2015年9月に国連でSDGsが採択されて以降、世界中でESGやサステナビリティの活動が活発化しています。家庭用品や工業化学品で知られる株式会社クレハでは、環境保全活動や環境・社会に配慮した製品およびサービスを通じ、環境課題や社会問題の解決に向けた取り組みを積極的に行っています。
そこでこの記事では、クレハのESGやサステナビリティに対する取り組み内容を詳細にご紹介します。クレハの株価動向や配当情報に関心ある方も参考にしてみてください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2022年10月27日の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。
目次
- クレハの特徴
- クレハの株価動向
- クレハのESG・サステナビリティの取り組み
3-1.環境保全および環境負荷低減の活動
3-2.環境課題や社会に貢献する製品づくり
3-3.ステークホルダーエンゲージメント - クレハの株主優待内容
- まとめ
1 クレハの特徴
株式会社クレハ(4023)は、家庭用品、工業化学品、機能樹脂、農薬、医薬品等の製造・販売を行う企業であり、身近な商品として家庭用品部門の「NEWクレラップ」などが有名です。
クレハグループの企業理念は、「人と自然を大切にします」「常に変革を行い成長し続けます」「価値ある商品を創出して、社会の発展に貢献します」などであり、中期経営計画である「kureha’s challenge 2022」を軸とし、事業拡大や経営基盤の強化を目標にしています。
クレハグループの事業は、建設関連事業、機能製品事業、樹脂製品事業、化学製品事業に大きく分けられます。例えば、建設関連事業では、建築、土木、住宅、プラント関連などの幅広い商品やサービスを提供しているほか、機能製品事業では、金属の代替材料として使用される「ポリフェニレンサルファイド (PPS)」や、リチウムイオン電池のバインダーとして使用される「ポリフッ化ビリニデン(PVDF)」など先端技術を支える高機能材を製造しており、2021年度時点で売上収益の最も大きい事業となっています。
また、機能製品事業に次いで売上収益の大きい樹脂製品事業では、NEWクレラップを中心に様々な食品包装材料を製造・販売しています。化学製品事業では、医薬品や農薬、工業薬品の製造・販売を行うなど、社会に貢献する多くの商品やサービスを提供しています。
2 クレハの株価動向
クレハは、景気動向に業績が左右されにくい生活用品や医薬品などを取り扱っていることから、ディフェンシブ銘柄に位置づけられています。
株価を長期的に見ると、浮き沈みを繰り返しながら緩やかに上昇しています。2020年はコロナショックにより経済活動が停滞し、原油価格の急落およびシェールオイルの生産量が減少したことで、油採掘関連機器向けの需要が落ち込んだものの、新型コロナウイルスによる巣ごもり需要で家庭用ラップのNEWクレラップの売上は堅調でした。また、需要拡大でリチウムイオン2次電池用バインダー用樹脂の先行き期待感から、株価は1年を通じて約19%上昇しています。
2021年は2020年で落ち込んだ車向け部材などが回復し、特に世界シェアの約4割を握るリチウムイオン2次電池用バインダー用樹脂が業績をけん引しました。売上収益は前年比+16.3%の1683億円、営業利益は前年比+16.1%の201億円、当期利益は前年比+4.9%の142億円となり、株価は1年を通じて約14%上昇しています。
2022年度は2021年度に続き石油採掘関連機器向けの需要の落ち込みをカバーする形で、家庭用品や車載用リチウムイオン電池向けの材料の需要が伸びる見通しです。2022年10月28日時点の株価は9,360円となっています。
3 クレハのESG・サステナビリティの取り組み
クレハは、事業活動を通じて地球環境の保全および環境課題や社会に貢献する製品づくりを行っています。例えば、2030年まで続く国際目標であるSDGs(持続可能な開発目標)の達成においては、「2:飢餓をゼロに」「3:すべての人に健康と福祉を」「6:安全な水とトイレを世界中に」「7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「9:産業と技術革新の基盤をつくろう」「12:つくる責任 つかう責任」「13:気候変動に具体的な対策を」に取り組んでいます。
以下、クレハのESGやサステナビリティの取り組みを詳しく見ていきましょう。
3-1 環境保全および環境負荷低減の活動
クレハでは、国内外の事業所において、環境マネジメントに関する国際規格「ISO 14001」の認証を取得し運用を行っているので、日々の生産活動で環境負荷物質の適正管理や廃棄物の排出削減など、環境保全および環境負荷低減に努めています。
環境保全および環境負荷低減の活動は大きく分けて5つあります。例えば、気候変動の緩和に対する取り組みです。クレハグループでは2030年までにCO2排出量を2013年度比20%削減の37.6万トンとする目標を掲げています(2013年度のクレハグループのCO2排出量は47.0万トン)。
CO2排出量削減目標に向けて、主力生産拠点のいわき事業所の石炭火力発電所の稼働抑制や主力電源の再エネ電力への切り替えなどを進めているほか、2021年10月に新設した「カーボンニュートラルプロジェクト」では、目標達成に向けた新たな施策検討や技術開発に取り組んでいます。
次に、大気汚染の防止です。いわき事業所はクレハにおける大気排出量の大半を占めており、大気汚染防止法で定められている規制値の遵守のほか、いわき市と大気汚染防止に関する公害防止協定を結ぶなど、大気排出量の厳格な上限を定めています。
また、水使用と水質汚濁防止にも努めています。いわき事業所はクレハにおける水使用の大半を占めています。いわき事業所は、水質汚濁防止法と福島県条例で定められた排出基準はもとより、1995年度比で化学的酸素要求量(COD)50%以上、生物化学的酸素要求量(BOD)80%以上の削減を継続して達成しています。
さらに、廃棄物とリサイクルに対する取り組みも行っています。クレハは、事業所から排出される廃棄物の発生抑制はもとより、再資源化を推進しています。具体的な取り組みとして、石炭火力発電所で副生される石炭灰をセグメントなどの原料として活用するなど、リサイクル率の向上を図っています。
このほか、クレハでは化学物質管理を徹底させています。事業活動において化学物質は必要不可欠な存在ですが、化学物質によっては地球環境や人体に悪影響を与える場合もあります。そこでクレハは、化学物質管理の法規制を遵守するほか、法に基づいた積極的な情報開示を行っています。
3-2 環境課題や社会に貢献する製品づくり
クレハグループは、環境および社会的課題に対して、化学を活用した製品・サービスを通じて持続可能な社会の発展に取り組んでいます。クレハが提供する環境課題や社会に貢献する製品は大きく分けて5つあります。
KFポリマー(ポリフッ化ビニリデン) | 電気自動車搭載用のリチウムイオン電池用バインダーとしてCO2排出削減に貢献できる素材です。各国政府が、ガソリンや軽油を使う自動車から環境に優しい電気自動車へのシフトを活発化させる中、クレハのKFポリマーでは、リチウムイオン電池用バインダーとして求められる様々な性能を十分に満たしていることから高い需要があります。 |
フォートロンKPS(ポリフェ二レンサルファイド) | 自動車部品の金属代替用途として使われており、自動車部品の金属より軽量なことから、自動車の軽量化に繋がり、燃料向上でCO2排出削減に貢献しています。 |
GASTAK | 工場排ガス中に含まれるVOC(揮発性有機化合物)の回収およびリサイクルを低エネルギーで実現できるので、多くの工場で使われており、CO2排出削減にも貢献しています。 |
NEWクレラップ | ポリ塩化ビニリデン(PVDC)製のラップで、食品の保存に適した素材が使われています。そのため、食品劣化による廃棄を削減し、SDGsの「12 つくる責任 つかう責任」に貢献しています。 |
クレハロンフィルム | 魚肉ソーセージやレトルトソーセージの包装に使用されており、NEWクレラップと同じポリ塩化ビニリデン(PVDC)が使われています。そのため、ソーセージの常温での輸送や長期保存が可能になることから、食品劣化による廃棄の削減に貢献しています。 |
3-3 ステークホルダーエンゲージメント
企業の環境・社会的課題の責任の要求が高まる中、クレハグループでは「株主・投資家」「お客様」「取引先(調達先、外注先)」「従業員」「社会一般」「地域社会」「行政機関・業界団体」などの重要なステークホルダーとのコミュニケーションを大切にし、社会の要請や懸念に配慮しながら、持続可能な社会の発展のために貢献しています。
そのため、以下の通り、ステークホルダーと定期的にコミュニケーションの機会を設け、社会の要請や懸念など双方向の理解を深めています。
ステークホルダー | エンゲージメントの目的 | コミュニケーション機会 | 頻度 |
---|---|---|---|
株主・投資家 | 投資判断のための財務・非財務に関する適時適切な情報の開示 | 定時株主総会 | 年1回 |
機関投資家、証券アナリスト対象説明会 | 年数回 | ||
個人投資家向けイベント | 年数回 | ||
お客様 | お客様のニーズを踏まえた、質の高い製品およびサービスの提供による顧客満足度の向上 | お客様相談窓口 | 臨時 |
顧客向けイベント | 年数回 | ||
展示会への参加 | 年数回 | ||
顧客との日々のコミュニケーション | 臨時 | ||
取引先(調達先、外注先) | 社会的責任に配慮した、公正なパートナーシップに基づく取引関係の構築 | 取引先監査(調達先、外注先) | 年1回 |
CSR調査 | 年1回 | ||
取引先とのコミュニケーション | 臨時 | ||
従業員 | 個人の能力を発揮できる、安全で安定した雇用環境の構築 | 労使協議、安全衛生委員会 | 月1回以上 |
実績評価面談、自己申告制度 | 年数回、隔年 | ||
日々のコミュニケーション | 臨時 | ||
社会一般 | 法令順守のためのコンプライアンス状況の共有や、社会の発展への貢献 | 事業所見学会、ボランティア活動 | 年数回 |
教育事業への協賛 | 年1回 | ||
地域社会 | 地域との信頼関係の構築に向けた、情報公開と地域社会づくりへの貢献 | CRS地域対話集会 | 年1回 |
文化、学術、スポーツ交流 | 年数回 | ||
事業所見学会 | 年数回 | ||
ボランティア活動 | 年数回 | ||
防災訓練 | 年数回 | ||
行政機関・業界団体 | 法・協定・自主基準の遵守のための、情報収集と各種活動への協力 | 法規制対応 | 臨時 |
協議会などへの参加 | 臨時 |
4 クレハの配当
クレハでは、配当額の決定に関して中長期的な成長の実現に向け、企業体質の強化を図るとともに将来の事業展開に備えた内部留保を充当し、継続的な配当を実施することを基本方針としています。
クレハの一株当たり配当金は以下の通りです。
会計基準 | IFRS | IFRS | IFRS | IFRS | IFRS |
項目 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
中間配当金(円) | 55 | 70 | 85 | 85 | 85 |
期末配当金(円) | 70 | 95 | 85 | 85 | 125 |
配当性向(%) | 24.6 | 24.3 | 24.5 | 24.6 | 28.9 |
2021年度の一株当たり期末配当金85円に対して、2022年度の一株当たり期末配当金は125円の増配となっており、配当利回りは2.14%となります。配当性向は、2013年3月期から横ばいが続いていましたが、2022年3月期に28.9%に上昇しています。
国内株式の平均配当利回りは2%程度なので、クレハの配当利回りは平均並みとなっています。しかし、業績は回復傾向にあることなどから2023年度の配当利回りは2.67%が予想されており、今後、配当目的での投資が増加する可能性もあります。
まとめ
クレハは、グループ全体で環境・社会的課題に取り組んでいます。特に、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みや、化学メーカーとしての強みを活かした製品づくりは、持続可能な社会の実現に大きく貢献しています。
また、ESG・サステナビリティ活動を行う企業として、環境・社会に貢献しながら、既存事業の拡大や技術開拓にも力を入れており、ESG投資に関心がある方に適した企業となっています。一方、投資は株価変動により元本を下回るリスクを伴うので、慎重に判断することが大切です。
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