投資でまとまった利益を上げることができても、税金の支払いはつきものです。せっかく稼いだお金が税金として出ていくことを考えると、何とか税金の額を少なくしたいと考える方は多いのではないでしょうか。
ソーシャルレンディングは手軽かつ高い利回りを狙える投資でもあることから注目を集めていますが、やはり税金は気になるポイントとなります。そこで今回は、ソーシャルレンディングの利益にかかる税金の節税ポイントについて説明していきます。
目次
- ソーシャルレンディングにおいて節税をする方法
1-1.経費を計上する
1-2.夫婦で所得が低い方の名義で投資を行う
1-3.法人化を行う
1-4.確定申告による還付を受ける
1-5.出金回数を抑える
1-6.ふるさと納税を利用する - ソーシャルレンディングにおける節税の注意点
2-1.他の所得区分と”損益通算”ができない
2-2.総合課税方式は”繰越控除”ができない
ソーシャルレンディングにおいて節税をする方法
まず初めに、節税とは、法律の範囲内で税金を払いすぎない工夫をすることです。払わなくてはいけない税金を納めない脱税とは異なります。
ソーシャルレンディングによる利益は所得区分の「雑所得」に分類されます。仮想通貨の売買による利益や、業務として行ったものではない単発の仕事での利益などが雑所得に該当します。雑所得は給与所得や事業所得などの他の所得と合算したうえで課税所得が決まる「総合課税」に該当します。
課税所得をもとに金額が決定される所得税は、以下の計算式で求めることができます(2019年2月時点)。この表から、所得が高くなるほど税率も高くなることがわかり、節税の必要性も増してくると言えます。
課税される所得 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円未満 | 5% | 0円 |
195万円~330万円未満 | 10% | 97,500円 |
330万円~695万円未満 | 20% | 427,500円 |
695万円~900万円未満 | 23% | 636,000円 |
900万円~1,800万円未満 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円~4,000万円未満 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
なお雑所得は、給与所得や事業所得など他の所得と損失を合算する「損益通算」や、損失を翌年以後に繰り越すことができないため、あまり節税に融通が利くものではありません。
とはいえ、ソーシャルレンディングの利益による雑所得の節税を行う手段は複数あります。具体的な節税対策として考えられるのは、
- 経費を計上する
- 夫婦で所得が低い方の名義で投資を行う
- 法人化を行う
- 確定申告による還付を受ける
- 出金回数を抑える
- ふるさと納税を利用する
の6つが挙げられます。ひとつずつ見ていきたいと思います。
経費を計上する
所得とは、収入から経費を差し引いたものです。つまり、その収入を得るためにかかった経費があれば、所得を引き下げられます。所得が引き下がれば税率も下がり、大きな節税につながる可能性もあるでしょう。
なお、経費は何でも認められるわけではありません。ソーシャルレンディングにおける必要経費としては、たとえば
- 振込手数料
- セミナーの参加費や交通費
- ソーシャルレンディング関連の書籍代
- インターネットの利用料
などが挙げられます。これらを経費として申告する場合は、支払った際の領収書やレシートを保管しておきましょう。
夫婦で所得が低い方の名義で投資を行う
ソーシャルレンディングによる利益は、総合課税として扱われます。よって、所得税率は給与所得や不動産所得などとの合算で決まります。所得が多い人ほど、所得税率は高くなると言えます。
したがって、ソーシャルレンディング投資に取り組む場合に、夫婦のうち所得が少ない方の名義で始めることで、所得税率をトータルで低く抑えやすくなる(節税になりやすい)のです。それも共働きではなく、片方が専業主婦(主夫)やパートタイマーなど二人の年収の差が大きいケースの方が、節税の効果は見込めます。
それでは、実際にどれほどの差が出るのか、ソーシャルレンディングによる所得が年間100万円生まれた場合で考えてみましょう(簡略化のため控除は省略しています)。
たとえば、会社員の夫(年間給与所得500万円)の名義でソーシャルレンディング投資を行った場合、先述の所得税額表から所得税率は20%となります。よって、ソーシャルレンディングの所得税は100万円×20%=20万円かかるいうことになります。
一方、専業主婦の妻(年収0円)の名義でソーシャルレンディングを行った場合、所得税率は5%です。よって、ソーシャルレンディングの所得税は(100万円)×5%=5万円に収まります。
つまり、所得税だけで考えると、同じ夫婦でも名義によって【15万円】の差が生まれたことになります。
なお、このケースの注意点としては、
- 妻個人で確定申告を行う
- 夫の会社の配偶者控除が続けられる所得額に調整する
ことが挙げられるでしょう。
法人化を行う
年間の所得額によっては、法人化を行った方が節税になるケースがあります。
2019年2月の時点で、ソーシャルレンディングの分配金(雑所得)は総合課税です。よって、ソーシャルレンディングの収入が多いほど税率も高くなります。極端な例ですが、仮に所得額が4,000万円を超えたら、所得税は45%まで引き上げられるのです。
ソーシャルレンディングの分配金も含めた給与以外の所得が、例えば給与所得を超えるほど大きいときには法人の設立が選択肢として上がってきます。法人税率は所得税率に比べて低く抑えやすく、また節税の選択肢が大きく広がるからです。また、赤字になった場合は、その赤字が最大9年間繰り越せるのも法人化の魅力です。
確定申告による還付を受ける
確定申告とは、所得およびそれに応じた税額を計算して、国に申告する手続きです。確定申告では、基本的に1月1日~12月31日の合計所得を、翌年の2月16日~3月15日の期間中に税務署(国税庁)へ申告します。そして、その申告した額の所得税を、その期間中に国へ納めなくてはいけません。
たとえば、課税される所得額の合計が195万円~330万円未満であれば、課される所得税率は10%です。一方、ソーシャルレンディングで利益が分配されるとき、所得税は事業者によって20%分(+復興特別所得税)が差し引かれています。
つまり、確定申告をすることで、事業者が余分に源泉徴収していた10%分の所得税が戻ってくるのです。年間の所得が330万円未満であれば、一度計算してみるとよいでしょう。
なお、所得が330万円を超える場合は、所得税が追加で発生する場合があります。あらかじめ頭に入れておくとよいでしょう。
出金回数を抑える
節税とは少し異なりますが、ソーシャルレンディング口座から出金する回数を抑えることも、コスト削減の役に立ちます。
ソーシャルレンディングを利用する場合、それぞれの事業者が指定する口座へ資金をデポジットしなくてはいけません。そして、投資で得られた利益もその口座宛に分配されるケースがほとんどです。したがって、自分の手元にお金を戻すには、その口座から出金を行う必要があります。
ただ、多くの事業者がその出金の手続きに数百円の手数料を設けています。1回1回の手数料はそこまで大きくありませんが、何度も出金を行うと結構な出費が生じるはずです。そのため、一度にまとめて出金することで、手数料をなるべく抑えることを検討すると良いでしょう。
ふるさと納税を利用する
もうひとつ、間接的な節税対策として、ふるさと納税の利用がおすすめです。
ふるさと納税を利用すると、納税額の合計から2,000円を引いた金額が翌年の住民税から差し引かれることとなります。また、確定申告を行い寄付金控除として申告することで、所得税も抑えることができます。さらに、その地方の豪華な返礼品が受け取れるため、実質2,000円の負担のみで本来支払うべき税金を返礼品に変えることができてしまうのです。
ふるさと納税による税額控除には上限がありますが、その年の所得が多い人ほど、その限度額は高くなります。その地方の名産が味わえたり楽しめたりするので、まだ利用したことのない場合は、一度ぜひ検討してみてください。
ソーシャルレンディングにおける節税の注意点
ソーシャルレンディングで節税を行う場合、注意点が2つあります。ひとつずつ見ていきましょう。
他の所得区分と”損益通算”ができない
ソーシャルレンディングによる所得が年間でマイナスになる可能性もゼロではありません。その場合、ソーシャルレンディングの所得は他の所得区分との損益通算ができません。
損益通算とは、たとえば不動産投資で損失を出した場合、他の所得からその損失分を差し引いて課税所得の計算ができることです。
ソーシャルレンディングで損失を出したとしても、そのマイナス分は合計所得には反映できません。給与所得で500万円を稼いで、ソーシャルレンディングで500万円のマイナスを出したとしても、合計所得を0円にはできないのです。
総合課税方式は”繰越控除”ができない
ソーシャルレンディングによって生じる雑所得では、損失が発生しても繰越控除が許されていません。繰越控除とは、その年の損失分を、翌年の所得の計算に適用できることです。
たとえば、事業で大きな赤字を計上し、その年の所得がマイナスとなった場合、その損失額は翌年から3年間繰り越しができます。そのようにすることで、年をまたいだ節税効果が期待できるのです。
しかし、ソーシャルレンディングで年間50万円の損失を出したとしても、翌年の分配金からその損失分50万円を差し引くことはできません。よって、翌年の雑所得については、前年の損失分に関係なく税金が発生することとなります。
まとめ
ソーシャルレンディングにより生じる利益は雑所得に分類されますが、雑所得は給与所得などとの合算で所得税などが決まる総合課税に該当します。そのため、給与所得などと合算した合計の所得額が高いほど税率が上がることとなります。
雑所得の節税を行うには、必要経費があればもれなく計上すること、配偶者がいるなら所得の分散を図ってトータルの所得税額を抑えること、ふるさと納税を行うことなどが挙げられます。ただし、損失が生じた場合に他の所得と合算できなかったり、来期に繰り越せなかったりするデメリットがある点には留意しておきましょう。
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石村淳
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