FRBの金利引き上げがアメリカ不動産投資に与える影響は?不動産価格と金利推移を比較

アメリカでは中央銀行の役割を担うFRBが2022年に入ってから金融引き締めの姿勢を示しており、2022年11月時点では異例の利上げを繰り返しています。

FRBの利上げはアメリカの住宅ローン金利に影響を与え、住宅ローン金利の変化は不動産価格に影響を及ぼす大きな要因の1つです。FRBの利上げはアメリカ不動産の価格にどのような変化を与えているのか、データに基づいて検証します。

※本記事は11月時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。

目次

  1. アメリカの金利推移と金利引き上げの背景
    1-1.アメリカの長期金利推移
    1-2.FRBによる利上げとインフレ率の推移
  2. アメリカの住宅ローン金利と不動産価格推移
    2-1.アメリカの住宅ローン金利推移
    2-2.アメリカ不動産の価格推移
  3. アメリカ不動産投資における金利動向のとらえ方
  4. まとめ

1.アメリカの金利推移と金利引き上げの背景

1-1.アメリカの長期金利推移

アメリカにおける2019年末以降の金利について見て行きましょう。長期金利の目安となる10年米国債の金利推移は以下の通りです。

※Federal Reserve Bank「Selected Interest Rates (Daily) – H.15」を参照して筆者作成

アメリカの長期金利は2019年7月まで2%台を保っていましたが、2019年末には1.7%~1.8%まで低下し、2020年3月には0.87%まで下がりました。

それ以降2020年中は1%未満の状況が続き、2021年1月以降上がり続けています。2022年3月以降は2%を下回った時期がなく、10月には3.98%となりました。推移を見る限りでは、2022年以降は利回りの上昇が顕著であると言えます。

1-2.FRBによる利上げとインフレ率の推移

国立感染症研究所のレポートによると、アメリカで最初にコロナウイルス感染症の発症が確認されたのは2020年1月20日です。(※参照:国立感染症研究所「海外におけるCOVID-19の流行状況について(2020年6月4日時点)」)

その後、2020年6月までの間に約180万の感染例が確認された上に、感染拡大を抑制する観点から感染者の自宅待機が推奨されました。労働者の多くが自宅待機を余儀なくされたため、経済の停滞を防ぐべく金利引き下げが進んだ、というのがこれまでの金利引き下げにおける経緯です。

しかし、新型コロナウイルスの流行が始まってから時間が経過したところで、FRBは量的緩和から金融引き締めへの方針転換を決定しました。FRBは2022年3月に0.25%、5月に0.5%、6月・7月・9月・11月にそれぞれ0.75%と利上げを繰り返しています。

FRBが利上げするのは0.25%ずつが通例であり、0.75%の利上げを4回繰り返すのは異例であると言えるでしょう。2022年11月時点で政策金利は3.75%~4.00%の幅であり、2022年以降の米国債市場利回り推移を見ると、FRBの決定とほぼリンクしています。

FRBがこのような利上げを繰り返しているのはアメリカ国内でインフレが続いていることが背景にあります。インフレの指標となる消費者物価指数の変化率推移は以下グラフのようになっています。

※アメリカ労働統計局「Graphics for Economic News Releases」を参照して筆者作成

上記のグラフは、12ヶ月前と比較して消費者物価指数が何%変化しているかを示す指標をグラフ化したものです。変化率がプラスになっていれば、12ヶ月前と比較して消費者物価が上昇した(=インフレが進んだ)ことになります。

コロナ禍以前の2019年末時点で消費者物価指数の変化率は2%台でした。最初に新型コロナウイルスが大きく流行した2020年春は0%台を保っていたものの、夏以降は少しずつインフレが進んでいます。

2021年3月に変化率が2%を超えるとその後はどんどんと物価の上昇が進み、コロナ禍以降FRBが最初に利上げを決めた2022年3月の時点では8.5%になりました。1年間で3倍以上の数値となっています。

ロシアのウクライナ侵攻が始まったのは2022年2月であり、ここから原料不足による物価高が世界中で明確に問題視されるようになりました。インフレ傾向が強かったところに、ロシア・ウクライナ間の戦争が追い打ちをかける形となっています。

利上げをいつまで続けるのか、今後の利上げ幅はこれまでと同様なのかなどのポイントについて、2022年11月時点でFRBは明言していません。FRBが結果的に急激な利上げになったという認識を持っている一方で、今後の動きについては流動的であると言えるでしょう。

2.アメリカの住宅ローン金利と不動産価格推移

2-1.アメリカの住宅ローン金利推移

アメリカでも日本と同様に、住宅ローンの金利が変化すると不動産価格が変化します。住宅ローン金利が下がると不動産価格が上がりやすくなり、反対に利上げが行われると価格の低下要因となり得ます。アメリカにおける2019年以降の住宅ローン金利は以下グラフのように推移しています。

※プライムローン(優良顧客向け住宅ローン)金利の推移
※Federal Reserve Bank「Selected Interest Rates (Daily) – H.15」を参照して筆者作成

アメリカの住宅ローン金利は2019年9月までは5%台を保っており、2019年10月~2020年2月まで4%台で推移しています。2020年3月以降は3%台になり、2020年4月から2022年2月までの間は3.25%から変化がありませんでした。

しかし、FRBが最初に利上げを決定した2022年3月に3.37%へ上昇し、その後2022年10月には6.25%まで上がっています。8ヶ月の間にアメリカの住宅ローン金利は3%上昇する結果となりました。FRBによる利上げはアメリカの住宅ローン金利にも影響を及ぼしていると言えるでしょう。

2-2.アメリカ不動産の価格推移

続いて、アメリカ不動産の価格推移を検証します。アメリカの不動産ポータルサイトであるRedfinによると、2019年以降アメリカ全体の不動産価格推移は以下グラフの通りです。

※Redfin「Data Center」を参照して筆者作成

長期的な推移で見ると、アメリカ不動産の価格は2020年5月まで30万ドル前後でした。6月に31万ドルを超えて以降は33万ドル前後まで上がり、その後段階的な値上がりを繰り返しています。

コロナ前の2019年末の時点では30万ドル弱でしたが、2022年9月の価格は40万3,000ドルとなっているため、アメリカ不動産は3年間で10万ドル前後値上がりしたことになります。

アメリカで住宅ローン金利が大きく下がったのは2020年3月~4月です。2月の金利は4.75%でしたが4月には3.25%となっており、2ヶ月で1.5%下がったことになります。住宅ローン金利の推移と不動産価格の推移とを照合すると、住宅ローン金利が下がった後に不動産の値上がりが始まったと言えるでしょう。

2022年9月までの推移で見ると、アメリカ不動産が最も高かったのは価格43万ドルに達した2022年5月です。これは2022年に入ってからFRBが利上げした2回目のタイミングであり、0.75%ずつの利上げを始める直前のタイミングとなっています。

利上げが繰り返されている6月以降は不動産価格も落ち着きを見せているため、0.75%ずつの利上げは少なからずアメリカ不動産の価格推移に影響を与えていると考えて良いでしょう。

2022年11月時点では、アメリカのインフレ率は依然として高い水準にあるため、今後FRBが更なる利上げに踏み切る可能性も否定できません。引き続き利上げが住宅ローン金利に影響するようであれば、今後アメリカ不動産が値下がりすることも考えられます。

3.アメリカ不動産投資における金利動向のとらえ方

アメリカ不動産投資を始める際は、このようなアメリカ国内の金利動向に注目しておくことも重要なポイントとなります。一方で、日本国内からアメリカ不動産を取得する際の為替や、国内ローンの金利推移についても注目しておくことが大切です。

アメリカ不動産を現金取得するのであれば、2022年11月時点の円安・ドル高傾向である状況で取得すると取得費が高くなります。家賃収入も米ドルであるため利回りへの影響は限定的ですが、今後為替が円高に振れると、家賃収入が米ドルであるため日本円ベースでの収益性が下がってしまうことになります。

一方、国内ローンを利用するのであれば、アメリカの金利が上がり物件価格の値下がりが起きたタイミングで、金利の安い国内ローンを活用することでイールドギャップ(金利と投資利回りの差)を生み出しやすくなります。このような複合的な視点でアメリカ不動産投資を始めるタイミングを模索されていくと良いでしょう。

例えば、アメリカ不動産の販売・管理・売却などで国内トップクラスの実績がある「オープンハウス」は、グループ会社のアイビーネットが融資面をバックアップしています。アイビーネットのアメリカ不動産担保ローンを利用すれば、アメリカ本土に加えてハワイ州オアフ島の不動産を購入する場合に資金を調達可能です。

まとめ

アメリカでは住宅ローンの金利がFRBの利上げに追随する形で変化しており、2022年10月時点の住宅ローン金利はコロナ禍以前よりも高くなっています。

住宅ローン金利とアメリカ不動産価格の推移を照合すると、住宅ローン金利が下がった後に不動産価格の顕著な値上がりが始まっており、FRBが大幅な利上げを繰り返し始めた後は、不動産価格の値上がりは落ち着き気味です。

FRBの利上げはアメリカのインフレ率上昇を抑制するために実施されており、インフレ率が下がらない限りは、今後も利上げが繰り返される可能性もあります。FRBが今後も利上げを繰り返すようであれば、アメリカ不動産が値下がりに転じることも考えられるでしょう。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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