夫婦の離婚、ペアローンで買った物件はどうなる?財産分与の手順を解説

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ペアローンは1つの物件に対し夫婦が1人ずつローンを組み、お互いが連帯保証人となっているローン契約の方法です。どちらかが住み続ける場合には契約の変更が必要となりますが、離婚時にペアローンで購入した物件はどう分与するのでしょうか?

本記事ではペアローンの物件を離婚時に分与する手順をケース別で解説していきます。離婚時の約束を公的な文書として残せる「離婚給付等契約公正証書」についても、あわせてお伝えしていきます。

目次

  1. 財産分与の前に確認したい2つのポイント
    1-1.売却には双方の同意が必要
    1-2.アンダーローンとオーバーローン
  2. ペアローンで購入した物件を売却する場合
    2-1.アンダーローンでの売却
    2-2.オーバーローンでの売却
  3. ペアローンで購入した物件に住み続ける場合
    3-1.ローンの契約を変更できるか確認する
    3-2.ローンの支払いについて話し合う
    3-3.契約変更が可能な場合は手続きを行う
  4. 離婚給付等契約公正証書の作成について
  5. まとめ

1.財産分与の前に確認したい2つのポイント

ペアローン物件の財産分与では、分与をする前に下記の2点に注意して進める必要があります。

  • 売却は双方の同意が必要である
  • 物件の資産価値とローン残債を比較する

2つのポイントについて詳しく見て行きましょう。

1-1.売却には双方の同意が必要

ペアローンで契約した物件を売却するためには、双方の同意が必要となります。物件はお互いが連帯保証人となり、不動産の所有権も共有名義となっている可能性が高いためです。

別居中の方でペアローン物件の売却を検討している方は、相手の同意を得た上で売却活動を行いましょう。

1-2.アンダーローンとオーバーローン

物件のローンが残っている場合には、物件の売却価格とローンの残債と比較しましょう。それぞれを比較した結果、物件の資産価値を知る事ができます。

  • オーバーローン:ローンの残債の方が多い→資産価値がマイナス
  • アンダーローン:売却価格の方が多い→資産価値がプラス

オーバーローンの物件は資産価値がマイナスの状態となっているため、原則的に財産分与の対象となりません。しかし、ペアローンを組んでいるため、ローン契約における返済の義務が発生します。

不動産の売却価格は複数の不動産会社へ査定依頼をすることが重要なポイントとなります。不動産の価格は一定ではなく需要によって変化しているため、不動産会社によって査定価格も異なるためです。

複数社へ不動産査定を依頼する際は、不動産一括査定サイトを利用すると効率的に進めることが出来ます。下記、主な不動産一括査定サイトの一覧です。

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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧

ローンの残債は残高証明書で分かりますが、多くの金融機関は年1回発行となるため直近の金額が知りたい方は金融機関の窓口で聞いてみましょう。

オーバーローンかアンダーローンによってその後の流れが異なります。それぞれ確認しましょう

オーバーローン物件の売却

  • 売却後もローンが残り、支払いを続ける
  • 金融機関の承諾を得て売却を行う「任意売却」を検討する

アンダーローン物件の売却

  • 売却した代金でローンを全て返済、残金を分与する

オーバーローン物件にどちらかが住み続ける

  • ローンの支払いについて2人で話し合う
  • 不動産を共有名義から単独名義へ変更する必要がある
  • ローンの契約を変更する

アンダーローン物件にどちらかが住み続ける

  • 「不動産の価額-ローン残債」が分与の対象となる
  • ローンの支払いについて2人で話し合う
  • 不動産を共有名義から単独名義へ変更する必要がある
  • ローンの契約を変更する

なお、ローンを完済した物件では不動産の所有権を変更する事が出来ますが、ローンが残っている場合には金融機関の許可が必要です。どちらかが住み続ける場合、ローン契約は住み続ける方の単独契約に変更する事になります。

2.ペアローンで購入した物件を売却する場合

ペアローンで購入した物件を売却する時の手順を、アンダーローンとオーバーローンのケース別で解説していきます。

2-1.アンダーローンでの売却

アンダーローン状態の物件を売却する時は不動産会社に仲介や買取を依頼し、売却を行いましょう。

売却にあたっては、売却の可否、売却価格、引き渡し時期など双方の意見を一致させることでスムーズな売却活動が可能となります。

意見が合わない段階ではまず話し合い、まとまらない時は家庭裁判所に調停・審判などの手続きを行い協議します。

売却後は売却代金でローンを返済し、残ったお金を話し合った割合で分与します。

【関連記事】はじめての不動産売却、手順や流れは?不動産会社の選び方も

2-2.オーバーローンでの売却

オーバーローンの際には、売却した後もローンが残ります。任意売却か通常売却、という2つの方法から選択することになります。

任意売却はローンを組む際に金融機関が設定した「抵当権(家を差し押さえる権利)」を外す事が可能で、金融機関の承諾を得て売却の可否、売却価格が決定します。任意売却後はローンの支払いを無理のない返済計画に変更して貰える可能性があります。

不動産会社の仲介や買取により売却を行う場合は、売却代金で相殺しきれなかった残債を一括返済する必要があります。残債を一括返済する資産がなく任意売却もできない場合は、抵当権を外せないために早期売却することが非常に難しくなります。

【関連記事】ローンが残っている家は売却できる?売却の手順、オーバーローンの対策も

3.ペアローンで購入した物件に住み続ける場合

ペアローンで購入した物件にどちらかが住み続ける場合、ローンの契約と名義を共有名義から単独名義に変更する必要があります。

3-1.ローンの契約を変更できるか確認する

ペアローンで購入した住居に残債があり、どちらかが住み続ける場合には、ローン契約を変更できるかがポイントとなります。

ペアローンは夫婦2人の収入を合算し債務を借り入れます。離婚後は世帯人数が2人から1人になり、世帯収入が少なくなるためローンの借り換えが難しい傾向にあります。

現在ローンを組んでいる金融機関での変更が難しい場合には保証人を増やす、金利を上げる、他の金融機関でローンを借り換える等の方法で対処しましょう。

収入が多くローン審査に通りやすい方がローンを買い取り、1本化するという方法もありますが、住み続ける方と1本化したローンの契約者が異なる場合にはトラブルが起きやすくなります。収入が多い方が住み続けるケースで利用できる方法となります。

アンダーローンの場合には、不動産の価額からローンの残債を差し引いた額が分与の対象となります。

3-2.ローンの支払いについて話し合う

ローンが残っている際には、離婚後ローンをどちらが支払うか、2人で返済する場合には返済割合や方法などを話し合いましょう。

3-3.契約変更が可能な場合は手続きを行う

契約の変更が可能である時には金融機関でローンの変更手続き、法務局で所有権の移転登記を行います。

4.離婚給付等契約公正証書の作成について

「約束していたのに住宅ローンの返済が滞っている」「話し合いでは名義変更に承諾したにも関わらず、離婚後に協力してくれない」等のトラブルを防ぐために、話し合った後には離婚給付等契約公正証書の作成を検討しておきましょう。

公正証書は公証役場で公証人立ち合いの元作成する文書で、署名・捺印を行った後原本は公証役場に20年保管されることから、証拠性が高い書類となります。

また、強制執行について記載する欄があり、「ローン返済が滞った場合は財産の〇%を差し押さえる」といった文章を載せる事で、裁判をすることなく差し押さえが可能になるケースがあります。

必要書類を準備する手間や書類作成までに一定の時間がかかりますが、離婚後のトラブルを防ぐ手段としては有効となります。

まとめ

ペアローンの物件は、どちらかが住み続ける場合にローンの契約変更可否がポイントとなります。ペアローンは二人分の収入で組まれたローン契約のため、契約変更が難しい場合もあることに注意しましょう。

売却時にはアンダーローンとオーバーローン、どちらの状態であるかが重要となります。アンダーローンの場合は比較的容易に売却と分与が可能ですが、オーバーローンの場合は任意売却や残金の一括返済ができるか、がポイントとなります。

それぞれの注意点を確認し、自身の状況と照らし合わせながらひとつずつ手順を踏み、対処していきましょう。

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田中 あさみ

経済学部在学中に2級FP技能士(AFP)の資格を取得。ライターとして不動産投資を含む投資や年金・保険・税金等の記事を執筆しています。医療系の勤務経験がありますので、医療×金融・投資も強みです。HEDGE GUIDEでは不動産投資を始め、投資分野等を分かりやすくお伝えできるよう日々努めてまいります。