インターネットを通じて個人から広く資金を募るクラウドファンディングでの投資が注目を集めています。投資した資金に応じて配当金や利息を受け取れるのが特徴ですが、クラウドファンディング投資の種類によっては課税対象となるケースもあります。
また、受け取る所得の種類や開設する口座よっても確定申告の必要性が変わってくるので、投資をする際は注意が必要です。
そこでこの記事では、クラウドファンディング投資を検討している方のために、その特徴と種類、発生する税金の内容、確定申告の方法について詳しくご説明するので、参考にしてみてください。
目次
- クラウドファンディングの特徴と種類
1-1.融資型クラウドファンディング
1-2.不動産投資型クラウドファンディング
1-3.株式投資型クラウドファンディング
1-4.寄付型クラウドファンディング
1-5.購入型クラウドファンディング - クラウドファンディング投資にかかる税金の種類
2-1.「融資型」「不動産投資型」にかかる税金
2-2.「株式投資型」にかかる税金
2-3.「非投資型」にかかる税金 - クラウドファンディング投資で確定申告をする方法
3-1.配当金・分配金がある場合
3-2.株式売却による譲渡益がある場合 - まとめ
1 クラウドファンディングの特徴と種類
クラウドファンディングとは、特定の目的を有する個人や事業者などがインターネット上で多数の資金提供者を募り、少額資金を集める仕組みを指します。
クラウドファンディングはもともとcrowd(群集・大衆)とfunding(資金調達)を組み合わせた造語であり、資金を集めたい者(=プレゼンター)、資金を提供する者(=コレクター)、プレゼンターとコレクターのマッチングの場を提供するプラットフォーマー(=クラウドファンディング運営事業者)の3者で構成されます。
クラウドファンディングの登場によって非上場企業が資金調達をする機会が増え、一方、個人投資家はクラウドファンディングを通して、ベンチャー投資や社会貢献につながる新規プロジェクト等への応援が容易にできるようになりました。
なお、クラウドファンディングの種類は、主にリターンを求める「投資型」と、寄付が目的の「非投資型」に分かれます。投資型はさらに「融資(貸付)型」「ファンド型」「株式型」に分けられ、非投資型は「寄付型」「購入型」に分けることができます。
1-1 融資型クラウドファンディング
融資型クラウドファンディングは「ソーシャルレンディング」とも言われ、インターネット上で少額資金を集めて特定の事業者等へ融資するタイプです。クラウドファンディングの仕組みを提供する運営事業者が、資金調達者と資金提供者を結びつけ、融資の仲介を行います。
出資者である投資家にとっては、貸付けた資金に対して利子や元金が返済されるのが特徴で、予定利回りが10%以上になる高利回り案件も少なくありません。ただし、投資家の出資元本や配当金等の償還が保証されるものではありません。
融資型では投資家と運営事業者との間で匿名組合契約(当事者の投資家が営業者の営業のために出資し、利益配分請求権と出資価格返還請求権を持つが事業執行権のない組合)が結ばれ、特定の事業者等への貸付が行われます。
1-2 不動産投資型クラウドファンディング
不動産投資型クラウドファンディングは不動産の購入や賃貸事業に対して個人の投資家から資金提供者を募る仕組みで、資金提供者は売上等の成果などをもとにその出資額に応じた分配金やサービス等が受けられます。
不動産投資型では、ファンド(基金)をつくり運営する事業者と、資金を募集するためのプラットフォームを運営する事業者は別で、「第二種金融商品取引業」の免許を有するプラットフォーマーが資金の募集を行います。
投資家は不動産投資型クラウドファンディングを通じて特定の不動産投資プロジェクト等に応募し、そのファンドの匿名組合契約を結び出資します。なお、配当金が出るまでに2年以上かかる場合や、配当そのものが出ないこともあります。
1-3 株式投資型クラウドファンディング
株式投資型クラウドファンディングは非上場株式の発行によりインターネット上で多くの人から少額資金を集めるタイプです。出資者は業績に応じた配当金などのリターンが期待できます。株式型は金融商品を取り扱うため金融商品取引法の規制対象となり、資金提供を募集する事業者は金融商品取引業者としての登録が必要になります。
クラウドファンディング事業者は、株式型サービスで取り扱う株式とその株式を発行する会社の財務状況、事業計画や資金使途等を審査し、投資対象とする企業や事業を選定します。
なお、同一の会社がクラウドファンディングで資金調達できる金額は、年間1億円未満と定められています。また、1人の投資家がクラウドファンディングで投資可能な金額は、同一の会社が発行する株式につき年間50万円以下となっています。
株式型も投資に対する元本保証はなく、リスクの程度は各投資先によって異なりますが、新興ベンチャー企業などを対象とする場合は倒産リスクが高くなります。ただし、投資先が将来IPO(株式公開)やM&A(事業売却等)などのイグジットを実現すると、大きなリターンを得られる可能性もあります。
1-4 寄付型クラウドファンディング
寄付型クラウドファンディングは、寄付金を募るシンプルなタイプです。ボランティア活動や災害復興支援、難民救済など様々なプロジェクトに対して、クラウドファンディングを通じて寄付ができます。
寄附型は金銭的なリターンがないため、税法上は一般の募金と同様に扱われます。ただし、税金対策としての悪用を回避するため、募金する側の扱いも細かく設定されています。また、金銭の代わりに商品等のお返しがあるケースもあります。
1-5 購入型クラウドファンディング
購入型クラウドファンディングは、事業者が新商品開発等に必要な資金を広く募るタイプです。購入型を利用する投資家にとっては、「購入」という通常の商取引行為となるため、売買契約にもとづいて商品やサービスなどを受け取ることになります。
2 クラウドファンディング投資にかかる税金の種類
投資型のクラウドファンディングでは金銭的なリターンを得るタイプもあるため、納税が必要になる場合も生じます。
また、税金が生じないタイプであっても確定申告することで支払った所得税が還付されることもあるので、確認しておきましょう。
2-1 「融資型」「不動産投資型」にかかる税金
融資型クラウドファンディングや不動産投資型クラウドファンディングでは、投資資金の運用で利益が生じた場合、所得税や住民税が発生します。
「融資型」「不動産投資型」で受け取る利子や配当金(以下「分配金」)は雑所得としての扱いとなり、総合課税(各種の所得を合算して税金を計算する制度)の対象となります。投資家が受けとった分配金には、通常20.42%の所得税等が源泉徴収されます。
例えば、クラウドファンディング投資で25万円の配当金を得た場合、25万円×0.2042=5.105万円の税金が発生するので、19.895万円が最終的な利益になります。
基本的に源泉徴収されるので、給与所得のみ受け取っている方は確定申告をする必要はありませんが、給与所得と退職所得以外の所得が20万円超になる場合は、確定申告をしなければなりません。なお、源泉徴収税額が正規の所得税額より多くなる場合、確定申告すれば過納分が還付されます。
また、法人の場合、受け取った分配金は法人の収益とみなされるので、法人税および法人住民税・事業税の対象となります。
2-2 「株式型」にかかる税金
株式型クラウドファンディングは2017年以降に登場してきた新しい投資法になるので、法整備が完全に追い付いているとは言えません。そのため、現時点(2020年1月時点)で税金に関しては有価証券への投資と同じ扱いになります。
株式型で受け取った配当金は、配当所得として20.42%の所得税等が源泉徴収されます。取得した株式を売却して利益が生じた場合、譲渡所得としての利益にかかる税金として20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)が課税されます。
なお、譲渡所得は申告分離課税(他の所得の金額と区分して税金を計算する制度)になるので、給与所得者でも原則確定申告をする必要があります。ただし、源泉徴収ありの特定口座を利用している場合や、給与所得と退職金以外の所得が20万円以下の場合には、確定申告は不要です。
2-3 非投資型にかかる税金
非投資型クラウドファンディングの利用について、出資者が納税するケースは基本的にありません。しかし、確定申告により還付金が受けとれるケースがあるので確認しておきましょう。
寄付型にかかる税金
寄付型は、税法上、募金の形態に当たるため基本的に納税する必要はありません(※ただし、寄付金に対するお礼として受け取った返礼品の合計が50万円を超える場合は、一時所得として課税対象になる可能性もあります)。
なお、寄付型の利用で確定申告をすると「寄附金控除」もしくは「寄附金特別控除」の適用を受けられる場合もあります。寄附金控除の金額は、[前年の1/1~12/31に寄附をして受領された合計金額-2,000円]ですが、どの案件でも寄附金控除の適用を受けられるわけではないため、運営事業者に確認する必要があります。
購入型にかかる税金
購入型は税法上商品等を購入する形態と考えられるため、基本的に納税する必要はありません。受け取る商品等は現金化しにくいケースが多いため、一般的には課税の対象になりません。なお、個人事業主の方で、その商品等が事業に必要なものである場合は経費にすることも可能です。
3 クラウドファンディング投資で確定申告をする方法
投資型クラウドファンディングで分配金や株式の譲渡益が発生した場合の確定申告に必要な書類や手順を見ていきましょう。
3-1 配当金・分配金がある場合
雑所得となる利子や配当金などの分配金は源泉徴収されるので、原則、確定申告は不要です。しかし、この配当所得を含めて、給与所得と退職所得以外の所得が20万円超となる場合は、確定申告が必要になります。
雑所得は総合課税の対象となっており、給与所得などの他の収入と合算した総所得として税率が定まります。総合課税制度の計算手順は以下の通りです。
- 総合課税に該当する所得金額を合算する
- 該当する所得控除額があれば所得金額の合計額からを差し引く
- 所得税の速算表から該当する税率を適用し所得税額に乗じて計算する
なお、確定申告書の作成には以下の資料を利用し添付することになります。
支払調書 | クラウドファンディング事業者からの分配金は源泉徴収され、その源泉徴収した1年分をまとめた資料が「支払調書」となります。なお、支払調書がない場合は年間取引報告書を利用します。 |
給与所得の源泉徴収票 | 会社員・公務員の方の場合です。個人事業主の方などは各種収入に対する支払調書や源泉徴収票を利用します。 |
所得控除に関わる資料 | ・社会保険料の控除証明書(年末調整時に提出していないもの) ・生命保険料等の控除証明書(年末調整時に提出していないもの) 医療費控除を適用する場合は、医療費の明細書や病院等の領収書なども必要になります。 |
確定申告の書き方については国税庁HPの「申告書の記載例②(給与やその他の収入がある場合)」などが参考になるので、確認してみてください。
3-2 株式売却による譲渡益がある場合
非上場企業の有価証券を売却するなどして譲渡益がある場合は、申告分離課税の対象となるので、原則、確定申告が必要です。ただし、譲渡所得も含めて、給与所得や退職所得以外の所得が20万円以下の場合や、すでに税金の計算が済んでいる「特定口座(源泉徴収あり)」の場合は、確定申告をする必要はありません。
なお、申告分離課税の計算は以下の通り行います。
- 各所得区分の合計額を計算する
- 各々の所得に対して所得税率を乗じて所得税額を算出する
会社員の方の場合、給与所得と株式の譲渡益を確定申告書および譲渡所得の計算書に記入し、各々の税率に基づき所得税額を計算していきます。
確定申告書の作成では、「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」と確定申告書B第一表、第二表及び申告書第三表(分離課税用)が必要です(譲渡損失の繰越控除を利用したい場合は「所得税の確定申告書付表」なども)。
なお、申告書の書き方については国税庁「平成30年分株式等の譲渡所得等の申告のしかた(記載例)」の「特定口座を利用していないケース」が参考になります。詳しい内容は最寄りの税務署などで相談することもできます。
4 まとめ
クラウドファンディングには様々なタイプがありますが、特に「株式型」「不動産投資型」「融資型」では税金が発生して確定申告が必要になるケースもあるので、個人投資家の方は注意が必要です。
基本的には、給与所得や退職所得以外の所得が20万円を超える場合、確定申告をする必要があるので、各投資タイプの税金の内容をしっかり把握して、投資を検討してみてください。
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