こども宅食のメリットや目的は?自治体の取り組み事例や実績も解説

こども宅食は、経済的事情などで食生生活に課題を抱える家庭およびこどもに向けた支援事業です。自治体の福祉サービスではサポートしきれないケースについても、こども宅食でカバーできる可能性もあり、注目されている取り組みでもあります。

そこでこの記事では、こども宅食の目的やメリット、注意点、プロジェクト事例について詳しくご紹介します。こどもの健康や食に関する社会問題を解決したい方や、こども宅食で社会貢献できるのか内容を詳しく知りたい方は、参考にしてみてください。

目次

  1. こども宅食プロジェクトの目的
  2. こども宅食プロジェクトの支援方法
    2-1.NPO法人や自治体で支援の概要を確認
    2-2.寄付金で食材の調達やお弁当の宅配などが行われる
    2-3.寄付以外の方法でも支援することが可能
  3. こども宅食プロジェクトの支援メリット
    3-1.ふるさと納税を通じた寄付が可能
    3-2.助けを求めているものの動けない層へアプローチ可能
    3-3.モノやコトを通じた支援を進められるのが強み
  4. こども宅食プロジェクトへ支援する際の注意点
  5. こども宅食のプロジェクト事例
    5-1.東京都文京区のこども宅食基金
    5-2.千葉こども宅食プロジェクト
    5-3.としまフードサポートプロジェクト
  6. まとめ

1.こども宅食プロジェクトの目的

こども宅食は、貧困状態で悩んでいる家庭へ食品を届ける事業です。事業の主な目的は、食による支援を通じて気軽にNPO法人や自治体へ相談できる環境をつくることと、こどもの貧困問題を解決することです。

経済的事情で悩んでいる家庭の中には、以下のような理由でサポートを受けられずにいる家庭も珍しくありません。

  • 自治体や国の福祉サービスを利用したいが、周囲に知られたくないといった理由からためらっている
  • 仕事で忙しく、平日に自治体窓口へ行けない
  • こども食堂や福祉サービスを利用する気力、勇気がない

このように仕事や時間、心理的要因などから社会福祉サービスを受けられないケースがあるため、社会福祉制度の整っている状況でも完全にサポートできない側面があります。

一方、こども宅食は、アウトリーチ型で貧困状態の家庭やこどもを支えられるのが強みです。本格的な取り組みに関しては、2017年までさかのぼります。認定NPO法人フローレンスと東京都文京区などが共同でこども宅食事業を立ち上げ、官民一体となりながら貧困状態で悩んでいる区内の家庭へ食品を届けています。

こども宅食プロジェクトへの支援方法については、ふるさと納税を活用した寄付や物資の無償提供など選択肢の多い内容です 。

2.こども宅食プロジェクトの支援方法

こども宅食のプロジェクトへ参加および支援したい場合は、各地域のこども宅食プロジェクトを運営管理している団体や自治体を探す必要があります。こども宅食プロジェクトの主な支援方法について1つずつ確認していきましょう。

2-1.NPO法人や自治体で支援の概要を確認

こども宅食プロジェクトで支援を行いたい時は、自治体HPもしくはこども宅食応援団HPから内容を確認しておきます。

こども宅食プロジェクトについて明記されている自治体は、主に東京都文京区です。同区の「子供宅食のページ」では、寄付の方法や流れについて解説されています。

特にプロジェクトを探しやすいのは、こども宅食応援団というウェブサイトです。こども宅食応援団は、こども宅食事業に関する法人や自治体を支援している団体で、個人や団体からさまざまな支援を募っているので、誰でも気軽に参加しやすい状況といえます。

こども宅食応援団のウェブサイトには、全国の宅食プロジェクトに関する情報が一覧表示されています。そのため、1からこども宅食に関する団体を探す手間を省略することが可能です。さらに各団体のリンクが設置されているので、各NPO法人のウェブサイトへアクセスできます。

2-2.寄付金で食材の調達やお弁当の宅配などが行われる

こども宅食プロジェクトの主な支援方法は、寄付金による支援です。たとえば、こども宅食応援団では、毎年ふるさと納税を通した寄付を募っています。

ふるさとチョイスというふるさと納税サイトにプロジェクトが立ち上がっていて、2022年も多数の支援を受けています。2022年の寄付金額は3,834万円で、寄付先は佐賀県です。

寄付金については、こども宅食応援団の勉強会や全国のこども宅食事業に関する活動内容の紹介、自治体の代わりに全国のこども宅食事業団体へサポートするための活動に使用されます。

他にもこども宅食応援を行っているNPO法人の中には、寄付金を募っている法人が存在します。寄付の方法については、クレジット決済や銀行振込などに対応しています。集められた寄付金については、食材の調達や食品の宅配といった活動に用いられるのが特徴です。

ただし、ウェブサイトに詳細が記載されていないケースがあるため、状況に応じて電話や窓口で支援方法を確認してみましょう。

2-3.寄付以外の方法でも支援することが可能

こども宅食に関する活動を金銭面以外で支援したい場合は、ボランティアメンバーとして参加もしくはモノやコトといった側面でサポートできます。例えば、SNSを活用して情報をシェアしたりすることも支援方法の一つと言えるでしょう。

こども宅食事業を立ち上げたい、寄付や物品の提供以外にも現場で動きたいという場合は、1から団体を作る他、こども宅食応援団の実施者ネットワークへ加盟することで活動基盤を作ることが可能です。

他にも全国のこども宅食サービスの中には、ボランティアやサポーター、支援を募っているサービスがあるので、個別に登録できる場合もあります。ちばこども宅食プロジェクトは、食品の無償支援をはじめ、食品回収などのボランティア作業員を募集しています。

3.こども宅食プロジェクトの支援メリット

続いては、こども宅食応援団や各NPO法人、もしくは自治体のこども宅食事業を支援するメリットについて紹介していきます。

3-1.ふるさと納税を通じた寄付が可能

ふるさと納税を通じて簡単に寄付という形で支援ができるのは、こども宅食プロジェクトのメリットといえます。

ふるさと納税とは、自治体へ寄付を行える制度のことです。ふるさと納税サイトには、返礼品という名産品や食品などが掲載されていて、それぞれの商品を購入すると寄付金額に応じた所得税の還付、住民税の控除といった税制優遇(寄付金控除)を受けられます。(※国税庁「一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)」)

こども宅食プロジェクトが掲載されているふるさと納税サイトは、ふるさとチョイスです。2023年4月17日時点では、東京都文京区の「親子を孤立させない!7年目の「こども宅食」でつながり、見守り、支えていく。【文京区】」というプロジェクトが実施されています。実施期間は2024年3月31日までの予定で、クレジット決済などから寄付を進められる仕組みです。

他にもこども宅食応援団運営の寄付プロジェクトは、例年1年に1回実施されています。2022年分の内容を見てみると、2022年4月5日~2023年3月31日と長期間にわたって募集をかけていることがわかります。

2023年4月17日時点で2023年分のプロジェクトは掲載されていないものの、これまでと同じように実施される可能性があります。気になる方は、定期的にふるさとチョイスで確認しておきましょう。

3-2.助けを求めているものの動けない層へアプローチ可能

こども宅食事業を通じた支援は、公的な社会福祉サービスでカバーしきれていない家庭を支える上で重要な役割を果たします。

公的な社会福祉サービスを利用するためには、自治体窓口や電話などで相談しなければいけません。しかし、さまざまな理由から相談できない、コミュニティへ参加できないといった家庭も存在しています。

こども宅食サービスはアウトリーチ型の支援方法なので、動き出せずに困っている家庭へ積極的にサポートを始められます。(※アウトリーチ:サービスを必要とする人へモノやサービスを届ける)

社会貢献活動において貧困状態の家庭やこども達への支援を積極的に行いたい方は、こども宅食プロジェクトを通じた寄付や支援を検討してみるのが大切です。

3-3.モノやコトを通じた支援を進められるのが強み

こども宅食プロジェクトでは、寄付だけでなくモノやコト、ボランティアという形で参加できるのも強みです。現地で直接コミュニケーションをとりながら支援を行いたい方や金銭以外の支援方法について模索している方は、メリットの多いプロジェクトといえます。

こども宅食応援団で募っている支援は、ふるさと納税を活用した寄付、モノやコトの提供、こども宅食の重要性を広めるための広報活動などとなっています。特にモノやコトは、生活用品や食品、食材の無償提供だけでなく、教育やこどもに必要なさまざまなイベントを体験するための機会を提供していく支援方法です。

他にもNPO法人の千葉こども宅食プロジェクトなどのNPO法人では、寄付や物資の支援に加えて、ボランティアサポーターを募集しています。ボランティアサポーターの活動内容はNPO法人によって異なり、お弁当の配布や宅配の他、支援者から物資や食品の回収、事務作業など多岐にわたります。

特にボランティアへ力を入れたい方は、各NPO法人や自治体で行っているこども宅食事業に参加してみましょう。また、こども宅食事業全体への支援に関心を持っている時は、こども宅食応援団で支援を検討してみるのも良いでしょう。

4.こども宅食プロジェクトへ支援する際の注意点

こども宅食プロジェクトで支援活動を始める時は、運営団体の信頼性について注意が必要です。

こども宅食事業にかかわらずボランティア団体の中には、寄付金を目的外に使用したりなど、悪質な団体も存在しています。そのため、団体の活動内容などを確認せず、安易に寄付や物資を提供してしまうと、思わぬ被害を受けてしまうリスクがあります。

NPO法人から寄付や物資の提供先を選ぶ時は、各団体の活動実績や寄付金の使途を確認しましょう。募金詐欺のような事件性のある場合は、警察へ通報したり消費生活センターへ相談したりするのが大切です。

5.こども宅食のプロジェクト事例

ここからは、こども宅食のプロジェクト事例をわかりやすく紹介していきます。

5-1.東京都文京区のこども宅食基金

東京都文京区はこども宅食コンソーシアムに加盟していて、NPO法人や企業と共にこども宅食プロジェクトを展開しています。(※コンソーシアム:共同体)

具体的には、経済的事情によって健康的な食生活を送れない家庭のこどもへ食品の配送と孤立を防ぐ支援活動が行われています。2022年度は4,702世帯へ食品の配送や支援活動が実施されました。

他にはふるさと納税サービスのふるさとチョイスで、前述した「親子を孤立させない!7年目の「こども宅食」でつながり、見守り、支えていく。【文京区】」というプロジェクトを実施しています。寄付金は文京区で管理され、こども宅食プロジェクトのみに使用されます。さらに寄付金の積立状況は文京区ウェブサイトに公開されているので、支援者も内容を確認可能な状況です。

5-2.千葉こども宅食プロジェクト

千葉こども宅食プロジェクトは、NPO BRIGHTによって運営されているこども宅食事業です。

対象地域は千葉市若葉区で、順次拡大中とされています。なお、行政の福祉課や社会福祉協議会、千葉市ひとり親家庭福祉会、千葉市子ども食堂ネットワークなどから紹介を受けた千葉市内に居住している家庭は、支援を受けられます。

主な支援活動は、ひとり親家庭へ食品を無償提供していくという内容です。配達の頻度は2ヶ月に1回で、LINEによる申し込み手続きに対応しているのが特徴といえます。支援を行いたい場合は、4種類のサポート方法から選択していきます。

方法 内容
寄付 マンスリーサポーター:毎月継続的に寄付を行う、1,000円から寄付可能
都度寄付サポーター:1,000円以上から自由に寄付を行える、マンスリーサポーターと異なり毎月継続的ではなく支援者のタイミングで振込可能
物資 穀物やレトルト食品、調味料、保存食品、菓子類、飲料などを無償で提供
未開封、賞味期限切れまで1ヶ月以上の余裕がある、常温保存可能なものが求められている
Amazon Amazonの欲しいものリストから食品などを購入および提供
ボランティア ボランティアとして、フードドライブのチラシポスティング、提供された食品の回収作業、SNSを通じた広報活動などを行う

マンスリーサポーターを選択した場合は、クレジット決済によって毎月自動で引き落としされます。一方、都度寄付サポーターは、クレジットや銀行振り込みで自由に寄付を行えるのが特徴です。

幅広い支援が求められているので、寄付だけでなく物資の提供や現地での支援活動を検討している方に取り組みやすい内容といえます。

5-3.としまフードサポートプロジェクト

認定NPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワークでは、豊島区の地域ネットワークを作りながら暮らしや学び、遊びに関するサポートを行っています。

こども宅食事業は、としまフードサポートプロジェクトという活動に含まれています。2022年8月と9月の活動実績は、1,128世帯へ食料品や日用品を届けられていました。こども宅食事業の予算は、寄付金や国の予算でカバーされているのが特徴です。

支援を行いたい場合は、寄付金もしくは食品や教材、日用品といった物資の提供、ボランティアの3種類から選択できます。毎月継続的に寄付を行う時は、クレジット決済のみとなっています。都度支援したい時は、クレジット決済の他、銀行振込も選択することが可能です。

物資の提供を検討している場合は、認定NPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワークから問い合わせによる相談、もしくはAmazon欲しいものリストから商品を購入および提供といった方法から選択できるようになっています。

としまフードサポートプロジェクトのボランティア活動については、毎月第3土曜と日曜に開催されていて、主に食材配布といった作業を任されます。

まとめ

こども宅食事業は、東京都文京区から本格的に始まった支援事業で、全国の自治体やNPO法人でも進められています。こども達の食を守るということと、食を通じた各家庭の孤立防止と暮らしのサポートを進めていくことが、主な目的です。

貧困問題の解決に向けて少しでも関わりたい方やこども宅食事業を通じた活動で社会問題について深く理解したい方は、今回紹介した内容を参考にしながら各NPO法人や自治体のこども宅食事業について調べてみましょう。

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菊地 祥

FP3級技能士、投資信託4年目、株式投資8年目。2018年からフリーランスとしてwebライティングやメディア運営を行っています。また、webライターとしては株式投資や投資信託などをやさしく解説。