相続によって土地を取得した方の中には、売却するのに手間がかかるという理由で土地をそのまま放置してしまっている方も少なくないのではないでしょうか。
しかし、土地を利用しないのであればそのまま所有していても固定資産税が課税されてしまいます。また、相続した土地をすぐに売却しないと、税制上で利用できた特例の対象外となる可能性が高いので注意が必要です。
この記事では、相続した土地の売却を早めにした方が良い理由と、売却時に利用できる相続財産譲渡の取得費の特例について解説します。
※記事内の税金・税率などは2023年3月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁のウェブサイトをご確認のうえ、税理士などの専門家へのご相談もご検討ください。
目次
- 相続した土地には固定資産税がかかる
- 相続財産譲渡の取得費の特例とは
2-1.相続財産譲渡の取得費の特例を受けるための条件
2-2.特例の期間内に土地の売却を進めるには - 特例が適用できるかどうかは専門家に相談
- まとめ
1.相続した土地には固定資産税がかかる
相続で土地を取得した場合には、その土地の上に自宅を建てる方もいれば、土地を利用して資産運用を始める方もいます。しかし、特に利用する予定がないにもかかわらず、そのまま放置してしまった方も少なくないのではないでしょうか?
「建物は放置すると劣化が進行するものの、土地は劣化しないので問題ない」とも考えられますが、劣化しなくても固定資産税がかかります。特に建物の立っていない更地の場合には軽減措置の適用を受けられず、固定資産税がより多くかかるため注意が必要です。
住宅の敷地となっている土地は、固定資産税を算出する際、軽減措置の適用を受けられるので、住宅が建っている土地よりも更地の固定資産評価額のほうが高くなります。
住宅の敷地となっている土地の固定資産税額の軽減内容は、以下の通りです。
住宅の敷地となっている土地の内容 | 固定資産税の軽減割合 |
---|---|
小規模住宅用地(200㎡以下の部分) | 課税標準額が6分の1に軽減 |
一般住宅用地(200㎡超の部分) | 課税標準額が3分の1に軽減 |
例えば、課税標準額1800万円の土地150㎡がある場合、住宅と更地で固定資産税の金額は以下のように変わってきます。
- 住宅地の場合:1800万円×6分の1×1.4%=4万2000円
- 更地の場合:1800万円×1.4%=25万2000円
※参照:総務省「固定資産税制度について>固定資産税の住宅用地特例」
特に土地を利用する予定がない場合には、固定資産税を少しでも減らすためにもなるべく早く売却することを検討してみましょう。
2.相続財産譲渡の取得費の特例とは
相続した土地をなるべく早く売却した方が良い理由は他にもあります。その理由の1つが「相続財産譲渡の取得費の特例」を利用できるということです。(*国税庁「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」を参照)
相続財産譲渡の取得費の特例とは、相続した土地や建物といった不動産だけでなく、株式やゴルフ会員権といった財産を売却した場合に課せられる所得税を軽減できる仕組みです。
相続財産譲渡の取得費の特例を利用すれば、譲渡所得の計算式が以下のように変化します。
- 通常の譲渡所得:売却価格-購入価格(取得費)
- 特例を利用した譲渡所得:売却価格-購入価格(取得費)-支払った相続税の一部
特例を利用すれば税額を算出する際の譲渡所得から支払った相続税の一部を取得費として加算できるため、譲渡所得を抑えることができます。
しかし、相続財産譲渡の取得費と特例は、どんな条件でも利用できるわけではありません。特例を受けるための条件を事前に確認しておくことが重要です。
2-1.相続財産譲渡の取得費の特例を受けるための条件
特例を受けるための条件には以下の3つがあります。
- 取得した財産が相続や遺贈によって得たものであること
- 財産を取得した際に相続税が課されて納税していること
- 相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日までに譲渡していること
*国税庁「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」を参照(2023年3月時点)
土地に対して相続財産譲渡の取得費の特例を利用したい場合には、その土地が相続や遺贈(遺言書で取得)で取得したものでないといけません。
また、相続や遺贈後に相続税を課税されていることが条件となるため、控除で相続税を納める必要がなかった場合には特例を受けることはできないので注意が必要です。
相続税の申告期限とは、被相続人が亡くなったのを知ってから10ヶ月後です。そのため、相続開始から「3年10ヶ月以内」に土地の譲渡が完了しなければなりません。
特例を利用した売却を検討している場合、間に合うように逆算しながら売却を進める必要があるでしょう。
2-2.特例の期間内に土地の売却を進めるには
特例の適応期間である「3年10か月以内」に売却するためには、計画性を持って売却の準備をしておく必要があります。売却時期が迫っていると売り急いでしまい、希望価格で売却できない可能性が高まってしまうためです。
土地を含む不動産の売却には、不動産会社に依頼してから数か月の期間を必要とすることがあります。まだ売却の予定が正確に決まっていない段階でも「価格査定を受けておく」「売却の手順を知っておく」という準備をしておくと良いでしょう。
不動産会社によって売却を得意とする物件タイプやエリアが異なっていることも少なくありません。査定依頼の段階で複数の不動産会社へアプローチが出来る「不動産一括査定サイト」を利用することも検討してみましょう。不動産一括査定サイトでは、無料で複数社の査定が同時に受けられるうえ、様々なエリアに対応している不動産へ効率的に依頼ができ、会社の対応力や特徴を比較することが可能です。
下記は主な不動産一括査定サイトの一覧です。下記のサイトは全国エリアに対応しており、積極的に悪徳業者の排除を行っている特徴を持っています。
主な不動産一括査定サイト
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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧
その他、売却期限が迫っている状況なのであれば、売却が長期化してしまう可能性を考慮して、不動産仲介だけでなく買取も検討してみましょう。不動産買取は不動産会社へ直接土地を買い取ってもらう方法で、一般の買主を探す仲介売却と比較してスムーズな売却が可能となります。
ただし、不動産買取による売却は仲介での売却価格と比較して2~3割ほど価格が下がってしまう傾向があります。出来るだけ高値での売却を優先したい場合や、売却スケジュールに余裕がある場合には仲介を優先して検討してみると良いでしょう。
【関連記事】不動産を売却するのに必要な期間と手順は?仲介・買取、それぞれ解説
3.特例が適用できるかどうかは専門家に相談
相続財産譲渡の取得費と特例を利用すれば、土地の売却によってかかる所得税を減額できることが分かりました。
しかし、この特例を利用するためには条件を満たしている必要があるため、相続財産譲渡の取得費の特例について事前に理解しておく必要があります。
もし、相続してから売却までの期間を勘違いして、利用できる期間を経過していた場合には特例を利用できません。そのため、確実に特例を利用するためにも、相続が専門の税理士や特例に詳しい不動産会社へ事前に相談した方が良いと言えるでしょう。
不動産相続に強い税理士を探す場合、「税理士紹介サイト」を利用して紹介してもらうという方法もあります。税理士紹介サイトでは、コーディネーターが相談者のニーズに合った税理士をピックアップし、面談を調整してくれます。
例えば、無料で利用できる「税理士ドットコム」は、全国5,900名の税理士の中から希望に沿った税理士を紹介してもらえるウェブサービスです。複数の税理士を比較することができるうえ、「費用はいくら?」「どんな税理士を選ぶべき?」といった税理士を選ぶ際の相談も可能となっています。
税理士報酬がかかってしまう点はデメリットとなりますが、不動産の規模によっては報酬以上の税制メリットを受けられるケースも少なくありません。不安のある方は、このようなサービスの利用を検討するなどして、手間やリスクを省くことも選択肢の一つと言えるでしょう。
【関連記事】不動産の相続、税理士の探し方・選び方は?相場や相談方法も
まとめ
相続によって土地を取得した方の中には、自宅の建設や駐車場・賃貸住宅として資産運用を始める方もいます。特にそのような予定がない場合、土地を売却して現金化する、そのまま土地の所有を続けるかのどちらかを選ぶことになります。
そのまま土地の所有を続けるのであれば、利用していない状態でも固定資産税がかかります。また、更地であれば宅地よりも固定資産税が高くなるため注意が必要です。
さらに、早く売却すれば、相続した土地を売却した際に生じる所得税を抑えることができる相続財産譲渡の取得費の特例を利用できる可能性があります。
しかし、この特例を利用できる条件は決まっているため、後でトラブルに発展するリスクを少しでも抑えるためにも、税理士や不動産会社といった専門家に相談することも検討しておきましょう。
矢野翔一
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