不動産投資では自己資金で足りない分は不動産投資ローンで補うのが一般的です。しかし自己の返済能力や収支計画を見誤れば赤字が積み重なり、不本意な形で物件を手放すことにもなりかねません。
今回は不動産投資ローンの内容と、契約後に後悔しないための注意点を紹介します。不動産投資の成功に大きく影響する不動産投資ローンを上手に活用するポイントをぜひ知りましょう。
目次
- 不動産投資ローンとは
1-1.不動産投資ローンと住宅ローンの違い
1-2.金利・借入条件の違い - 不動産投資ローンで後悔しないための7つのポイント
2-1.好条件で借り入れる
2-2.返済能力を客観的に分析する
2-3.借入金利を慎重に検討する
2-4.ベストな金融機関を選ぶ
2-5.ベストな不動産会社を選ぶ
2-6.物件の収益性を評価する
2-7.柔軟に借り換えする
1 不動産投資ローンとは
不動産投資ローンとは、特定の目的(賃貸や売却等で利益を得るなど)でマンションやアパートなどを購入するために金融機関から借り入れるローン商品です。例えば年間の家賃収益が500万円得られる1棟アパートを6,000万円で購入する場合、自己資金で1,000万円用意し、残りの5,000万円を銀行から借りる場合などです。
1-1 不動産投資ローンと住宅ローンとの違い
住宅ローン(自宅を購入する際に個人が銀行などで借りるローン)と不動産投資ローンは混同されることがあります。しかし不動産投資ローンは「他人に貸す収益物件を購入するための借入」となるため、「自分で住むための物件を購入するための借入」である住宅ローンとは性質が異なります。
不動産投資ローンの場合、住宅ローン以上に融資を受けられるケースがあります。住宅ローンの融資審査では主に借手の返済能力(年収等)と担保力が中心になりますが、不動産投資ローンでは物件の収益性が主に考慮されます。つまり、物件の収益力が高いと認められればその分だけ多く借りられるわけです。
少ない元手でも多額の融資を受けられるため、収益性の高い物件を購入できるチャンスが増え、大きなリターンを期待できるのが特徴です。
1-2 金利・借入条件の違い
一般的に不動産投資ローンより住宅ローンのほうが借入金利は低くなります。住宅ローンは1%台といった低金利の融資も見られますが、不動産投資ローンは借手や投資物件の内容など借手側の状況で金利や融資額に差が生じます。
金利は一般的にメガバンク・都市銀行が最も低く、地方銀行、信用金庫、ノンバンクと続きます。メガバンクの融資審査は厳しいですが、金利も1%前後と低いのが魅力です。地方銀行や信用金では2〜3%、ノンバンクでは5%前後となります。
金利のタイプでは、不動産投資ローンの場合、変動金利が多く採用されます。都市銀行や地方銀行の一部では固定と変動の両方を選択できる場合もありますが、不動産投資ローンでは少なくなります。
不動産投資ローンでは住宅ローンと同等の低い金利で多額の融資を受けられることもありますが、借手の状況次第です。借手の返済能力や物件の収益力が低い場合、その分金利も上昇します。金利は1%上がれば返済総額が大きく増加するため、よく検討する必要があります。
2 不動産投資ローンで後悔しないための7つのポイント
投資に失敗しないために次のような点に注意して不動産投資ローンを活用しましょう。
2-1 好条件で借り入れる
不動産投資では金融機関から有利な条件で借入することがとても重要です。
有利な条件とは「融資枠が大きく、金利が低い」ことを指します。そのためには「借手の属性の向上」や「収益性の高い物件の選定」が必要になります。
属性とは、年収、勤務先、勤続年数、担保となる資産の保有、保証人の存在などを指します。例えば、年収が高く、大企業の正社員や官公庁勤務の公務員だったり、十分な預貯金・資産があると有利な条件で融資が受けやすくなります。
全ての属性を改善することは困難ですが、「勤続期間を少しでも延ばす」「副業をして総所得を上げる」「高属性の保証人をつける」などをして、希望の融資額に届くよう申込時期のタイミングを調整することも重要です。
また、借手の属性だけでなく投資物件の収益性も評価されます。融資審査では十分な収益が確保できる物件かどうかが問われます。
単純に物件の表面利回りだけで判断せず、毎月の維持管理費の妥当性や今後の上昇の可能性、大規模修繕工事の予定と費用予測、立地環境から予想される空室率や家賃の下落率などを考慮した、客観的な収益性の評価が必要です。
ローンを申し込む際には収支計画を作成して金融機関に提出することになりますが、不動産会社に作成を一任するのではなく、借手自身も提出前に自分で作成し確認するようにします。借手自身が納得できる収支が得られる物件でないと金融機関から良い評価を得るのも難しいでしょう。
2-2 返済能力を客観的に分析する
不動産投資ローンを利用すると自己の返済能力を超えた融資を受けられるケースも少なくないため、融資額は慎重に決めなければなりません。
融資審査では返済比率(年収に占める年間返済額の割合)も評価されますが、住宅ローンの場合の限度は30%~35%程度です。例えば、年収600万円の方で返済比率が30%の金融機関の場合、600万円×0.30=180万円までが年間返済額の限度となります。
借入額4,900万円、金利1.5%、35年間の元利均等返済の場合、年間の返済額は約180万円です。つまり、年収600万円の方なら約8倍までの借入なら返済可能ですが、8倍を超えると困難になるでしょう。
一方、不動産投資ローンの場合、家賃収入が得られるという利点から住宅ローン以上の返済比率で融資を引き出せることがあります。しかし投資物件は周辺環境や入居ニーズが悪化すると、家賃収入が減少するため状況が一変します。
つまり、家賃収入の減少により運用だけではローンの返済ができず、毎月の給与等から補填することになります。さらに借入額が大きいほど返済負担も大きくなるため、給与からの持ち出しも増えて手元にお金がなくなる恐れがあるのです。
不動産投資ローンは多額の融資を受けられる繋がるレバレッジ効果が大きいローン商品です。しかし大きな損失にもつながることがあるため、一定程度の収益性低下を見込んで融資額を決める必要があります。
2-3 借入金利を慎重に検討する
借入金利は変動金利か固定金利の選択や、今後の変動予測などを考慮して慎重に検討したほうが良いでしょう。
借入金利が高めに設定されると利息の負担が重くなり収益を圧迫します。加えて家賃の下落や空室の増大により収入が減少すれば、年間収益は赤字となり給与等からの持ち出しとなるでしょう。
そのため借入額を多くし過ぎないこと、金利は収益が維持できる範囲で設定することがポイントになります。例えば、「金利2.5%で家賃収入が5%低下すると赤字になる」「金利2.0%なら家賃収入が5%低下しても黒字を維持できる」といった評価が必要です。
また、固定金利のほうが将来的に安心感はありますが、変動金利より高めになることと、提供する金融機関が多くないという難点があります。
変動金利を選択せざるを得ないケースでは、今後の金融市場動向の評価も必要です。2017年からは金融庁が引き締めを強化しており、2018年7月の日銀金融政策決定会合では一定の長期金利上昇を容認しました。今後は個人向けの不動産投資ローンの融資審査がさらに厳しくなる可能性もありますが、過熱していた個人向け融資が正常化するだけとの指摘もされています。
いずれにしろ借入金利を決める際は不動産会社や金融機関から提示された金利を安易に受け入れないことが大切です。
2-4 ベストな金融機関を選ぶ
金融機関で融資額や借入条件が異なるため慎重に選ぶ必要があります。
不動産投資ローンを扱う金融機関は、都市銀行、地方銀行、信用金庫、ネット銀行、政府系金融機関などがあります。このうち固定金利のローンを扱うところは一部の都市銀行、地方銀行と日本政策金融公庫などですが、審査はやや厳しいのが難点です。
金利水準も前述した通り各金融機関で異なり、都市銀行のほうが地方銀行等より低い傾向です。逆に審査基準は都市銀行のほうが他の金融機関よりも厳しくなります。
また不動産会社の提携ローンを利用するという方法もあります。不動産会社の事業力や信用力を背景に個人では借入が難しい条件でも融資を受けられることがあるため、実績豊富な不動産会社を選ぶと良いでしょう。
一方、預金業務を行わないノンバンク(信販会社や消費者金融など)を利用する際は、金利水準が他と比べかなり高めになる恐れがあるため、収益性の厳格な評価が求められます。
2-5 ベストな不動産会社を選ぶ
前述した通り不動産提携ローンは個人が単独で融資を受ける場合よりも有利な条件で借入できるのが魅力ですが、不動産会社は慎重に選ぶことが大切です。
提携ローンの場合、個人で直接融資を金融機関に申し込む場合と比べ、金利、物件審査、書類作成負担、融資実施日の調整などの面で有利になります。物件審査は不動産会社と金融機関の間で済まされ、必要な書類手続きも不動産会社が準備を進めてくれるため、投資家の手間・負担が少なくなるのです。融資審査の通過後も物件購入とともに融資が自動的に実施されます。
ただし、不動産会社によってはローンの事務代行手数料を徴収する会社もあり、個人で融資を受ける際には発生しない費用が必要となるケースもあります。
不動産会社を選定する際は、提携ローンの利用の可否や提携ローンの借入条件などを丁寧にチェックしましょう。
2-6 物件の収益性を評価する
不動産投資ローンの融資審査では返済能力に加え、物件の収益性・採算性が評価されるため、説得力のある収支計画が必要です。
収支計画書の作成は不動産会社が手伝ってくれることもあります。しかし、その場合でも不動産会社に任せっきりにせず、勉強も兼ねて投資家自身で作成してみることが重要です。
収支の計算に疎いと不動産会社から提示される計画の良し悪しが判断できません。利回りがいくら良くても、将来の家賃の下落率や入居者の空室率、大規模修繕の費用、維持管理費の値上げなどが盛り込まれていない場合は要注意です。不動産会社の良い情報だけで作成された収支計画はいずれ破綻し失敗に繋がるケースが少なくありません。
2-7 柔軟に借り換えする
不動産投資ローンでも他の金融機関等のローンに借り換えることが可能です。
投資を開始した当初はある程度の収益が確保できても、環境変化から次第に家賃が下がり空室が増えるなどして赤字に転落することがあります。その場合、収益改善の方法の1つとして借入金利を下げて利息の負担を軽減する方法があります。
まずは借入している金融機関に利下げの申込みをしますが、簡単に応じてくれません。そこで他の金融機関ローンに借り換えを検討します。
投資家の属性や信用状況などによりますが、現在のローンを着実に返済し、その他の借入やクレジットカード等で滞納などを起こしていなければ借り換えることが可能です。むしろ投資開始から年数が経っていると返済面での信用や個人の年収の増加、勤続年数の増大などが評価され、借り換えしやすい状況になっていることもあります。
もちろん投資物件の収益性や資産価値の状態によっては難しいこともあるため、借り換えの際は専門家などに相談すると良いでしょう。
なお、借り換えを行う場合、抵当権の抹消・設定、登録免許税等の費用、繰上返済の手数料、借り換え先の事務手数料などのコストがかかります。状況に応じて柔軟に判断しましょう。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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