使用開始などが評価され、2020年に「農林水産大臣賞」を受賞しています。
さらに、製品の容器を環境配慮型のものに切り替えたことが、温室効果ガスの排出低減につながる優れた技術の開発によって製品化されたと評価され、気候変動対策推進へ貢献した個人や団体を表彰する環境省主催の「気候変動アクション環境大臣表彰」にも選ばれています。
3 日清食品の業績・株価動向
日清食品の2019年3月期から2022年3月期までの売上と営業利益は、以下の通りです。
項目 | 売上 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
---|---|---|
2019年3月期 | 450,984 | 28,967 |
2020年3月期 | 468,879 | 41,252 |
2021年3月期 | 506,107 | 55,532 |
2022年3月期 | 569,722 | 42,588 |
日清食品の売上は、2019年3月期〜2022年3月期まで年々増加傾向にあります。営業利益のほうは、2019年3月期から2021年3月期までは増加傾向でしたが、2022年3月期は前年期よりも減少しています。
2023年3月期の売上は、第3四半期時点で5,000億円以上となっており、前年の第3四半期時点の売上を上回る結果となっています。また、営業利益も第3四半期時点で、前年期を上回る結果です。
日清食品の株価は、2022年2月10日〜2023年2月9日の直近1年間は緩やかな上昇傾向にあります。2022年6月20日まで横ばいで推移していたものの、2023年2月3日に急上昇し、2023年2月9日までの間に1,000円以上値上がりしています。
日清食品は、アメリカを中心とする海外事業の業績が堅調であることから、2023年3月期の通期の営業利益予想が上方修正され、今後の株価推移にも影響が及ぶ可能性があります。一方、原材料の価格高騰の影響で国内の事業環境は厳しい状況にあるため、悪材料となる可能性もあります。
4 日清食品の株主優待・配当推移
日清食品では、株主優待として一定金額相当のグループ企業の製品詰め合わせと1,500円相当のひよこちゃんオリジナルグッズを対象株主へ贈呈しています。株主優待の対象株主は、前記の代わりに国連WFPへの寄付を選択することも可能です。
株主優待で贈呈される当企業グループの製品詰め合わせまたは国連WFPへの寄付の金額は、対象株主の保有株式数によって異なります。具体的な株主優待の条件は、以下の通りです。
項目 | 株主優待内容 | 贈呈回数 | 割当基準日 |
---|---|---|---|
株式保有数が100株以上300株未満の株主 | 3,000円相当の製品詰め合わせ贈呈(ひよこちゃんオリジナルグッズも含む)または3,000円の寄付 | 年1回(夏) | 3月末 |
株式保有数が300株以上1,000株未満の株主 | 3,500円相当の製品詰め合わせ、1,500円相当のひよこちゃんオリジナルグッズ贈呈または3,500円の寄付 | 年2回(夏、冬) | 3月末、9月末 |
株式保有数が1,000株以上3,000株未満の株主 | 4,500円相当の製品詰め合わせ、1,500円相当のひよこちゃんオリジナルグッズ贈呈または4,500円の寄付 | 年2回(夏、冬) | 3月末、9月末 |
株式保有数が3,000株以上の株主 | 5,500円相当の製品詰め合わせ、1,500円相当のひよこちゃんオリジナルグッズ贈呈または5,500円の寄付 | 年2回(夏、冬) | 3月末、9月末 |
株式保有数が300株以上1,000株未満、1,000株以上3,000株未満の優待対象の株主で長期保有優遇制度の対象(3年以上継続して保有し、7回連続して同一株主番号で株主名簿に記載されることが条件)になった場合、贈呈を受けられる製品詰め合わせの相当価額が1,000円増えます。
また、日清食品の1株あたりの年間配当金額は、年々増加傾向にあります。2016年3月期は80円でしたが、2017年3月期は85円、2018年3月期は90円、2019年3月期は110円まで増えています。さらに2022年3月期の1株あたりの年間配当金額は、記念配当額10円分込みで130円まで増加しています。
まとめ
日清食品は、環境負担低減、安全安心な食の提供、ダイバーシティ&インクルージョンの推進、コンプライアンス推進体制の構築など、ESG・サステナビリティの取り組みを積極的に行っており、外部機関から高く評価されています。業績や株価推移も堅調で、株主優待、配当によって株主還元を行っています。
日清食品のESGやサステナビリティの内容に関心のある方は、この記事を参考にご自身でも調査を進めてみてください。
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