今回は、仮想通貨の税金計算に便利なツールについて、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- 仮想通貨の税金の概要
- 仮想通貨利用における所得のタイミング
- 仮想通貨の税金を計算するツール
3-1.Gtax(ジータックス)
3-2.Cryptact(クリプタクト)
3-3.CryptoLinC(クリプトリンク) - まとめ
近年、暗号資産(仮想通貨)取引がますます普及している中、仮想通貨取引で獲得した利益にかかる税金について考える方も多いのではないでしょうか。
仮想通貨に限らず、税金にはさまざまな種類や規定があるため、その詳細について細かく把握することは比較的困難です。
そこで今回は、仮想通貨の税金計算を容易にしてくれる、利便性の高いツールをいくつか紹介していきます。
①仮想通貨の税金の概要
仮想通貨投資による利益は、「総合課税」区分の「雑所得」に分類されます。総合課税とは、個人の1年間の所得をすべて合計して課税対象となるしくみのことで、合計額に対して6段階の累進税率が課されます。総合課税に該当する所得は「雑所得」以外に、事業所得、配当所得、不動産所得、給与所得、山林所得、一時所得、譲渡所得があります。
例えばサラリーマンには給与所得がありますが、暗号資産投資で「雑所得」を得た場合には、給与所得と雑所得を合算して所得税を計算することになります。税率の7つの区分は以下の通りです。
所得税の速算表
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
【出所】国税庁ホームページ 「 No.2260 所得税の税率 」
②仮想通貨利用における所得のタイミング
仮想通貨の場合、所得が発生するタイミングは「損益が確定したとき」となります。損益の確定とは、保有している資産を売却するなど、反対売買を行うことにより実際に生じた損益を意味します。具体的な事例で見ていきましょう。
例えば、2022年に300万円で購入したビットコイン(1 BTC)が値上がりし、2022年の年末に価格が330万円だった、というケースを考えます。
ここで実際に年末に330万円で売却したとすると、利益は30万円となり、この30万円が所得として認識されます。この売却取引が「損益が確定したとき」に該当し、所得が発生するタイミングとなります。2023年に入ってからこの1 BTCを売却して30万円の利益が生じたとします。この利益は2023年に入ってから確定したものとなるため、2023年の所得とされ、2022年申告対象の取引にはなりません。
③仮想通貨の税金を計算するツール
では次に、仮想通貨の税金を計算することができるツールをいくつか紹介していきます。
2-1.Gtax(ジータックス)
「Gtax(ジータックス)」とは、仮想通貨取引支援事業を手がける「株式会社Aerial Partners(エアリアル・パートナーズ)」が運営している仮想通貨の自動損益計算サービスのことを指します。
Gtaxでは取引所などから取得可能な取引履歴をアップロードするだけで複雑な仮想通貨の損益計算が完了するため、確定申告をよりシンプルに行うことができると人気を集めています。正しく損益を把握するための機能が多数用意されており、取引履歴の取り込み状況や資産状況のほか、損益情報の確認も可能で、その計算結果をもとに、そのまま税理士に確定申告を依頼することができます。このほかにも、税務調査に対応可能な計算レポートの取得も可能となっているため、仮想通貨取引に付随する税金の不安を払拭することができます。
では、ここからはGtaxの特徴について解説していきます。
①確定申告作業を簡略化できる
前述の通り、Gtaxでは仮想通貨取引に関する損益の自動計算のほか、仮想通貨の評価方法の届出書作成機能などにより、複雑で面倒な仮想通貨の確定申告作業を簡略化することが可能です。
②あらゆる仮想通貨取引に対応している
Gtaxの標準対応取引所は50を超えているほか、標準対応していない取引所やマイニング、ハードフォーク、エアドロップ、ICOであっても、共通フォーマットを使用することで簡単に損益計算を行うことが可能です。また、DeFiの取引にも対応しているなど、ユーザーのニーズに十分に対応できる環境が整っています。
③高いセキュリティ性を維持している
Gtaxは財務・管理会計システムとして仮想通貨取引所にも利用されているシステムとなっています。そのため、強固なセキュリティ環境のもとで、仮想通貨に精通したエキスパートによる税務ロジックで計算を行うことができます。
2-2.Cryptact(クリプタクト)
「Cryptact(クリプタクト)」とは、18年1月に設立された「株式会社pafin(パフィン)」によって運営されている、仮想通貨の自動損益計算サービスのことを指します。
Cryptactでは、複数の取引所やウォレットをまたいだ取引の損益計算や仮想通貨の時価の参照など、複雑で分かりにくい仮想通貨の確定申告作業を自動化し、より簡潔に行うことが可能です。基本的にユーザーは取引履歴をアップロードするだけでよく、あとの作業はCryptactが自動で行ってくれるため、初心者にとっても利用しやすいシステムとなっています。
では、ここからはCryptactの特徴について解説していきます。
①対応取引所数およびコイン数が業界最大級
Cryptactは対応取引所数およびコイン数が業界最大級となっており、多岐にわたる取引種類に自動対応しています。また、未対応取引所やコインであっても、手動入力を行うことで対応が可能なため、ユーザーは自身のニーズに合わせて利用することができるようになっています。
②リアルタイムでの資産管理が可能
Cryptactでは、1分単位の価格データを採用しているため、今現在どのくらいの残高があるのか、またそれにはどのくらいの価値があるのかなどを、リアルタイムで確認することができます。
③膨大な取引数に対応可能
Cryptactは、年間500万件以上という膨大な取引履歴にも対応可能なほか、取引所とのAPI連携を通して取引履歴を簡単に取得することができる、利便性の高いサービスとなっています。
④DeFi取引の自動識別が可能
Cryptactでは、ウォレットアドレスを入力するだけで、すべての履歴を自動で取り込むことが可能です。また、Cryptactは取引種類を自動で識別することができますが、これは日本で唯一の機能となっているため、Cryptactを利用することでこれまで必要だった手作業を圧倒的に減らすことが可能です。
2-3.CryptoLinC(クリプトリンク)
「CryptoLinC(クリプトリンク)」とは、仮想通貨関連の事業を展開する「クリプトリンク株式会社」が運営している、仮想通貨の自動損益計算サービスのことを指します。
CryptoLinCでは、取引データを連携させるだけで複数の取引所における資産状況を一括で管理することができ、個人投資家向けには確定申告のための収支計算を、法人向けには会計ソフトに連携可能な仕訳の作成を簡単に行うことが可能となっています。また、海外の取引所にも対応しているため、複数の取引所データを元にしたより正確な収支計算が可能です。
では、ここからはCryptoLinCの特徴について解説していきます。
①さまざまな取引形式に対応している
CryptoLinCでは、通常の売買のみならず、ICO投資やマイニングでの収益にも対応しています。特に、ICO投資では情報を登録するだけでICO投資情報リストが生成されるため、効率的な管理が可能です。
②資産状況をリアルタイムに確認可能
CryptoLinCでは、取引所とAPI連携を行うことによって取引所に保有している資産状況をリアルタイムに確認することができます。また、複数の取引所を連携することによって、資産状況の一元管理を行うことも可能です。
③仮想通貨の引き取りサービス
CryptoLinCでは、ユーザーが保有する仮想通貨を無料で引き取るサービスを提供しています。このサービスによって、ユーザーは含み損を抱えたままの仮想通貨を今期の利益との相殺のために利用できます。
④まとめ
仮想通貨の税金計算は複雑で分かりにくいイメージが強いですが、今回紹介したような損益計算ツールを利用することで、簡単に自動で確定申告などに利用できるデータの取得が可能です。
なお、それぞれのサービスには独自の利点や特徴があるため、自身のニーズに合ったツールを選択し、効率よく損益計算を行うことをおすすめします。
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中島 翔
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