米国株取引にかかる税金は?節税や確定申告の方法・注意点も

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米国株取引では、国内株式と同様に売却益と配当金の両方に税金が課されます。ただし、譲渡益課税は国内のみであるのに対して、配当課税は国内と米国の双方で課税されることになるため、確定申告の際に外国税額控除の適用を受けることができます。

このように米国株取引では、二重課税を避けるため、関連する税金の仕組みについてしっかりと把握しておくことが大切です。

この記事では米国株取引にかかる税金の種類、税金を抑える方法、確定申告の手順について詳しく紹介するので、米国株取引を行う方は参考にしてみください。

※この記事は2021年5月24日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。

目次

  1. 米国株取引とは
  2. 米国株取引にかかる税金の種類
    2-1.売却益に課される税金
    2-2.配当金に課される税金
  3. 米国株取引にかかる税金を抑える方法
    3-1.外国税額控除
    3-2.損益通算
    3-3.上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除
  4. 米国株取引の確定申告の方法
    4-1.確定申告の手順
    4-2.確定申告の注意点
  5. まとめ

1 米国株取引とは

米国株取引とは、名前の通り米国の市場に上場している株式の売買などを行う取引です。エクソン・モービルやジョンソン&ジョンソンなどが上場している世界最大規模のニューヨーク証券取引所(NYSE)と、アップルやアマゾンドットコムなどが上場するナスダック(NASDAQ)という2つの巨大な株式市場を中心に取引が行われています。

米国株取引の特徴は、世界的な有力企業が多く上場する市場で様々な株式を取引できる点で、リーマンショック以降も主要株価指数が高いパフォーマンスを続ける環境の中での取引が可能です。また、株主への利益還元が重視される米国市場では高配当の銘柄なども多く存在しているため、配当利回りでもチャンスのある市場です。

また、米国株は簡単に取引できるのもメリットの一つです。わざわざ現地の証券会社に口座を開設する必要はなく、日本のネット証券で手軽に取引することができます。日本で米国株の取引ができる主要なネット証券は以下の通りです。

証券会社 特徴
SBI証券 約4,000銘柄の米国株を取り扱っており、取引手数料(税込0.495%)は業界でも安値の水準となっています。
マネックス証券 ネット証券最多となる4,000銘柄超の米国株を取り扱っており、取引手数料(税込0.495%)は業界でも安値の水準です。
楽天証券 3,639銘柄を取り扱っており、取扱手数料(税込0.495%)はSBI証券やマネックス証券と並ぶ安値水準となっています。
DMM株 取扱銘柄数は930銘柄とあまり多くはありませんが、取引手数料は約定代金にかかわらず一律0円と業界最安値の水準です。

(2021年5月21日時点)

2 米国株取引にかかる税金の種類

日本に住んでいる個人投資家が米国株を取引する場合、日米租税条約が適用されます。ここでポイントになるのが米国と日本で課される売却益と配当金にかかる税金です。この2種類の税金について詳しく確認してみましょう。

項目 日本 米国
売却益にかかる税金 20.315%
(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)
非課税
配当金にかかる税金 20.315%
(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)
連邦個人所得税10%

2-1 売却益に課される税金

日本国内で国内の上場株式などを取引した場合、売却益(譲渡益)に対して20.315%(所得税15%および復興特別所得税0.315%と住民税5%の合算)の税金が課されます。日本に住んでいる投資家が米国株の取引によって売却益が生じた場合も同様で、売却益に対して20.315%の税金が課されるのが日本の所得税法上の規定です。

一方、取引を行う米国の連邦個人所得税では、株式の取引によって生じた売却益は非課税となっています。そのため、日本に住んでいる投資家が米国株の取引によって売買益を得た場合、日本の税金のみが課されることとなります。

2-2 配当金に課される税金

日本に住んでいる投資家が米国株の配当金を受け取った場合、売却益に対する税金とは異なり、日本と米国の双方で課税される点に注意が必要です。

日本の税法では、配当額に対して20.315%の税金(所得税と復興特別所得税、住民税の合算)が課されます。また、米国内でも連邦個人所得税として10%の税金が課されるため、配当金は単純計算すると30.315%もの税金が課されることとなります。

しかし、二重課税となると税負担が重くなり、投資抑制などにもつながります。そこで、2重課税を回避するために整備されたのが、後述する「外国税額控除」という制度です。

3 米国株取引にかかる税金を抑える方法

米国株取引の配当金に対しては2つの税金が課されるので、税負担を抑える外国税額控除の適用を受けることができます。詳しく見ていきましょう。

3-1 外国税額控除

外国税額控除とは、日本と外国の二重課税の防止を目的として導入されている制度です。所得税の確定申告書に外国税額控除の適用を記載することで、外国で課税された税金を日本の所得税から一定額控除できます。

ただし、外国で課税された税額を全て控除できるわけではなく、以下の算式で求めた金額がそれぞれの控除上限となります。

所得税の控除限度額=その年分の所得税額×(その年分の調整国外所得金額/その年分の所得総額)

また、外国で課された税金が所得税の控除限度額を超える場合、その超える金額を以下の算式で計算した金額を限度として、その年の復興特別所得税額から差し引くことができます。

復興特別所得税の控除限度額=その年分の復興特別所得税額×(その年分の調整国外所得金額/その年分の所得総額)

米国株取引で配当金が発生する場合、日米の二国間で二重課税の状態となることがあります。そのため、日本と米国の両方で源泉徴収された払い過ぎの所得税を取り戻す方法として、外国税額控除の適用を受けることが大切です。

3-2 損益通算

日本の所得税は給与所得や事業所得、一時所得などの様々な所得金額を合計して所得税額を計算する総合課税が原則です。しかし、上場株式等の譲渡所得など一部の所得については他の所得と合計せずに税金を計算しなければならず、これを申告分離課税と言います。

申告分離課税により、上場株式の売買などで発生した所得や損失は他の所得と併せて計算することができません。しかし、上場株式等の譲渡所得同士、また上場株式等の配当所得とは損益通算が可能となっており、日本や米国の上場株式、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)などの取引は合計して計算することも可能です。

これにより、例えば米国株の取引で30万円の利益が出ても、日本株に20万円の損失がある場合、30万円-20万円=10万円に対して課税されることになります。

この損益通算が必要になるケースとして考えられるのが、複数の特定口座などで取引を行っている場合です。特定口座とは、証券会社などに開設する取引口座で、証券会社側で1年間の譲渡損益を計算した「特定口座年間取引報告書」を作成してくれる口座です。

「源泉徴収あり」の特定口座の場合、証券会社で譲渡損益の計算と併せて20.315%の税金も源泉徴収してくれるため、確定申告しなくても納税等の手続きが全て完了します。「源泉徴収なし」の場合は証券会社が発行する「特定口座年間取引報告書」をもとに確定申告し、納税額が発生する場合は別途納税も必要です。

複数の特定口座で取引する場合、それぞれの特定口座で発生した譲渡損益を計算(損益通算)する作業が必要になります。なお、その際に一つでも損失の発生している口座があれば税金は少なくなる仕組みとなっているので、この場合は忘れずに確定申告を行うことが大切です。

3-3 上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除

上場株式等の取引で損失が発生した場合、上記の損益通算で控除しきれない損失が残るケースでは譲渡損失の繰越控除制度の適用が可能です。譲渡損失の繰越控除制度とは、その年で控除しきれなかった損失を翌年以降3年間にわたって繰り越せる制度で、翌年以降に発生した株式等の譲渡所得から繰越額を上限に控除できます。

例えば、1年目の米国株取引で30万円の損失が出て他に損益通算できる配当所得などがない場合、確定申告によって30万円の損失を繰り越すことが可能です。

その後、2年目に20万円の利益が出た場合、1年目で繰り越した30万円の損失から20万円を控除できるため、2年目の所得は20万円(利益)-20万円(繰越損失)=0という計算になります。控除しきれずに残った繰越損失10万円は3年目と4年目で利益が発生すれば同様に控除が可能です。

譲渡損失の繰越控除は米国株取引などで損失が出た場合にも適用できるので、継続的に取引を行う場合に活用したい制度となっています。

4 米国株取引の確定申告の方法

米国株取引を行う際、確定申告が必要となるのは主に以下の3つのケースです。

米国株の配当で連邦個人所得税が源泉徴収されている場合

この場合、基本的に米国と日本でそれぞれ源泉徴収される二重課税の状態となっているため、確定申告で外国税額控除を受ける必要があります。

特定口座(源泉徴収あり)の利用で、損失が発生した場合

米国株や国内株などの取引で複数の特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合、そのうちの1つでも損失の発生した口座があれば原則として確定申告が必要です。

本来、特定口座(源泉徴収あり)では株式等の取引にかかる税金を計算し、源泉徴収してくれる仕組みなので、確定申告は原則不要です。しかし、そのうちの1つの口座でも損失が発生している場合、確定申告で損益通算することによって他の特定口座で源泉徴収された税金が戻ってくる可能性があります。

特定口座(源泉徴収なし)または一般口座を利用して米国株取引を行う場合

これは米国株の取引に限りませんが、特定口座(源泉徴収なし)や一般口座を利用する場合、納税額の申告や納税が終わっていないため、確定申告が原則必要です。

4-1 確定申告の手順

米国株取引では主に外国税額控除と損益通算、譲渡損失の繰越控除という手続きが確定申告の際に必要になります。

まず、外国税額控除を受けるためには「外国税額控除に関する明細書(居住者用)」や外国所得税額が課されたことを証する書類などの添付が必要です。また、申告書には実際に控除する外国税額控除等の金額記載が必要になります。

損益通算した株式等の譲渡所得については、確定申告書に損益通算後の所得金額の記載が必要です。こちらは特定口座の場合、証券会社から送付される「特定口座年間取引報告書」(申告書への添付は不要)で計算することができます。

また、譲渡損失の繰越控除の適用を受けるためには、確定申告書の付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)の添付が必要です。繰り越される譲渡損失が残っている限り、翌年以降は取引がない年でも確定申告書と付表の提出が必要になります。

4-2 確定申告の注意点

確定申告書の作成はある程度の税務知識を必要とします。国税庁では確定申告の時期に全国各地に相談会場などを設けているため、心配な方はその場で作成方法などを細かく確認するようにしましょう。また、以下の国税庁の確定申告書作成コーナーでは細かい記載方法なども紹介されているため、必要に応じて参考にすることも大切です。

また、NISA口座で買い付けた米国株式の配当金は少額投資非課税制度によって日本の所得税と住民税が非課税になります。そのため、連邦個人所得税の10%が源泉徴収されていても二重課税にはならないため、外国税額控除を適用することができません。

まとめ

米国株取引の配当金については日本と米国で二重課税となるケースがあるため、確定申告の際に外国税額控除を受けることで、税金の還付を受けられる可能性もあります。また、損益通算や譲渡損失の繰越控除なども利用できるほか、「源泉徴収あり」の特定口座を利用することで外国税額控除以外の確定申告の手間を省くことも可能です。

米国株取引を行う際は、このように税金の種類や税負担を抑える方法を把握しながら、適切に運用することが大切です。

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