マンションの売却を考える際はタイミングが大切です。例えば、築年数によって需要は変わり、売却にかかる税金などは所有期間によって変わります。また、ローンを完済しているかどうかも、売り時を考えるタイミングに影響することがあります。
そこでこの記事では、マンションの売り時について築年数やエリア、金利の視点から解説していきます。マンションを所有している方、売り時を検討している方は参考にしてみてください。
目次
- マンションの売り時を考える5つのポイント
1-1.マンションの築年数
1-2.マンションの所有期間
1-3.マンションの市況
1-4.マンションがあるエリアの相場動向
1-5.ローン金利の動向 - マンションを売る際の4つの注意点
2-1.マンションの売出価格を高くしすぎない
2-2.マンション査定金額の高さだけで仲介業者を選ばない
2-3.ローンを完済できるか確認しておく - まとめ
1.マンションの売り時を考える5つのポイント
売主としてマンションの売り時を考えるポイントは、以下の5つがあります。それぞれ見ていきましょう。
1-1.マンションの築年数
マンションの築年数は何年くらいまでなら売りやすいのかについては、東日本不動産流通機構(レインズ)の「首都圏中古マンション・中古戸建住宅地域別・築年帯別成約状況」が参考になります。
例えば、2020年7~9月における築年数別の中古マンション成約件数(東京都)は次の通りです。
築年数 | 成約件数 | 前年同期比 |
---|---|---|
~築5年 | 477件 | 4% |
~築10年 | 870件 | 17% |
~築15年 | 817件 | -5% |
~築20年 | 740件 | -12% |
~築25年 | 530件 | 4% |
~築30年 | 268件 | 6% |
最新の動向によると、築10年までのマンションの成約件数は、前年同期比で大きな伸びを見せているため、需要が高いことを示しています。一方、築10〜15年以上になると、成約件数はマイナスに転じ、需要も落ち込んでいます。
なお、不動産市場の動きによっては築年数ごとの需要は変動する可能性もあるので、このようなデータもチェックしつつ、売り時となる築年数を確認しておくと良いでしょう。
また、買主の立場から見た場合、築年数が何年くらいまでなら購入する価値があるのかもポイントになります。
例えば、水回りなどの設備を交換する必要があるのかどうか、購入金額の安さでその工事費用をまかなうことができるのかといった実務的な要素もポイントになります。
1-2.マンションの所有期間
マンションを売却するまでの所有期間もポイントのひとつです。マンションの所有期間は売却後に発生する譲渡所得税率に影響します。
マンションの譲渡所得税は売却代金から取得費と譲渡費用(仲介手数料や印紙税など)を差し引いた譲渡所得に対して、所定の税率をかけたものです。取得費は購入金額から減価償却費を引くので、築年数の経過により減少していきます。
この譲渡所得税率は築年数にかかわらず、マンションを所有していた期間に応じて変わります。売却するまでのマンションの所有期間が5年未満の場合、譲渡所得税率は39.63%となります。所有期間が5年以上であれば20.315%です。
このように所有期間が5年未満か5年以上かによって、譲渡所得税は大きく変わる点に注意が必要です。5年未満で売却したほうが大きく利益が出るケースを除き、所有期間が5年を境にしてさほど売却金額が変わらないのであれば、5年を経過してから売却活動をするという方法は一つの目安となります。
1-3.マンションの市況
マンションの売り時として大切なのが市況のタイミングです。マンションの購入を考えている人が多いほど、中古マンションも高い金額設定で買い手を探すことができ、さらに相場が上昇していれば、高値売却の可能性が高まります。
市況のタイミングとは、「マンション需要」と「相場の上昇」が重なった時となります。レインズ(東日本不動産流通機構)が発表している「2020年7~9月期の首都圏相場」によると、中古マンションの成約件数は前年比プラス1.4%となり、7~9月期の件数としては機構発足以降、過去最高を記録しています。
また、成約価格は5.8%上昇、成約㎡単価は3.6%上昇するなど好調です。一方、新規登録件数は13.7%の減少で、4四半期連続で前年同期を下回っています。
マンション価格が上昇するなか供給量は減少しているため、中古マンション需要は増加傾向にあると言えます。このような市況において、中古マンションを有利に売り出すことも期待できます。
1-4.マンションがあるエリアの相場動向
マンション市況のように不動産相場全体の動きをみるとともに、保有するマンションの周辺エリアがどのように相場が変動しているのかをチェックすることも大切です。
例えば、不動産専門情報サービス会社の東京カンテイが発表した「都道府県別の中古マンション価格の推移」によると、2020年6月における70平方メートル換算の中古マンション価格は、前月比6.3%上昇した長野県に対して、島根県は4.1%下落しています。
前月比で中古マンション価格の上昇率が高いエリアと東京都は以下のようになっています。
- 長野県:6.3%
- 長崎県:4.8%
- 鳥取県:4.6%
- 山梨県:3.5%
- 富山県:3.3%
- 東京都:-0.5%
このようにエリアごとにも細かくみると、中古マンションの相場は常に変動しています。この流れを確認して、売り時を見極めることも重要なポイントになります。
1-5.ローン金利の動向
マンションを購入する際、多くの場合、ローンを組みます。ローン金利は低いほど、返済負担が軽くなるので、マンションの購入意欲も高まります。このように、マンションの売り時を考える際には、金利の動向にも注意が必要です。
例えば、長期固定金利「フラット35」の金利(借入期間21年~35年)は2009年1月で2.88%、2019年12月で0.92%となっています(ARUHIより)。一方、国土交通省の「全国のマンションの不動産価格指数」によると、不動産価格は2009年1月の94.7から2019年12月の149.5へと上昇しています。
このように、ローン金利が低下し、不動産価格が上昇すると、トータルの返済負担は軽減されることから、直近の購入意欲は衰えていない状況と言えます。
なお、住宅金融支援機構の発表による最新の民間金融機関の住宅ローン金利(2020年11月時点)は、次のようになっています。
- 固定金利期間選択型(10年):3.250%
- 固定金利期間選択型(3年):3.000%
- 変動金利型:2.475%
今後の金利動向について、日本銀行は、「新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる(引用:新型コロナウイルス感染症:金融経済情勢と日本銀行の対応:2020年5月時点)」との方針を示しているため、新型コロナウイルスの影響が大きい状況で早急に金利が上昇する可能性は低いと考えることができます。
2.マンションを売る際の4つの注意点
マンションの売り時を確認したあとに、実際に売却する際にはどのような点に注意すればよいのでしょうか。ここでは売り時でのマンション売却における注意点を4つご紹介します。
2-1.マンションの売出価格を高くしすぎない
マンション需要が高いときに売出価格を強気の設定にすると、余計に買い手が付きにくくなることがあります。価格が高すぎるため敬遠されるというだけでなく、価格を下げたときに、「値下げしなければ買い手がつかないマンション」という悪いイメージを持たれる可能性があります。
どれだけ時間がかかっても高く売れればよいという考え方もありますが、売り出してから長期間経過すると、「売れないマンション」というイメージも強くなり、さらに敬遠される可能性が高くなります。
このように、周辺相場とあまりにかけ離れた価格設定にしてしまうと買主の印象が悪くなり、売却がスムーズに進まない可能性があります。マンションの適正相場を見極めて、計画的に売り出し価格を設定することが大切です。
マンションの適正相場を知るためには、複数の不動産会社による査定を受け、査定価格や査定の根拠を比較することが効果的です。物件登録を行うと複数の不動産会社による無料査定が受けられる「不動産一括査定サイト」の利用を検討してみましょう。
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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧
2-2.マンションの査定金額の高さだけで仲介業者を選ばない
前述したように、マンションを売却する際は、1社だけでなく複数の会社へマンションの査定依頼をすることが大切です。しかしこの時、提示された金額が高いという理由だけで、仲介会社を選ばないよう注意しましょう。
仲介業者は、過去の売却実績や周辺相場を参考にして査定金額を提示しますが、実際にその査定金額で売却できるわけではありません。特に周辺相場とあまりにもかけ離れた高い金額の場合、売却が長期化することで結果的に値下げとなる可能性があります。
そのため、高い査定金額を提示する仲介会社の場合、過去の売却実績や口コミ・評判などをチェックする必要があります。1社だけが相場とかけ離れた金額を提示している場合、その根拠をしっかりと聞くか、慎重に検討しましょう。
2-3.ローンを完済できるか確認しておく
マンションの所有権を購入者に移転するためには、ローンを組む際につけた抵当権を抹消しなければなりません。
仮に、売却代金でローン残債を支払えない場合、差額は現金で支払う必要があります。そのための現金がなければ売却できないことになるので、事前にローン残債を支払えるだけの売却代金が得られるのかどうかを確認する必要があります。
ただし、ローンの残債を目安に設定された売り出し価格で買い手がつくとは限らないため、適正相場とのバランスを取ることも重要です。
物件価格がローンの残債を下回る場合はオーバーローン物件となり、売り急がなければならない事情がある場合は任意売却という手段を講じる必要があります。任意売却は返済できないローンの残債を、分割支払いとすることで金融機関と合意をするという方法です。
任意売却は金融機関の許可が必要になるため、ローン残債と不動産査定価格を比較し、オーバーローン物件であることが分かった段階で早めに相談をしてみましょう。
【関連記事】ローンが残っている家は売却できる?売却の手順、オーバーローンの対策も
まとめ
マンション市場の今後の動向を正確に予測するのは難しいですが、築年数や所有期間を基準に売り時の傾向を見ることができます。
また、マンション売却を成功させるには、パートナーとなる不動産会社の手腕も大きく影響します。過去の売却実績や評判の良い仲介会社を探し、担当者と売り時についてよく相談しながら、売却活動を進めることが大切です。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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