コロナウィルス対策とブロックチェーン、その活用事例と背景

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世界中でコロナウィルスが猛威を振るっている状況です。日本も感染者数が増加する中、緊急事態宣言により外出や営業を控えることが一般的になり、繁華街はもはや閑散としています。

コロナウィルスへの対策は世界各国で盛んに行われており、政府も民間企業も各々真剣に対策を打ち出し実行しています。しかしこの環境下では情報の錯綜やサプライチェーンの混乱など、様々な問題が生じており、これについても対処が迫られる状況となっています。

そうした中で、ブロックチェーンがコロナウィルス対策の一つのソリューションとして注目され始めている現状があります。今回はブロックチェーンを用いたコロナウィルス対策の事例を3つほどご紹介し、その背景まで探っていきたいと思います。

目次

  1. サプライチェーンへの利用
  2. コロナウィルス情報管理への利用
  3. 仮想通貨を用いた寄付活動
  4. まとめ

1.サプライチェーンへの利用

医療備品の配送は、コロナウィルス患者への措置を行うにあたって非常に大切な要素の一つです。例えば中国のSF Express社は、その医療備品配送におけるトレーサビリティ確保のためにブロックチェーンを利用したソリューションを研究しています。

記録された情報を改ざんすることが困難というブロックチェーンの強みは、嘘偽りのない透明なトレーサビリティの実現において注目されている技術です。SF Expressではコロナウィルス対策にあたり、医療備品の配送において偽物や不適格品を排除した信頼性あるサプライチェーン管理ソリューションをブロックチェーンを用いて開発しています。

患者の容態を左右することを考えると、医療備品の早急かつ正確な配送は欠かせません。しかし、備品の配送において誰かが偽物や品質基準に合わない製品を紛れ込ませて不当な利益を得ようとする場合、それを厳密に排除できるシステムがなければ、医療体制が脅かさる可能性があります。

そこでSF Expressのソリューションでは、ビッグデータ分析を用いることで配送の優先順位を導き出し、同時に配送品の正確性も担保する仕組みを構築します。これによりスクリーニングされた正確な情報をブロックチェーン上に書き込むことで、誰かが改ざんすることのない正確なトレーサビリティが実現できる、というものです。

システムの詳細は明らかになっていませんが、未だ予断を許さない中国において、一定の成果が発揮されることを期待します。

2.コロナウィルス情報管理への利用

アメリカ発の「MiPasa」「Acoer」といった、コロナウィルスの最新状況を確認できるアプリケーションがあります。これらは信頼に足る特定の機関からソースを取得し、さらにフェイクチェックを行った上で情報をブロックチェーンに書き込むことによって、改ざんの心配がなく信頼性の高いデータを確認できるようにするものです。

コロナウィルスを巡るデータや情報についてはデマや悪意を持ったフェイクも散見されます。このSNS全盛時代に特に厄介なのは、感染症の専門家ではない「ただの有名人」、あるいは「ちょっとかじった程度のエセ専門家」が誤った情報や見解をもっともらしく発信することで、デマ情報が流布しやすくなってしまったことです。

さらに、中には政治的・商売的な思惑で意図的に改ざんした情報を広めようとするケースもあります。こうした状況は東日本大震災などの時と変わりありません。このようなことから、信頼に足る正確な情報を発信することの意義は大きいと言えます。

3.仮想通貨を用いた寄付活動

世界トップクラスの取引量を誇る取引所Binanceでは、「Crypto Against COVID」という名称で、コロナウィルス対策のための医薬品購入費などに向けた寄付を行うプロジェクトを立ち上げました。

この寄付はすべて仮想通貨にて行われるため、寄付や資金の状態は全てブロックチェーン・分散型台帳上に記録され、世界中の誰もが閲覧することが可能です。最終的には現金化されたうえで寄付されるため、最初から最後まで資金の流れをトレースすることは出来ないものの、透明度の高い寄付行為が可能になるという仮想通貨の強みをスマートに活かした取り組みだと言えるでしょう。

このプロジェクトでは合計400万USD相当の仮想通貨を集めることを目標としており、4月20日16時40分時点では約267.7万USD相当の仮想通貨が集まっています。

まとめ

ここで紹介した以外にも様々に同じ分野での取り組みが行われており、先端技術の一つであるブロックチェーンをコロナウィルス対策に活用しようとする動きが世界中で起こり始めています。特に被害が深刻かつIT産業の主要国家である米国と中国では多くの取り組みがなされている状況です。

ブロックチェーンの神髄はトラストレス、つまり「特定の管理者がいない分散型ネットワークにおける不正を排除する仕組み」を有していることです。パンデミックのように影響が社会の広範に一挙に及ぶような災害においては、このブロックチェーンの強みが対策にマッチすると言えます。

コロナウィルスの蔓延はもはや一企業、ましてや一国家ですら対処できる範疇を超えています。ゆえに数多くの事業者が各々で対策を講じ、一定の成果を挙げていたり、反面情報が錯綜してカオスになってしまったり、という状況になっているのです。

この数多くのプレイヤーが横並びで自律的に活動する状況はまさしく「分散型」の構図そのものであり、そのネットワークにおいて情報の正確性を担保するには、従来のデータベースを用いたIT技術よりもブロックチェーンの方が低コストかつ素早くソリューションを構築できる可能性があるのです。

幸か不幸か、未だ懐疑的な視線も多いブロックチェーンという技術は、このパンデミックの状況下において今一度その名を知らしめる可能性をはらんでいるのではないでしょうか。

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すずき 教平

ブロックチェーンや仮想通貨を活用したシステムの開発、導入支援やコンサルティングを行う「合同会社むすびて」代表。ブロックチェーンの可能性に惹かれ、様々な仮想通貨を入手してみたり、プロダクトを開発してみたりしつつ日々を過ごしています。 HEDGE GUIDEでは、ビジネスの観点から見た仮想通貨コラムを読みやすさにこだわって執筆していきます。