近年、企業にCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)が求められるようになって来ており、その一環としてNPOとの協働を検討するケースもあるでしょう。企業がNPO法人と協働するには、どのような方法があるのでしょうか。
この記事では、企業がNPOと協働する方法、具体的な事例、税制上の注意点について解説していきます。
目次
- 企業がNPOと協働する方法
1-1.NPOの中間支援団体に相談する
1-2.各都道府県のNPO担当部署に相談する
1-3.NPOのホームページから情報を入手する
1-4.NPOのイベントに参加する - 企業とNPOの協働事例
2-1.SAVEJAPANプロジェクト
2-2.タケダ・ウェルビーイング・プログラム
2-3.ウェルカムベビープロジェクト - 企業がNPOと協働する際の税制上の注意点
- まとめ
1.企業がNPOと協働する方法
企業がNPOと協働する方法として、次のようなものが考えられます。
- NPOの中間支援団体に相談する
- 各都道府県のNPO担当部署に相談する
- NPOのホームページから情報を入手する
- NPOのイベントに参加する
以下で、それぞれについて詳しく説明していきます。
1-1.NPOの中間支援団体に相談する
全国各地に、NPOを支援する中間支援団体が存在します。NPOの中間支援団体の役割は多岐にわたります。NPOに助言、指導をおこない、NPOの抱える様々な問題の解決を支援しています。
中間支援団体の主な役割の一つは、資金・人材・情報などの資源の提供者とNPOを仲介することであり、NPOに関連するサービスの需要と供給をコーディネートすることにあります。
企業がNPOとの協働を検討している場合、このような中間支援団体に相談することで、需要と供給のマッチングや、新たな価値の創出が期待できるといえます。
1-2.各都道府県のNPO担当部署に相談する
NPO法人は、認証権、監督権を持つ所轄庁が各都道府県になります。そのため、各都道府県には、NPO担当部署が必ず置かれています。
各都道府県のNPO担当部署では、認証や監督業務のみならず、NPOに関連する推進事業をおこなっていることがあります。 都道府県が主体となって、NPOの中間支援団体を設立し、自ら運営をおこなっているケースもあります。
企業がNPOとの協働を検討している場合、各都道府県のNPO担当部署に相談することで、NPOの紹介を受けたり、NPOとの協働につながる機会を得られたりすることができるでしょう。
1-3.NPOのホームページから情報を入手する
NPO法人の多くはウェブサイトで自らの活動内容や活動実績、収支などを公開しているため、協働を検討材する際の判断料として入手するというのも方法の一つです。
なお、ウェブサイトに欲しい情報が無いときは、お問い合わせからたずねてみると良いでしょう。また、その際に「協働を検討しているので、一度打ち合わせの機会をいただけますでしょうか」と伝えておくことで、担当者や代表と直接話をできることもあります。
1-4.NPOのイベントに参加する
NPOの中間支援団体や、各都道府県のNPO担当部署などが、NPO支援や社会課題の解決を目的として、イベントを開催することがあります。
このようなイベントに参加し、NPOが得意とする社会貢献活動の性質(きめ細かさや地域密着性)や具体的な活動内容を知ったりすることで、企業側のノウハウや資源なども生かしつつ、NPOと協働する方向性を見出すことができるでしょう。イベントに参加した関係者から、NPOの紹介や協働の方法について相談を受けることも考えられます。
2.企業とNPOの協働事例
実際に、企業がNPOと協働している事例について見ていきましょう。以下では、3つの事例をご紹介します。
- SAVEJAPANプロジェクト
- タケダ・ウェルビーイング・プログラム
- ウェルカムベビープロジェクト®︎
2-1.SAVEJAPANプロジェクト
SAVEJAPANプロジェクトは、損保ジャパンと、日本NPOセンター、各地域のNPO支援センターが協働しておこなっている、日本の希少生物種の保護につながるような「生き物が住みやすい環境づくり」を目指す取組みです。
日本各地のNPOと協働して、各地域の市民の方々が気軽に参加することができる自然体験イベントや日本の希少生物種について知ってもらうイベントを開催することで、市民一人一人が地域の環境保全活動に参加するきっかけを提供しています。
2-2.タケダ・ウェルビーイング・プログラム
タケダ・ウェルビーイング・プログラムは、武田薬品工業と、NPO法人市民社会創造ファンドが協働して取り組んでいる、長期療養する子どもとその家族をサポートする市民活動を支援するための長期支援寄付プログラムです。
製薬という命にかかわる事業を担う企業として、医療の発展に向けた基盤整備にかかわっていくことも企業市民としての責任の一つである、との武田薬品工業の企業理念が根幹にあります。
2009年から、第1期、第2期と支援時期、支援対象を区分しておこなっており、2020年からは、第3期目に入っています。第1期では、医療機関内での活動に対して、第2期では、退院後の地域活動に焦点を当てて支援をおこないました。第3期では、コロナ禍におけるオンライン支援を充実させています。
第2期までの助成金額は、総額8,640万円、助成件数は52件、受益者数は約12,000人に上っています。
2-3.ウェルカムベビープロジェクト®︎
ウェルカムベビープロジェクト®︎は、「NPO法人こまちぷらす」とヤマト運輸神奈川主管支店が、横浜市の「ヨコハマ市民まち普請事業」を通じて、協働して立ち上げた、「まち全体で赤ちゃん誕生をお祝いし、子育てを応援できる社会になること」を目指すプロジェクトです。
2016年から、横浜市戸塚区の赤ちゃんが生まれた家庭に対して、保育に役立つ雑貨やサービスのクーポンなどの「出産祝い」を送り届けています。
2022年2月時点、プロジェクトは拡大を続け、横浜市鶴見区、千葉県松戸市でもおこなわれています。 また、2020年には、新たに東京キリンビバレッジ、花王と協働して「オムツ自動販売機」を開発し、全国のショッピングモールや行政施設などに設置しています。
3.企業がNPOと協働する際の税制上の注意点
企業がNPOと協働する際、NPOに対して資金や商品等を拠出する場合には、法人税法上の損金算入制度に注意したいといえます。不特定多数の者に対する宣伝的効果を意図する場合には、拠出した資金や商品等を損金に算入することが可能です。
しかし、広告宣伝としての意図が明確でなく、資金や商品等の拠出が寄付であると認められる場合には、寄附金の損金不算入制度による損金算入制限を受けることになります。寄附金の損金算入制限を受ける場合、支出した相手方が認定NPO法人等である場合には、通常の寄附金とは別枠で設けられた損金算入限度額の範囲で損金に算入することが可能です。
NPOに対して資金や商品等を拠出する場合、相手方が認定NPO法人等に該当し、寄附金の損金算入の特例を利用できるかどうか、についても考慮することを検討してみましょう。
出典:国税庁「交際費等の範囲」
まとめ
近年では、企業も社会的責任を果たすことが求められるようになっており、企業とNPOが協働して社会課題の解決に取り組む事例も多くなっています。企業がNPOと協働する際には、NPOの中間支援団体や都道府県のNPO担当部署に相談することを検討してみると良いでしょう。
また、各企業によって、市民一人一人の意識・行動を変えていくことが必要な自然環境問題や、本業の延長線上にある社会課題、地域に密着した社会課題に取り組んでいる事例があります。このような事例を参考に、どのような活動を行っていくのかあらためて検討してみることも大切です。
なお、税制上NPOへの資金等の拠出が法人税法上の寄附金に該当する場合には、損金算入制限を受けることになります。特例の適用を受けることのできる認定NPO法人等に該当するかどうか、に注意しておきましょう。
佐藤 永一郎
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