転勤に伴う引越しや相続した土地の処分をする際、不動産売却にかかる手数料や税金などを心配する方も多いのではないでしょうか。
売却費用には様々な種類があり、不動産会社に支払う仲介手数料だけでも100万円を超えることがあります。不動産売却ではいざという時に現金が足りなくなることがないよう、支払いがいくら発生するのかを把握し、準備しておくことが大切です。
今回は不動産の売却で必要となる費用について詳しく解説します。売却にかかる手数料や税金の種類、内容と相場、注意点などを紹介しますので、不動産売却を検討している方はぜひご参考ください。
目次
- 不動産売却で生じる主な費用
1-1.仲介手数料
1-2.抵当権抹消登記費用
1-3.住所変更登記費用
1-4.測量費用
1-5.住み替えローンの手数料
1-6.リフォーム費、ハウスクリーニング費 - 不動産売却にかかる税金
2-1.譲渡所得税
2-2.印紙税 - まとめ
1 不動産売却で生じる主な費用
自宅を含め不動産を売却する時に必要となる主な費用の種類には次のものがあります。
- 仲介手数料
- 抵当権抹消登記費用
- 住所変更登記費用
- 測量費用
- 住み替えローンの手数料
- リフォーム費・ハウスクリーニング費
それぞれの内容と相場を見ていきましょう。
1-1 仲介手数料
個人が自宅を売却する際は、不動産会社に仲介を依頼するのが一般的です。買主との売買契約成立後には不動産会社に対して仲介手数料を支払わなければなりません。仲介手数料は事業者によって異なりますが、上限は法律で次のように定まっています。
取引額 | 仲介手数料 |
---|---|
200万円以下 | 売却価額×5% |
200万円超400万円以下 | 売却価額×4%+2万円 |
400万円超 | 売却価額×3%+6万円 |
参照:SUUMO「売却時の仲介手数料とは?いくらかかる?」
仲介手数料の相場
仲介手数料の相場は業界全般として上限値に近い金額となりますが、地域によって多少異なります。都市部では売却価額が高くなるため、仲介手数料も高くなる傾向があります。そのため都市部での仲介手数料は上限値から割り引かれるケースも少なくありません。
他方、売却価額が低い地方などでは仲介手数料の上限値も低くなるため、割り引かれる余地が少なくなります。その結果、地方等での仲介手数料は上限値が相場となる傾向があります。
仲介手数料に関する注意点
不動産会社の仲介手数料は、各地域や会社の事業規模などで異なるため、複数の会社を比較検討しましょう。信頼できる不動産会社を選ぶときは、仲介手数料の大小だけでなく、「売却の実績」「売却システムの充実度」「営業担当者の質や熱心さ」なども評価したほうが良いと言えます。なお、仲介手数料には消費税がかかることも留意しておきましょう。
1-2 抵当権抹消登記費用
自宅購入で住宅ローンを利用している場合、金融機関が担保として押さえるための「抵当権」が設定されています。抵当権を残したまま売却することはできないため、抵当権を抹消する必要があります。これを抵当権抹消登記といいます。
抵当権を抹消するには、住宅ローンが完済となっていること(残債がある場合は完済すること)の金融機関の証明書や「抵当権抹消登記申請書」などを、管轄の法務局へ届ける必要があります。抵当権抹消登記は法務局で行うことになり、その際に「登録免許税」がかかります。
なお、抵当権抹消登記手続は個人でも行えますが、一般的には銀行指定の司法書士に依頼するケースが多く、その場合委託手数料が必要になります。
抵当権抹消登記の相場
抵当権抹消登記の登録免許税は1不動産につき1,000円、戸建てなどの場合は建物と土地の各々で計2,000円が必要となります。また、抵当権抹消登記の手続きを司法書士に頼む場合、登録免許税とは別に司法書士報酬として1~2万円ほどかかります。
抵当権抹消登記の注意点
抵当権抹消登記を個人で行う場合、日中、法務局や金融機関等に出向くことになり、書類準備などで時間も取られます。一方、不動産会社を通じて司法書士に依頼する場合は、そうした作業を委任できるものの、不動産会社の手数料が含まれ高くなることもあります。
不動産会社指定の司法書士ではなく、自ら選んだ司法書士に登記を依頼することで、こうした心配は避けることができます。
1-3 住所変更登記
所有者の現在の住所と登記簿上の住所が一致していない場合、不動産を売却できない可能性もあるため、住所変更登記が必要になることがあります。
不動産を購入した時に以前の住所の状態で所有権移転登記をしていた場合や、購入後に住所を移した場合は、現在の住所と登記簿上の住所が一致していない状態となります。このとき、法務局では売主が不動産の本当の所有者かどうかを判断できないため、新しい買主への名義変更ができません。
そのため、住所変更登記を行い、現住所と登記上の住所を一致させなければならなくなります。なお、市町村による住居表示の実施に伴う地番の変更がある場合も住所変更登記をする必要があります。
登記手続は個人でも行えますが、司法書士に依頼するケースが多く、その場合は手数料が必要です。
住所変更登記の相場
登録免許税は、不動産1個につき1,000円で、このほか謄本代(全部事項証明書)の取得費用などもかかります(数百円程度)。なお、司法書士に住所変更登記を依頼すると1万〜2万円ほどの手数料が必要になります。
住所変更登記に関する注意点
不動産売却では所有権移転登記を前提に住所変更登記をします。司法書士に依頼する際は、手数料を節約するため住所変更登記を一緒に依頼したほうが割安になるか、それとも割高になるかを確認しておいたほうが良いでしょう。
1-4 測量費用
土地取引では、隣接する土地との境界についてトラブルとなるケースが多いため、その回避手段として測量が利用されています。たとえば登記簿や図面の内容が古すぎて現在の状況と異なっている場合、そのまま売却してしまうと買主との間でトラブルが生じかねません。
そこで現在の土地の面積、境界線、権利関係を明らかにする目的で測量を実施することがあります。なお、土地の測量は任意で義務ではありませんが、買主から求められるケースが多くあります。たとえば測量がよく行われるケースは次のような土地です。
- 壁、フェンスや境界杭などがない土地
- 地価が高い地域の土地
- その他境界の分かりにくい土地
測量費用の相場
測量は土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。手数料は土地の面積等により異なりますが、35万円~45万円程度(30〜100坪位)かかります(官民査定省略の現況測量)。
なお、道路に面する土地などの場合、官民査定(公有地と民間地の境界線を査定する行為)となり、費用も高額になります。30〜100坪位の土地の官民査定の場合、60万円~80万円程度かかることもあります。
測量に関する注意点
境界を確認する場合、隣接地関係者の立会いや、境界杭設置に関する承諾などが必要となるため、関係者には事前にその内容を伝え依頼しておきます。
また測量の手数料は官民査定でなくても対象の土地の形状が複雑であったり、トラブルになっていたりする場合、相場以上の費用がかかることもあるため、事前に土地家屋調査士に依頼して確認しておきましょう。
1-5 住み替えローンの手数料
「住み替えローン」とは、現在の自宅を売却しても住宅ローンを完済できない場合に、その残債や新しい自宅の購入資金について融資してくれる貸し付けサービスです。住み替えローンは現在の自宅の残債がある方のみ利用できるローンとなるため、残債のない方が買い替えする場合は一般の住宅ローンを利用することになります。
利用条件は各金融機関で異なりますが、たとえば「年収500万円以上」「住宅ローンでの遅延なし」などとなります。使い道は「自宅の買い替え・建て替えの資金および関連する諸費用」「現在の自宅取得に要した借入の残債務から売却額を引いた費用」などとなります。
住み替えローンを利用する場合、保証会社からの保証を利用するため、保証料と事務手数料が必要になります。
住み替えローン手数料の相場
住み替えローンの手数料について解説します。
例えばみずほ銀行の保証料は「一部を前払いする方法」か、「借入利率に含める方法」かで異なります。以下はみずほ銀行で借入金額1,000万円、保証料一部前払方式の場合における手数料額です。
項目 | 元利均等返済の場合 | 元金均等返済 |
---|---|---|
5年 | 45,800円~160,290円 | 43,060円~150,640円 |
10年 | 85,440円~299,090円 | 76,060円~266,330円 |
20年 | 148,340円~519,280円 | 122,770円~429,670円 |
参照:みずほ銀行「買い替えローン商品概要」(2019年2月22日時点)
保証料を借入利率に含める方式を選択した場合は、「保証料を一部前払いする方式」の金利に年率0.2%が上乗せられた金利が適用されます。また、別途事務手数料として、上記とは別に33,000円(税込)が発生します。
住み替えローンの注意点
住み替えローンを利用する際は、「通常の住宅ローンより返済負荷が重い」「借入額が担保価値よりも大きくなるため審査が厳しくなる」などの点に留意しましょう。
1-6 リフォーム費、ハウスクリーニング費
不動産を少しでも高く売却するためには家の状態をキレイにしておくことがポイントです。そこでハウスクリーニングやリフォームの実施も検討すると良いでしょう。
買主が不動産の内見に来たときに水回りやクロスなどの汚れ、壁の傷・穴が目立つようでは購入意欲が減退するため、状態によってはハウスクリーニングを業者に依頼しましょう。また、ハウスクリーニングでも解消しにくい状態ならリフォームの実施によって資産価値が向上することもあるため積極的に検討しましょう。
ハウスクリーニングの相場
ハウスクリーニングの費用は、自宅の対象箇所によって価格が異なりますが、平均すると次の価格帯が参考になります。
- バス:10,000〜20,000円
- トイレ:7,000〜15,000円
- キッチン:10,000〜25,000円
- レンジフード:10,000〜20,000円
なお、自宅全てをハウスクリーニングする場合、個別に依頼するよりも割安になることもあるので業者に相談してみましょう。
一方、リフォームの費用は建物のタイプや大きさにより異なりますが、マンションの各部分の費用としては次のような価格帯が参考になります。
- キッチンのオール電化:200,000〜30,0000円
- トイレ:100,000〜200,000円
- クロス・壁紙の張替え(30㎡):30,000〜50,000円
- フローリングの張替え(6畳):100,000〜200,000円
リフォーム、ハウスクリーニングの注意点
リフォーム・ハウスクリーニングも業者によって価格が異なるため、複数の業者から見積りを取り、比較検討することが重要です。ただし、業者を選ぶ際は費用の安さだけでなく、仕事の丁寧さ・誠実さなどを実績や口コミから評価したほうが良いでしょう。
2 不動産売却にかかる税金
不動産を売却すると「譲渡所得税」と「印紙税」が発生することがあります。それぞれ見ていきましょう。
2-1 譲渡所得税
不動産を売却して利益が生じた場合、譲渡所得として課税(所得税、住民税、復興特別所得税)されることになります。譲渡所得は「売却価格-取得費-譲渡費用」で計算されます。
売却価格とは「不動産を売った時の収入金額」、取得費とは「不動産を購入した時の費用」、譲渡費用とは「不動産を売却した時の費用」です。なお、売却してマイナスとなる場合は課税されません。
取得費となる費用には次のものがあります。
- 土地や建物の購入代金
- 建築費用
- 登録免許税
- 不動産取得税
- 印紙税
- 仲介手数料
- 測量費
- 整地費用・建物の解体費用
- 設備費
- 改良費
- 借入金の利子
取得費が判断できない場合(親の家を相続した場合など)は収入金額の5%を取得費とみなすことがあります。また取得費の中の「建物の購入代金」や「建築費用」では、建物等の減価償却費を控除する必要があります。
譲渡費用に含まれるものは、「売主負担の印紙税」「売却のための仲介手数料」「土地を売却する場合の建物の解体費・測量費」などになります。
譲渡所得の税率
譲渡所得の税額を計算する際の税率は、売却する年の1月1日現在における不動産の所有期間によって次のようになります。
・短期譲渡所得(所有期間5年以下)
39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)・長期譲渡所得(所有期間5年超)
20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)※2013〜2037年までは復興特別所得税が所得税額の2.1%加算される
参照:国税庁「土地や建物を売ったとき」
譲渡所得に関する注意点
不動産の譲渡所得は給与所得や事業所得と切り離して税務申告する必要がある「分離課税」となります。日中仕事で忙しかったり、時間がなかったりする時は確定申告手続きを税理士に依頼すると良いでしょう。税理士に依頼する場合の費用相場は10万円前後です。
また、自宅の売却で譲渡益が出た場合、「3千万円特別控除」や「10年超所有軽減税率の特例」などの特例制度が利用できるケースもあります。併せて税理士などの専門家に相談すると良いでしょう。
2-2 印紙税
不動産の売買契約書などの課税文書には印紙税が課税されます。このほか「建物の建築請負契約書」「土地賃貸借契約書」「ローンの金銭消費貸借契約書」なども印紙税の支払義務が生じます。
印紙税の金額は契約書等の記載金額で決まります。納付方法は、規定の印紙を購入し契約書等に貼付・消印することで完結します。なお、同じ契約書を複数作成する場合、1通ごとに印紙が必要です。
印紙税額
不動産売買契約書や不動産売渡証書などに関する印紙税は下表のように定まっています。
売却価格 | 印紙税額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上10万円以下のもの | 200円 |
10万円を超え50万円以下 | 400円 |
50 万円を超え100万円以下 | 1千円 |
100 万円を超え500万円以下 | 2千円 |
500 万円を超え1千万円以下 | 1万円 |
1千万円を超え5千万円以下 | 2万円 |
5千万円を超え1億円以下 | 6万円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 |
5億円を超え10億円以下 | 20万円 |
10億円を超え50億円以下 | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
参照:国税庁「印紙税額の一覧表(その1)」
印紙税に関する注意点
売主と買主の両方で不動産売買契約書を作成・保存する場合は各々の契約書に印紙を貼る必要があります。しかし、同じ内容の契約書について「原本」と「写し」に分けて「写し」を控えとする場合、「写し」には印紙を貼る必要がありません。
ただし、「写し」でも契約当事者の直筆の署名押印があれば、契約成立の証明を目的として作成された文書とみなされ課税文書になる可能性があるため注意しましょう。
まとめ
不動産の売却において発生する費用と税金について解説しました。項目は多いですが、一つひとつを事前にきちんと押さえておくことで、想定外にお金がかかってしまいトラブルになるといったことを防ぐことができます。
特に、不動産を売却してもローンが完済できない場合や、売却によって利益が出て譲渡所得の申告が必要になった際には、お金の取り扱いに注意が必要です。この記事の内容を参考に、スムーズに売却できるようにしましょう。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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