最近の不動産投資の広告や企業サイトを見ていると、「頭金10万円」「フルローン可」といった不動産投資ローンに関する売り文句を見かけることも多くなってきました。自己資金の持ち出しを少なくできることはたしかに魅力的ですが、ウマいだけの話も無いのが投資の世界です。この記事では、頭金を少なくすることのメリット・デメリットを整理し、不動産投資ローンの適切な頭金や繰り上げ返済などについて考えていきたいと思います。
不動産投資ローンは、年収の何倍まで借りられる?
そもそも不動産投資ローンは、いくらまで借りることができるものなのでしょうか? 正確な金額は、勤務先の企業の知名度や資産状況、借入状況によって大きく変わってしまいますが、一般的には年収の5倍~10倍程度と言われています。
年収500万円の方であれば、2,500万円~5,000万円くらいの物件が不動産投資ローンで購入できることになります。この価格帯の物件は、都心のワンルームマンション1戸~2戸の金額となります。サラリーマンにワンルームマンション投資が人気なのは、この借入によるところが大きいと言えるでしょう。
年収10倍以上のローンを借りることは決して不可能ではありませんが、その場合は不動産投資の初期費用を自己資金でまかなえることに加えて、配偶者や親族の資産といったところまで審査されることがありますので、あまり身の丈を超える投資には手を出さないほうが無難でしょう。
頭金はゼロ(フルローン)でも良い?
不動産投資会社のセミナーなどに参加すると、「頭金ゼロ(=フルローン)でも始められます」といったことを言われることがありますが、頭金ゼロは良いことばかりではありません。
頭金ゼロは、たしかに自己資金の持ち出しは少なくなりますが、裏を返せば、返済すべき原資が多くなってしまうということです。返済原資が多くなるということは、支払うべき利息が増えるということになりますので、自己資金は少なくなりますが、同時に返済総額が大きくなるということを頭に入れておく必要があります。
たとえば3000万円の物件を金利3%、35年ローン、頭金ゼロで借りた時の返済総額は4,849万円となります。これに頭金100万円を入れてみると返済総額は4,687万円となり、将来の返済額は160万円以上も違ってきます。100万円を35年で160万円以上に増やすことができるのであれば、頭金ゼロにしたほうがお得となりますが、そうでない場合はできるだけ早く返済を終えてしまったほうが、利息面でお得となります。
また、「頭金ゼロ」は、不動産投資を始める費用がゼロ円ということではないという点にも注意が必要です。不動産投資を開始するにあたっては、不動産の登記費用や印紙代などの初期費用と呼ばれるお金がかかります。これは物件価格の5%~7%程度の金額になりますので、3,000万円の物件であれば150万円前後の初期費用が発生するということも頭に入れておきましょう。
なお、頭金をゼロではなく、逆に数百万円から数千万円を入れると、返済の金利条件が大幅に優遇されることがあります。金融機関にとって、頭金を多く入れることができるということは、それだけ返済能力が高くリスクが低い貸し先という認識となりますので、他の人に比べて金利を安くしても付き合いたい相手となります。もし手元に余剰資金がある方は、頭金を交渉材料にしてみるのも一つの手と言えます。
オーバーローンとは?
物件の購入にかかる初期費用までローンでまかなうことを「オーバーローン」と呼びます。オーバーローンでは、初期費用と物件購入の借入とが別々にローンとして組まれ、初期費用のローンは金利がかなり割高となるケースが多いので、利用には特に注意が必要です。
また、そもそもの話として、物件の価格以上のローンを組むことになるので、事故や病気、突然の失業などで不動産投資を続けることが難しくなった時に、物件を売却したとしてもフルローンでは返済しなければいけない金額が残ってしまうことになります。
オーバーローンは一切の自己資金を必要としないため、不動産投資を始めるハードルを下げてくれるように見えますが、リスクのない投資はありませんので、利息が多くなるリスクや将来の返済額が膨らむというデメリットをしっかりとおさえておきましょう。
ローンの繰り上げ返済やボーナス返済はしたほうが良い?
ローンの返済方法については、繰り上げ返済やボーナス返済を勧められた方も多いかと思います。先ほど、頭金を入れることのメリット・デメリットをお話しましたが、繰り上げ返済についても、利息の支払いが少なくなるメリットがある一方で、手元の自己資金が減少するということがデメリットとなります。
返済後のローンの取り扱いに関しては、返済額を変えずに期間を短縮する「期間短縮型」と、期間を変えずに返済額を軽減する「返済額軽減型」の2つがあります。
どちらが良いというものではありませんが、たとえば、60歳を超えてローンを組んでいる方は、60歳までに完済できるように期間短縮型で繰り上げ返済を行うことがおすすめとなりますし、毎月の家賃収入を返済額が上回って赤字になっている方は返済額軽減型がおすすめとなります。
いずれにせよ、繰り上げ返済を行うことで不動産投資からの利益を上げやすくなりますので、可能であれば繰り上げ返済を行っていくほうがよいでしょう。ただ、繰り上げ返済を急ぐあまりに毎月の返済に支障が出るような返済の仕方は避けなければいけませんので、半年~1年程度の返済ができる自己資金の余裕をもって残りを繰り上げに当てるとよいでしょう。
なお、不動産投資を今後大きく拡大させていきたい方にとっては、繰り上げ返済が必ずしも良い選択とは限りません。自己資金を次の物件の初期費用に充てる必要があるためです。不動産投資の目標をしっかりと整理して、繰り上げ返済を行うかどうかを検討していきましょう。
まとめ:できる限り頭金を入れて、余裕を持った返済計画を
頭金ゼロは、今後のための自己資金を手元に残しておきたいという特別な事情がある方には有効な仕組みです。そうでない方は、家賃が突然ゼロ円になったり、事故や病気になって収入がなくなったりしても半年前後は返済が滞らない程度の資金を手元に残した上で、頭金をいれておくと良いでしょう。
また、返済方法については、残りの返済期間や毎月の収支を見て、期間短縮型にするか返済額軽減型にするかを決めると良いでしょう。
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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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