「ソーシャルレンディングでひとつの案件に長期間で資金を預けるのは不安…」
そう思われる投資家の方は多いのではないでしょうか。たしかに、長期ファンドへ投資を行うと、短期ファンドよりも返済の遅延や貸し倒れのリスクが増えるのは事実です。
そこでこの記事では、長期運用のリスクが気になる方に向けて6ヶ月未満の短期投資が可能なソーシャルレンディング会社(事業者)をご紹介したいと思います。
目次
- クラウドバンク
1-1.短期ファンドの種類が豊富
1-2.クラウドバンクの利回りと担保設定について
1-3.過去には行政処分があったものの昨期は黒字化達成 - Funds(ファンズ)
2-1.融資先は大企業のグループ会社に限定
2-2.Fundsの運用期間と利回りについて
2-3.リコースローンが対象 - FANTAS funding
3-1.利回り8~10%の短期ファンド(不動産担保付き)
3-1-1.FANTAS check
3-1-2.FANTAS repro
3-2.投資物件の詳細が開示されている
3-3.優先/劣後出資方式を採用
3-4.募集金額の少なさが課題 - まとめ
クラウドバンク
『クラウドバンク』は、日本クラウド証券株式会社が運営を行うソーシャルレンディングサービスです。
クラウドバンクは2013年にサービス開始から、2019年2月6日時点では応募金額が440億円を突破しており、大手ソーシャルレンディング会社の1社として投資家に認知されています。クラウドバンク株式会社の公式サイト上では有価証券報告書が開示されていますので、投資の際には目を通しておくと良いでしょう。
短期ファンドの種類が豊富
クラウドバンクでは運用期間が4~7ヶ月の短期ファンドが用意されています。
ファンドの内容も、
- カリフォルニア不動産支援
- エネルギー開発(風力発電、太陽光発電、バイオマス)
- 新興国の債務者支援
- 中小企業向け支援(横浜市と協定を締結)
など、バラエティーに富んでいます。厳選な審査の上で組成される各ファンド案件は、募集開始後すぐに満額に達することも少なくありません。
クラウドバンクの利回りと担保設定について
クラウドバンクの平均利回りは6.2~7.0%ほどです(2019年2月時点)。1万円から投資ができるので、手軽に投資にチャレンジができます。
担保付きのファンドも多く、返済遅延や貸し倒れが万が一起きた場合でも、担保処分により元本が無事に戻る可能性が期待できます。ちなみに、クラウドバンクでは、2019年1月末までの時点で貸し倒れはまだ1件も起きていません。
過去には行政処分があったものの昨期は黒字化達成
クラウドバンクは過去に2度の行政処分を受けています。1回目は2015年7月で、分別管理を適切に行っていないこと及び顧客に対し必要な情報を適切に通知していないと認められることによって処分を受けました。このときは、増える投資需要に社内整備が追いつけなかった事情があります。
そして、2回目は2017年6月で、著しく事実に相違する表示又は著しく人を誤認させるような表示のある広告をする行為として、ファンドの融資スキーム説明に誤りがあったこと、手数料還元キャンペーンを謳いながらも還元が遅延していたことで処分を受けています。
ただ、手数料は処分当時すでに投資家へ還元されており、スキーム図に誤りがあった案件に関しても投資資金は全額投資家へ返還されました。この件については、投資家から「迅速なアフターフォローだった」と評価の声も上がっています。そして、その後は大きな問題を起こすことなく経営を続けており、2018年3月期には黒字化を達成しています。
Funds(ファンズ)
『Funds』は、クラウドポートが運営する貸付ファンドのオンラインマーケットです。
クラウドポートは、国内大手のソーシャルレンディングメディアを運営しています。みずほキャピタルやB Dash Venturesなどから出資を受けていることからも、期待値の高い企業と言えるでしょう。
Fundsでは、様々な企業が組成したファンドの情報を一元的に提供し、投資まで行うことができる国内初のプラットホームに取り組んでいます。「貸付ファンドのオンラインマーケット」と銘打っており、Funds運営元のクラウドポート自体はファンドの組成や資金の貸付を行いません。
ファンドの組成は複数の協力企業が行い、Fundsはあくまで投資の募集のみに特化しています。つまり、投資家はFunds内で複数企業への分散投資が可能となります。
そして、Fundsでは投資家からの信頼性を第一にサービスを運営しています。具体的には、ファンド組成企業の審査はもちろん、ファンドごとに収益性、回収リスク、分別管理の確認も行っているのです。よって、投資家もある程度の信頼を置いて投資の検討ができるでしょう。
融資先は企業のグループ会社に限定
2019年2月時点で、Fundsの取り組みに参加している企業は以下の3社です。
企業名 | 特徴 |
---|---|
アイフル株式会社 | 1967年創業、貸付残高8,000億円を誇る東証プライム上場の国内大手ノンバンク |
株式会社デュアルタップ | 東証二部上場の不動産会社。マンションブランド「XEBEC」シリーズを手がける国内デベロッパー |
LENDY株式会社 | オンライン融資サービスを提供し、スモールビジネスローンを展開。MUFGアクセラレータプログラムで優勝 |
この3社が組成した貸付ファンドの資金募集を、Fundsが投資家に対して行います。この投資家から集めた資金を実際に借りて最終貸付先に融資を行う企業は、ファンド組成企業の関係会社に限定されています。
このことにより、仮に最終貸付先からの返済がなされなくても、その損失分は投資家ではなくグループ会社が負担することになるため、投資家が負う返済リスクはファンド組成企業とグループ会社間の返済に限定されます。
Fundsの運用期間と利回りについて
2019年2月時点において、Fundsでは運用期間が6ヶ月以内の短期ファンドも用意されています。予定利回りは年1.5~6%ほどです。
ソーシャルレンディングの利回り(年5%~8%程度)に比べるとFundsの利回りは低い水準となりますが、その分、情報の透明性や貸し倒れリスクの軽減策などが取られていると考えられます。「高い利回りを狙うことよりも、リスクを抑えた運用をしていきたい」という方にはおすすめのファンドでしょう。
また、Fundsではファンドへの投資を1円単位から行うことができます。ただ、あまりに投資金額が少ないと、金利がつかない場合もありますので注意が必要です。
リコースローンが対象
Fundsの貸付ファンドは、リコースローンを対象にしています(2019年2月時点)。リコースローンとは、担保資産に限定されずに返済を求めることができる融資方法です。逆に、元本と利息の返済に対する責任範囲を限定する融資方式のことノンリコースローンと呼びます。
たとえば、1億円の融資を受けるために、融資先の企業が不動産評価額1億円の担保物件を準備したとしましょう。その後、融資先企業が1億円を返せなくなった場合、その担保物権の売却によって元本は返済されます。
しかし、担保物件が8,000万円でしか売却できなかったらどうでしょう。元本を満額返済するためには2,000万円足りない計算です。
この場合においてリコースローンでは、融資先企業が残り2,000万円の差額も返済しなくてはいけません。一方、ノンリコースローンの場合は、融資先企業がその担保物件を提供したら、それ以上の返済義務を負わずに済むのです。
そして、ソーシャルレンディングでは、ほとんどの担保付きファンドがノンリコースローンとなっています。つまり、担保物件の不動産評価額が下がっても、融資先にそれ以上の返済義務はありませんので、投資家は担保があるからと言って安心できるわけではないのです。
ただ、今後はノンリコースローン案件を募集する可能性もあります。あらかじめ頭に入れておきましょう。
FANTAS funding
『FANTAS funding』は、FANTAS technology株式会社が運営する、不動産投資型クラウドファンディングサービスです。FANTAS technology株式会社は、中古ワンルームマンション買い取りサービスなどの事業を運営しています。
2010年創業で、非上場ながら2017年度は80億円の売上を達成しました。FANTAS technologyは上場企業と比べても引けを取らない売上規模があります。
利回り8~10%の短期ファンド(不動産担保付き)
2019年2月時点では、ファンドの運用期間は4~7ヶ月と短期のものがメインとなっています。投資は1口1万円から可能です。なお、募集ファンドは、FANTAS technology社が提供する「FANTAS check」「FANTAS repro」という2つのサービスを通じて組成されます。
FANTAS check
まず、FANTAS checkとは、ワンルームマンションの自動査定を行うAIサービスです。FANTAS fundingがファンドを組成する際に、そのシステムを独自に用いています。
具体的には、FANTAS checkの査定をもとに取得した物件をFANTAS fundingで取り扱い、その運用資金を募集するのです。FANTAS checkを機能させることで物件のやりとりに仲介業者は必要なくなり、取引の際に仲介手数料がかからなくなるという特徴があります。
なお、投資家への配当は、物件を保有する期間中の家賃収入と売却益が原資となっています。
FANTAS repro
FANTAS reproでは、空き家となった住宅を買い取り、再び利用できるようにリフォームし転売するまでの流れを行います。FANTAS fundingでは、このFANTAS reproの事業を行うための運用資金を募集しています。
空き家の増加は現在社会問題となっています。空き家が増えると街の治安や景観が悪くなったり、災害に繋がる恐れがあったりするからです。したがって、空き家再生事業に投資を行うことで、社会貢献につながるメリットもあります。
FANTAS reproによって組成されたファンド案件は、2019年2月現在で予定分配率は8~10%ほどで、運用期間は7ヶ月前後となっています。利回り水準は高いため、相応のリスクがあると認識して投資を進めていく必要があります。
投資物件の詳細が開示されている
FANTAS fundingでは、対象物件の情報が資金の募集時に詳しく開示されています。これは、FANTAS fundingが不動産投資型クラウドファンディングで、ソーシャルレンディング(融資型クラウドファンディング)とは管轄の省庁や法律などが異なるため、情報を開示できる幅が広いことが理由です。
ソーシャルレンディングの場合、事業者には貸金業法に沿った運営が求められます。投資家へ融資先の詳細を開示することは、貸金業法違反となってしまいます。そのため、ソーシャルレンディングでは、情報の不透明性が原因で様々なトラブルも生じています。
一方、不動産投資型クラウドファンディングのFANTAS fundingは、融資ではないため貸金業法の縛りがなく、投資家は実際に物件(所在地や立地環境など)を確認してから投資を決めることができます。そのため、投資家の信頼が集まりやすくなっていると言えます。
優先/劣後出資方式を採用
FANTAS fundingでは、優先/劣後出資方式を採用しています。優先/劣後出資方式とは、投資対象の不動産を取得する際に、
- 投資家が優先出資者
- 事業者が劣後出資者
と出資に対して収益の受け取り順位の優劣を付けることです。このようにすることで、万が一元本に損失が出た場合に、一定割合までの損失をFANTAS technology株式会社(劣後出資者)が負担してくれます。
損失負担の割合は案件によって異なりますが、FANTAS fundingでは基本的に20%までと定められています。そして、損失額が負担割合を超える場合は、優先出資者である投資家の元本が減少します。
募集金額の少なさが課題
FANTAS fundingの課題として、募集金額の少なさがあります。1ファンドあたりの募集金額は、400万円~2,000万円程度と小規模です。よって、ファンドによっては募集開始後すぐに満額に達する場合があります。
現に、FANTAS reproで組成した第1号~7号ファンド(総額約1億円)の募集は、開始後30秒で満額に達しました。この現状を鑑みると、まだFANTAS fundingは投資家のニーズに対して十分な投資機会を提供できておらず、機会損失が発生していると考えられます。
FANTAS fundingでは、今後新築物件のファンドも開発し、年間120ファンド以上の組成を目指すとアナウンスしています。ファンドが増えれば、募集金額の少なさもカバーできるようになるでしょう。
まとめ
今回は、短期案件に比較的投資しやすい事業者として以下の3社をご紹介しました。
- クラウドバンク
- Funds(ファンズ)
- FANTAS funding
まず、『クラウドバンク』には、
- 短期ファンドの種類が豊富で1万円から投資可能
- 担保設定案件が多い
- 過去に行政処分はあったが昨期は黒字化を達成
という特徴がありました。
次に、『FANTAS funding』には、
- 利回り8~10%の短期ファンド(不動産担保付き)
- 投資型クラウドファンディングのため投資物件の詳細が開示
- 優先/劣後出資方式を採用
という特徴があります。
そして、『Funds』には、
- 融資先は企業のグループ会社に限定
- 既存のソーシャルレンディングよりも利回り水準は低め
- リコースローンが対象
という内容をご紹介しました。
短期案件では、長期案件に比べるとリスクを抑えて運用することができます。今回ご紹介した内容をもとに、ぜひ投資の検討を進めてみて下さい。
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石村淳
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