今も被害が続く地雷問題、私たちにできることは?AARがシンポジウム

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AAR Japan「地雷問題の今」を考えるシンポジウム」
画像はAAR Japanのウェブサイトより引用 地雷などの被害に遭わないための「回避教育」を受ける子どもたち(アフガニスタン・ナンガハール県)

国際NGOのAAR Japan[難民を助ける会]は11月26日、「『地雷問題の今』を考えるシンポジウム」をオンラインで開催した。「対人地雷禁止条約(オタワ条約)」が1997年12月に署名されてから25年が経過するが、世界では今も地雷による被害が続く。AAR Japanはアフガニスタン、カンボジアなどで地雷の除去や、被害にあわないための教育などの対策に取り組んできた。ウクライナ紛争でも、AARは英国のNGOヘイロー・トラスト(The HALO TRUST)と連携して地雷・不発弾除去事業を進めている。シンポジウムは、こうした経緯を踏まえ、地雷に関する知識や対策の取り組みを伝え、地雷問題など人道支援活動に長年従事してきたAAR会長の長有紀枝氏(立教大学教授)が、オタワ条約の意義と課題について講演した。

長氏は1990年インドシナ難民奨学金生の学習支援ボランティアとしてAARに参加。職員として91~2013年、旧ユーゴスラヴィアなど紛争下の緊急人道支援や地雷対策に携わった経歴を持つ。講演では、地雷について、対人、対車両、対戦車など種類があることを紹介した。一定の時間を過ぎると自己破壊する、または爆発しなくなる装置が付いた「スマート地雷」が開発されているが、兵器としてはローテクであり、故に設置後50年、100年経っても爆発する危険性があることや、埋設に対して除去が追い付かないギャップなど、地雷を巡る問題を報告した。

AARは当初、カンボジア等で障がい者への支援活動を行っていたが、地雷問題の対策に国際社会が動く中で、1996年からは撤去活動に協力するまでになる。その翌年には「地雷廃絶国際キャンペーン(ICBL)」に参加し、日本国内での地雷廃絶活動に取り組んだ。
続いて登壇した東京事務局の紺野誠二氏は、AARから英国の地雷除去NGO「ヘイロー・トラスト」に出向、コソボで8ヶ月間、地雷・不発弾除去作業に従事するという、日本人としては希少な経歴を持つ。現在は東京事務局で地雷問題やアフガニスタン、ウクライナ事業を担当している。

AARの今年3月のレポートで、紺野氏は、このように指摘している。「ロシアはオタワ条約も、クラスター弾に関する条約(オスロ条約)、どちらの条約の締約国にもなっていない。ウクライナ政府は、オタワ条約の締約国だが、21年1月1日の時点で336万4433個もの対人地雷を貯蔵している。また、オスロ条約の締約国ではない。」。ウクライナ側もクラスター弾の使用が確認されている。

しかし、紺野氏は「締約国ではないからクラスター弾や地雷を使用してよいということにはならない。民間人に死傷者が出るのは国際人道法に違反する行為だ」と主張する。一方で、一般の関心がウクライナに向きがちな今、「ウクライナに支援が集中して、他の国や地域に支援活動は行き届かないということはあってはならない」とメッセージを伝えた。

AARはアフガニスタンやシリア、ミャンマーなどで支援活動を行ってきた。アフガニスタンでは、対人地雷に変わり圧力鍋やポリタンクなどの生活用品を利用した即席爆発装置(IEDs)の使用が広がっており、タリバンによって多く設置されたとみられている。一見、危険物に見えない即席爆発装置を触ってしまうことなどにより、民間人、特に子供に深刻な被害を及ぼしている。このため、子供たちが自分で地雷を見分けられるよう、現地のボランティアと協力して講義なども続けてきた。また、地雷の被害に遭い、身体に障がいがある人もスタッフとして働いている。

地雷問題は世界各地で長期間にわたり被害が続いているが、日本では地雷による事故は無く、身近な問題として認識されているといえない。地雷に種類があることを知っている人さえ少数だろう。長期間、間近にこの問題に関わってきたAARによるシンポジウムは、まず正しい知識を持つこと、寄付をはじめ自分ができることから関心を持って活動を始めることの大切さを示唆した。

【関連サイト】AAR Japan「AAR Japan活動レポート「ウクライナなど50カ国・地域で地雷被害:ランドマイン・モニター報告2022」
【関連サイト】AAR Japan「寄付の申込み