仮想通貨で寄付を募るメリットと事例。社会問題解決にどう貢献する?

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最近、仮想通貨で寄付を受け付ける事例が見られるようになりました。今までは日本円などの法定通貨や物品で支援を行っていましたが、今ではビットコインも寄付に用いる主要な手段の一つとなっています。

これは単なる流行によるものなのか?と言われると、必ずしもそうとは言えないでしょう。なぜなら、仮想通貨には法定通貨などでの寄付に比べていくつかの利便性を有しているからです。世間の仮想通貨に対するイメージがまだ良いとは言えない現状でも、寄付手段として受け容れられていることがその証明になるはずです。

この記事では「なぜ仮想通貨が積極的に寄付に使われているのか?」という疑問に答えるべく、その優位性について説明し、また実際の仮想通貨による寄付の事例についてもご紹介したいと思います。

目次

  1. 仮想通貨で寄付を行うメリット
    1-1.取引が公開されており、お金の流れが透明
    1-2.手数料が安い
  2. 実際の仮想通貨による寄付事例
    2-1.西日本豪雨の被災地へ約1.6億円の寄付
    2-2.ノートルダム大聖堂の修理費用
    2-3.ユニセフフランス支部が仮想通貨寄付を受付
    2-4.仮想通貨×社会貢献プロジェクト「actcoin」
  3. まとめ

1.仮想通貨で寄付を行うメリット

まずは寄付行為において、仮想通貨が法定通貨などに対してどのような利便性・メリットを有しているかを解説します。

1-1.取引が公開されており、お金の流れが透明

仮想通貨は、基本的にその取引(トランザクション)の記録が全てブロックチェーン上に書き込まれ、誰もが閲覧できる仕組みになっています。そのため「いつ、誰が・誰に(※アドレス単位)、いくら送付したか」ということが公になります。

今まで法定通貨などでの寄付では、その寄付が実際に相手に届いているかどうかが分からないという問題がありました。2011年の東日本大震災では世界中から東北地方に寄付が集まりましたが、中間組織や行政があまりにも大量の寄付を捌ききれていなかったことが報道され、被災者たちに実際に届いているのかどうか不安がる声もありました。

また、寄付という名目で資金を集めていながら、実際には寄付を行わず持ち逃げする詐欺であったり、その疑いをかけられたりする中間組織も存在しました。これらは全て、寄付されたお金や物資の動きが可視化されていないことによる問題です。

しかし、仮想通貨での寄付であれば、その動きは全てWeb上のブロックチェーンエクスプローラーからいつでも確認することが可能です。寄付金が正常に相手に届けられたかどうか、不審な取引がなされていないかどうか、といったことを誰もが確認できるため、不安や不正が非常に起きにくい仕組みを実現することが可能なのです。

1-2.手数料が安い

従来の法定通貨による寄付では、振込手数料や海外送金手数料、クレジットカードでの寄付であれば数%の決済手数料を支払う必要がありました。こうした手数料の存在は、寄付を受け取る人・団体の受取金額が減ることに直結してしまいます。

しかし仮想通貨での寄付なら、大概の場合においてこれらの手数料よりも安い手数料率で寄付金を届けることが可能になります。例えばビットコインであれば、一度の送金に数十円~数百円相当の手数料がかかるのみであり、世界中どこでも追加料金無しで送付することが可能なため、特に海外への寄付においてコストメリットを発揮します。

仮想通貨を法定通貨に替えるには仮想通貨取引所を利用することになります。その際に手数料が0.1%~0.3%程度発生しますが、それでもクレジットカードでの寄付より圧倒的に安く、また法定通貨への換金を行わずビットコインで物資を購入し被災者等へ提供する形を取れれば、その仮想通貨取引所へ支払う手数料も無くて済むこととなります。

このボーダーレスな送金ができるという仮想通貨の強みは、今後寄付手段の一つとしてさらに拡大していくに値する要素であるのではないでしょうか。

2.実際の仮想通貨による寄付事例

上記のようなメリットを持つ仮想通貨ですが、実際にはどのような寄付に用いられたのでしょうか。いくつか事例をご紹介します。

2-1.西日本豪雨の被災地へ約1.6億円の寄付

2018年7月に西日本で起きた豪雨の影響により、主に山間部などにおいて土砂崩れや浸水など大規模な被害が発生しました。被災範囲が非常に広く、線路や道路といったインフラが破壊される事例も散見されました。

この災害に対し、世界最大級の仮想通貨取引所であるBinanceが仮想通貨による寄付を呼び掛けていました。同年7月18日のBinance社発表によると、合計時価141万USD相当(約1.6億円)もの仮想通貨が集まったとのことです。Binance社はこの資金を日本円に換金し、被災地支援のために寄付を行いました。

Binance社は本社をマルタに置く多国籍企業で、同社の運営する仮想通貨取引所は世界中に顧客を抱えています。このように海外企業が世界中の顧客から仮想通貨を集め、日本に多額の寄付を行う事例も出てきています。従来の寄付よりも簡単に世界中から資金を集められることの裏付けとも言えるでしょう。

2-2.ノートルダム大聖堂の修理費用

2019年4月、フランス・パリの代表的な建築物の一つであるノートルダム大聖堂が火災により焼失したことは記憶に新しいことと思います。この復興のための費用について、いくつかの団体が仮想通貨での寄付を募っていました。

Binanceや国際的なブロックチェーンイベントのBlockShowなどがビットコインやイーサリアム(ETH)といった仮想通貨での寄付を募集し、ノートルダム大聖堂の復興を支援しました。

集まった金額は寄付総額から見ると微々たるものだったそうですが、それでもまだ数少ない仮想通貨による寄付事例の一つとして実績が生まれたことは、確実にプラスの一歩であったのではないでしょうか。

2-3.ユニセフフランス支部が仮想通貨寄付を受付

2018年9月より、「ユニセフ・フランス」が9種類の仮想通貨での寄付を受け付けることとなりました。同団体のWebサイト上で直接寄付を行うことができるほか、「マイニングを活用した寄付」という独特なシステムも備えています。

マイニングとは簡単に言うと「ブロックチェーン取引の承認作業を行い、報酬の獲得を目指す」という、仮想通貨独特の仕組みです。自身のコンピュータをブロックチェーンネットワークに接続し、特定の計算を行うことで、新たに発行される仮想通貨を報酬としてゲットしようとするものです。

このユニセフ・フランスにおけるマイニング寄付では、本来はマイニングを行ったユーザーに報酬が行くところを、ユニセフ・フランスが受け取る形にすることで「無料の寄付」を実現したというわけです。

お金のかわりにコンピュータの計算力を寄付するという、従来ではおよそ考えられなかった新しい仕組みも、ブロックチェーンが生み出した独自の強みの一つであると言えるでしょう。

2-4.仮想通貨×社会貢献プロジェクト「actcoin」

以前のコラムでも取り上げた、日本の「actcoin」というプロジェクトでは、サイト上で様々な社会貢献プログラムに申し込むことで、その報酬として寄付などに利用できる独自のトークンを受け取ることができます。

プログラムの内容は多岐に渡りますが、現状では日本におけるSDGs(国連による「持続可能な開発目標」の意)を意識したイベントがメインとなっています。17個あるSDGsの各目標のうち、どの目標達成に繋がるイベントなのかがそれぞれに記載され、一目で「自分が何に貢献できるのか」を把握することが可能です。

ユーザーが社会貢献活動に参加すると、寄付などに使えるトークンが貰え、「社会貢献活動のサイクル」が生まれるという新しい取り組み。まだローンチして日が浅いため、トークンの利用手段はこれから充実していく見込みとなっていますが、こうした社会貢献プラットフォームがどう世の中を変えていくのかは注視したいところです。

まとめ

仮想通貨には送金手数料が安く、海外送金でも追加の費用などがかからないといったメリットがあります。また、仮想通貨の取引履歴は全てブロックチェーン上で可視化され、さらに改ざんされることもないため、従来問題となっていた寄付の透明性も担保することが可能です。

まだ法定通貨の利用者に対して仮想通貨利用者の割合は少ないと見られますが、今後世界中で仮想通貨が普及していくにつれ、仮想通貨を用いた寄付も盛んになってくることでしょう。

IT化の波が進むことによってボーダーレス化していった世界は、国家間格差という問題をより浮き彫りにし、その解消を迫られています。そうした中で寄付という行為はますます注目を集めています。

今後、仮想通貨が社会問題を解決する重要な要素の一つとなっていくのも想像に難くないでしょう。

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すずき 教平

ブロックチェーンや仮想通貨を活用したシステムの開発、導入支援やコンサルティングを行う「合同会社むすびて」代表。ブロックチェーンの可能性に惹かれ、様々な仮想通貨を入手してみたり、プロダクトを開発してみたりしつつ日々を過ごしています。 HEDGE GUIDEでは、ビジネスの観点から見た仮想通貨コラムを読みやすさにこだわって執筆していきます。