投資信託は、投資初心者でも始めやすい金融商品として人気が高まっています。これから投資信託への投資を始める方も、すでに始めている方も、投資信託にかかる税金は気になるのではないでしょうか。そこで、今回は投資信託にかかる税金や節税のポイントなどを解説します。
※2022年2月9日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。また税務上の判断については、最寄りの税務署または税理士等にご確認ください。
目次
- 投信信託にかかる税金の種類
1-1.所得税
1-2.住民税 - 投資信託の収益と税金
2-1.譲渡益
2-2.普通分配金
2-3.特別分配金(元本払戻金) - 口座の種類と税制
3-1.源泉徴収ありの特定口座
3-2.源泉徴収なしの特定口座
3-3.一般口座 - 節税のコツ
4-1.NISAを活用する
4-2.iDeCoを活用する
4-3.配当控除を活用する
4-4.損益通算を活用する - まとめ
1 投信信託にかかる税金の種類
投資信託の利益は、譲渡益(売却益)と分配金の2種類です。これらには、それぞれ所得税(15.315%)と住民税(5%)の合計20.315%が課せられます。
1-1 所得税
投資信託の譲渡益や分配金には、それぞれ所得税15.315%(所得税:15%、復興特別所得税:0.315%)が課せられます。
投資信託の分配金は、普通分配金と特別分配金の2種類です。このうち、所得税は普通分配金のみ課税され、特別分配金には課税されません。特別分配金については、後ほど解説します。
1-2 住民税
住民税は、譲渡益や普通分配金にそれぞれ5%課せられます。住民税についても、特別分配金には課税されません。
2 投資信託の利益と税金
投資信託の利益は、売却した時の利益である譲渡益と分配金の2つです。譲渡益は、売却価額から購入価格と諸費用を差し引いた金額、分配金は株の配当金に相当します。分配金には、普通分配金と特別分配金の2種類があります。
2-1 譲渡益
譲渡益は、売却価額から購入価格と諸費用を差し引いた金額のことです。投資信託の価格も株価同様に日々変動します。購入価格を上回る水準で売却すると、利益を確定することができます。この利益から購入や売却(解約)にかかった費用を差し引いた金額が課税対象となります。
2-2 普通分配金
投資信託の普通分配金とは、投資信託の利益の一部が投資家に還元されるものです。投資信託は株式や債券等で運用しているため、ファンドは保有株から配当金、債券からは利息や売却益を得ています。これら利益の一部が投資信託の決算時に、投資家へ支払われます。分配金の金額は、運用成績次第なので、毎回同じ金額が支払われるというものではありません。
2-3 特別分配金(元本払戻金)
特別分配金は元本払戻金とも言い、文字通り元本を取り崩して払われる分配金を指します。利益ではないので課税の対象ではありません。特別分配金が支払われるファンドの多くは、分配金の支払い頻度が高い毎月分配型の銘柄です。
受け取った分配金が特別分配金(元本払戻金)かどうかは、運用報告書で確認できます。
3 口座の種類と税制
投資信託は、証券会社のほか、銀行や郵便局でも始めることができます。普段から利用している銀行や郵便局等で始める際は、投資信託用の口座を開設する必要があります。
口座の種類は、証券会社と同様に、源泉徴収ありの特定口座、源泉徴収なしの特定口座、一般口座の3つです。それぞれにメリットとデメリットがあります。各口座について見ていきましょう。
3-1 源泉徴収ありの特定口座
投資信託の売却益は、確定申告をする必要がありますが、源泉徴収ありの特定口座は、その必要がありません。金融機関が収支を計算して納税するためです。
便利な口座ですが、デメリットもあります。投資信託等の譲渡益や給与所得以外の所得の合計が20万円以下の場合でも源泉徴収の対象となってしまう点です。年収2,000万円以下の会社員や、年金収入額が年400万円以下の方は雑所得(株式等の譲渡益等)が20万円以下の場合、所得税については確定申告する必要がない場合があります(住民税の申告は必要)。
3-2 源泉徴収なしの特定口座
年間の投資信託や株式等の譲渡益が20万円を越えると確定申告が必要になります。源泉徴収なしの特定口座では、金融機関が発行する特定口座年間取引報告書により簡単に確定申告ができます。年間の収益が20万円を超える見通しがない場合、源泉徴収なしの特定口座を選択すると節税も可能です。
3-3 一般口座
一般口座は特定口座では管理できない先物やオプション等の口座です。確定申告が必要です。特定口座のような年間取引報告書は証券会社から発行されないため、自身で書類を作成し確定申告する必要があります。
4 節税のコツ
節税のコツとしては、NISAやiDeCoを活用する方法や、配当控除や損益通算を活用する方法があります。それぞれ見ていきましょう。
4-1 NISAを活用する
節税にはNISAを活用しましょう。NISAには一般NISAとつみたてNISAの2種類があります。株式や投資信託の特定銘柄に投資する場合には一般NISAが、投資信託を長期間にわたり積み立てる場合は、つみたてNISAが向いています。
一般NISAについては、年間120万円以内で購入した投資信託・株等から得た収益が5年間非課税になります。非課税投資金額は最大5年で600万円です。
つみたてNISAは、20年にわたり年間最大40万円(月33,333円)が非課税枠です。分配金や売却益はすべて非課税対象です。そのため、つみたてNISAの場合は普通分配金を全額再投資可能です。
NISA以外の口座では、投資信託を積み立てて普通分配金を複利運用する場合、普通分配金には20.315%課税され、残額を複利運用することになります。この点において、運用期間が長ければ長いほど、つみたてNISAは有利な運用方法となり得るのです。
NISA口座は一人1口座のため、一般NISAか、つみたてNISAのどちらかを選択します。一般NISAとつみたてNISAの切り替えや金融機関の変更は可能です。
*NISA制度は2024年以降、見直しされることが決まっています。
4-2 iDeCoを活用する
iDeCoは個人型確定拠出年金で、公的年金にプラスして給付が受けられる年金制度です。20歳以上60歳未満の方が加入できます。掛金が全額所得から控除されるため、節税ができます。利息や運用益が非課税で、受取時も一定額まで税制優遇されます。
一方、iDeCoのデメリットとしては、60歳になるまで現金化できないことや、加入手数料、口座管理手数料、口座管理料などが必要な点があげられます。運用期間中に毎月かかる口座管理手数料は金融機関によってさまざまです(最低は171円)。また、金融機関によって取り扱っているファンドが違うため、事前に調べる必要があります。
毎月の積立上限金額については、自身が属する組織(働き方)により異なり、最大は個人事業主・自営業者の月6.8万円(国民年金基金との合計額)です。
4-3 配当控除を活用する
節税のコツとして、配当控除を活用する方法もあります。投資信託は、債券、株式、不動産投資信託など様々な金融商品を保有しているため、配当控除の対象と配当控除率が決められています。
投資信託の場合は、外貨建資産割合と株式組入割合、課税所得額により、控除率が異なります。外国株比率と非株式割合のどちらかが75%超の場合、控除は適用されません。所得水準によっては、配当控除を受けることで所得税率が上昇してしまうことがあるため、注意が必要です。
投資信託の配当控除率
項目 | 非株式割合 | |||
---|---|---|---|---|
50%以下 | 50%超75%以下 | 75%超 | ||
外貨建資産割合 | 50%以下 | 所得税:5%(2.5%) | 所得税:2.5%(1.25%) | 控除適用なし |
住民税:1.4%(0.7%) | 住民税:0.7%(0.35%) | |||
50%超75%以下 | 所得税:2.5%(1.25%) | 所得税:2.5%(1.25%) | 控除適用なし | |
住民税:0.7%(0.35%) | 住民税:0.7%(0.35%) | |||
75%超 | 控除適用なし | 控除適用なし | 控除適用なし |
*()は課税所得金額当が1,000万円超、かつ、課税所得金額等から配当所得を控除した金額が1,000万円以上の場合
4-4 損益通算を活用する
投資信託の売買で損失が出てしまった場合、他の上場株等の譲渡所得や、分離課税を選択した上場株等の配当金と損益通算ができます。損益通算しても控除しきれない損失は、確定申告をすることで、翌年以降3年間にわたり損失を繰り越すことができます。ただしこの制度を利用する場合、毎年確定申告をする必要があります。
まとめ
投資信託にかかる税金は所得税と住民税です。普通分配金と譲渡益(売却金額から、購入金額と諸経費を差し引いた金額)に、それぞれ所得税が15.315%、住民税が5%課せられます。節税には課税されないNISA口座を利用しましょう。
特に、つみたてNISAは20年間にわたり年間最大40万円(月33,333円)が非課税です。うまく活用して長期間運用することで資産を大きく増やす可能性が高まります。投資の基本である、分散、積立、長期投資に適した制度と言えます。これらの制度も踏まえて、投資の検討を進めてみてください。
藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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