税制優遇を受けながら老後のための資金を積み立てられるiDeCoですが、毎月の掛金をどれくらいにすればいいのかよくわからない、という方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、これからiDeCoを始めることを検討している方や、既に運用中の方に向けて、iDeCoの毎月の掛金を決めるためのポイントについて紹介します。また、掛金の金額を変更するための手続きなどの手順についても解説しますので、参考にしてください。
目次
- iDeCoの掛金のルール
1-1.iDeCoの掛金の平均値 - iDeCoの掛金を決めるためのポイント
2-1.iDeCoの掛金の性質を理解すること
2-2.目標積立額から逆算して考えること
2-3.収入や家計のゆとり部分を資金に充てること - iDeCoの掛金の計算方法
3-1.iDeCoの掛金は定期的に見直す
3-2.iDeCoの掛金を変更する方法
3-3.iDeCoの掛金の拠出を停止する方法 - まとめ
1.iDeCoの掛金のルール
iDeCo(個人型確定拠出年金)では、掛金の上限が決まっており、働き方によって上限額が異なります。そのうえで、月額5,000円から拠出限度額の範囲内で、加入者が自由に設定することができます。
働き方による掛金の上限の違いは以下の通りです。
働き方 | 上限額 |
---|---|
自営業者・フリーランス・学生 | 月額68,000円(年間816,000円) |
勤務先に企業年金がない会社員 | 月額23,000円(年間276,000円) |
勤務先に企業型確定拠出年金がある会社員 | 月額20,000円(年間240,000円) |
確定給付年金のみに加入している会社員 公務員 確定給付年金と企業型確定拠出年金に加入している会社員 |
月額12,000円(年間144,000円) |
専業主婦・専業主婦など | 月額23,000円(年間276,000円) |
また、iDeCoの掛金は原則的に月々拠出することになっていますが、任意の月に1年分をまとめて拠出することもできます。これを年単位拠出といいます。
1-1.iDeCoの掛金の平均値
iDeCoサイトに掲載されている「iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入等の概況(2020年12月時点)」によると、iDeCo加入者の平均的な掛金の月額は以下のようになっています。
働き方 | 掛金の平均額 |
---|---|
自営業者・フリーランス・学生 | 月額27,322円 |
勤務先に企業年金がない会社員 | 月額16,203円 |
勤務先に企業型確定拠出年金がある会社員 | 月額10,745円 |
確定給付年金のみに加入している会社員 公務員 確定給付年金と企業型確定拠出年金に加入している会社員 |
月額10,919円 |
専業主婦・専業主婦など | 月額14,856円 |
※iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入等の概況(2020年12月時点)より
特徴として、自営業者やフリーランスなどの「第一号加入者」の平均額が高くなっていることが挙げられます。これらの職種では基本的に企業年金を受け取れず、自分の力で老後に備えなければならないからです。
また、1,000円から14,999円またはそれぞれの上限額に掛金額を設定している加入者が多いのも特徴といえます。
掛金額を低く設定しているのは、収入や家計の範囲内で負担が大きくならないような金額を設定していると推測できます。また、掛金額を上限に設定しているのは、老後に備えながら節税効果を大きくするためと考えることができます。
iDeCoでは毎月の掛金はすべて所得控除の対象となるほか、運用益も非課税となります。また、運用したお金を受け取る際も一部控除を受けることができます。特に掛金の所得控除によって、所得税や住民税の節税メリットが大きくなる人ほど、掛金を高めに設定する傾向にあるといえます。
2.iDeCoの掛金を決めるためのポイント
iDeCoの月々の掛金を決めるためのポイントとして、以下の点が挙げられます。
- iDeCoの掛金の性質を理解すること
- 目標積立額から逆算して考えること
- 収入や家計のゆとり部分を資金に充てること
それぞれ詳しく解説します。
2-1.iDeCoの掛金の性質を理解すること
iDeCoの掛金を決めるためには、掛金の性質を理解することが大切です。
特に、以下の点についてはしっかり押さえておきましょう。
- 掛金はその年の所得税・住民税の控除対象となる
- iDeCoでの運用には価格変動リスクがあること
- 積み立てた掛金は原則60歳まで引き出せないこと
iDeCoでは、年間の掛金の合計額が所得税・住民税の所得控除の対象となります。つまり、上限額に近い掛金額を設定すれば、それだけ節税メリットを受けられるということです。iDeCoの運用資金を年金として受け取るまで節税効果を長期間得られるため、掛金の設定金額が納税額に影響することになります。
また、iDeCoは掛金を投資信託など自分で選んだ金融商品で運用します。金融商品によっては価格変動リスクが発生するため、元本割れを起こす可能性もあります。資産運用が初めてでiDeCoに対するハードルの高さを感じている方は、まずは少額の掛金に設定するほうが良いでしょう。
さらに、iDeCoで積み立てたお金は原則60歳まで引き出せないというルールがあります。そのため、今後訪れるライフイベントなど、大きな出費が必要になるかどうかを良く考えて掛金を設定しなければなりません。
子どもの教育費や住宅ローンの返済、親の介護、勤務先の倒産など、さまざまな可能性を考え、家計の負担になりすぎないような掛金額を設定しましょう。また、万が一の場合に備えて、ある程度は自由に使えるお金を手元に残すことも必要です。急な出費に備えて生活費の6ヶ月から1年分程度の貯蓄を目安に考え、それまでは少額の掛金で運用し、貯蓄ができたら掛金を増やすというのも選択肢の一つです。
2-2.目標積立額から逆算して考えること
iDeCoを利用して積み立てたい目標額から逆算して掛金を考えることも大切です。同じ年利回りで運用できたとしても、掛金額が違うことで将来受け取れる金額には大きな差がつくからです。
例えば、運用利回り2%で30年間資産運用を行うと仮定して、掛金が10,000円の場合と20,000円の場合では、以下のような差が生まれます。
- 掛金月額10,000円:元本積立3,600,000円+運用益1,327,000円=4,927,000円
- 掛金月額20,000円:元本積立7,200,000円+運用益2,655,000円=9,855,000円
掛金額が高くなるほど、また運用期間が長くなるほど、この差は大きくなります。
まずは目標となる積立額を設定し、受け取りまでどれくらいの運用期間があるのかを考えたうえで掛金を計算するなど、その道筋を検討するのも1つの方法といえます。
2-3.収入や家計のゆとり部分を資金に充てること
iDeCoの掛金額を決める場合は、収入や家計の負担にならないようにすることも重要です。
掛金を高く設定するほど、将来に受け取れる金額は多くなります。ですが、iDeCoは老後資金を積み立てるための年金制度であることから、60歳までは原則引き出すことができません。そのため、収入や家計のゆとり部分を資金に充てるのが基本となります。
長期間コツコツ積み立てて運用すれば、掛金が少額でも将来的にはある程度まとまった資金となります。また、収入が増えた場合に掛金額を後から増額することも可能です。まずは上限の範囲内で、無理のない金額を設定しましょう。
3.iDeCoの掛金の計算方法
iDeCoの適正な掛金を算出するためには、まずは収入や家計のゆとり部分を求めましょう。
毎月の手取り収入から税金や社会保険料を差し引いて、可処分所得を求めます。そして可処分所得から家賃などの固定費、食費や交際費や衣服費などの消費支出を差し引きます。残った金額が貯蓄に回せるお金、つまり「ゆとり費」となります。あとは、ゆとり費の何割をiDeCoの掛金に充てるかを考えましょう。
何割を掛金に充てるのかは、加入者によって異なります。仕事の状況や節税メリット、老後まで掛金を引き出せないデメリットをどう捉えるかなど、自分の状況に合わせて検討してください。
なお家計簿で固定費や変動費を管理するのが面倒という場合は、マネーフォワードなどの家計簿アプリを利用すると便利です。
3-1.iDeCoの掛金は定期的に見直す
iDeCoでは原則として一度積み立てた掛金は60歳になるまで引き出すことはできませんが、年に1回掛金を変更することができます。
ライフステージや自身の状況は変化していくものですので、iDeCoの掛金は定期的に見直し、コンスタントに拠出できる金額を考えて対応していくことが大切です。
例えば、変更を考える状況としては以下のようなものが考えられます。
- 収入が少ないうちは少額の掛金にして、収入がアップしたら掛金を増やす
- 夫婦2人暮らしのうちは節税メリットのために掛金を高くし、住宅ローンや教育費などが必要になったら減額する
- 年収も年齢も高くなったら上限まで掛金を増やす
3-2.iDeCoの掛金を変更する方法
iDeCoの掛金額は毎年12月から11月の拠出期間において、年に1回のみ変更できます。
実際に変更する場合は、まずiDeCoで利用している金融機関に連絡をして以下の書類を取り寄せるか、WEBサイトからダウンロードします。
項目 | 書類 |
---|---|
加入者が掛金額を変更するとき(毎月定額拠出の場合) | 下記書類のいずれかが必要 ・加入者掛金額変更届(第1号被保険者用)付加保険料納付等に 関する届(K-009A) ・加入者掛金額変更届(第2号被保険者用)(K-009B) ・加入者掛金額変更届(第3号被保険者用)(K-009C) |
加入者が掛金額を変更するとき(年単位拠出の場合) | 下記書類のいずれかに加えて加入者月別掛金額登録・変更届(K-030)が必要 ・加入者掛金額変更届(第1号被保険者用)付加保険料納付等に 関する届(K-009A) ・加入者掛金額変更届(第2号被保険者用)(K-009B) ・加入者掛金額変更届(第3号被保険者用)(K-009C) |
あとは記入例をみながら必要事項を記載し、本人確認書類を同封して金融機関に送付します。金融機関から国民年金基金連合会に書類が送られ、審査に通過できれば、翌々月から掛金額が変更になります。
3-3.iDeCoの掛金の拠出を停止する方法
さまざまな事情によってiDeCoの掛金の拠出が難しくなった場合は、掛金拠出を一時的に停止することもできます。
掛金の拠出を停止する場合は、iDeCoで利用している金融機関から「加入者資格喪失届」を取り寄せて、必要事項を記入して返送します。拠出を停止している間は運用指図者となり、それまでに拠出した資産を運用していくことになります。
運用指図者が掛金の拠出を再開する場合は、「個人型年金加入届出書(K-001)」を金融機関に提出して、新たに加入者となる手続きが必要になります。
なお、掛金の拠出を停止した場合でも、これまで積み立てた資金を引き出すことはできません。また、所得控除を受けられなくなるなどのデメリットがあります。さらに、掛金の拠出を停止した後も、口座管理手数料など運営に関する費用が掛かり、それまでに積み立てた資産から差し引かれることになります。
運用益よりも手数料の方が大きければ、資産残高が目減りすることになりますので注意が必要です。
まとめ
今回は、iDeCoの毎月の掛金を計算する方法や、掛金の金額を変更するための手続き手順について解説しました。
iDeCoの掛金はできる限り多くしたほうが、節税メリットや老後の資産が多くなるというメリットがあります。ですが、原則60歳まで引き出せないことや、生活状況の変化も影響することから、掛金は慎重に設定する必要があります。
本記事を参考に自分に合った掛金額を見極め、老後のために備えていきましょう。これからiDeCoを始める方は、まずは少額から拠出を開始し、家計にゆとりが増えるに従って増額するなどでリスクを抑えながら資産形成を考えてみてはいかがでしょうか。
山本 将弘
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