アパート経営を行っている人の中には、まとまった現金を手に入れるため、他のアパートに買い換えるためなどの理由で、売却を検討している人もいると思います。
しかし、アパートの売却代金は全て自由に使えるわけではありません。アパートの売却には費用や税金がかかり、それらを引いた残額しか利用できないため、どのような費用や税金がかかるのか事前に把握しておくことが重要です。
この記事では、アパート売却時にかかる費用と税金、計算方法と控除を解説します。
※記事内の税金・税率などは2020年5月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁などのサイトなどでご確認下さい。
目次
- アパート売却時にかかる6つの費用と税金
1-1.印紙税
1-2.登録免許税
1-3.仲介手数料
1-4.譲渡所得税
1-5.消費税
1-6.立ち退き料 - 特定事業用資産の買換え特例制度を利用する
- まとめ
1.アパート売却時にかかる6つの費用と税金
アパート経営における出口戦略は様々です。出口戦略には、修繕を繰り返しながらアパート経営を続ける、建て直してアパート経営を続ける、売却して現金化する、買い換えるなどの方法が挙げられます。
アパートを売却して現金化する場合、アパート売却には費用や税金がかかるため売却代金を全て自由に使うことができるわけではないので注意が必要です。そのため、上記の出口戦略を選ぶ場合は、どのような費用や税金がかかるのかを知っておく必要があります。
アパートの売却にかかる主な費用や税金は以下の6つです。
- 印紙税
- 登録免許税
- 仲介手数料
- 譲渡所得税
- 消費税
- 立ち退き料
それぞれの費用と税金について詳しく見ていきましょう。
1-1.印紙税
アパートを売却する際は、買い手と売り手が売買契約を締結します。売買契約の締結では、売買契約書に署名捺印を行いますが、売買契約書には印紙税と呼ばれる税金が課されます。印紙税の税額は以下の通りです。
- 500万円超1,000万円以下:1万円(5,000円)
- 1,000万円超5,000万円以下:2万円(1万円)
- 5,000万円超1億円以下:6万円(3万円)
- 1億円超5億円以下:10万円(6万円)
※()内は軽減税率適用時の印紙税
1-2.登録免許税
登録免許税とは、アパートの売却の際に必要な登記にかかる税金です。アパートの売却では、所有者が売り手から買い手に移行します。その所有権の移行を証明するために所有権移転登記を行わなくてはなりません。
アパートの購入時にローンを契約すると、金融機関は滞納して残債を回収できない場合に備えて、アパートを売却できるように抵当権を設定します。金融機関は債務者の返済が滞ってしまった場合、抵当権によってアパートを売却し、残債を回収することが可能です。
アパートを売却する際は、この抵当権を解除しなくてはならないため、抵当権の抹消登記を行います。登記費用はどちらが負担するという決まりはありませんが、取引慣例上は所有権移転登記を買い手、抵当権抹消登記を売り手が負担することが多くなっています。
抵当権抹消登記は1つの不動産につき1,000円です。アパートは土地と建物の2つなので2,000円かかりますが、司法書士に登記を依頼する際は報酬を含めて1~2万円かかるので覚えておきましょう。
1-3.仲介手数料
仲介手数料とは、アパートを売却するにあたって、不動産会社に仲介を依頼して売買契約が成立した場合に支払う報酬です。仲介手数料は、売買契約の金額ごとに上限が以下のように決まっています。
- 200万円以下:5%以内+消費税
- 200万円超400万円以下:4%以内+消費税
- 400万円超:3%以内+消費税
売買契約の金額が400万円を超える場合は、「(売却価格×3%+6万円)+消費税」という速算式で仲介手数料を算出できます。
この仲介手数料の割合はあくまでも上限なので、仲介する不動産会社へ交渉し、減額することが可能です。ただし、仲介業者には広告費、人件費、物件調査費などの費用が発生しているため、強引な交渉は控えた方が良いでしょう。
物件査定が想定よりも低く仲介手数料を払う余裕がない場合には、いきなり仲介手数料の値下げ交渉を進めるのではなく、まずは「出来るだけ高く売却する」戦略を検討することが大切です。
アパートの査定を1社だけに依頼するのではなく、すまいValueやリガイドなどの不動産一括査定サイトなどを活用し、より高く売却を進められる不動産会社をあらためて探すことも検討しましょう。
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1-4.譲渡所得税
譲渡所得税とは、アパートの売却で利益が得られた場合に課される税金です。譲渡所得税の税率は以下のように建物の所有期間によって異なります。
- 短期譲渡所得:所得税30%+住民税9%+復興特別所得税0.63%=39.63%
- 長期譲渡所得:所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%=20.315%
売却代金から購入代金(経年劣化による減価償却費を除く)と売買にかかった費用を引いてプラスになった場合、上記の譲渡所得税が課されます。
建物の所有期間は、売却した日の属する1月1日が基準です。暦上5年を経過していても1月1日時点では4年だった場合は、40%弱の譲渡所得税を課されることになるので注意しましょう。
1-5.消費税
土地の売却代金には消費税が課されず、建物の売却代金のみ消費税が課されます。また、売却するのが個人で消費税の課税事業者ではない場合には消費税が課されません。
消費税が課されるのは、建物の売却代金、課税事業者が行った売却のみに限られている点に注意しましょう。
1-6.立ち退き料
立ち退き料は必ず発生する費用ではありません。賃貸用として売却する場合には入居者が退去する必要はありませんが、アパートを解体して更地として売却する場合には入居者が退去しなければならないため、立ち退き料を支払う必要があります。
立ち退き料はいくらという規定がありませんが、新しい住居を確保する際にかかる敷金や礼金、保証金、仲介手数料、引越費用などを負担するのが一般的です。1部屋あたり賃料の半年分の費用がかかると想定しておくと良いでしょう。
2.特定事業用資産の買換え特例制度を利用する
居住用の不動産を売却する場合は、条件を満たすことで、譲渡所得税に対して3,000万円特別控除や軽減税率の特例を適用できます。しかし、賃貸用の不動産を売却する場合には、これらの特例を適用できません。
アパートの売却では、特定事業用資産の買換え特例制度を適用が受けられる可能性があります。(国税庁「事業用の資産を買い換えたときの特例」を参照)
特定事業用資産の買換え特例とは、事業用の不動産を売却し、一定期間内に事業の不動産を購入した場合、譲渡益の80%を買換えた不動産の売却まで課税を繰り延べることができる特例です。
ただし、譲渡益の80%が非課税というわけではなく、課税を繰り延べるという点には注意しましょう。
まとめ
アパートの売却では、印紙税や譲渡所得税などの各種税金、仲介手数料や立ち退き料などの費用がかかります。これらの税金や費用をアパートの売却代金から引いた残りしか自由に使うことができません。
もし、アパートの買換えを予定している場合は、資金不足に陥る可能性もあるため、事前にどのくらいの税金や費用がかかるのか理解しておくことが重要です。
この記事は、アパート売却時にかかる費用と税金、計算方法や控除についてまとめています。賃貸用不動産の売却では、居住用不動産の売却のような控除を受けられないので注意しましょう。
矢野翔一
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