不動産買取は、早期にかつ確実に、不動産を処分して現金に換えるための有効な手段であるといえます。しかし、買取の際にかかる費用によっては、その分買取代金が目減りしてしまうため、買取価格の交渉をしたり、あるいは、買取以外の処分方法を検討したりすることもあるでしょう。
本記事では、不動産買取に必要な費用について、手数料や税金、諸経費を整理して解説します。
※記事内の税金・税率などは2022年6月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁のウェブサイトをご確認のうえ、税理士などの専門家へのご相談もご検討ください。
目次
- 不動産買取にかかる手数料
1-1.仲介手数料はかからない
1-2.登記に関する手数料
1-3.ローン繰上返済手数料
1-4.測量費用 - 不動産買取にかかる税金
2-1.印紙税
2-2.各種登記の登録免許税
2-3.譲渡所得税
2-4.住民税 - 不動産買取にかかる諸経費
- まとめ
1.不動産買取にかかる手数料
不動産買取には、原則として手数料はかからないのが大きな特徴です。登記が必要な場合や、抵当権を設定したローンの残債が残っている場合、測量が必要な場合は、それぞれの手数料がかかります。
1-1.仲介手数料はかからない
通常の不動産売却では、不動産会社に、その不動産の買主を探して紹介してもらいます。しかし、不動産買取では、不動産会社は買主を探して紹介する業務をおこなうことなく、直接買主となります。このため、仲介手数料はかかりません。
ただし、不動産会社は、物件を買い取ることで短期的に利益を得ることを目的としています。そのため、買取価格は仲介時の相場価格よりも2~3割程度安くなる傾向があるといえます。
できるだけ買取価格を高くするためには複数の不動産会社へ買取査定を依頼すると良いでしょう。例えば、不動産一括査定サイトを利用することで、複数社の買取査定価格をすぐに比較することが可能です。以下、買取査定にも対応している主な不動産一括査定サイトの一覧です。
主な不動産一括査定サイト
サイト名 | 運営会社 | 特徴 |
---|---|---|
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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧
1-2.登記に関する手数料
不動産売買の所有権移転登記の手数料は、買主が負担するのが原則であり、売主にはかかりません。しかし、一定の場合には、売主側でも登記に関する手続きをおこなう必要があり、司法書士などに依頼すると手数料がかかります。
なお、登記の際には手数料以外に登録免許税という税金がかかります。
不動産に抵当権が設定されている場合
買取不動産を担保にして融資を受けている場合、抵当権が設定されています。このような場合、買取時にその融資を受けた金融機関にローンの残債を返済し、抵当権の設定を抹消する必要があります。
抵当権抹消登記を司法書士に依頼した場合の手数料は、1.5万円程度が相場になります。
売主の現住所と登記住所が異なる場合
所有権移転登記をおこなうには、売主の現住所と登記簿上の住所が一致している必要があります。異なる場合には、売主負担で住所変更登記をおこないます。
住所変更登記を司法書士に依頼した場合の手数料は、1万円程度が相場になります。
相続した不動産や贈与を受けた不動産を売る場合
相続や贈与によって取得した不動産を買い取りしてもらう場合、被相続人や贈与者から所有権移転登記をおこなう必要があります。
相続や贈与の所有権移転登記を司法書士に依頼した場合の手数料は、5万円~10万円程度が相場になります。
土地の一部を切り売りする場合
広すぎる土地で、買取側にとって利用しにくかったり、あるいは、相続などで複数人の権利を整理したりするときに分筆することがあります。土地の一部を切り売りして買取してもらう場合には、分筆登記をする必要があります。
分筆登記を土地家屋調査士に依頼した場合の手数料の目安は50万円程度ですが、条件によって大きく変動します。
1-3.ローン繰上返済手数料
買取時に、その不動産に残債がある場合、繰上げ返済をする必要があります。金融機関によっては、繰上げ返済をする場合に手数料がかかることがあります。数千円のケースから、返済元金の2%程度のケースまで様々です。
返済元金に対して数%の手数料がかかる場合、残債の金額によっては数十万円の手数料になりますので注意しましょう。
1-4.測量費用
買取不動産が、戸建やアパートなど土地付きの不動産である場合、通常、土地面積を確定させることが条件となります。このような場合、隣地との境界を確定させて境界標を設置し、確定測量図を作成する必要があります。
一般的な戸建用地の確定測量を土地家屋調査士に依頼した場合の手数料は、30万円~50万円程度といえます。土地の面積や形状、境界確定に必要な立ち会い人数、境界トラブルの存在など個別事情によって手数料は変動します。
境界の確定が難しく、現況測量のみとする場合は、10万円~30万円程度が目安となります。
2.不動産買取にかかる税金
不動産買取には、通常の不動産の売却と同様に税金がかかります。売買契約時には、売買契約書の作成について、売買代金に応じた印紙税がかかってきます。
この時、登記手続きが必要になれば登録免許税がかかります。買取について利益が出た場合、翌年以降、譲渡所得税と住民税がかかることになります。
2-1.印紙税
売買契約書の作成の際には、契約書に収入印紙を貼付して印紙税を納めることになります。不動産の売買価格によって印紙税の金額は次のようになっています。なお、令和4年3月31日までに作成される「不動産譲渡契約書」の印紙税は、軽減措置により原則の半額となっています。
売買価格 | 印紙税額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円超50万円以下 | 200円 |
50万円超100万円以下 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 10,000円 |
5,000万円超1億円以下 | 30,000円 |
1億円超5億円以下 | 60,000円 |
5億円超10億円以下 | 160,000円 |
10億円超50億円以下 | 320,000円 |
50億円超 | 480,000円 |
※国税庁「印紙税の軽減措置」を参照
2-2.各種登記の登録免許税
個別事情により、登記が必要な場合は、それぞれ規定の登録免許税がかかります。
登記の種類 | 登録免許税額 |
---|---|
抵当権抹消登記 | 不動産1個につき1,000円 |
住所変更登記 | 不動産1個につき1,000円 |
相続による所有権移転登記 | 不動産の固定資産税評価額×0.4% |
贈与による所有権移転登記 | 不動産の固定資産税評価額×2% |
分筆登記 | 不動産1個につき1,000円 |
2-3.譲渡所得税
不動産の売却について利益が出た場合、売却した年の翌年3月15日までに確定申告をおこない、その利益(譲渡所得)につき譲渡所得税が課されます。譲渡所得は、次の算式によって計算されます。
譲渡所得=譲渡価格-(取得費+売却費用)-特別控除
税額は、取得期間に応じて下表のようになっています。
税金の種類 | 短期譲渡税 | 長期譲渡税 |
---|---|---|
所得税 | 30.63% | 15.315% |
(※上記所得税には、復興特別所得税2.1%が上乗せされています)
譲渡所得の取得費の計算方法
譲渡所得の取得費は、次の算式によって計算されます。
取得価格+取得の際要した費用+取得後の改良費-減価償却費(建物の場合のみ)
取得価格は、購入時の土地・建物の価格や建物の建築費用となります。建物を売却した場合には、減価償却費を差し引かなければならないので、注意が必要です。
減価償却費は、経年劣化によって目減りした価値分であり、目的や構造によって償却率が決まっています。次の算式によって計算されます。
減価償却費=建物の取得費×0.9×償却率×経過年数
居住用建物の耐用年数と償却率は次のようになっています。ただし、賃貸などの事業用に供していなかった場合、法定耐用年数の1.5倍を用います。
構造 | 耐用年数(法定の1.5倍) | 償却率(法定の1.5倍) |
---|---|---|
木造 | 22(33) | 0.046(0.031) |
軽量鉄骨 | 27(40) | 0.038(0.025) |
鉄筋コンクリート | 47(70) | 0.022(0.015) |
※国税庁「減価償却資産の償却率表」を参照
譲渡所得から差し引くことができる特別控除
譲渡所得から差し引くことができる特別控除には、主に、マイホームの売却にかかる特別控除と、空き家にかかる特別控除、の2つがあります。
マイホームの特別控除は、自己の居住用財産を住まなくなってから3年以内に売却したときに、譲渡所得から3,000万円までの控除を認める特例です。
空き家にかかる特別控除は、相続した空き家に耐震リフォームをして売却した場合、または取り壊し後に売却した場合、譲渡所得から3,000万円まで控除できる特例です。
いずれも、特別控除の適用を受けるには、詳細な条件があるので、適用を受ける場合は、税理士などの専門家に相談するなどして、慎重におこなうようにしましょう。
【関連記事】自宅の売却で適用したい5つの特例とは?それぞれ適用の流れと条件を解説
2-4.住民税
譲渡所得には、住民税も課されます。住民税は、所得税の確定申告に基づき、売却した年の翌年6月以降、各市区町村が賦課します。税率は、譲渡所得に対して次表のようになっています。
税金の種類 | 短期譲渡税 | 長期譲渡税 |
---|---|---|
住民税 | 9% | 5% |
3.不動産買取にかかる諸経費
買取不動産に居住していた場合は、引越し費用が必要になります。その他、買取不動産会社によっては、建物の中を空の状態で引き渡すことが条件になる場合もあるでしょう。その場合、残置物の撤去処分費用が必要になります。
買取不動産の土地に戸建などを新築・販売することを目的としている場合、建物の解体が条件になることもあります。
その場合は、建物解体費用が必要になります。解体費用は、木造で坪5万円弱、鉄骨では5万円強が目安です。解体の際には、足場が必要になる場合もあり、別途工事費用がかかることもあります。
【関連記事】家の売却、不用品の処理はどうする?残置物の回収にかかる費用や手順を解説
まとめ
不動産買取の際には、売却と異なり仲介手数料がかかりません。しかし、買取不動産に抵当権が設定されているなど、個別の事情によっては、登記費用などの手数料が生じてきます。利益が出た場合には、譲渡所得税や住民税も支払うことになります。
本記事で挙げた費用は、個別事情によって発生する費用になります。買取前にどれぐらいの費用が生じるのか推測し、手元に資金を用意しておくようにしましょう。
佐藤 永一郎
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