インパクト指標に存在感。内閣、経団連、対応した民間サービスも

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2022年6月に入り、ESG(環境・社会・企業統治)投資において「インパクト指標」を重視する動きが強まっている。一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)は14日、「“インパクト指標”を活用し、パーパス起点の対話を促進する~企業と投資家によるサステイナブルな資本主義の実践~」と題した報告書を発表した。

これに先立つ7日、岸田内閣は「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」を閣議決定。「社会課題の解決に向けた取り組み」という項目で「社会的インパクト投資、共助社会づくり」を盛り込んでいる。これまで官の領域とされてきた社会課題の解決に、民間の力を大いに活用、資本主義のバージョンアップを図るというものだ。寄付文化やベンチャー・フィランソロピーの促進など社会的起業家の支援強化を挙げ、「従来のリスク、リターンに加えて「インパクト」を測定し、「課題解決」を資本主義におけるもう一つの評価尺度としていく必要がある」と主張している。インパクト指標を冠にした経団連の報告書は、政府方針への経済界の共振ともいえるだろう。

報告書の冒頭で、経団連はサステナブルな資本主義の実践に向けてSociety 5.0 for SDGsの実現を進めているという姿勢を明示。その一環として20 年3月、東京大学、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)との共同研究「ESG投資の進化、Society 5.0の実現、そしてSDGsへの達成へ」を公表。企業と投資家の双方が長期的な視点に立ち、革新的イノベーションの創出および投資を進めることで、社会の様々な課題解決と新たな成長の実現の両方が達成できると提言した。さらに、提言「企業と投資家による建設的対話に向けて」で「パーパス起点の対話」の重要性を指摘している。

しかし、従来の ESG投資における KPI(重要業績評価指標)について「企業がビジネスモデルの変革につながる長期目標/経営戦略で目指す市場の獲得との関係性がわかりにくく、事業/イノベーションを評価する指標と相違があったりする場合も多かった」と課題を指摘。「企業が期待するパーパスや長期目標/経営戦略につながる対話を投資家と行うためには、イノベーション投資を呼び込むための追加指標を検討する必要がある」として、ESG投資におけるKPIを一歩進めた指標としてのインパクト指標の意義を説く。

まず、インパクト指標を「事業や活動の結果として生じた、社会的・環境的な変化や効果を示す指標」と定義。例として、SDGs(持続可能な開発目標)の目標3である「すべての人に健康と福祉を」に関連した健康寿命や要介護者数、目標11の「住み続けられるまちづくりを」に関連した災害の人的被害数、資源効率などを挙げる。

さらに内容を「エッセンス編」と「実践編」に分け、エッセンス編では企業と投資家のサステナビリティに関する対話の現状と課題、およびインパクト指標の活用の可能性、企業側と投資家側のインパクト指標の具体的な活用例について紹介。実践編では、実践上の様々な課題とそれらへの対応策、レジリエンスとヘルスケアの2つの課題におけるインパクト指標の活用を掲示した。

報告書が発表された半月後の24日、無形資産のデータ解析・可視化サービスを提供するアスタミューゼ株式会社は、「事業会社向けインパクト評価サービス」を開始した。企業に対し、対象としたい社会課題、マテリアリティ、インパクト指標、中長期KPIの設定までを支援する。さらに、各企業がインパクトテーマとして設定しているSDGsの各項目にも対応する。

「インパクトという言葉は投資の世界で広まっているが、インパクト評価手法について統一されたものはまだなく、科学的な知見の蓄積が必要。さらに事業会社でインパクト評価に取り組んでいるケースはわずかだと考えている」と同社。「インパクト評価により客観的数値で測れるようになることで、実証実験中のイノベーションや、短期的には業績に直結しない取り組みについても評価が可能となる。それが企業価値として反映されることで、本来の実力を投資家にアピールすることができ、ひいては日本企業全体の競争力向上に繋がる」とサービスの意義をアピールしている。

【参照リリース】一般社団法人日本経済団体連合会「インパクト指標”を活用し、パーパス起点の対話を促進する

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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