マンションを売却する際には費用が発生します。不動産会社に支払う仲介手数料や譲渡所得税・印紙税などの税金、住宅診断料・ハウスクリーニングなどの物件の引き渡しにかかる費用まで様々です。費用総額は、物件により異なりますが、数百万円にのぼることも珍しくありません。
売却時の費用を抑えるためには、費用の内容と節約するためのコツを知っておく必要があります。マンション売却にかかる費用をなるべく節約したいという方は、ぜひこの記事を参考に売却活動を有利に進めましょう。
目次
- これだけかかる!マンション売却費用の種類
1-1.仲介手数料
1-2.譲渡所得税
1-3.印紙税
1-4.住所変更に伴う費用
1-5.引越し費用
1-6.抵当権抹消費用
1-7.インスペクション費用
1-8.ハウスクリーニング費用 - マンション売却費用を抑える節約術
2-1.仲介手数料を節約する方法
2-2.インスペクション費用を節約する方法
2-3.ハウスクリーニングと引越しの費用を節約する方法 - まとめ
1 これだけかかる!マンション売却費用の種類
マンション売却時には次のような費用がかかります。総額でいくら必要になるのかを把握するためにも、費用の種類と金額、求め方を知っておきましょう。
- 仲介手数料
- 譲渡所得税
- 印紙税
- 住所変更に伴う費用
- 抵当権抹消費用
- インスペクション費用
- ハウスクリーニング
1-1 仲介手数料
マンションを売却するためには、売却相手との契約でトラブルが発生しないように不動産業者との売買媒介契約が必要になります。そこで不動産業者へ支払う売却に関わる手数料として「仲介手数料」が発生します。
なお仲介手数料は成功報酬となるため、売買が成立しなければ発生しない費用です。売却価格の3%に6万円を足した金額が業者に支払う手数料の上限となります。
仲介手数料=(売買価格×3%+6万円)+消費税
たとえば5,000万円でマンションを売却した場合には、最大168万円の仲介手数料が発生することになります。業者によっては168万円以下の仲介手数料しか取らないところも存在します。
(5,000×0.03+6)×1.08=168.48(万円)
ただし上記の計算方法は400万円を超える物件に対して適用される料率です。400万円以下の物件の仲介手数料(上限)は次のようになります。
物件の売買価格 | 仲介手数料の計算式 |
---|---|
200万円以下 | (売買価格×5%)+消費税 |
200〜400万円以下 | (売買価格×4%+2万円)+消費税 |
400万円超 | (売買価格×3%+6万円)+消費税 |
1-2 譲渡所得税
譲渡所得税とはマンション売却に伴って生じた譲渡所得にかかる税金です。給与所得などほかの所得とは分離して計算することになります。
譲渡所得税の計算方法
譲渡所得は次の計算方法で求めます。
譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除
譲渡所得に対して税率を掛けると譲渡所得税が算出できます。税率はマンションの所有期間(売却した年の1月1日時点から起算)によって次のように異なります。
所有期間が5年を超える場合:所得税15%、住民税5%
所有期間が5年以下の場合:所得税30%、住民税9%
※所得税に対しては復興特別所得税2.1%が加算される
取得費、譲渡費用、特別控除
取得費とは、マンションの購入代金から建物の減価償却相当額を控除した金額に、取得時の仲介手数料や税金、改良費などを加算した金額です。譲渡費用とはマンションを売却する時に要した費用であり、具体的には仲介手数料・印紙税・登記に関わる費用などが対象となります。
特別控除とはマイホームを売却した時における税制の特例のことで、最高3,000万円を控除できるものがあります。つまり、この特例を使うことによって、譲渡所得が3,000万円以内の場合に、譲渡所得税をゼロとすることができるのです。
譲渡所得税の計算例
たとえば、3,000万円(消費税額150万円、税率8%)で購入した新築マンションを10年所有したあとに2500万円で売却した場合の譲渡所得税を求めてみます。
まずは取得費を求めるため、建物部分にのみ生じる減価償却費を計算します。購入金額のうち建物分の価格は次のように逆算して求めます(消費税は建物分にのみ課税されるため)。
150(万円)÷8(%)=1,875万円(※2014年4月1日より前に取得した物件の場合は消費税率5%)
減価償却費は、居住用マンションの場合、法定耐用年数47年に1.5を掛けて70年になるので、償却率は旧定額法が適用されて0.015となります。購入費用の建物分に0.9を掛けるのを忘れないようにします。
減価償却費=1,875×0.9×0.015×10=253.125(万円)
取得費の一部となる購入時の仲介手数料は(3,000×0.03+6)×1.08=103.68(万円)です。
売却価格は2,500万円なので、譲渡費用となる売却時の仲介手数料は(2,500×0.03+6)×1.08=87.48(万円)となり、譲渡所得は次の通りとなります。
2,500-((3,000-253.125+103.68)+87.48)=-438.035(万円)(※細かな経費などは除く)
上記例で売却した結果、譲渡所得はマイナスとなるため譲渡所得税は発生しません。なお、マイナスとなった譲渡所得は給与所得などと合算することはできませんが、翌年以降3年間は不動産所得から繰越控除ができます。
ただし、2019年12月31日までの売却によって生じた譲渡損失(マイナスとなった譲渡所得のこと)は、次の要件を満たせば給与所得から控除することもできます。
- 自分が住んでいるマイホームを売却すること
- 所有期間が5年を超えること
- 売買契約前日の時点で償還期間が10年以上の住宅ローンの残高があること
- 譲渡価額が住宅ローン残高を下回っていること
1-3 印紙税
印紙税は契約書に貼る収入印紙のことであり、売却価格によって次のように異なります(※2020年3月31日までに作成した契約書に関しては軽減措置を適用します)。
- 500万円を超え1,000万円以下:5,000円
- 1,000万円を超え5,000万円以下:1万円
- 5,000万円を超え1億円以下:3万円
国税庁ホームページ No.7108 表より抜粋
たとえば5,000万円で物件を売却した場合の印紙税は1万円となります(ただし、2020年4月1日以降は2万円となる)。
1-4 住所変更に伴う費用
マンション売却に伴って住所変更に関する費用が発生することがあります。
引越しをする前に印鑑証明書(契約書の作成時やマンションの所有権移転登記手続きをする法務局で、申請書の印鑑の有効性を確認する時に必要となる)を取得していなかった場合、売却するマンションの登記を変更して新しい印鑑証明書の住所と一致させる必要があります。このとき住所変更登記費用として司法書士に依頼する手数料が15,000円ほどかかります。
新しい印鑑証明書の住所と売却するマンションの住所が一致しないと、売却する人がそのマンションの所有者であることを印鑑証明書では判断できないため、転出届を出す前に印鑑証明書を発行する必要があります。先に住民票を移動させた場合、前の住所で登録した印鑑証明書は使用できなくなるので注意しましょう。
なお、住所変更登記費用は引越しをする前に印鑑証明書を取得しておけば必要ありません。ただし印鑑証明書が有効なのは取得してから3ヶ月以内です。売却期間がそれ以上かかると、引越し前に取得した印鑑証明書は無効となるため注意してください。
1-5 引越し費用
引越しのための費用も必要です。新しい賃貸マンションに引っ越しする予定の場合、敷金や礼金、仲介手数料も発生します。引越し費用は荷物の量(トラックの大きさ)や距離、時期によって変わります。たとえば大手賃貸サイトのスーモによれば、下記条件で引越しをすると平均11万193円(最小35,000円~最大300,000円)の引越し費用が必要になります。
- 引越し時期 繁忙期(2月~4月)
- 引越し先 同一地方内(~200km未満)
- 引越し人数 2人家族
1-6 抵当権抹消費用
売却するマンションを購入した際にローンを組み残債がある場合、抵当権を抹消する必要があります。マンションがお金を貸す金融機関の担保になっているので、抵当権が付いたままでは購入者にマンションの所有権を移転できません。
抵当権抹消のためには、原則、ローンを完済する必要があります。また抵当権抹消は、所有者から購入者へマンションの所有権を移転する日と同時に行わなければなりません。抵当権抹消手続きは司法書士に手続きを依頼するのが一般的で、費用は登録免許税や印紙代、司法書士報酬などすべてを合わせておよそ1〜2万円かかります。
1-7 インスペクション費用
マンション売却における一般的な課題は「少しでも高く売ること」です。購入者は、潜在的な瑕疵(欠陥、キズのこと)を抱えている可能性がある中古物件には、高い金額を支払うのはためらいます。そのためマンションの性能に関する客観的な性能保証が必要になります。
2018年4月に改正宅建業法が施行され、インスペクション(建物状況検査)が促されました。アメリカではすでに普及していましたが、日本では昨年4月以降、不動産業者が売主や買主に対してホームインスペクションの説明をしたり、事業者の紹介ができるかを告知したりすることが義務化されました。
ホームインスペクター業者は、日本ホームインスペクターズ協会のホームページから検索して探すことができます。診断費用については、事業者や対象となる物件によって大きく異なり、日本ホームインスペクターズ協会によると、目視による一次診断で「5~6万円前後」、機材を使用する詳細診断の場合には「10万円以上」になるとしています。
1-8 ハウスクリーニング
売却価格を高くするためにはハウスクリーニングを行うのも効果的です。購入者はリフォームを前提に物件を探すことが多いため、室内の見た目が綺麗になるだけで、売買価格の値下げ要求を回避できる場合もあります。
クリーニングに費やした費用以上に売却価格を高めることができれば検討する価値は高いといえるでしょう。特に水回りの汚れは目立つため、綺麗にしておくと買主の印象を良くすることができます。
費用は業者によっても違いますが、たとえば清掃業者大手のダスキンの場合、水回りの清掃料金は次のとおりです。
- 浴室 17,280円
- トイレ 8,640円
- 洗面所 8,640円
- キッチン 17,280円
- レンジフード 18,360円
2 マンション売却費用を抑える節約術
マンションを売却するには数百万円の費用がかかることもあります。そこで売却費用を少しでも軽減するための節約方法をご紹介します。
2-1 仲介手数料を節約する方法
上記でご紹介した不動産会社に支払う仲介手数料は、あくまで上限額となりますが、現実にはほとんどの不動産業者が上限額で請求しています。
なかには仲介手数料を安くしたり、あるいは半額に設定したりする業者もありますが、手数料を安くするのにはそれなりの理由があるため注意が必要です。仲介手数料が相場より安くても売却がなかなか進まず、当初の予定以上に安い価格で売却することになっては本末転倒です。
そのため、仲介手数料の値引き交渉をする際は、たとえば売却を依頼した不動産業者を利用して買い替えをするような時がおすすめです。あるいは売却を検討している知り合いを紹介することを条件として交渉できる場合もあります。
また、仲介手数料を交渉しやすいタイミングは、複数の業者に見積り依頼を出し、比較検討をしているときです。業者同士を比較している旨を伝え、決める条件として仲介手数料を下げることができるかを打診してみるのも良いでしょう。
このほか仲介手数料をゼロにする方法としては、マンションを売却するのではなく不動産業者に買い取ってもらう方法があります。仲介での売却価格よりも安い価格になりますが、買い手がなかなか見つからずに想定以上に値引きをするよりも、早期に買取依頼をしたほうが結果的に手取りの金額が多くなることもあります。
2-2 インスペクション費用を節約する方法
インスペクション費用を節約するためには、業者選びが重要です。まずは見積もりを取って複数の業者を比較しましょう。
ただ、インスペクションは基本的には目視による住宅診断となるため、全ての瑕疵が発見できるわけではないことに留意する必要があります。またインスペクションの実施は義務とはなっていないため、対応していない不動産業者も現在多くあります。さらに売主が選んだホームインスペクターを信頼しない買主の方もいます。
インスペクション費用を負担するのは基本的に依頼した側となりますが、買主が依頼した調査費用を売主が負担するケースもないわけではないため、業者選びの段階で買主の納得を得ることで、二度手間とならずスムーズに終わらせることができます。
2-3 ハウスクリーニングと引越しの費用を節約する方法
ハウスクリーニング費用は繁忙期には割高となるため、そのような時期を避け、複数の業者に見積もりを出すことがポイントです。年末のような大掃除のシーズンとなれば、ハウスクリーニングの業者は忙しくなります。業者によっては料金を引き上げることもあるので避けたほうが良いでしょう。また3~4月の引越しシーズンも同様に繁忙期となるため避けましょう。
繁忙期以外で依頼が少なくなる時期は、料金を値引きする交渉もしやすくなります。複数の業者に見積を依頼し、費用を少しでも安くしてもらえないか交渉してみましょう。
引越し費用についても繁忙期を避けるのが節約するポイントです。スーモによれば単身者の場合、8月と12月の引越し料金が他と比べて安くなっています。4人家族の場合には6月と11月が安くなるとされています。
引越し費用が高くなる長距離の場合、費用をとにかく安く済ませたいという方には、ほかの人の荷物と一緒に運んでもらう「混載便」がおすすめです。ただし、引越しの日程を選べないことや、荷物の紛失リスクが若干高まることなどに注意が必要です。
引越しの日程を業者に任せてもよいのであれば、「帰り便」というものを利用すると良いでしょう。これは引越しを終えて帰るトラックを利用して、荷物を運んでもらうというサービスとなります。
3 まとめ
マンション売却時に発生する費用は前もってある程度は試算することができます。出費を少しでも抑えたい場合は、業者選びや引越しの時期などを見直すことで費用削減できることがあります。
前述したとおり、売却費用は数百万円かかることもあるため、少しでも手元に現金を多く残し、晴れやかな気持ちで新生活をスタートさせてみてはいかがでしょうか。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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