ふるさと納税の返礼品として、NFTを活用する事例が増えてきています。22年には、北海道・余市町、そして芦別市がそれぞれ、「CryotoNinja Partners(クリプトニンジャ・パートナーズ)」のキャラクターをモチーフにしたNFTを簡単に発行できる「ふるさとCNP」を取り入れて、特典付コラボ返礼品を提供して話題を集めました。
【関連記事】:ふるさと納税で利用されるNFTとは?「ふるさとCNP」など注目の事例を解説
地元のメーカーや特定非営利活動法人と協力して、各地の特産品や取り組みをデザインに反映してコラボNFTを発行。地域の返礼品を使った特典とセットで提供することで、ふるさと納税に参加した履歴をデジタル上に残すことができますし、自治体としてはこれをきっかけに新たにNFTファン層にもリーチできるメリットがあります。
この記事では、広島県神石高原町の「NFT×ふるさと納税」の事例をご紹介します。神石高原町では、寄付の返礼品に「KawaiiGirlNFT」のAme-chan(あめちゃん)氏がデザインしたNFTコレクションが提供されます。またこちらのふるさと納税は、ガバメントクラウドファンディングが利用されるということです。
目次
- ふるさと納税返礼品にNFTコレクション
- 「KawaiiGirlNFT」のAme-chan(あめちゃん)氏がデザインしたNFTコレクションとは
- 犬の殺処分ゼロを目指して活動する「ピースワンコ・ジャパンプロジェクト」とは
- ガバメントクラウドファンディングとは
- NFT受け取りに必要なメタマスク
- NFT(非代替性トークン)とは
- まとめ
①ふるさと納税返礼品にNFTコレクション
22年12月、NFTコンサルティング事業とNFTマーケットプレイスを運営するSBINFT株式会社は、広島県神石高原町に本部を置く、特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパンと連携し、ふるさと納税返礼品NFTに関する技術支援を実施したことを発表しました。「犬と人の共生」をモチーフにKawaiiGirlNFTのAme-chan氏がデザインした全3種類・合計56枚のコレクションを、12月16日より広島県神石高原町のガバメントクラウドファンディング®ふるさと納税の返礼品として提供しました。
今回提供されるNFTによって集まった寄付金は、日本の犬の殺処分ゼロを目指して活動する「ピースワンコ・ジャパンプロジェクト」の運営に役立てられるとのこと。またNFTの提供には、ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」が「ふるさと納税」制度を活用して行う「ガバメントクラウドファンディング」が利用されています。
・56枚のNFTコレクション内訳
「犬と人の共生」をモチーフに全3種類・合計56枚のコレクションが12月16日より提供
- 限定1枚で寄付金額120万円のオリジナルNFT
- 限定5枚で1枚あたりの寄付金額50万円の複数枚アートNFT
- 限定50枚で1枚あたり寄付金額12万円のジェネラティブアートNFT
②「KawaiiGirlNFT」のAme-chan(あめちゃん)氏がデザインしたNFTコレクションとは
KawaiiGirlNFTは、2021年9月に誕生した日本発のNFTプロジェクトです。世界最大級のNFTグローバルマーケットであるOpenSeaにて、アイコンにしたくなるような女の子をコンセプトに描いたコレクションを公開しています。
NFTの世界に様々な形のカワイイを提供することを目指しており、全部で100体のKawaiiGirlをMINTする予定。2023年2月時点にMINTされているアイテムは93点となっています。
KawaiiGirlNFTはプロジェクトを通し、日本のNFT業界をもっと盛り上げ、今後も国内外に関わらず幅広い活動を目指しているプロジェクトです。
プロジェクトは3人チームで運営されており、ホルダー(通称Candies)とのつながりを大切にしながら、ホルダーにプロジェクトへの参画を楽しんでもらえるようなコミュニティ運営に注力しています。
今後、KawaiiGirlsでは、会員限定の特典サービスを利用予定しています。コミュニティやロードマップの更新により、特典を追加していく予定です。
③犬の殺処分ゼロを目指して活動する「ピースワンコ・ジャパンプロジェクト」とは
ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)が犬の保護・譲渡活動を主軸として運営する「ピースワンコ・ジャパン」事業の目的は、人間の身勝手によって生み出される犬・猫の殺処分をなくし、ペットと人間の真の共生を実現することを掲げて活動しています。
ピースワンコ事業の本拠地である広島県は、2011年度に犬・猫を合わせた殺処分数が8,340頭(犬2,342頭、猫5,998頭)にのぼり、全国ワーストを記録しました。2013年秋から取り組んできた「広島の犬の殺処分ゼロ1000日計画」に沿って、2016年4月に広島の殺処分対象犬の全頭引き取りを開始し、犬の「殺処分ゼロ」を実現しました。
2019年5月末で、殺処分ゼロの継続は1156日になります。これまでに、里親に譲渡したり元の飼い主に返還したりした犬は1500頭を超えました。猫については、捨て猫の保護・譲渡や繁殖制限などに取り組む他の保護団体を支援しており、犬・猫ともに殺処分ゼロを実現するべく活動しています。広島県神石高原町などには4カ所のシェルターがあります。計約4200平方メートルの庭付きの犬舎を確保、別に計約8000平方メートルのドッグランがある環境で飼育されています。
④ガバメントクラウドファンディングとは
ガバメントクラウドファンディングとは、ふるさとチョイスがふるさと納税制度を活用して行うクラウドファンディングです。自治体が抱える問題解決のため、ふるさと納税の寄付金の「使い道」をより具体的にプロジェクト化し、そのプロジェクトに共感した方から寄付を募る仕組みです。
また今回、神石高原町のふるさと納税返礼品を通じて行われるプロジェクトに技術支援をしたのは、国内でNFTコンサルティング事業とNFTマーケットプレイスを運営するSBINFTです。
SBINFTは21年に株式会社スマートアプリが提供していた「nanakusa」というNFTマーケットプレイスを買収しており、「SBINFT Market」として運営しています。SBINFTについては別途解説記事があるので、よろしければご参照ください。
【関連記事】:SBINFTの事業内容と特徴について解説
⑤NFT受け取りに必要なメタマスク
広島県神石高原町返礼品NFTで利用されるブロックチェーンはポリゴン(Polygon)のネットワークが利用されるとのことです。ポリゴン(MATIC)とは、17年に「マティックネットワーク(Matic Network)」という名称でローンチされ、21年2月にブロックチェーンのスケーリング問題に取り組むために「ポリゴン(MATIC)」へとリブランディングが行われた、イーサリアムのセカンドレイヤー・ソリューションです。なお寄付申し込みには、暗号資産ウォレットのメタマスク(Metamask)が必要です。
メタマスクはイーサリアム関連ソフトウェアの開発企業ConsenSysによって2016年に公開された仮想通貨ウォレットです。Google Chromeなどのウェブブラウザの拡張機能やスマホアプリとして利用でき、イーサリアム(ETH)やポリゴン(MATIC)、NFTなどの各種デジタル資産も利用できます。
シンプルなインターフェースでサポートも豊富なため、これまで一般的な取引所しか利用したことの無かったユーザーもメタマスクを使って、NFTマーケットプレイス「OpenSea」と連携させて、NFTを購入したり、DeFiを利用するようになってきています。
メタマスクの作成方法については、図解付で説明していますので、別途記事をご参照ください。メタマスクを使ったNFTや暗号資産の管理は自己保管(セルフカストディ)型であるため、セキュリティ上の注意点を抑えておくと良いでしょう。
【関連記事】:MetaMaskのウォレット作成方法、OpenSeaへの連携方法について解説【NFTマーケットプレイス導入準備】
【関連記事】:メタマスク(MetaMask)ウォレット上の使い方と注意点、盗難被害を防ぐには?
⑥NFT(非代替性トークン)とは
比較的新しい取り組みである「ふるさと納税NFT」は、NFTに関心がある方から注目を集めるサービスです。冒頭のふるさとCNPのケースではその多くが売り切れ状態となっています。
市町村とNFTアーティストとのコラボ作品は、そのNFTアーティストのファンにとってコラボ作品は保有しておきたいコンテンツであり、尚且つ寄付もできる特長があります。NFTアートやイラストは見た目では「ただのイラスト」に見えてしまうので、ここでNFTについて技術的な面を抑えておきましょう。
NFTとは「トークン」の一種です。暗号資産業界では既存のブロックチェーン技術を利用して発行された暗号資産のことを総称して「トークン」と呼びます。トークンの中でも、紙幣のようにどのトークンも全く同じ価値を持っている資産を「FT(代替性トークン)」と言います。
一方、一点もののコレクションに使用されるのが「NFT(非代替性トークン)」です。NFTはブロックチェーンを使って固有のIDを有するトークンを発行することで、そのコンテンツが他と代替できない「唯一無二のもの(非代替性)」であることを証明します。
・ジェネラティブアートNFTとは
NFTとひと言でいっても様々な種類があります。広島県神石高原町の「NFT×ふるさと納税」で一部導入されたジェネラティブNFTは、コンピューターによって自動生成されたNFTアートです。
発行されているジェネラティブアートにはそれぞれナンバーが振られており、全体的な絵の感じは似ていますが、ひとつとして同じデザインはありません。したがって購入者側は自分の好きなデザインを選びやすくなっています。
世界的にも知名度が高いNFTマーケットプレイス「OpenSea」では、ジェネラティブNFTが最も大量に出品されており、取引量もランキング上位を占めているジャンルです。NFTをはじめて購入する人もジェネラティブアートから入るのがベターでしょう。
⑦まとめ
ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」が「ふるさと納税」制度を活用して行う「ガバメントクラウドファンディング」であり、広島県神石高原町のふるさと納税返礼品に「KawaiiGirlNFT」のAme-chan(あめちゃん)氏がデザインしたNFTコレクションが提供されるというものでした。
またクラウドファンディグなので、納税された寄付金は、日本の犬の殺処分ゼロを目指して活動する「ピースワンコ・ジャパンプロジェクト」の運営に役立てられるとのことです。納税しながら、寄付をすることができ、さらにこのプロジェクトを応援した人しか得ることができない、NFTを保有することができるので、ふるさと納税やNFTに興味がある人はチェックしておきたいプロジェクトではないでしょうか。
また今回見逃したとしても、今後、ふるさと納税とコラボしたNFTやガバメントクラウドファンディングを利用したプロジェクトはまだまだ登場してくるので、通年を通して情報を抑えておくのが良いでしょう。寄付したいタイミングはその時の余剰資金にも関わってくるので、追って注目していきたいところです。
立花 佑
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