すまい給付金は住宅購入において消費税の負担を軽減する制度で、住宅ローン控除制度による負担軽減を十分に受けられない世帯を対象に最大50万円まで給付を行います。
すまい給付金を受け取るためには、申し込む方の収入や住宅ローンに関して一定の要件を満たす必要があります。住宅に関しても定められた床面積や品質をクリアし、申請書と共に証明できる確認書類の準備をしなければなりません。
本記事では、すまい給付金制度の概要と要件、適用までの手順を解説していきます。すまい給付金制度を活用したい方はぜひご参考ください。
※この記事は2021年5月時点の情報に基づき執筆しています。最新情報は国土交通省のウェブサイト「すまい給付金」を参照し、ご自身にてご確認頂きますようお願い致します。
目次
- すまい給付金の概要
1-1.すまい給付金の対象となる住宅・実施期間 - すまい給付金を適用する条件
2-1.申込者・住宅ローンに関する要件
2-2.住宅に関する要件 - 住み替えで「すまい給付金」を適用する手順
3-1.購入した住宅がすまい給付金の要件に該当するか調べる
3-2.申請書類・確認書類を準備する
3-3.申請を行う - まとめ
1.すまい給付金の概要
すまい給付金は、住宅購入時における消費税の引き上げによる負担を緩和する目的で創設された制度です。
住宅購入の負担を軽減する制度としては住宅ローン控除がありますが、すまい給付金は住宅ローン控除の効果が十分に及ばない収入層に対して負担を軽減する制度です。そのため収入が一定額の方が給付の対象となっており、収入によって給付額が変わる仕組みとなっています。
消費税率8%時に住宅を購入した場合には、収入額が510万円以下の方を対象に最大30万円、消費税率10%時に住宅を購入した方は収入額が775万円以下の方を対象に最大50万円を給付します。
なお上記の収入はあくまでモデルケースであり、実際には「都道府県民税の所得割額」が判断基準となります。(※すまい給付金「収入について」を参照)
1-1.すまい給付金の対象となる住宅・実施期間
すまい給付金制度は、消費税が8%に引き上げられた2014年4月以降に引渡された住宅から、2021年12月31日までに引渡され入居が完了している、消費税8%(2014年4月以降)又は10%(2019年10月以降)で購入した住宅を対象に実施しています。
なお2021年1月に、すまい給付金制度の改正が閣議決定し、期間を下記の通り延長することになりました。
売買契約期間
- 新築の注文住宅:2020年10月1日~2021年9月30日
- 分譲住宅・既存住宅の取得:2020年12月1日~2021年11月30日
引渡し・入居期限
- 2021年12月31日~2022年12月31日
上記の期間内に契約・引き渡しされた住宅は床面積が40㎡に緩和される措置もあります。
2.すまい給付金を適用する条件
すまい給付金を受け取るためには、下記2点の要件を満たす必要があります。
- 申込者や住宅ローンに関する要件
- 住宅に関する要件
2-1.申込者・住宅ローンに関する要件
- 不動産登記上の持分保有者である
- 住民票によって取得した住宅への居住が確認できる
- 収入※が一定額以下である
- ローンを利用しない場合には年齢が50歳以上である(消費税10%で購入時は収入が一定額以下であることが要件に加わる)
- 自己居住用の住宅ローンである
- 住宅ローンの返済期間が5年以上である
- 金融機関からの借り入れである(親族・知人からの借り入れは不可)
※収入は自治体が発行する、課税証明書に記載される都道府県民税の所得割額で確認します。
2-2.住宅に関する要件
すまい給付金は、消費税引き上げの負担緩和と共に、「良質な住宅環境を促進させる」という目的を併せ持つ制度ですので、住宅に関しても一定の要件を満たす必要があります。新築住宅と中古住宅、住宅ローンを利用する場合と利用しない場合で要件が異なります。
新築住宅の場合
- これまで居住用に利用したことが無く、工事完了から1年以内の住宅
- 床面積50㎡以上※2020年10月1日~2021年9月30日に契約した場合、40㎡以上も可
- 施工中等に現場検査をうけ一定の品質が確認される以下の1~3のいずれかに該当する
- 住宅瑕疵担保責任保険に加入している(任意保険でも可)
- 建設住宅性能表示を利用している
- 住宅瑕疵担保責任保険法人により保険と同等の検査が実施されている
中古住宅の場合
- 売買契約書における売主が宅地建物取引業者である(個人間の取引は不可)
- 床面積50㎡以上※2020年12月1日~2021年11月30日に契約した場合、40㎡以上も可
- 現場検査をうけ現行の耐震基準・一定の品質が確認された以下の1~3のいずれかに該当する
- 既存住宅売買瑕疵保険へ加入している
- 既存住宅性能表示制度を利用している(耐震等級1以上)
- 建設後10年以内であって、住宅瑕疵担保責任保険に加入している又は建設住宅性能表示を利用している
物件の取得に住宅ローンを利用していない場合
- 利用している場合の要件に加え、取得者の年齢が50歳以上である※消費税10%で購入時は収入が一定額以下であることが要件に加わる
- 新築物件の場合、次の1~4のいずれかに該当する
- 耐震性に優れた住宅(耐震等級2以上の住宅または免震建築物)
- 省エネルギー性に優れた住宅(一次エネルギー消費量等級4以上または断熱等性能等級4)
- バリアフリー性に優れた住宅(高齢者等配慮対策等級3以上)
- 耐久性・可変性に優れた住宅(劣化対策等級3かつ維持管理対策等級2等)
3.住み替えで「すまい給付金」を適用する手順
住み替えですまい給付金を申請する手順は以下の通りになります。
- 購入した住宅がすまい給付金の要件に該当するか調べる
- 申請書類・確認書類を準備する
- 申請を行う
3-1.購入した住宅がすまい給付金の要件に該当するか調べる
上記の要件を参考に、購入した住宅がすまい給付金制度の対象となるかを調べましょう。
国土交通省の「すまい給付金シミュレーション」で所定の項目を入力することにより、対象の可否やおおよその金額を把握する事が出来ます。
シミュレーション結果は、給付の有無や金額を確定するものではありません。正確な給付額は、指定された年度の個人住民税の課税証明書に記載される、都道府県住民税の所得割額により決定します。
申請は住宅の取得者が行いますが、住宅事業者等により手続きを代行してもらうことも可能です。なお申請の期限は住宅の引渡しを受けてから1年3ヶ月以内となります。
3-2.申請書類・確認書類を準備する
要件に該当する場合には申請のための書類を準備します。申請において新築・中古住宅共に必要となる書類は下記の5点です。
- 申請書(すまい給付金「申請書類のダウンロード」)
- 住民票の写し
- 不動産登記における建物の登記事項証明書・謄本
- 個人住民税の課税証明書
- 給付金の振込先口座が確認できる書類(通帳などのコピー)
※⑤以外は原本を提出
新築住宅の追加書類
工事請負契約書又は不動産売買契約書振込先口座が確認できる書類と施工中等の検査実施が確認できる書類(住宅瑕疵担保責任保険の付保証明書、建設住宅性能評価書、住宅瑕疵担保責任保険法人検査実施確認書のいずれか)となります。
中古住宅の追加書類
中古住宅は共通の書類に加え、不動産売買契約書(コピー可)、中古住宅販売証明書の原本が必要となります。また、売買時等の検査実施が確認できる書類として次の4点のいずれかの書類のコピーを提出します。
- 既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書
- 既存住宅性能評価書(耐震等級1以上のみ)
- 住宅瑕疵担保責任保険の付保証明書
- 建設住宅性能評価書
住宅ローンを利用する場合の追加書類
住宅ローンを利用する際には住宅ローンの金銭消費貸借契約書も添付します。
住宅ローンを利用しない場合の追加書類
住宅ローンを利用しない方は一定の耐震基準や断熱性能などを有している証明書として以下の6点のいずれかの書類のコピーを提出します。
- フラット35S適合証明書
- 現金取得者向け新築対象住宅証明書
- 長期優良住宅建築等計画認定通知書
- 設計住宅性能評価書又は建設住宅性能評価書
- 低炭素建築物新築等計画認定通知書
- BELS評価書
3-3.申請を行う
すまい給付金の申請は、窓口又は郵送で行う事ができます。窓口では定められた不動産会社や法人から選択し事前に電話した上で書類を持参します。
なお、2021年5月時点では新型コロナ感染症の感染拡大の影響により、一部の申請窓口について、休業や業務の縮小、予約受付の停止を行っている場合があります。持参する前に電話で受付の状況を確認すると良いでしょう。
郵送の場合はすまい給付金サイトで指定された郵送先の住所に申請書類・確認書類などを封筒に入れ、裏に差し出し人の住所・氏名を記入しポストに投函します。なお代理で受領を行う場合は、郵送での申請はできません。
書類は折り曲げ厳禁のため、書類を折り曲げずに入るサイズの封筒に入れ、宛先の左側に赤字で「折り曲げ厳禁」と記入しておきましょう。
郵送料は申請者負担です。申請書類には個人情報が多く含まれるため、配送状況や到着の確認ができる書留やレターパックなどが推奨されています。
まとめ
すまい給付金制度の概要と要件、申請の手順をお伝えしてきました。すまい給付金は消費税の負担を軽減するための制度ですので、引き上げられた後の消費税率で住宅を購入し、一定の期間内に引き渡された住宅であることが前提条件となります。
良質な住宅環境の確保のため、耐震基準や品質も一定の基準を満たす必要があり、要件の確認や手続きが煩雑となってしまう傾向があります。
この記事を参考に、住宅が要件に当てはまるか、準備すべき書類などを確認し手続きを進めていきましょう。
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田中 あさみ
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