マイホーム購入の際にほとんどのケースで住宅ローンを利用しますが、選び方がわからない人も多いでしょう。住宅ローンは金利の低さだけでなく、それぞれ自分の状況に合う商品の選択が大切です。
今回は住宅ローンの金利や諸費用の種類、選び方のポイントについて、住宅ローンのアドバイス実績が豊富なFPが解説していきます。
※2023年7月時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
目次
- 住宅ローンの金利タイプ
1-1.全期間固定金利型
1-2.変動金利型
1-3.固定金利期間選択型
1-4.返済方法の種類 - 住宅ローンの「融資手数料型」と「保証料型」とは?
2-1.「融資手数料型」とは
2-2.「保証料型」とは
2-3.融資手数料型と保証料型のどちらを選ぶべきか - 住宅ローン選びのポイント・注意点
3-1.諸費用込みの総返済額を比較する
3-2.無理なく支払い続けられるかを考える
3-3.金利上昇リスクを検討する
3-4.団信の保障内容を確認する - まとめ
1.住宅ローンの金利タイプ
住宅ローン選びにおいて最も重要なのが、金利タイプの選択です。金利タイプによって適用金利が異なり、毎月の返済額や総返済額も変わります。主な金利タイプは以下の3タイプです。それぞれについて詳しく解説します。
1-1.全期間固定金利型
全期間固定金利型とはローンの契約時に借入期間中の金利が固定されるタイプで、主な商品にフラット35があります。全期間固定金利型には全期間金利が一定のタイプと途中で金利が上がる段階金利型があります。段階金利型であっても、契約時に全期間の金利が決まる仕組みです。
全期間固定金利型のメリット
全期間固定金利型には以下のようなメリットがあります。
- 全期間の適用金利が確定しているので、金利上昇に備えることができる
- 全期間の返済額が確定しているので、ライフプランが立てやすい
全期間固定金利型のデメリット
全期間固定金利型には、以下のようなデメリットもあります。
- 超低金利期には変動金利より適用金利が高めになる
全期間固定金利型が向いている人
全期間固定金利型は、以下のような人に適した金利タイプです。
- 借入期間が長く、借入金額も多い人
- 金利が上昇してからの借り換えが難しい人
1-2.変動金利型
変動金利型は半年ごとに金利が見直され、金利の変動に応じて返済額が増減するタイプです。
住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査(2022年(令和4年)10月)」によると、住宅ローン利用者の69.9%が変動型を選んでいます。
毎回の返済額は5年ごとに見直され(5年ルール)、金利が上昇して返済額が増えてもそれまでの1.25倍以内というルールがあります(125%ルール)。
変動金利型のメリット
変動金利型には以下のようなメリットがあります。
- 超低金利期には他の金利タイプより適用金利が低くなる
- 市場金利が上昇しても返済額は急激に増えない
変動金利型のデメリット
変動金利型には以下のようなデメリットもあります。
- 金利が上昇すると返済額に占める利息の割合が多くなる
- 金利が大幅に上昇すると返済額で利息をまかないきれない「未払い利息」の状態になる
変動金利型が向いている人
変動金利型は、以下のような人に適した金利タイプです。
- 借入額が少なめの人
- 借入期間が短い人
- 低金利期のメリットを活かしたい人
1-3.固定金利期間選択型
固定金利期間選択型とは、ローン契約時に決めた一定期間(3年・5年・10年など)中は金利が固定されるタイプです。固定金利期間終了後は金融期間ごとに取り扱いが異なり、どの金利タイプになるとしても、その時点の金利で返済額が算出されます。
固定金利期間選択型のメリット
固定金利期間選択型には以下のようなメリットがあります。
- 固定金利期間中の返済額が一定になる
- 固定金利期間中の適用金利が全期間固定金利型より低い
固定金利期間選択型のデメリット
固定金利期間選択型には以下のようなデメリットもあります。
- 固定期間終了後に大幅に返済額が増えるリスクがある
固定金利期間選択型が向いている人
固定金利期間選択型は、以下のような人に適した金利タイプです。
- 一定期間(教育費がかかる期間など)の金利変動リスクを回避したい人
1-4.返済方法の種類
住宅ローンの種類には金利タイプ以外に、返済方法による分類もあります。住宅ローンの返済方法は、元利均等返済と元金均等返済の2種類です。
元利均等返済
元利均等返済とは、元金と利息の合計(毎月の返済額)が一定の返済方法です。返済額は変わりませんが、返済が進むにつれて利息の割合が減り、元金の返済が増えます。
毎月の返済額が一定であるため、返済計画が立てやすい点がメリットです。一方、元金均等返済に比べて総返済額が多くなります。
元金均等返済
元金均等返済は返済額のうち、元金分はずっと一定という返済方法です。返済が進むほど利息額が減っていくため、返済額は毎回減っていきます。
元利均等返済に比べて総返済額が少ない点はメリットです。ただし、同じ借入額と金利の場合、当初の返済額は元利均等返済より大きくなります。
2.住宅ローンの「融資手数料型」と「保証料型」とは?
住宅ローンは金利以外に諸費用がかかり、主な諸費用には融資手数料と保証料があります。住宅ローン契約者が返済不能になると、保証会社が肩代わりをしてくれます。保証料はそのためにローン契約者から保証会社に支払うお金です。
諸費用のかかり方には大きく分けて「融資手数料型」と「保証料型」があります。それぞれの特徴と比較ポイントを整理し、自分に合う諸費用のタイプを選びましょう。
2-1.融資手数料型とは
融資手数料型とは、契約者が金融機関に手数料を支払い、金融機関から保証会社に保証料を支払う仕組みです。手数料の種類には「定額型」と「定率型」があります。定額型は借入金額にかかわらず手数料が一定のタイプで、金額は3万円から6万円が相場です。
一方、定率型は借入金額に定率を掛けた金額が手数料となります。たとえば、手数料率2.2%で借入金額が3,000万円であれば、手数料は66万円となるわけです。
一見すると定額型が有利に見えますが、定額型はその分適用金利が高くなります。融資手数料は融資が実行される際に一括で支払うため、自己資金に余裕がある人は定率型を、少しでも借入時の費用を抑えたい人は定額型を選ぶとよいでしょう。
2-2.保証料型とは
保証料型とはローン契約者が保証会社に保証料を支払うタイプで、支払い方式は一括前払い型と金利上乗せ型の2種類に分けられます。
一括前払い型とは、ローン契約時に保証料を一括で支払う方法です。保証料は借入金額や借入期間によって決まります。途中で繰り上げ返済をして完済すると、保証料が戻ってきます。融資手数料型では、繰り上げ返済をしても手数料は返還されません。
金利上乗せ型は住宅ローンの金利に上乗せする形式で、保証料を分割払いする方法で、通常0.2%が借入金利に上乗せされます。金利上乗せ型では借入期間が短縮されても、保証料は戻りません。
2-3.融資手数料型と保証料型のどちらを選ぶべきか
融資手数料型と保証料型はそれぞれどのような人に適しているのか、大まかな判断のポイントは以下のとおりです。
- 融資手数料型(定額型):借入期間が長く、借入時の自己資金に余裕がある人
- 融資手数料型(定率型):借入期間が長く、借入時の費用を抑えたい人
- 保証料型(一括前払い型):借入期間が短めで借入時の自己資金に余裕があり、繰り上げ返済を予定している人
- 保証料型(金利上乗せ型):借入期間が短めで借入時の費用を抑えたい人
3.住宅ローン選びのポイント・注意点
住宅ローンを選ぶポイントは金利の低さだけではありません。ここでは、自分に合った住宅ローンを選ぶためのポイントや注意点を解説します。
3-1.諸費用込みの総返済額を比較する
先述のとおり、住宅ローンの契約時には事務手数料や保証料などの諸費用がかかり、その金額は金融機関によって異なります。数十万円の差になるケースもあるため、金利だけで比較せず諸費用も込みの総返済額で比較しましょう。
3-2.無理なく支払い続けられるかを考える
住宅ローンの総支払額を少なくするには金利や諸費用を低く抑え、短期間で返済することが有効です。しかし、そのために毎月のローン返済額が増えたり、繰り上げ返済で一気に手元資金が減ったりするのは危険が伴います。
総返済額を減らすことも大切ですが、日常生活に必要な資金が足りなくなってしまっては本末転倒です。毎月の返済を無理なく続けられるかを、必ず考えましょう。
3-3.金利上昇リスクを検討する
2023年時点、変動金利は主流の金利タイプで、同じ水準が続くとすれば最も総返済額を抑えることができます。しかし、魅力的に見える変動金利型や固定金利期間選択型には、将来金利が上昇するリスクがあると理解しておきましょう。
変動金利と固定金利は基準となる金利が異なり、固定金利のほうが先に変動する傾向があります。変動金利が上昇し始めると、固定金利はさらに上昇している可能性が高いのです。
特に借入期間が長期の場合、将来の金利動向はわかりません。返済期間中に金利が上昇すれば、毎月の返済額が大幅に増える可能性があります。将来の金利変動のリスクも考慮しながら、住宅ローンを選びましょう。
3-4.団信の保障内容を確認する
団体信用生命保険(団信)とは、住宅ローン契約者が死亡または所定の高度障害状態になったときにローンの残債を保険会社が肩代わりする保険です。通常、フラット35を除く住宅ローンの契約者の団信加入は必須です。
最近はがんや三大疾病に対する保障や就業不能時の保障が付いた団信なども登場し、死亡以外のリスクにも備えられます。ただし、死亡以外のオプションのある団信に加入すると、保険料分の金利が上乗せされて返済額が増えます。
契約者の死亡以外の保障の必要性をよく検討し、自分に合った団信を選びましょう。
まとめ
現在の住宅ローンは変動金利が主流ですが、2022年からフラット35の金利が上昇傾向にあり、今後の金利動向に注意が必要です。借入期間が長期の人が変動金利を利用する場合、金利上昇のリスクを頭に入れておきましょう。
また、支払う利息を減らすための自己資金の入れすぎや無理な繰り上げ返済を避け、手元の資金が足りなくならないようにしましょう。
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松田 聡子
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