海外不動産投資は本当に節税になる?知らないと損する海外不動産の基礎知識

国内の高い不動産価格や将来への不安を横目に、成長国への海外不動産への投資が伸びてきています。

海外不動産は国内の不動産と比べて異なる税制が適用されることがあるため、節税目的で海外物件を購入する例も見受けられます。ただし、海外不動産投資による節税対策では、税制の動向や出口戦略などに注意して進めるということも忘れてはいけません。

そこで今回は、海外不動産投資による節税方法と期待できる効果、および気をつけたいポイントなどについて詳しくご紹介します。

目次

  1. 海外不動産を購入して節税する方法とは
    1-1.不動産投資が節税につながる理由
    1-2.減価償却費で所得を引き下げる
    1-3.「減価償却費の計上」で注意したいポイント
    1-4.減価償却費の計算方法
  2. 海外不動産と国内不動産の違い
    2-1.イギリス、アメリカの物件事情
    2-2.減価償却費を大きくするポイント
    2-3.減価償却費の計上は売却時にデメリットに?
  3. 外国税額控除とは
    3-1.海外不動産の納税は控除対象
    3-2.海外インカムゲインの節税効果
    3-3.物件を購入する国選びに気をつける
  4. 節税における注意点
    4-1.海外不動産投資は長期保有できるのか
    4-2.不動産投資環境は絶えず変化する

1 海外不動産を購入して節税する方法とは

国土交通省の「平成30年地価調査」によると、日本の基準地価の全国平均が27年ぶりに上昇(0.1%)しました。全国の商業地における最高価格もバブル期の高値を更新しています。

しかし一方で、少子高齢化が進む国内不動産には不透明感もあり、経済成長が著しい新興国の不動産に投資マネーが流入しています。多くはキャピタルゲインを狙ったものですが、不動産投資によって得る不動産所得は、給与所得などと合算できるため、確定申告の際にさまざまな経費を申告することが可能です。

1-1 不動産投資が節税につながる理由

不動産投資はマンション経営で得た家賃収入を給与などの課税所得と合算し、経費も計上することで、課税所得を下げることができるため、節税につながります。
このほか「物件管理費」「税金(各種保険料・租税公課)」「ローンの金利分(支払い利息分)」「減価償却費」などのさまざまな経費を計上することができます。

なかでも海外不動産投資で大きな節税効果を期待できるのが、「減価償却費」の計上です。

1-2 減価償却費で所得を引き下げる

減価償却とは、収益を得るために購入した不動産の経年劣化による価値減少分を経費と捉え、すでに支払ったお金を一定期間収入から差し引くことをいいます。

減価償却費は他の経費と比べて大きな金額となるため、経費が家賃収入を上回れば給与所得などを大きく引き下げることになります。その結果、すでに天引きされた所得税と確定申告によって申告した税金との差額を還付金として受け取ることができます。また課税所得が下がるために、住民税も少なくできます。

つまり、不動産投資を赤字経営として申告することで税金を抑えることができ、課税所得が高い人ほどその効果も高く、多くの還付金を受け取ることになるというわけです。

1-3 「減価償却費の計上」で注意したいポイント

不動産のうち減価償却費として計上できるのは建物部分のみである点に注意が必要です。通常、不動産の土地分は劣化しないと考えられているため償却できません。償却できるのは不動産の購入価格のうち、建物分のみとなります。

さらに建物は「躯体」と「設備」に分かれ、それぞれの償却期間も異なります。

設備は法定耐用年数が15年と定められています。購入価格の設備分は15年間に分けて償却します。
躯体はその構造によって次のように法定耐用年数が決まっています(事業用)。償却費期間が短いほど、1年あたりに計上できる減価償却費が大きくなるため、節税効果も高くなります。

  • 鉄骨鉄筋コンクリート:47年
  • レンガ造り:38年
  • 木造:22年

1-4 減価償却費の計算方法

減価償却費は、建物および付属設備と土地の割合など求めることができます。計算式には「定額法」と「定率法」の2種類がありますが、平成28年4月1日以降に取得した不動産の場合、定額法で計算する必要があります。なお、それ以前に取得した物件の場合は、付属設備のみ定率法で計算することも可能です。

定額法の減価償却費=建物の取得金額×償却率

また不動産を中古で購入する場合には、次の計算式で経費計上できる耐用年数を計算します。

耐用年数=法定耐用年数-築年数+築年数×0.2(端数は切捨て)

もし築年数が耐用年数を超えていれば、法定耐用年数×0.2(端数切捨て)とします。
中古物件でも購入価格が新築と変わらない場合、短い期間で新築物件よりも多くの減価償却費を計上できるため節税効果が高くなります。逆に購入価格があまりに安い場合、減価償却費は少なくなります。

2 海外不動産と国内不動産との違い

日本と海外の住宅における資産価値の違いから、海外不動産投資では高い節税効果が期待できます。

国内の不動産は、購入金額のうち土地と建物の比率は土地のほうが高くなります。さらに築年数の経過によって建物の劣化も大きいため、建物分の価格は大きく下がり、節税効果も低くなります。

一方、海外では中古物件でも「建物の価値は落ちない」と考えられているため、建物分の比率が日本よりも高くなっています。つまり国内物件よりも海外物件のほうが経費計上できる減価償却費が大きくなるため、節税効果が高くなるわけです。

2-1 イギリス、アメリカの物件事情

不動産の減価償却期間は、中古物件の場合、耐久年数が減少することで次第に短くなっていきます。国内不動産であれば、建物の価値そのものが低下していくため、減価償却費そのものは変わらないか、あるいは低下する傾向にあります。

ところがイギリスなど一部の海外では、築年数が古くても資産価値がさほど落ちない国があります。日本では家屋は消耗品であり、木造住宅は古くなれば建て替えを行います。しかし欧米などでは住宅は修理をしながら長く居住し、資産価値を高めて売却します。

また高温多湿の日本に比べて湿度が低い国の場合、建物の劣化も少なくなります。さらに外断熱による施工であれば、外気の変動による影響を受けにくいため、劣化はさらに抑えられます。

アメリカなども新築より中古物件のほうが不具合を手直しされることで住みやすくなり、新築時よりも高く売却できるケースもあります。ハワイの木造住宅も物件価値が落ちにくく賃貸需要も多いことから世界中の投資家から注目されています。

そのため古い物件であっても建物価格がさほど落ちず、短期間で多くの減価償却費を計上できます。課税所得が高い人ほど税金の還付が多く、高い節税効果を実感することができます。

2-2 減価償却費を大きくするポイント

海外不動産投資で節税効果を高めるためには、減価償却費を大きく計上できる物件選びが必要です。特に木造住宅は築年数が22年を超えれば、耐用年数は4年以下になります。短い期間で大きく経費計上できるため、税金の還付金も多くなります。

また一口に海外不動産といっても、購入はどの国でも良いというわけではありません。例えばキャピタルゲインを大きく狙える東南アジアなどの場合、外国人は土地を購入できないケースが多々あります。購入できるのはマンションのようなコンドミニアムに限られてきますが、耐用年数が長いため計上できる経費は少なくなります。

また集合住宅の施工技術も不十分であることが多く、建物の耐久性や品質に問題がある場合も少なくありません。その点、欧米など一部の先進国であれば品質面において心配なく購入できる国もあります。築年数が相当に古い集合住宅でも、建物の価値が高いことから減価償却費を多く計上することができるでしょう。

2-3 減価償却費の計上は売却時にデメリットに?

減価償却費を計上する際は以下の点に注意が必要です。

減価償却は、購入した物件価格から差し引くことになるため、売却時には、購入価格が減価償却の分だけ減少します。その分、譲渡益が増えることで税金が増える可能性があります。

日本でも海外でも、不動産を売却する場合には保有期間によって税率が変わる傾向があります。短期間だけ保有するよりも長期保有したほうが、譲渡益に対する税率は低くなります。

ただし保有期間が長くなるほど減価償却費も積み重なって増えていきます。マレーシアのように、5年以上保有すれば譲渡益に対する税金は非課税となる国もあります。

そのため海外不動産投資では出口戦略をしっかり立てることが大切です。固定資産税や売却時の税金などをチェックして、有利に運用できる国を選ぶ必要があります。

3 外国税額控除とは

海外不動産投資をする場合にも、国内での確定申告は必要です。これは海外での収入も国内所得と合算するためですが、海外でも現地で税金を納める必要があります。

では日本での確定申告で課税されると、海外と二重に支払うことになるのでしょうか。

3-1 海外不動産の納税は控除対象

実はこのような二重課税を防ぐために、二国間租税条約というものがあります。これは海外で納めた税金については、国内の確定申告時に控除できるようにする制度です。これを外国税額控除といいます。

ただし海外で支払った税金のすべてを控除できるわけではなく限度があります。限度額の計算方法は次のようになっています。

総所得税額×その年の国外所得総額÷その年の所得総額

海外で得た所得の割合によって、差し引くことができる海外の税金は制限されます。仮に控除しきれない海外での納税額があれば、所得税と住民税からも差し引き、さらに残った分は最大3年間繰り越すことができます。県民税の控除限度額は所得税の限度額に対して12%、市民税は18%です。

外国税額控除の限度額

所得税の控除限度額 総所得税額×その年の国外所得総額÷その年の所得総額
県民税の控除限度額 (総所得税額×その年の国外所得総額÷その年の所得総額)×12%
市民税の控除限度額 (総所得税額×その年の国外所得総額÷その年の所得総額)×18%

3-2 海外インカムゲインの節税効果

海外物件のインカムゲインに対する課税所得も経費計上により低く抑えることができます。

イギリスやマレーシアなど一部の国では減価償却が認められていませんが、管理費用やローンの金利分などを日本と同じように経費にすることで家賃収入による所得金額を下げることが可能です。

また日本での所得は考慮しないため、純粋に現地(海外)で得られた収入に対して経費計上し、課税所得をゼロにすることも可能です。その際インカムゲインに対する税金も発生しません。

ただ、日本で申告する時の所得金額は海外での家賃収入分だけ大きくなるため、その分税金も高くなりますが、海外不動産に対しては日本の減価償却制度が適用されるため、課税所得金額を大きく引き下げることに役立ちます。

3-3 物件を購入する国選びに気をつける

外国税額控除をするためには日本と二国間租税条約を結んでいる国の不動産を購入することが必要です。基本的にはほとんどの国と租税条約を結んでいますが、国交がない一部の国・地域(台湾・北朝鮮・パレスチナ)とは租税条約を結んでいません。

税制や売却時の譲渡益の税率などは国によって異なるため、収益を確保するためには購入する国の税制をきちんとチェックすることが大切です。

4 海外不動産投資の注意点

海外不動産投資による節税ではこのほか注意しておきたいポイントがあります。

4-1 海外不動産は長期保有可能?

キャピタルゲイン狙いの不動産投資は、短期間での保有が比較的多くなりますが、譲渡益に対する税率を有利にするため、最低限保有するべき年数があります。

インカムゲインと節税による不動産投資も、長期保有するとリスクが高まることがあります。例えば日本と比べて建物価格の比率が高いハワイの一部地域では、投資マネーの流入に対する警戒感から土地価格の割合を増やす州も出てきています。建物部分の比率が下がれば、減価償却費は少なくなります。

シンガポールも投資マネーが過剰に流入することを警戒し、外国人の不動産購入に規制する動きがあります。中国も不動産投資に対する規制の動きを見せています。

このように不動産投資を取り巻く環境は常に変動しています。長期保有を前提に計画していると、収益性が低下する可能性もあります。そのために最低保有期間をチェックしつつ、必要最低限の保有期間で利益を出す戦略を見極めましょう。

4-2 不動産投資環境は絶えず変化する

国内では海外不動産投資における節税効果の高さを懸念する意見が出てきています。現在海外不動産は減価償却も耐用年数も日本の不動産と同じように扱っていますが、減価償却の仕組みは、まだ海外不動産など購入が難しい時代に制定されたものです。独立行政法人の会計検査院も「現代にはそぐわない」との趣旨の報告書を政府に提出しています。

2018年度の税制改正では「何かしらの対策が盛り込まれるか」との見方もありましたが、結果的には見送られました。しかし今後も海外不動産投資で高い節税効果を享受できるのかは不透明な状況です。投資において市場の歪みは常に平準化されてきた過程があります。海外不動産投資における節税のメソッドもいつまで続くかわからない点に注意が必要です。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チームは、不動産投資や金融知識が豊富なメンバーが不動産投資の基礎知識からローン融資のポイント、他の投資手法との客観的な比較などを初心者向けにわかりやすく解説しています。/未来がもっと楽しみになる金融メディア「HEDGE GUIDE」