寄付とカンパは、どちらも財産を無償で譲り渡す場合に使われます。税制の取扱いを考慮すると、送金する際にはどのような点に注意したらよいのか悩む方も多いでしょう。
特に、個人が寄付やカンパをする場合、税制の取扱いは所得税と住民税で大きく異なるため、注意が必要です。
本記事では、寄付とカンパの違い、税制の取扱いや送金する際の注意点について解説していきます。
※本記事は2023年11月時点の情報をもとに執筆しています。最新情報はご自身でもご確認の上、ご判断下さい。
目次
- 寄付とカンパの違い
- 寄付とカンパの税制の取扱いと注意点
2-1.寄付やカンパを受けた側の取扱い
2-2.寄付やカンパをおこなった個人の所得税の取扱い
2-3.寄付やカンパをおこなった個人の住民税の取扱い
2-4.寄付やカンパをおこなった法人の取扱い - 寄付・カンパを送金する際の注意点
3-1.寄附金控除の対象となる団体であるかどうかを確認する
3-2.税制の優遇措置を受ける場合は氏名や名称、住所などの情報を明らかにする
3-3.領収書や受領証を受け取る
3-4.寄付・カンパ先の活動実態を確認する - まとめ
1.寄付とカンパの違い
寄付とは、公共的な慈善目的のために財産を無償で譲渡することです。カンパも、基本的には同様の意味で使われます。
カンパは、元来、カンパニアというロシア語に由来しており、政治団体が政治運動のために大衆を組織することを指していました。しかし、現在は、必ずしも政治団体への寄付のみを指すわけではなく、広く公共活動を行う団体や個人への寄付という意味で使われています。
また、個人へ無償で財産を与える行為は、公共的な目的とは言えず、厳密には寄付やカンパとはいえません。法人への無償譲渡であっても、寄付やカンパといえるには、その法人が公共的な目的のために活動していることが条件になるでしょう。
公共的な目的のために活動を行っている団体への支援かどうかという点は、特に、税制の取扱いにおいて重要になって来るので注意が必要です。
2.寄付とカンパの税制の取扱いと注意点
寄付やカンパを受けた側と、おこなった側に区分して、税制の取扱いを確認していきましょう。
寄付やカンパをおこなった側が個人の場合の税制の取扱いには、所得税と住民税の優遇措置があり、それぞれ優遇措置の仕組みや対象となる団体が異なるので注意しましょう。
2-1.寄付やカンパを受けた側の取扱い
寄付やカンパで財産を譲り受けた団体が、国や地方公共団体、公益法人、NPO法人、社会福祉法人、学校法人、宗教法人など、公益性の高い活動をおこなっている場合、法人税法では、収益事業以外から生じた法人の所得には法人税を課さないものとしています。
したがって、寄付を受けた団体の寄付金収入は非課税とされることが多いといえます。
一方、寄付やカンパで財産を譲り受けたのが一般法人や個人である場合、前者では法人税、後者では贈与税あるいは所得税が課されます。法人税法では、金銭その他の財産の贈与を受けた場合、その金額又は資産の時価相当額を収益の額に算入することとしています。
すなわち、法人が贈与を受けた金額は、受贈益として収益となり、その事業年度において法人税が課されることになります。贈与税は、個人が個人から財産を譲り受けた場合、一人の人が譲り受けた金額が、暦年単位で110万円を超えた金額に対し課税されます。個人が法人から贈与を受けた場合は、一時所得として所得税の課税対象となります。(※参照:国税庁「贈与税がかかる場合」)
2-2.寄付やカンパをおこなった個人の所得税の取扱い
寄付やカンパをおこなった個人の所得税制の優遇措置は、所得控除の制度と税額控除の制度に分かれます。
寄付をした相手方が特定の団体である場合、所得控除または税額控除の適用を受けることができます。両方とも適用を受けることができる場合、いずれか有利な方を選ぶこともできます。
特定の政治団体に対してされた寄付やカンパについては、所得税の税額控除制度の一つである政党等寄附金特別控除の適用を受けることができます。
所得控除制度
所得控除制度としては、寄附金控除があります。
寄附金控除の対象となる寄付や献金は、特定寄附金として定められた特定の団体への金銭の譲り渡しになります。特定の団体とは、国・地方公共団体、公益法人等、所得税法別表第一に掲げる法人等となります。(※参照:国税庁「一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)」)
控除額は、次の算式で計算されます。
寄付金控除額=その年に支出した特定寄付金の額-2,000円
所得から控除できる寄付金額は、その年の総所得金額の40%から2,000円を差し引いた金額が上限となります。
税額控除制度
税額控除制度として、公益社団法人等寄附金特別控除、認定NPO法人等寄附金特別控除、政党等寄附金特別控除があります。政治献金で一定の要件を満たすものは、政党等寄附金特別控除の適用を受けることができます。
公益社団法人等寄附金特別控除は、一定の公益法人等、学校法人への寄付、認定NPO法人等寄附金特別控除は、所轄庁の認定を受けた認定NPO法人への寄付について、寄付金額から2,000円を差し引いた額の40%を、所得税額から直接控除する制度です。税額控除の金額は、次のように計算します。
寄付金税額控除額=(その年に支出した一定の寄付金の額-2,000円)×40%
政党等寄附金特別控除は、政治資金規正法に規定する政治資金団体に対する政治活動に関する寄付で、同法の報告書によって報告されたものにつき、寄付金額から2,000円を差し引いた額の30%を、所得税額から直接控除する制度です。税額控除の金額は、次のように計算します。
寄付金税額控除額=(その年に支出した一定の寄付金の額-2,000円)×30%
2-3.寄付やカンパをおこなった個人の住民税の取扱い
個人が地方公共団体、都道府県共同募金会・日本赤十字社、地方公共団体が条例で指定する団体に対して寄付をおこなった場合、住民税の税額控除制度の適用を受けることができます。(※参照:総務省「ふるさと納税以外の寄附金税制」)
住民税では、寄付金額から2,000円を差し引いた額の10%を、住民税額から直接控除します。税額控除の金額は、次のように計算します。住民税は、前年の所得を下に課税されるため、税額が控除されるのは寄付金を支出した年の翌年になります。
寄付金税額控除額=(一定の寄付金の額-2,000円)×10%
対象となる寄付金額は総所得金額の30%が上限となります。特例として、ふるさと納税対象の寄付金のみ、基本控除に加えて、以下の算式により計算された控除額があります。
寄付金税額控除額=(一定の寄付金の額-2,000円)×(90%-寄付者に適用される所得税率)
2-4.寄付やカンパをおこなった法人の取扱い
法人が寄付金や献金をおこなった場合、次の算式により計算した損金算入限度額の範囲内で法人税額の課税対象となる所得の計算上、損金に算入できます。
損金算入限度額=(所得金額×2.5/100+期末資本金等の額×当期の月数/12×2.5/1,000)×1/4
特定の公益増進に著しく寄与する法人、認定特定NPO法人に対する寄付金については、損金算入限度額は、以下の金額に増額されます。
損金算入限度額=(所得金額×6.5/100+期末資本金等の額×当期の月数/12×3.75/1,000)×1/2
また、国又は地方公共団体、一定の公益法人等に対する寄付金は、その額が損金に算入されます。
3.寄付・カンパを送金する際の注意点
前項では、寄付やカンパを行った側と受け取った側の税制の取扱いについて概要を説明しました。
以下では、税制の優遇措置を見据えて、寄付やカンパを送金する際に注意したい点を、見ていきましょう。
3-1.寄附金控除の対象となる団体であるかどうかを確認する
個人が寄付やカンパを行った場合は所得税および住民税、法人が行った場合には法人税において税制優遇措置が設けられています。ただし、それらの優遇措置は、各法令に定められた特定の団体に対する寄付やカンパに限られています。
送金をして税制の優遇措置を受けたい場合には、これらの特定の団体に該当するかどうかを確認しましょう。
【関連記事】寄付金控除となる対象団体は?金額の上限や申請手順も解説
3-2.税制の優遇措置を受ける場合は氏名や名称、住所などの情報を明らかにする
寄付やカンパの送金をして税制の優遇措置を受けたい場合、氏名や名称、住所などの情報を明らかにして送金を行うようにしましょう。これらを明らかにせずに匿名の寄付やカンパをした場合、当然のことながら、誰が寄付やカンパをしたのか証拠が残らないため、優遇措置を受けることはできません。
税制の優遇措置を受けることが目的でない場合であっても、寄付やカンパがどのように使われ、どのように役に立っているのかなど、知りたくなることもあるでしょう。そのような場合に備えて、氏名や名称、住所などの情報を明らかにして送金を行うことを検討しましょう。
3-3.領収書や受領証を受け取る
寄付やカンパの送金をして税制の優遇措置を受けるには、確定申告をする必要がありますが、その際、寄付の領収書や受領証の添付が条件になります。寄付やカンパの領収書・受領証を受け取るようにしましょう。
領収書・受領証には、税制の優遇措置を受けることができるかどうか、そして、寄付やカンパをした氏名や名称、金額、年月日が記載されているかどうかを確認しましょう。
3-4.寄付・カンパ先の活動実態を確認する
税制上の注意点ではありませんが、寄付・カンパを行った資金が適切に活用されているかどうかという視点も重要です。昨今、SNSを活用した個人間での寄付・カンパの事例も急速に広まっており、中には多額の寄付を受けたものの当初の募集目的に沿っておらず、適切に利活用されていないケースも見られています。
寄付先の信頼性を検証するうえで、非営利組織・法人を評価する「グッドガバナンス認証」を受けているかどうかなども一つのポイントとなります。グッドガバナンス認証制度は、非営利組織だけではなく非営利組織を支援したい個人・企業・団体に対しても支援を検討する上での基準を示す役割を担っています。
【関連記事】グッドガバナンス認証制度とは?評価基準や主な認証NPOも
認証制度を受けていない団体であっても適切に寄付やカンパが活用されていれば問題ありません。しかし、活動実態が不明瞭であったり、出来るだけ信頼できる団体を支援していきたいという場合には認証されている団体であるかどうかを判断のポイントとして検討されてみると良いでしょう。
まとめ
寄付もカンパも、公共目的のために無償で財産を譲渡することであり、意味は同じです。個人が特定の公益性の高い団体に寄付をおこなった場合には、寄付金控除という優遇措置の適用を受けられます。優遇措置は、所得税と住民税で取扱いが異なるので注意しましょう。
寄付やカンパを送金する際は、個人情報を伝え領収書等を受けとること、寄付金控除の対象となる団体であるのかを確認することなどに注意しておきましょう。また、寄付・カンパ先の団体が支援したい内容に沿って適切に資金を活用してくれるか、しっかり確認することも大切なポイントです。
佐藤 永一郎
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