生涯に一度の買い物として購入したマイホームも様々な事情から売却せざるを得ないことがあります。しかし住宅ローンの返済途中で債務が残っている場合、不動産をどのように売却すれば良いのかわからないという方は少なくありません。
そこで今回は、住宅ローンが残っている不動産を売却したい方向けに、不動産売却の流れやローンを完済する手順、そして完済できない場合の対処法をご紹介します。
目次
- 不動産売却の流れ
1-1.不動産の売却相場を調べる
1-2.不動産会社の売却査定を受ける
1-3.不動産会社に売却を依頼する
1-4.不動産の売り出し価格を決定する
1-5.販売活動を開始し、内覧や価格交渉に応じる
1-6.不動産の売買契約と引渡を行う
1-7.抵当権の抹消手続き - 売却するまでに住宅ローンを完済する方法
2-1.自己資金で住宅ローンを完済する
2-2.売却代金で住宅ローンを完済する
2-3.住み替えローンを利用する
2-3-1.住み替えローン利用の条件
2-3-2.住み替えローン利用の注意点
2-3-3.住み替えローン利用の流れ - どうしても住宅ローンを完済できない場合はどうなる?
3-1.競売
3-2.任意売却 - まとめ
1 不動産売却の流れ
不動産を売却する一般的な手順は次のとおりです。
- 不動産の売却相場を調べる
- 不動産会社の売却査定を受ける
- 不動産会社に売却を依頼する
- 不動産の売出し価格を決定する
- 販売活動を開始し、内覧や価格交渉に応じる
- 売買契約と引渡を行う
それぞれ見ていきましょう。
1-1 不動産の売却相場を調べる
不動産会社の査定を受ける前に、近隣にある類似した不動産の販売価格相場を自分で調べることが大切です。ネットで検索すれば同じ地域にある不動産の販売価格が閲覧できますし、また新聞折り込みの広告なども参考にすることができます。
ある程度の相場感覚を身に付けておくと、次の手順となる売却査定額を適正に評価できるようになります。
1-2 不動産会社の売却査定を受ける
次に、一括査定サイトなどで売却査定を依頼します。このとき各査定を比較検討するため複数の業者に査定してもらうことがポイントですが、査定額次第でローンの残債を完済できそうか、それとも難しそうかを大体把握することができます。代表的なサービスとしては、「すまいValue」「LIFULL HOME’Sの不動産売却査定サービス」などがあります。
1-3 不動産会社に売却を依頼する
業者選びでは、複数の業者から査定額の根拠を聞き出し、納得のいく算出方法で計算した信頼できる業者を選ぶのが良いでしょう。ただし、売却予定の不動産にローンの残債があり、抵当権が付いている場合、業者にその事情を説明し、具体的な対応策を提案してくれる業者を選ぶようにします(詳細は後述)。
また、住み替えを予定している場合は、住み替え実績を豊富に持ち、住み替えローンなどを扱った経験が豊富な業者が候補になるでしょう。
1-4 不動産の売り出し価格を決定する
売却を依頼する業者が決まったら、次は業者と相談しながら不動産の売り出し価格を決めていきます。実際に市場に出す売り出し価格は相場より若干高めに設定し、購入希望者の反応を見て価格の引き下げなどを検討するなどの戦略を話し合い、適正価格で売れるであろう価格帯に設定することが大切です。
1-5 販売活動を開始し、内覧や価格交渉に応じる
購入希望者が現れたら、内覧対応や値引き交渉に応じることになります。内覧時に不動産業者に任せっきりにするのではなく、売主自らも内覧に立ち会い直接購入希望者と話をすることで、価格交渉や購入にあたっての質疑応答などがスムーズに進みます。
1-6 不動産の売買契約と引渡を行う
売却価格について購入希望者の同意が得られれば、売買契約手続きに移行します。また、契約と並行して引越し準備なども進めておき、売主、買主、不動産会社の三者立会いのもと、不動産の引き渡しを行います。
不動産の売却はおおよそこのような流れになります。一連の流れを知っておくだけでも、慌てず落ち着いて行動することができるようになります。
1-7 抵当権の抹消手続き
不動産を売却するときにローンの残債がある場合、売主はこれを完済し金融機関が不動産に設定している抵当権を抹消しなければなりません。抵当権付き不動産の購入希望者は通常おらず、また融資先の金融機関も売却に同意してくれないことが考えられるからです。
なおローンを完済するパターンには、主に3つの方法があります。
①自己資金でローンを完済できる場合 | 不動産の売却前にローンを完済し、抵当権を抹消しておく |
②不動産の売却代金をローンの残債に充当して完済する場合 | 仲介業者のアドバイスに従い、決まった手順を踏むことで売却することができる |
③不動産の売却代金をローンの残債に充当しても、なお債務が残る場合 | 不足分は、自己資金か借金をして完済することになるが、自己資金もなく借金もできない場合、住み替えローンを利用することができる |
以下、詳しく見ていきます。
2 売却するまでに住宅ローンを完済する方法
住宅ローンは①自己資金で完済するか、②売却代金で完済するかで手順が異なります。
2-1 自己資金で住宅ローンを完済する
残ったローンを貯金などの自己資金で完済できれば、それが最もスムーズに売却を完了できる手段だと言えるでしょう。ローンを完済することで不動産は問題なく売却でき、新居を購入する場合も新たな住宅ローンをスムーズに組むことができる期待が持てるでしょう。
2-2 売却代金で住宅ローンを完済する
不動産の売却代金をローン残債に充当する場合は、手順が少し複雑になります。具体的には、不動産売却の決済日にローン残債の支払いと抵当権の抹消を合わせて行う必要があります。
抵当権を抹消しないと不動産を売却できないものの、売却しないと売却代金が入らず抵当権を抹消できないという状況になるため、不動産売却と抵当権抹消を同一の日に合わせて行うことが必要です。
不動産売却と抵当権抹消を合わせて行う日の実際の流れを時系列でみると、次のようになります。
- 売却の決済:不動産の買主から売却代金を受け取り、物件を引き渡す
- ローン残債の返済:受け取った売却代金を使ってローンを完済するため、金融機関に振り込む
- 抵当権抹消書類の受取り:金融機関から抵当権抹消書類の交付を受ける
- 抵当権抹消の登記:司法書士に依頼して抵当権抹消の登記をしてもらう(同時に物件の所有権移転登記もされる)
このような一連の手続きを同一日に行う必要があるため、経験豊富な不動産業者のアドバイスに基づき、手続きをスムーズに進めることが重要です。もし売却代金だけを受け取り、抵当権抹消が後日になる場合、買主側が納得しない可能性があるため注意が必要です。
実際は売主、買主、仲介業者が金融機関の窓口前に集合し、入金状況を確認しながら司法書士と連絡を取り合い、手続きを進めることになります。
2-3 住み替えローンを利用する
住み替えローンは、現住居を売って新居に移ろうとする際、現住居の売却額をローン残債に充当しても不足する場合に利用できる融資です。つまり新居の購入費用と現住居のローン未済分の両方を、まとめて貸し付けてくれるため売主にとってメリットの大きい内容となります。
2-3-1 住み替えローン利用の条件
住み替えローンを利用できるのは、売却代金をローン残債に充当しても不足する場合に限られます。売却代金でローンを完済できる場合は、通常の住宅ローンを組めば良いため、住み替えローンは利用できません。
また、住み替えローンでは、金融機関は担保物件価値を超える金額を融資することになるため、通常の住宅ローンより審査は厳しくなります。
2-3-2 住み替えローン利用の注意点
住み替えローンを利用する際は決済のタイミングがより複雑になります。不動産の売却決済と抵当権抹消のほか、新居購入の決済も同一日に合わせる必要があります。そのため現住居の売却と新居の購入は、住み替え実績が豊富にある慣れた不動産業者に仲介を任せるのが良いでしょう。
その上で、現住居の売却と新居の購入の双方について、お互いに連携を図りながら進めていき、両方の決済日を同一日に合わせることになります。もちろん多少の時間的なズレが生じることもありますが、現住居の売却活動を行いながら、新居探しや購入の交渉も並行して進めていく必要があります。
なお、現住居の売却可能額を把握しなければ、ローンにどの程度充当できるかなど資金計画が立てられないため、現住居の売却活動を先行させるほうが安全でおすすめです。
2-3-3 住み替えローン利用の流れ
住み替えローンを利用する場合の流れは次のとおりです。
- 現住居の査定を受ける
- 不動産業者に仲介依頼を行う:現住居売却と新居購入、住み替えローンの利用について、トータルで任せられる業者を選ぶ
- 現住居の売却活動を始める
- ローン返済・新居購入資金などの計画を立てる:現住居の売却活動を通じて、おおよその売却見込額を把握し、全体の資金計画を立てる
- 新居の購入活動を始める
- 現住居の売却契約を結ぶ
- 新居の購入を申し込む
- 住み替えローンの事前審査を受ける:住み替えローンの正式な申し込みは、新居の購入契約締結後になるが、融資を受けることができるか金融機関に事前審査(非公式)してもらう
- 新居の購入契約を結ぶ
- 住み替えローンを正式に申し込む
- 現住居売却と新居購入の決済、住み替えローンの融資を同一日に実行する
現住居は、買主から売却代金(手付金を除く)を受け取り、売却代金と住み替えローンの融資額を使ってローン残債を完済、および抵当権を抹消し、物件を引き渡します。新居は、住み替えローンの融資額を使って売主に購入代金(手付金を除く)を支払い、引き渡しを受けます。
住み替えローンでは、融資額が膨れるため返済負担も増えることになります。返済計画を立て、返済が家計を圧迫しないか、途中で頓挫するような無理な計画になっていないかなどについて、十分に検討することが大切です。
また、新居の購入契約について、現住居の売却が予定どおりにいかない場合、新居の購入を白紙撤回できるという「住み替え特約」を契約に付けるよう売主に交渉することも可能です。売主側からの同意を得るのは容易ではありませんが、買主側には大きなメリットがあるため検討してみても良いでしょう。
住み替えローンの利用を成功させるためには、現住居の売却と新居の購入、そして融資の申込み・審査など、それぞれの活動や手続きについてお互いに連携を図りながら手順よく進め、最終的にタイミングを合わせていくことが必要です。そのためには、住み替え実績が豊富で信頼できる不動産業者に依頼しましょう。
3 どうしても住宅ローンを完済できない場合はどうなる?
しかし、もしも住み替えローンの審査が下りず、経済的にローン返済の負担に耐えられないという場合、「競売」もしくは「任意売却」という方法を取らざるを得ない可能性があります。
3-1 競売
住宅ローンの返済ができない場合、自宅は「競売」にかけられることになります。ローンの返済が滞ると、債務者(多くの場合、家主)は分割返済の権利を失い、お金を貸している金融機関は一括の返済を求めてきます。それに応じることができなければ、金融機関は担保に取っている不動産を換金して残債に充てるため、裁判所に対し競売の申し立てを行います。
なお、競売は債権者が申し立てできる制度であり、ローンを借りている債務者がいくら不動産を売却したいと思っていても債務者側から競売を申し立てることはできません。
自宅が競売に付されると、売却額は相場よりも安くなるのが一般的です。競売代金はローンの残債に充当されますが、不足額は債務者が一括返済しなければなりません。また、物件明け渡しの時期も裁判所が決めるため、その日までに債務者の自己負担で引っ越しを済ませる必要もあります。
このように、競売は債務者側にとってデメリットが大きい方法と言えます。そのため、ローン返済が行き詰まってしまった場合でも、競売に移行する前に「任意売却」などの方法を検討することが大切です。
3-2 任意売却
任意売却とは、金融機関と債務者が話し合った上で競売前に不動産を売却し、ローンの残債に充当する方法です。売主にとって任意売却は次のようなメリットがあります。
- 競売に比べて高く売ることができる
- 売却代金をローン残債に充当した後の不足分について、分割返済に応じてもらえる可能性がある
- 物件明け渡しの時期を相談の上で決められる
- 引っ越し費用を売却代金の中から渡してもらえる可能性がある
- 情報が広く公開される競売に比べプライバシーが保護される
任意売却は、債権者である金融機関の同意と協力がないと実現ができないという点に注意しましょう。そのため任意売却の実績豊富な不動産業者の協力を得ながら、金融機関に現状や今後の返済計画を説明し、納得してもらうよう行動する必要があります。金融機関側も、競売に比べて高く売却できる分充当額が増えるメリットがあるため、任意売却の相談には応じてくれるでしょう。
4 まとめ
住宅ローンが残っている不動産を売却する場合におけるローン完済の手順や完済できない場合の対処法について見てきました。
なかでも「不動産の売却代金でローンを完済し抵当権を抹消するパターン」「住み替えローンを利用するパターン」では、売却と決済手続きのタイミングが重要となります。手続きのタイミングはその時になって急に合わせようとしてもできるものではないため、事前に計画を立てた上で、手順を着実に進めていくことが大切です。
ローンの残債がある不動産売却を検討している方は、ぜひこの記事を参考に不動産売却をスムーズに進めてみてください。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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