NISA(つみたてNISA)に年末調整・確定申告が必要な場合と手続き方法

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確定申告の季節となりました。会社員や公務員など給与所得者の方は、確定申告には関係ないと思われている方も多いと思います。

NISAも原則として年末調整や確定申告の必要はありません。しかし、証券口座の種類によっては、NISA口座で非課税枠を超えた場合や、非課税期間が終了した場合には確定申告が必要となる場合があります。今回は、これらのケースのほか、給与所得者の方でも確定申告によりメリットが得られるケースについて説明いたします。

目次

  1. 証券会社の口座の種類
    1-1.源泉徴収ありの特定口座
    1-2.源泉徴収なしの特定口座
    1-3.一般口座
  2. NISA(つみたてNISA)口座で確定申告が必要な場合の手続き
  3. 給与所得者でも確定申告するとお得なケース
    3-1.10万円を超える医療費がかかった方
    3-2.株の売買で損失を出した方
    3-3.ふるさと納税でワンストップ特例を使わなかった方
    3-4.住宅ローン控除、寄付金控除(ふるさと納税以外)
  4. 給与所得者でも確定申告が必要なケース
  5. まとめ

1.証券会社の口座の種類

NISA(つみたてNISA)を始める場合、証券会社に口座を開設した後にNISA口座を開きます。証券会社の口座は、「源泉徴収ありの特定口座」、「源泉徴収なしの特定口座」、「一般口座」の3種類あり、そのなかから各自が使いやすい口座を選択します。

「源泉徴収ありの特定口座」を選んだ場合は、確定申告の必要がありません。しかし、そのほかの口座を選ぶと確定申告が必要となります。まず、それぞれの口座のメリット・デメリットについてみていきましょう。

1-1.源泉徴収ありの特定口座

確定申告をする必要がない口座です。ただし、損失を出した場合には確定申告をすることで翌年以降3年間、他の口座の利益や配当と通算し相殺することができます。

NISA口座で購入金額が非課税枠(120万円)を超えた場合や非課税期間が終了してしまった場合でも、確定申告の必要はありません。

メリット

源泉徴収ありの特定口座は、証券会社が売却損益や税金の計算を行い、税金は証券会社が本人に代わって収めてくれます。そのため、確定申告をする必要がありません。 
    

デメリット

株式売買益に自動的に課税されてしまいます。本来は課税されない「給与所得2,000万円以下で、かつ年間20万円以下の利益」の場合でも課税され税金が引かれてしまいます。株の売買益が少ない方は、割高な税金を支払っている可能性があります。自分の年間利益を振り返り、20万円以下の場合であれば口座を変更したほうが良いでしょう。

1-2.源泉徴収なしの特定口座

確定申告が必要な口座です。NISA口座は確定申告が必要ありませんが、この口座を選択し、NISA口座で購入金額が非課税枠を超えた場合や非課税期間が終了してしまった場合も、確定申告が必要です。

メリット

給与所得が2,000万円以下で、利益が20万以下の場合は確定申告をする必要がありません。

デメリット

確定申告をしなくてはいけないことがデメリットです。しかし、面倒な「株式等の売買損益の計算報告書(年間取得報告書)」は、証券会社が用意してくれるので自ら作成する必要はありません。

源泉徴収ありの特定口座は、売却益から証券会社が税金を収めてくれますが、この口座の場合は各自で税金を収める必要があります。株式売却益から税金相当額をプールする計画性が必要です。

1-3.一般口座

確定申告が必要な口座です。特定口座やNISA口座で管理していない上場株式等を管理する口座です。

メリット

給与所得が2,000万円以下で、利益が20万以下の場合は確定申告をする必要がありません。

デメリット

確定申告に必要な株式等の売買損益の計算を各自で作成する必要があります。

2.NISA(つみたてNISA)口座で確定申告が必要な場合の手続き

NISA(つみたてNISA)口座は確定申告が不要ですが、「源泉徴収なし」の特定口座でNISAの限度額を超えて売買した場合や非課税期間が終了してしまった場合、確定申告の必要があります。

この場合でも慌てることはありません。証券会社から送られてくる「年間取得報告書」には取引の詳細が掲載されているため簡単に確定申告ができます。

確定申告に必要な書類は、国税庁ホームページからダウンロードすることができます。

なお税務署や一部の役所では確定申告相談窓口を設置しています。チャットでも質問ができますので、不明な点などを相談されると良いでしょう。

3.給与所得者でも確定申告するとお得なケース

以下では、普段確定申告義務のない給与所得者の方に向けて、確定申告をした方がお得になるケースをご紹介します。合わせてご参考にしてください。

3-1.10万円を超える医療費がかかった方

病気やケガ等で年間10万円超、あるいは所得の5%以上の医療費を支払った場合には、確定申告をすることで医療費控除が受けられ、所得税の還付と翌年度の住民税が減額されます。

3-2.株の売買で損失を出した方

株式投資で損失を出した場合は、口座の源泉徴収のあり、なしにかかわらず確定申告をすることで、損失を翌年から3年間、他口座の利益や配当金と通算することができます。翌年以降の利益を圧縮できるため、支払う税金も少なくなるということです。

3-3.ふるさと納税のワンストップ特例を使わなかった方

ふるさと納税には、確定申告をしなくても寄付金控除が受けられるワンストップ特例という制度があります。しかし、寄付した自治体が6カ所以上の場合や、寄付をした全自治体にワンストップ特例の申請書を提出できなかった場合、確定申告をする必要があります。

確定申告を行う場合には、ワンストップ特例制度を利用した全自治体にふるさと納税の寄付控除を再度申請する必要がある点には注意しましょう。未申請だと還付・控除の適用外となってしまいます。

3-4.住宅ローン控除、寄付金控除(ふるさと納税以外)

上記のほか、「住宅ローンを組んでマイホームを取得した方」やふるさと納税以外の「寄付をされた方」も確定申告をすることで税額控除されます。

4.給与所得者でも確定申告が必要なケース

給与所得者の方でも確定申告が必要な場合もあるので注意しましょう。ソーシャルレンディング、仮想通貨の売買などで副収入(雑所得)が年間20万円を超えた方や、年収2,000万円以上の方、不動産を売却された方などは、確定申告をする必要があります。

給与以外の所得が発生した年については、自身に確定申告義務が生じるかどうか確認しておきましょう。もし申告義務がありながら確定申告を期間内に行わなかった場合、ペナルティとして納付すべき税金が加算されてしまいますので注意が必要です。

まとめ

株式市場が活況を呈しているなか、NISA(つみたてNISA)デビューを検討されている方も多いかと思います。NISAの年間非課税額は120万円です。この金額内で売買益20万円を目指す方は「源泉徴収あり」を、20万円以下なら「源泉徴収なし」を選択すると良いでしょう。

基本的にNISAでは確定申告義務は生じませんが、非課税枠を超えた場合など一定の条件においては確定申告が必要になる場合もあります。要件をよく確認し、必要であれば忘れずに確定申告を行うようにしましょう。

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藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。