一部の証券会社では、譲渡益や配当金が非課税になるNISA口座を利用して米国株を買うことができます。ですが、実際にNISA口座で米国株を取引する場合は、メリットとデメリットを把握して自分に合っているかどうかを判断した上で利用することが重要です。
今回は、NISAで米国株を買うメリットとデメリットを詳しく解説します。また、NISAで米国株取引を行うのに便利な証券会社も紹介しますので、参考にしてください。
※この記事は2021年3月2日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。
目次
- NISAで米国株を買うメリット
1-1.売却益や配当益が非課税となる
1-2.米国株なら年間120万円までの非課税投資枠を活用しやすい
1-3.証券会社によっては手数料コストを抑えられる
1-4.米国株は日本株よりも株価の上昇が期待しやすい
1-5.米国株は日本株よりも配当が大きい - NISAで米国株を買うデメリットや注意点
2-1.米国株には値幅制限がない
2-2.NISA口座での損失は損益通算も繰越控除もできない
2-3.NISA口座では外国税額控除を利用できない
2-4.為替リスクがある
2-5.NISA口座は1人1口座しか保有できない - NISA口座で米国株を買う手順
3-1.外国株式取引口座を開設する
3-2.米国株購入のための資金を入金する
3-3.米国株を買い付ける - NISA口座対応の米国株取引に強い証券会社
4-1.マネックス証券
4-2.SBI証券
4-3.楽天証券
4-4.DMM株 - まとめ
1.NISAで米国株を買うメリット
NISAで米国株の購入を考えているなら、まずはNISAと米国株投資それぞれのメリットについて知っておきましょう。
具体的には、以下のようなメリットがあります。
- 売却益や配当益が非課税となる
- 年間120万円までの非課税投資枠がある
- 証券会社によっては手数料コストを抑えられる
- 米国株は日本株よりも株価の上昇が期待しやすい
- 米国株は日本株よりも配当が大きい
1-1.売却益や配当益が非課税となる
NISA口座を利用して購入した金融商品の売却益や配当益が非課税となるのが、NISAのメリットです(ただし年間購入額120万円までが対象)。
通常の株式売買によって発生した利益に対しては「譲渡益課税」が、配当金には「配当課税」が発生します。どちらの場合も所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%の合計20.315%の税金を支払うことになります(2021年3月時点)。
ですが、NISAを利用した株式売買で発生した譲渡益や配当金は非課税となるため、その分を節税できるのです。
1-2.米国株なら年間120万円までの非課税投資枠を活用しやすい
NISAで米国株を購入する場合、年間120万円までの非課税投資枠を活用しやすいというメリットがあります。なぜなら、米国株は1株から購入可能だからです。
日本の株式市場の場合、100株単位の取引となるため、年間120万円の非課税投資枠をピッタリ使い切るのは難しいといえます。一方、米国株は1株から好きな株数で購入できるので、さまざまな銘柄の株式を少しずつ買うことができます。そのため、非課税投資枠いっぱいに使った投資がしやすいのです。
1-3.証券会社によっては手数料コストを抑えられる
証券会社によっては手数料コストを抑えられるというのも、NISAで米国株を購入するメリットです。
NISAで米国株を購入できる証券会社のなかには、米国株個別銘柄や米国ETF(上場投資信託)の買付手数料を無料にしている所があります。また、米国株式の買付手数料をキャッシュバックするサービスを提供している証券会社もあります。
証券会社の例は後述しますが、どの証券会社でNISA口座を開設するかは、手数料体系も見ながら検討するといいでしょう。
1-4.米国株は日本株よりも株価の上昇が期待しやすい
日本株と比較して米国株のほうが株価上昇が期待しやすいというのも、NISAで米国株を購入するメリットです。
1989年から2019年のNYダウ平均と日経平均株価を比較した場合、日経平均株価は長期的に見て横ばいとなっているのに対し、NYダウ平均は大きく値を上げています。国連によると米国では2019年から2050年までの人口増加率が2%となっており、持続的な人口増加の面でも経済成長につながると見込まれています。
1-5.米国株は日本株よりも配当が大きい
米国株は日本株よりも配当が大きい傾向にあるというのも、メリットの1つです。
多くの米国企業では株主への配当を重要視しています。2020年1月末時点での東証プライム上場銘柄の単純平均利回りが1.88%、加重平均利回りが2.22%だったのに対して、NYダウ工業株30種の平均配当利回りは2.27%と高くなっています。
また、日本では配当回数が年1~2回が主流となっているのに対し、多くの米国企業が年4回の配当を行っています。配当益(インカムゲイン)を期待するのであれば、日本株よりも米国株の方が適しているといえるでしょう。
2.NISAで米国株を買うデメリットや注意点
一方で、NISAで米国株を購入する場合には、以下のデメリットや注意点があります。
- 米国株には値幅制限がない
- NISA口座での損失は損益通算も繰越控除もできない
- NISA口座では外国税額控除を利用できない
- 為替リスクがある
- NISA口座は1人1口座しか保有できない
- NISA口座では出口戦略が必要
2-1.米国株には値幅制限がない
米国株には値幅制限がないというのがデメリットの1つです。
値幅制限とは、1日の売買における値動きの幅を一定に制限することをいい、日本株の売買には値幅制限が適用されます。一方、米国株には値幅制限が設けられていないため、株価の高騰によって想定外のリターンを得るケースや、大暴落によって大きな含み損を抱えるケースがあります。
米国株取引には日本株にはないリスクがあるため、どのように対処するかを決めておく必要があります。
2-2.NISA口座での損失は損益通算も繰越控除もできない
NISA口座での損失は損益通算や繰越控除の対象外となるため、注意が必要です。NISA口座内で生じた損失は、金額の大小に関わらず、税務上損失はなかったものとみなされるためです。
そのため、NISA口座で損失が発生してもNISA口座内での損益通算は行われず、また確定申告によって他の特定口座などと損益通算することもできません。
また、特定口座や一般口座では、年間を通じて譲渡損失が生じた場合に確定申告によって翌年以降の3年間で損失を繰り越せる「繰越控除」が使えますが、NISA口座では損失を繰り越せません。
2-3.NISA口座では外国税額控除を利用できない
NISA口座で保有している米国株の配当金を受け取る場合、外国税額控除を利用できません。
外国税額控除とは、外国株の配当金に対して二重課税となるのを防ぐための制度で、外国で納付(源泉徴収)した外国税額を一定の範囲で所得税から控除できるものです。
NISAでは、日本で非課税となり、そもそも二重課税とならないため、外国税額控除を利用できません。そのため、米国株の配当金に対しては10%が源泉徴収されることになります。
2-4.為替リスクがある
米国株投資では為替リスクがあるという点にも注意が必要です。
例えば、株価100ドルの銘柄の1株の価値は、1米ドル100円なら10,000円となりますが、1米ドル110円の円安となれば11,000円の価値となります。一方、1米ドル90円の円高となれば、9,900円の価値になってしまいます。
為替相場は常に変動しているため、株式を売却する状況によっては、利益が増えることもあれば、損失が増えたり、利益が目減りしたりすることもあります。
2-5.NISA口座は1人1口座しか保有できない
NISA口座は投資家1人につき1口座しか保有できませんので注意しましょう。NISA口座を開設する金融機関を変更することは可能ですが、変更する年の9月までに変更手続きを完了させる必要があります。また、金融機関の変更手続き中は新たな投資ができなくなります。
そのため、NISA口座を開設する金融機関は、慎重に選択しなければなりません。
NISA口座で米国株を買う手順
NISA口座で米国株を買う手順は以下の通りです。
- 外国株式取引口座を開設する
- 米国株購入のための資金を入金する
- 米国株を買い付ける
3-1.外国株式取引口座を開設する
米国株をNISA口座で購入する場合は、まず外国株式取引口座を開設します。NISA口座を開設した証券会社のWEBサイトにアクセスして、外国株式取引口座の開設手続きを行いましょう。
3-2.米国株購入のための資金を入金する
外国株式取引口座が開設できたら、米国株を購入するための資金を入金します。
証券総合口座にある資金をそのまま利用して米国株を購入できたり、外国株式取引口座に資金を振り替える必要があったりと、証券会社ごとに対応はさまざまです。利用する証券会社の米国株買付の方法は、事前に確認しておきましょう。
3-3.米国株を買い付ける
入金が完了したら、注文を出して米国株を買い付けます。
証券会社によって異なりますが、米国株取引の画面でNISA口座での買付を選択して取引を行います。この時、誤って通常の口座で注文をしてしまわないよう、注文を確定する前にきちんと確認しておくことが大切です。
4.NISA口座対応の米国株取引に強い証券会社
最後にNISA口座に対応しており、米国株取引に強みを持つ証券会社を紹介します。
- マネックス証券
- SBI証券
- 楽天証券
- DMM株
4-1.マネックス証券
マネックス証券は、国内最多クラスの3,700銘柄の米国株を取り扱うネット証券会社です。米国ETF(上場投資信託)も300本以上取り扱っています。
また、特定口座や一般口座で米国株や米国ETFを購入する場合は、約定代金の0.495%(税込)、上限22米ドル(税込)の買付手数料が発生しますが、NISA口座ではすべての米国株銘柄と一部の米国ETF銘柄の買付手数料分がキャッシュバックされるため、恒久的に無料となっています。
4-2.SBI証券
SBI証券は、約3,000銘柄の米国株と米国ETFを取り扱うネット証券会社です。
NISA口座での米国株取引の手数料は、約定代金の0.495%(税込)、上限22米ドル(税込)と低めに設定されています。また、米国・中国・韓国・日本のすべてのETFの買付手数料が無料となっているのも特徴です。
4-3.楽天証券
楽天証券は、約3,600銘柄の米国株に加え、国内最多クラスの約360銘柄の米国ETFを取り扱っているネット証券会社です。
取引手数料が、約定代金の0.495%(税込)、上限22米ドル(税込)と低く設定されており、9銘柄の米国ETFについては買付手数料が無料となっています。また、取引手数料の1%がポイントバック(楽天ポイントまたは楽天証券ポイント)される楽天証券ならではのサービスも強みといえます。
4-4.DMM株
DMM株は約900銘柄の米国株式と約80銘柄の米国ETFを取り扱うネット証券会社です。
すでに紹介した3つの証券会社と比較して取扱銘柄数は劣る一方で、すべての米国株式の取引手数料が約定代金に関わらず無料となっています。また、1つのアプリで国内株式・海外株式を取引できたり、保有する米国株式を信用取引の担保にできたりするなど、独自のサービスを提供しています。
まとめ
今回はNISAで米国株を買うメリット・デメリットについて紹介しました。
NISA口座をうまく活用すれば、非課税の恩恵を受けながら米国株に投資することができます。ただし、NISA特有・米国株取引特有のデメリットがあることは理解しておきましょう。
NISA口座は1つしか開設できないため、証券会社選びは慎重に行いましょう。また、米国株取引では証券会社ごとに日本株とは異なる手数料体系を敷いていたり、取扱本数が大きく異なっていたりするため、よく比較検討して決定することが必要です。
- 外国株(米国株など)が買えるネット証券会社
- IPO投資に強い証券会社、少額からIPOに参加できるサービス
- 25歳以下の現物株式の取引手数料が実質0円の証券会社
- 大手証券会社が提供している株式投資サービス
- 少額で株式投資ができるサービス
山本 将弘
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