個人向け国債のメリット・デメリットは?他の投資との比較も

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個人向け国債は、低リスクの運用が期待できる金融商品です。普通国債残高は令和5年度末には1,068兆円に上ると見込まれており、日本の財政を支える財源となっています。

また、2023年以降はインフレや円安・ドル高の傾向が続き、金利も上昇傾向にあります。このような状況の中、今後の金利上昇の期待感を持って、国債購入を検討されている方も少なくないでしょう。

今回は個人向け国債の特徴、メリット・デメリット、他の投資との比較について解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※2023年6月29日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。

目次

  1. 個人向け国債とは?
    1-1.個人向け国債の仕組み
    1-2.個人向け国債の種類
  2. 個人向け国債の「変動金利」と「固定金利」の比較
  3. 個人向け国債のメリット
    3-1.低リスクで運用できる
    3-2.発行から1年経過すると中途換金しても元本割れしない
    3-3.少額から買える
    3-4.取り扱う金融機関が多くて買いやすい
  4. 個人向け国債のデメリット
    4-1.大きな利益を期待できない
    4-2.インフレによる物価上昇のリスク
  5. 個人向け国債と他の投資商品との比較
    5-1.株式投資
    5-2.投資信託
    5-3.金投資
    5-4.不動産投資
  6. まとめ

1.個人向け国債とは?

国債は、国が投資家からお金を借りたい場合に発行され、「お金を借りた」という債務証券を発行し、満期が到来したら投資家に投資資金が返却される仕組みの金融商品です。

このうち、個人向けに発行されるものを「個人向け国債」と呼び、各証券会社や銀行などの金融機関から購入することが可能です。

1-1.個人向け国債の仕組み

個人向け国債の買付の単位は、1万円以上、1万円単位です。発行日の半年後から満期までの間に年2回半年ごとに利子を受け取れ、満期になると元本が償還(払い戻し)されます。利子には年0.05%の最低保証があり、発行後1年を経過すると中途換金が可能です。

個人向け国債は利子の支払いや元本の払い戻しを国が保証するため、他の金融商品と比較しても非常に低リスクの金融商品です。

1-2.個人向け国債の種類

個人向け国債には、半年ごとに適用利率が変わる「変動10年」、 発行時に設定された利率が満期まで変わらない「固定5年」「固定3年」の3種類があります。それぞれの償還年限は以下のとおりです。

  • 「変動10年」:発行後10年
  • 「固定5年」:発行後5年
  • 「固定3年」:発行後3年

2.個人向け国債の「変動金利」と「固定金利」の比較

個人向け国債を買うとしたら3つのタイプのうち、何を選ぶかわからない人もいるでしょう。それぞれのリターン、過去の利率について比較してみます。

「変動10年」は半年ごとに適用金利が見直されるため、購入後に金利が上昇したり、逆に下がってしまうリスクがありますが、固定金利よりも高い利率が設定されています。

一方、「固定5年」と「固定3年」は満期まで利率は変わらず、リターンを予測しやすいというメリットがあります。

ただし、固定金利は買ってから市場の金利が上がっても利率はそのままで、受け取れる利子も増えません。たとえば、「固定3年」の2023年7月発行分の税引き前の利率は0.05%です。

元本割れはありませんが、定期預金とそれほど変わらない水準である点がデメリットと言えるでしょう。

なお、個人向け国債の利率は「変動10年」も0.05%の状況が続いていましたが、2022年からは以下のように上昇に転じています。

発行年月 初回利率
2022年1月 0.05%
2月 0.07%
3月 0.11%
4月 0.12%
5月 0.13%
6月 0.17%
7月 0.16%
8月 0.17%
9月 0.11%
10月 0.16%
11月 0.17%
12月 0.17%
2023年1月 0.17%
2月 0.33%
3月 0.32%
4月 0.33%
5月 0.30%
6月 0.28%
7月 0.29%
12月 0.17%

※出典:財務省「個人向け国債「発行額の推移」」より筆者作成

たとえば、2022年1月発行分を購入した人は、半年ごとに受け取る利子が増えています。また、長期金利は短期金利より高い傾向にあります。個人向け国債にもこの傾向は当てはまり、過去から2023年7月時点までの「変動10年」の適用利率は「固定5年」と「固定3年」を上回っています。

2023年7月発行の個人向け国債の税引き前利率

  • 「変動10年」:0.29%
  • 「固定5年」:0.06%
  • 「固定3年」:0.05%

※出典:財務省「現在募集中の個人向け国債・新窓販国債」」より

3.個人向け国債のメリット

ここでは、個人向け国債の4つのメリットを解説します。

3-1.低リスクで運用できる

個人向け国債は国によって元本の払い戻しと利子の支払いが保証されている、非常に低リスクの金融商品です。また、年率0.05%の最低保証もあるため、マイナス金利の影響を受けることもありません。低リスクで運用したい人にとっては大きな魅力となるでしょう。

3-2.発行から1年経過すると中途換金しても元本割れしない

個人向け国債は発行から1年経過すると中途換金でき、換金しても元本割れしません。中途換金時には「直近2回分の利子相当額×0.79685」が差し引かれます。

これによって、元本相当額は戻ってくることになるのです。1年以内の中途換金では元本割れしてしまうため、使う予定のない余裕資金で買うようにしましょう。

3-3.少額から買える

個人向け国債の最低購入金額は、1万円以上で1万円単位です。購入金額に上限はありません。まとまったお金がなくても、できる範囲での購入が可能です。

3-4.取り扱う金融機関が多くて買いやすい

個人向け国債は証券会社や銀行だけでなく、郵便局、JAなど取り扱う窓口が豊富です。インターネットでも買える金融機関もあるので、忙しい人でも簡単に購入できます。

また、個人向け国債は毎月発行されます。いつでも購入しやすい点も個人向け国債のメリットの1つです。

4.個人向け国債のデメリット

4-1.大きな利益を期待できない

個人向け国債は低リスクである分、大きな利益を期待できません。個人向け国債は株式や投資信託などの運用商品に比べると、期待できるリターンは低くなってしまうのです。

なお、株式のようなリスクのある商品は大きな利益を得られる一方で、損失も大きくなる可能性が高いという性質があります。どちらにも一長一短があるため、バランスよく組み合わせた運用を行うと良いでしょう。

4-2.インフレによる物価上昇のリスク

物価が上昇しているインフレ期は相対的に紙幣の価値が低下するため、ローリスクの金融商品である個人向け国債は、元本割れのリスクは低いものの、物価上昇には弱い資産といえます。

2022年から日本は急激な物価上昇に見舞われていて、2023年5月分の消費者物価指数は前年同月比3.2%の上昇となっています(総務省統計局より)。

利率が変動する「変動10年」は、固定金利タイプよりはインフレに強いといえます。しかし、ハイペースの物価上昇にまでは対応しきれずに、対物価指数でみた時の実質的な資産価値が減少してしまうというリスクがあります。

5.個人向け国債と他の投資商品との比較

個人向け国債は安全性が高い反面、インフレに弱く、大きな利益を期待できません。そのため、自分のリスク許容度に応じて、他の投資商品と組み合わせて運用するとよいでしょう。ここでは、個人向け国債と相乗効果の期待できる投資商品を、個人向け国債との比較の観点から紹介します。

5-1.株式投資

株式投資は、企業が発行した株式を買付けて配当金や株主優待を受け取り、売却によって値上がり益を得る投資方法です。

個人向け国債と比較した株式投資のメリット

株式投資はハイリスクというイメージがありますが、買った株を持っているだけで配当金や株主優待を受け取れる銘柄があります。キャピタルゲインだけでなくインカムゲインも狙えるのです。

また、流動性が高く売買タイミングも自身で選べるため、値上がり益を狙ったり、大きな利益を得る可能性があります。

個人向け国債と比較した株式投資のデメリット

元本保証でなく大きな損失を被る可能性がある点はデメリットです。例えば、株を発行する企業が倒産すると、価値がゼロになるリスクもあります。

個人向け国債にも日本という国の信用状況の悪化により損失を被るリスクはありますが、企業に比べて極めて可能性は低いと考えられます。

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5-2.投資信託

投資信託は、不特定多数の投資家から集めた資金を投資会社が株式や債券で運用し、運用成果を還元する仕組みの運用商品です。

個人向け国債と比較した投資信託のメリット

投資信託は、個人向け国債の利回りより高い運用益を狙えます。また、仕組みそのものが分散投資であるため、投資対象の1つが無価値になっても全体への影響は限定的です。

分散投資によって個別銘柄への集中投資よりも低リスクの運用が期待できます。投資判断を投資会社の専門家に任せられる点も、投資信託のメリットです。

個人向け国債と比較した投資信託のデメリット

個人向け国債と違い、投資信託は元本保証ではありません。そのため、元本棄損の可能性があります。また、個人向け国債には購入時も保有時もコストがかかりませんが、投資信託には以下のようなコストがかかります。

  • 購入時:購入時手数料(かからないファンドもあり)
  • 保有時:信託報酬(間接的に支払う)
  • 換金時:信託財産留保額(かからないファンドもあり)

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5-3.金投資

金投資は金を一括や積立で買付け、値上がり益を狙う投資方法です。

個人向け国債と比較した金投資のメリット

金は実物資産なので価格の変動はありますが、2000年以降は金相場の上昇が続き、インフレに強い資産といえます。

金個人向け国債と比較した金投資のデメリット

金を持っていても、個人向け国債のように利子や利息は付きません。また、購入時には手数料がかかります。金の現物を自宅で保管する場合、盗難に遭うリスクもあります。

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5-4.不動産投資

不動産投資はアパートやマンションを取得して第三者に貸し出し、賃料を得る投資です。

個人向け国債と比較した不動産投資のメリット

不動産投資は個人向け国債と違い、数百万円単位の投資額が必要ですが、不動産投資ローンの利用で自己資金以上の投資が可能です。また、不動産や家賃は物価上昇時には値上がりする傾向にあり、インフレに強い資産です。

個人向け国債と比較した不動産投資のデメリット

不動産投資の最大のデメリットは空室リスクや災害リスクなど、投資額以上の損失リスクがある点です。また、金融機関の不動産投資ローンを活用するスキームの場合は、金利上昇時にキャッシュフローを大きく圧迫することがあります。

一方、個人向け国債は大きな利益を得られなくても、利子が支払われない可能性は低く、変動金利タイプであれば金利上昇時にはリターンが増えることになります。

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まとめ

個人向け国債は低リスクの運用が期待できるメリットの反面、利率の低さがデメリットです。

しかし、2022年から「変動10年」の利率が上昇し、投資の選択肢に考えやすくなっています。購入する場合、他の金融商品と組み合わせると、リスクとリターンのバランスがよくなるでしょう。

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松田 聡子

明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。 保有資格:日本FP協会認定CFP・DCアドバイザー・証券外務員2種 運営サイト : 経営体質改善のヒント