新型コロナウイルスの感染拡大は日本を含む世界中の国々で経済的な影響を与えました。
新型コロナウイルスの問題が顕在化した2020年2月頃から2022年11月まで、海外では不動産市場がどのように推移しているのか長期金利の動向も交えて検証します。
目次
- コロナ禍における海外各国の不動産市場とアフターコロナの動向
1-1.アメリカ不動産投資
1-2.タイ不動産投資
1-3.フィリピン不動産投資 - まとめ
1.コロナ禍における海外各国の不動産市場
1-1.アメリカ不動産投資
アメリカの不動産ポータルサイトであるRedfinの「Housing Market Data」によると、アメリカの住宅価格は2020年2月から上昇を始めており、2022年5月までは上昇と横ばいを繰り返しながら右肩上がりで上昇してきました。しかし、2022年6月以降は下降局面に入っており、2022年10月の住宅価格は398,000ドルとなっています。
アメリカの住宅価格中央値は長期間300,000ドルを超えていませんでしたが、コロナ禍においては早々に300,000ドルを突破しており、2022年11月までの時点では最高431,000ドルに到達しています。
新型コロナウイルスの感染拡大によって経済停滞が起きている中、アメリカで住宅価格の上昇が起きた原因は長期金利が引き下げられたことが要因です。アメリカでは2020年1月に最初のコロナ感染者が確認されると、その後経済活動の停滞を防ぐ目的で長期金利が0%に近い水準まで引き下げられました。
長期金利の引き下げは住宅ローン金利の低下につながり、それまでのアメリカでは異例とも言える低金利状態となりました。住宅ローン金利の引き下げは住宅需要の拡大につながったため、住宅価格の値上がりが起きています。
しかし、アメリカの中央銀行にあたるFRBは、2022年の春以降金融緩和を終了して利上げを繰り返しています。利上げは2022年3月から始まっており、6月以降は数ヶ月間で異例とも言える上げ幅の利上げが行われています。
長期金利の利上げに呼応する形で住宅価格も下がっているため、12月以降も値下がり傾向が続く可能性はあるでしょう。
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ハワイ不動産投資
アメリカの中でもハワイに限定してコロナ禍における不動産の値動きを検証します。Honolulu Board of REALTORSによると、オアフ島におけるコンドミニアム価格の推移は以下グラフの通りです。
2019年12月以降の推移を見ると、全体的には緩やかな右肩上がりで推移していることがわかります。2020年中は450,000ドル前後が最高値で値上がりと値下がりを繰り返していましたが、2021年の夏に入ってからは値上がり傾向が顕著です。
アメリカ全土の値動きと同じく、2022年に入ってFRBによる利上げが行われた後は一旦値下がりしたものの、2022年秋に再度値上がりしているのがアメリカ全土とホノルルとの違いです。
ホノルルは世界的に有名なリゾートエリアなので、海外からの投資マネーも特に多く不動産市場へ流入しています。アメリカ全土では実需の不動産需要が大きく影響する一方で、ホノルルでは投資の不動産需要も割合的に多い点が値動きの違いに影響していると考えられるでしょう。
ホノルルはアメリカ全土の値動きと違い、実需目的ではなくホテルやコンドミニアムなどの不動産需要が豊富なエリアです。ホノルルでは利上げの影響を受けつつも、2022年冬以降も値上がりする可能性があると考えられます。
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1-2.タイ不動産投資
つづいてタイの不動産価格推移を検証します。Bank of Thailandの統計によると、バンコクと首都圏におけるコンドミニアム価格指数推移は以下グラフの通りです。
2019年12月の価格指数は170.7でしたが、最新の統計である2022年9月の価格指数は181.6となっています。値上がりしている点はタイもアメリカやハワイと同様です。しかし、上がり幅は比較的小さくなっています。
タイでも日本やアメリカと同様にコロナの影響で長期金利が下げられました。2020年5月にタイ史上最低水準の0.5%まで利下げされています。その後は2022年8月に0.75%、9月には1%まで利上げされています。
タイでは利下げがあったにもかかわらず、アメリカと違って2020年の秋に不動産の大幅な値下がりが起きました。この原因は市場に流通している不動産の違いがあると考えられます。
アメリカの不動産市場に流通しているのは大半が中古住宅です。一方タイでは中古住宅がアメリカほど流通しておらず、市場の多くを新築住宅が占めています。
新型コロナウイルスの流行によって外出が制限された結果、建設業などに影響があったのは日本も海外も同じです。タイでもコンドミニアムの新築工事などが遅れた結果、1度値下がりが起きたものと考えられます。
タイの住宅価格は2020年の秋を底としてそれ以降は値上がりしているものの、2022年は比較的横ばいです。また、アメリカと比較すればペースは緩やかですが、今後利上げが続くことも考えられます。今後、何かしらの外的な要因に影響されてタイ不動産は値下がりする可能性もあるでしょう。
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1-3.フィリピン不動産投資
つづいてフィリピンの不動産価格推移について検証します。BANGKO SENTRAL NG PILIPINAS の統計によると、フィリピン首都圏におけるコンドミニアム価格指数の推移は以下グラフの通りです。
2022年第2四半期までの時点では、フィリピンでもタイと同じくコロナ禍以前と比較して値上がりはしているものの、上がり幅はそれほど大きくありません。また、2020年に1度値下がりしてからその後緩やかに上昇しているという値動きは、タイの首都圏と同じような動き方であると言えるでしょう。
フィリピンもタイと同様に不動産市場の多くを新築不動産が占めている国です。2020年の第2四半期から第3四半期にかけての大幅な値下がりには、コロナによる外出制限などの影響があったものと考えられます。
なお、コロナ以前のフィリピンでは人口増加による住宅増を背景に不動産の値上がりは起きていたものの、その勢いは比較的緩やかでした。2020年のような大幅な値上がりと値下がりが起きたのは、フィリピンの中央銀行が発表している統計では初めてのことです。
2021年以降には極端な値動きがないものの、世界的な経済不安が起きた際はより低リスクの投資先へ資金が集中しやすいリスクオフの傾向にあり、フィリピンのような新興国不動産の価格低下を一時的に誘引したと考えられます。
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まとめ
ハワイを含むアメリカ・タイ・フィリピンでそれぞれコロナ前後の不動産の値動きを検証しましたが、先進国に分類されるアメリカやハワイでは、利下げによる影響が不動産の値動きに大きく表れていることがわかります。
また、アメリカでは急速な利上げが不動産市場の過熱にブレーキをかけていますが、ハワイはその限りではありません。
一方、タイやフィリピンでも長期的な値上がり傾向は見受けられるものの、アメリカと比較するとインパクトは小さくなっています。特にフィリピンはリスクオフの場面で市場の不安定を感じさせる価格推移にも見られ、今後も外的な要因によって大きな値動きが起こる可能性に注意が必要と言えます。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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