米国における仮想通貨の利用環境、日本との違い

今回は、仮想通貨を用いた個人向けの実利用や決済、運用について、Coinbaseを主とした米国の色々なサービスを信玄氏(@shingen_crypto)が解説したコラムを公開します。

目次

  1. ステーブルコインの存在
  2. ステーブルコインから法定通貨への交換プロセス比較
  3. レンディングサービスやステーブルコインとの親和性
    3-1. Dharma
    3-2. Coinbase
    3-3. BlockFi
    3-4. Paxos
  4. 仮想通貨による決済サービス
    4-1. Coinbase Commerce
    4-2. Coinbase Card
    4-3. Wyre
  5. まとめ

2018年初頭のバブルとハッキング事件以降、日本では仮想通貨の知名度は上昇したものの様々な背景から個人向けの実利用や決済、運用という面ではあまり進んでいないというのが一般的な個人ユーザーの所感では無いでしょうか。

しかし海外を含む界隈全体で見れば仮想通貨を利用した様々なサービスが出ており、バブル当時の2年前とは全く違う光景が広がっています。そこで、今回はCoinbaseを主とした米国の色々なサービスを簡単に紹介します。

ステーブルコインの存在

仮想通貨の一般利用を考える上ではステーブルコインが重要な鍵となります。決済や保有を含め最も多くの人が求めるのは価格の不安定な仮想通貨よりも法定通貨と同額で価格安定したものになるでしょう。特に課税の観点からもステーブルコインの方が便利です。

USDは世界の基軸通貨である事からも仮想通貨のステーブルコインは大半がUSDベースです。それだけではなく、米国のユーザーは一部のサービスを利用する事で法定通貨のUSDとステーブルコインのUSDを実質手数料無しで互いに交換させる事が出来ています。

法定通貨の担保があり、発行体への信頼性が比較的高いUSDステーブルコインとしては最も代表的なのはCoinbaseの提供するUSDCでしょう。他にもBlockFiのカストディとしても有名なGeminiでもGUSDが手数料無しの交換が可能ですし、BinanceやHuobiのステーブルコインをサポートしているPaxosでもUSDからBUSD/PAX/HUSDに対して手数料無しに交換が可能です。

しかし、中国を筆頭に取引所で最も人気のあるUSDTを除き、現状米国やDeFiを含めて上記で最も人気があり、利便性が高いのはCoinbaseが発行体でもあるUSDCです。

ステーブルコインから法定通貨への交換プロセス比較

国内取引所における取扱銘柄の少なさ、デリバティブやレバレッジ取引の制限、出来高等を含めて、多くのヘビーユーザーは海外の取引所を利用しているのが現実だと考えられます。そしてDeFiサービスでも実質的には日本円が扱われていません。

これらを踏まえると、日本の仮想通貨ユーザーはそれなりの割合で、法定通貨退避や運用を行う上でUSDステーブルコインを利用していると考えられます。

それではUSDステーブルコインを保有している日本ユーザーが、法定通貨のJPYへ交換する際のプロセスと、米国ユーザーがUSDステーブルコインを法定通貨のUSDへ交換するプロセスを比較してみましょう。

※下記の図ではUSDCを例に挙げて、取引所経由で法定通貨へ交換する前提となります

大きな相違点として日本ユーザー側のデメリットをピックアップします。

  1. USDCから国内取引所取扱される仮想通貨への交換と、国内取引所での日本円への交換により二重の手数料が発生
  2. 仮想通貨への交換から国内取引所への入金プロセスと確認には時間がかかる為、価格変動のリスクがある (ただし同額の仮想通貨を予め国内取引所側に用意する事で回避は可能)

こうして比較してみると、圧倒的な利便性の違いが感じられるのではないでしょうか。

上記に加え、国内取引所内での取扱銘柄が非常に少なく限られている故に海外取引所やサービスを使うインセンティブが高まる傾向があるため、より一層こうしたデメリットを受ける傾向が出てきます。

レンディングサービスやステーブルコインとの親和性

幾つかのサービスを例に挙げて説明します。

Dharma

DharmaはCrypto Bankをテーマとし、DAIを主軸にしたサービスです。

DAIはEthereumのDeFiを代表するステーブルコインであり、米国最大手取引所であるCoinbaseではUSDCとDAI両方の取り扱いがあるものの、DAIは手数料無しにUSD(C)への交換は出来ません。しかしながら、DharmaというContract Walletのサービスでは預けたDAIでDeFiレンディングの金利を得ながら、いつでも米国の対応銀行に対してDAI=1USDとしての出金が可能になっています。

入金についてもデビットカードやApple Pay、直接の入金が可能であり、こうした入出金におけるDharma側の手数料は無料です。ビジネスモデルとしてはDharma側がレンディング金利から10%を受け取る仕組みになっている為、利用者が増える程に金利収入が増えていくという訳です。(例: レンディング金利が5%の場合、ユーザーの受け取りが金利4.5%、Dharma側は0.5%となる)

Coinbase

Coinbase Walletからは手持ちのトークンを直接DeFiのレンディングへの利用が可能になっている等、取引所とDeFiを含めた金融サービスへの距離感が近くなっています。(ただしDeFiのリスクは自己責任である点は了承するAgreementを通したユーザーのみがアクセス可能)

BlockFi

他にも高金利レンディングで有名なBlockFiがありますが、こちらもUSDで入金をするとGUSDに変換されます。2020年3月現在ではGUSD、USDCの金利が8.6%APYという魅力的な数値でレンディングサービスの中でも非常に人気があるサービスです。

BlockFiもUSD出金に対応していますが、条件がGUSDとUSDCを合計250,000USD以上となっている為に敷居は高めとなっています。とは言え普通にUSDC出金が可能であり、Coinbaseにでも送ればUSDCをUSD化出来る為に大きな問題は無いでしょう。

Paxos

冒頭でも紹介した通り、Paxosでは様々なUSDステーブルコインを提供しています。具体的には自社ブランドのPAX、BinanceのBUSD、HuobiのHUSDが該当します。PaxosユーザーはUSDを入金する事でこれら三種類のステーブルコイン何れかに対して1:1で交換する事が可能であり、一定の制限はあるもののUSDとして出金する事も可能な模様です。

加えてPaxosではPAXGというゴールドトークンを取り扱っています。こちらも一定の制限はあるもののゴールドでの入金、ゴールドバー現物での出金さえも提供しています。

仮想通貨による決済サービス

米国で利用可能な仮想通貨決済サービスは複数ありますが、有名どころではCoinbase Commerce、Bitpay、Wyre辺りでしょうか。

Coinbase Commerce

Coinbaseが提供する決済サービスのCoinbase CommerceではBTC/BHC/DAI/ETH/LTC/USDCの6種類が取り扱い可能であり、Shopifyを代表として組み込みの選択肢が豊富です。2020年3月下旬にはおよそ8,000の小売で累計200ミリオン$(およそ21.7兆円)の決済が行われたとのニュースが出ていました。

Coinbase Card

Coinbaseは同社のアカウントが保有する仮想通貨で決済出来るVISAデビットカードも提供しています。これが使えれば、Coinbaseの残高を利用してVISA対応の決済が出来ます。銀行への出金を挟む事無く日常利用出来るというのは大きなアドバンテージと言えるでしょう。このデビットカードは20カ国以上のユーザーが利用可能なのですが残念ながら日本はその対象に含まれておりません。

Wyre

Wyreは”Fiat on Ramp”をテーマに開発者フレンドリーな決済サービスを提供しています。ただしテーマの通り、重視するのは入り口のみですし口座を持たず店舗毎の決済サービスである為、銀行への出金等はサポートしていません。その代わりApple PayとGoogle Payにも対応している事から利便性の高さが伺えます。

下記はWyreで対応している決済通貨表です。興味深い点としては、USDCは無いがDAIがあったり、ETHのみでなくWETH(ERC20化したETH)に対応しているところです。また残念ながらJPYは対応しておりません。

まとめ

上記は上記の中からCoinbaseのサービスに対してそれぞれの役割を補足し列挙した図です。今回色々なサービスを挙げましたが、こうしてCoinbaseで取り扱う一部のサービスのみを取り上げても利便性の高さが垣間見えるのではないでしょうか。

これらのサービスは単体では大きな効果は無いかもしれませんが、こうして多くのサービスが揃ってくると話は変わります。既存の金融商品より高リスク且つ自己責任の側面が強い仮想通貨ですが、それらのデメリットを上回る魅力や可能性が徐々に出てきています。

具体的な例を挙げるとすれば、ステーブルコインのレンディングサービスで得た金利収入を日常の決済に利用したり法定通貨化して銀行へ出金といった事が出来る訳です。これだけ色々揃っていれば銀行預金よりこちらを選んだり、新たに興味を持つ人はもっと増えるのではないでしょうか。

現状では国内を見ていると日常利用やシームレスな入出金は考えられないかもしれません。しかしながら国内と海外の状況では大きな隔たりがある為、外に目を向ければ徐々に足場は固められてきていると感じられます。

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信玄

信玄

本業の傍ら趣味でブロックチェーン関連のリサーチを行うITインフラエンジニア。 DeFiを筆頭にDID、NFT、Layer2、Fiat Gateway、Contract Wallet等、幅広く情報を追っている。Twitter:@shingen_crypto