不動産投資で資産を運用したい方は多いと思います。ただ、借入をして多くの資金を物件の購入に回すことは、ハードルが高いと感じている方も多いのではないでしょうか。そこで今、小口から不動産投資が手軽に始められる、
- J-REIT(Jリート)
- ソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)
に注目が集まっています。
この記事では、Jリートとソーシャルレンディングの違いや、どういう人におすすめなのかをご紹介します。この記事を読むことで、不動産投資をはじめる場合に、どちらが自分に合うかがわかります。
目次
- Jリートとは?
- Jリートとソーシャルレンディングの6つの違い
2-1.サービスや対価の性質
2-2.価格の変動
2-3.投資後の流動性
2-4.税制
2-5.利回り
2-6.投資期間の効率 - Jリートとソーシャルレンディングはどちらがおすすめ?
3-1.長期運用の余裕があるなら【Jリート】がおすすめ
3-2.短中期の運用、インカムゲイン重視なら【ソーシャルレンディング】
3-3.投資経験が少ない方にも【ソーシャルレンディング】はおすすめ - まとめ
Jリートとは?
まず、Jリートは、日本語で「不動産投資信託」と呼ばれる金融商品の一種です。REITが「Real Estate Investment Trust」の略で、日本(JAPAN)の「J」を先頭に付けました。つまり、アメリカで生まれた、「不動産版の投資信託」と考えていただいて問題ありません。
Jリートは2001年9月、証券取引所に上場して以来、投資家の間で幅広く認知されるようになりました。サービスの流れとしては、
- 投資法人が投資家へ資金の投資を募る
- 集めた資金で、不動産(オフィスビルや商業施設など)を購入する
- その不動産の賃貸や売買で利益を出す
- その利益を投資家へ分配する
となります。
Jリートとソーシャルレンディングの6つの違い
それでは、Jリートとソーシャルレンディングにどのような違いがあるのでしょうか。ひとつずつ見ていきたいと思います。
サービスや対価の性質
リートは「投資」であることに対して、ソーシャルレンディングは「投資」+「融資」の側面があります。
リートは、上場株式に準じた商品として取り扱われます。たとえば株式会社の場合、売買の対象は株式(株券)に該当する持ち分です。投資家は株式と同じように、リートの持ち分をすべて買い取ることでリート自体を所有することが可能です。
一方、ソーシャルレンディングの場合、投資家は仲介役の事業者に資金の投資を行います。その後、資金を集めた事業者が、貸金業者の許可を利用する形で、企業へ資金を融資します。
よって、ソーシャルレンディングには、「融資」の側面があるのです。融資の側面があると、事業者は投資家の元本を守るため、担保や保証をつけた資金の貸し付けができます。
支配権の取得が可能なリートとは異なり、ソーシャルレンディングでは、投資額をいくら増やしても権利関係は変わらず、金利の収入が増えるだけに留まります。つまり、ソーシャルレンディングは小口でも大口でも扱いが変わらないということになります。
価格の変動
Jリートとソーシャルレンディングには、価格の変動によっても違いがあります。
リートは株式と同じように、東京証券所に上場しています。つまり、銘柄の価格が毎日変動するのです。リートは、銘柄の値動き次第で、利回りが上下します。よって投資家には、利益を確定させる手腕が問われることになります。
一方、ソーシャルレンディングの場合、基本的に利回りは、ファンド募集の時点ですでに決まっています。株式のように、毎日ファンドの利回りが上下することはありません。投資家がすることは、毎月決まった利息の分配を受け取るだけです。よって投資家は、REITのように毎日の値動きに振り回されずに済みます。
投資後の流動性
リートは、東京証券所に上場しているので、毎日の値動きが起こります。つまり、投資家の判断で、証券会社に銘柄の売買を指示できるのです。不動産市況の悪化を受けて、すぐに損失を防ぐ行動をとれるのが、REITの強みです。
一方、ソーシャルレンディングは原則として、投資実行中の換金ができません。それは、事業者と融資先企業が、契約の中に融資期間の条項を盛り込んでいるからです。したがって、融資先企業が自ら早期返済をしない限り、投資家は期間の満了まで、元本の返済を待つ必要があります。
税制
Jリートとソーシャルレンディングには、税制面でも違いがあります。リートは、株と同じ税制の体系です。つまり、リートを売却利益や配当の利益に対して、約20%の課税があります。
リートの場合、特定口座を作って源泉徴収方式を選択した方がよいでしょう。それは、不動産の売却時に生じる税金の手続きを、証券会社が行ってくれるからです。この部分も、株式と同じです。つまり、投資家は確定申告を行う必要がなくなります。そのように、税務の手間が少ないのもリートの魅力の一つです。
一方、ソーシャルレンディングで得た収益は、雑所得に分類されます。会社員の場合、税率は給与所得との合計によります。所得税は、おおよそが20%程度となります。ただ、所得が増えるほど、課税の割合も上がるので注意が必要です。税率は最大で45%ほどが適用されます。
なお、REITでもソーシャルレンディングでもなく、現物の不動産投資を行う場合は、また異なる税率が適用されます。こちらも注意しましょう。
利回り
Jリートとソーシャルレンディングの利回りによる違いも見ていきましょう。
リートの平均分配金利回りは、2018年10月1日時点で4.14%です(JAPAN-REIT.COM調べ)。それに対して、ソーシャルレンディングの現在の利回り相場は、5%~8%程度です。
したがって、インカムゲインで期待できる利回りに関しては、ソーシャルレンディングのほうが高くなっています。ただ、リートは相場の値動きが起こるため、タイミングによってキャピタルゲインによって大きな収益を上げられる可能性があります。
投資期間の効率
Jリートとソーシャルレンディングには、投資期間の効率による違いがあります。
投資期間の効率とは、スケジュールに無駄がなく、資金の運用ができているかを表しています。REITの場合、投資スタイルは株式と同じです。したがって、マーケットがオープンする間は、自由な売買が可能です。売却の指示を出してから、実際に売却されるまでのタイムラグも、通常であればほとんど起こりません。
一方、ソーシャルレンディングでは、投資金が実際に運用されるまで、数日~1週間ほどのタイムラグがあります。また、運用期間が終了した場合も、投資家に元本が返済されるまで、数日間は待たなくてはいけません。
資産運用とは、お金でお金を増やすことです。したがって、ソーシャルレンディングのように待機期間があると、その間の利益は望めません。よって、投資期間の効率に関しては、Jリートに分があるでしょう。
Jリートとソーシャルレンディングはどちらがおすすめ?
それでは、 Jリートとソーシャルレンディングでは、どちらの投資がおすすめなのでしょうか。
ここは、資産三分法の観点で見ていきたいと思います。資産三分法とは、資産をリスクや収益性の異なる3種類にわけて、運用リスクを減らすポートフォリオ理論です。
たとえば、資産を、
- 現金(換金性や流動性が高い、ローリスク・ローリターン)
- 不動産(収益性や換金性は低い、中期~長期投資、ミドルリスク・ミドルリターン)
- 株式(収益性や換金性が高い、短期~長期投資、ハイリスク・ハイリターン)
の3つにわけると、短期~中長期的な資産運用が可能です。
なお、この資産三分法は、資産を均等に三分割する必要がありません。資産三分法の割合は、投資家によって異なるのです。具体的には、投資家の、
- 投資への態度
- リスクの許容範囲
によって、資産の比率が変わります。もしリスクを抑えたいのであれば、不動産の割合が高くなるでしょう。収益性(リターン)を求めるのであれば、株式の割合が高くなるかもしれません。
長期運用の余裕があるなら【Jリート】がおすすめ
資産を数年以上の長期で運用できる余裕がある場合やキャピタルゲインを狙いたい方は、Jリートがおすすめです。
それは、長期で運用した方が、利益のタイミングを見計らって銘柄を売却できるからです。つまり、長期運用の姿勢であれば、銘柄がプラスに転じるのを待てばよいので、積み立てなどで取得単価を切り下げながら、プラスになるのを待つということができます。
ただ、そのまま損失が大きくなり、損切りせざるを得なくなるケースも出てくるでしょう。よって、Jリートはある程度のリスクを覚悟して、投資する必要があります。
短中期の運用、インカムゲイン重視なら【ソーシャルレンディング】
キャピタルゲインではなくインカムゲインを重視したい方、数ヶ月~1年程度の期間で資産を運用してみたい方には、ソーシャルレンディングがおすすめです。
ただ、ソーシャルレンディングの場合、資金の流動性が低いデメリットがあります。一度投資を行うと、数ヶ月~数年の運用期間が終了するのを待たないといけません。つまり、途中で資金を引き上げることができないのです。
したがって、「流動性が低くてもよいから、インカムゲインの利回りを重視したい」という方は、ソーシャルレンディングがおすすめです。使う予定のない余剰資金で、ソーシャルレンディングを利用しましょう。
投資経験が少ない方にも【ソーシャルレンディング】はおすすめ
もし投資の経験が少ないのであれば、Jリートよりソーシャルレンディングがおすすめです。それは、ソーシャルレンディングはJリートに比べて必要な知識や経験が限定的で、かつ売却などのタイミングを見計らう必要がないためです。
Jリートの場合、株式に近い投資の知識を勉強する必要があります。また、万全を期したいのであれば、不動産市場の状況や、投資法人の財務状態などもチェックしなくてはいけません。
それに比べて、ソーシャルレンディングの仕組みは、事業者が
- 投資家から資金を集める
- 資金が必要な企業へ融資する
- 毎月利息を投資家へ分配する(例外あり)
という決まった流れです。したがって、ソーシャルレンディングは、Jリートほど特別な知識がなくても、気軽に投資を行うことができるのです。
また、ソーシャルレンディングには日々の値動きがないため、投資後の手間や売却のタイミングを考える必要がないという点も初心者にとってはおすすめのポイントです。
まとめ
以上、Jリートとソーシャルレンディングの違いをご紹介しました。
おさらいすると、Jリートとは不動産版の投資信託です。2001年9月、証券取引所に上場して以来、投資家の間で幅広く認知されています。
そして、Jリートとソーシャルレンディングの違いは、以下の表のとおりです。
投資手法 | Jリート | ソーシャルレンディング |
---|---|---|
サービスや対価の性質 | ・投資 ・支配権の取得が可能 |
・投資+融資の側面がある ・金利の収入に留まる |
価格の変動 | 毎日の値動きがある | 原則として値動きはない |
投資後の流動性 | すぐに売買できる | 運用期間の終了まで待たないといけない |
税制 | 約20%の課税 | 約20~45%の課税(雑所得) |
利回り | 約4.2%(2018年8月時点) | 8.1%(2016年時点) |
投資期間の効率 | 待機期間はほぼない | 運用の前後に待機期間がある |
また、Jリートとソーシャルレンディングのどちらがおすすめかについては、
- 長期運用の余裕があるなら【Jリート】
- 資産を目減りさせないなら【ソーシャルレンディング】がおすすめ
- 投資経験が少ないなら【ソーシャルレンディング】がおすすめ
とお伝えしました。
この記事を読んだことで、どちらが自分に合った投資方法なのかわかったと思います。もしソーシャルレンディングに興味が出たのであれば、事業者HPへのアクセスからはじめてみてください。
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石村淳
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