クラウドファンディング投資では、どのような経費があり、所得税法ではどのように取り扱われるのでしょうか。
投資型のクラウドファンディングでは、株式型、貸付型、ファンド型があり、それぞれの種類によって、所得税法上の取扱いが異なるので注意が必要です。
本記事では、クラウドファンディング投資にかかる経費と所得税法上の取扱いについて、詳しく解説していきます。
※記事内の税制内容は2022年3月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁などのサイトをご確認のうえ、税理士などの専門家へのご相談もご検討ください。
目次
- 投資型クラウドファンディングと税制
1-1.株式型クラウドファンディング
1-2.貸付型・ファンド型クラウドファンディング - 投資型クラウドファンディングの経費と税制の取扱い
2-1.手数料
2-2.その他の経費 - 投資型クラウドファンディングの経費と税制についての注意点
- まとめ
1.投資型クラウドファンディングと税制
投資型クラウドファンディングには、株式型、貸付型、ファンド型があります。いずれのケースでも、投資した個人が得たリターンには所得税・住民税が課されます。
貸付型とファンド型の場合、リターンは所得税法上の総合課税の雑所得として扱われます。
一方、株式型の場合は通常のリターンに課される所得税について総合課税の配当所得扱いとなります。株式型で売却によって譲渡益が生じたときは、一般株式等に係る譲渡所得として、申告分離課税されます。
1-1.株式型クラウドファンディング
株式型のクラウドファンディングは、株式発行の方法によって資金調達をしたい企業に対して、クラウドファンディング事業者を通じて投資する形態になります。投資家側は、取得した株式持分に対する配当という形式でリターンを受け取ります。
株式型クラウドファンディングによって得たリターンは、非上場株式に対する配当という扱いになり、上場株式等以外の配当所得として所得税の総合課税の対象となります。
また、株式型クラウドファンディングによって取得した株式は、取得時には未上場であるため、すぐには流通取引を行うことができません。売却ハードルはやや高いと言えますが、売却によって譲渡益が発生した場合は、一般株式等に係る譲渡所得として所得税の申告分離課税の対象となります。(※参照:国税庁「株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」)
1-2.貸付型・ファンド型クラウドファンディング
貸付型のクラウドファンディングは、資金調達を必要としている企業等のために、クラウドファンディング事業者が投資家から資金を集め、それを企業等に貸し付けることで投資をおこないます。
ファンド型のクラウドファンディングは、資金調達が必要な特定のプロジェクトごとに、クラウドファンディング事業者が投資家から資金を集め、資金を拠出して投資をおこないます。不動産投資型クラウドファンディングなども、ファンド型に該当します。
貸付型、ファンド型のクラウドファンディングで得られるリターンは、匿名組合から組合員への分配という形式を採っています。そのため、個人の場合は雑所得として総合課税の対象となります。所得税法上、雑所得の金額は次の算式によって計算します。
雑所得=総収入金額-必要経費
必要経費の額が総収入金額を上回る場合には、雑所得がマイナスになることもあり得ます。雑所得がマイナスになった場合でも、他の総合課税の所得と損益通算することはできず、そのマイナスはなかったものとされます。
ただし、雑所得内での損益通算は可能であるため、他の貸付型、ファンド型のクラウドファンディングの利益や、副業所得、動産や金銭の賃貸料などと損益通算することが可能です。(※参照:国税庁「雑所得」)
2.投資型クラウドファンディングの経費と税制の取扱い
投資型クラウドファンディングにかかる経費について、税制上も必要経費として計上することが認められるのかどうかを以下でみていきます。
手数料とその他の経費では取扱いが異なるといえるため、区分して説明します。また、株式型と貸付型、ファンド型のクラウドファンディングでは、リターンの所得税法上の所得区分が異なるため、経費の取扱いも異なります。
2-1.手数料
投資型クラウドファンディングでは、口座への送金手数料や、払戻し等の際にクラウドファンディング事業者に支払う手数料が発生することがあります。
株式型クラウドファンディング
株式型のクラウドファンディングの場合、投資家が受け取るリターンは、所得税法上、上場株式等以外の配当所得という取扱いになり、手数料は経費になりません。(※参照:国税庁「配当金を受け取ったとき(配当所得)」)
貸付型、ファンド型クラウドファンディング
貸付型、ファンド型のクラウドファンディングで得られるリターンは、匿名組合から組合員への分配として、所得税法上、雑所得という取扱いになります。
所得税法では、収入を得るために直接要した費用を経費計上の条件にしています。(※所得税法37条1項)手数料はクラウドファンディングのリターンを得るために直接要した費用といえ、経費に計上することができます。
2-2.その他の経費
株式型クラウドファンディング
株式型のクラウドファンディングの場合は、手数料と同様、その他の経費は配当所得から控除する経費にはなりません。ただし、その株式持分を取得するために借り入れた資金の利息については、経費にすることが可能です。
貸付型、ファンド型クラウドファンディング
投資型クラウドファンディングをおこなうにあたり、クラウドファンディング事業者のセミナーに参加する際に交通費がかかったり、投資内容を調べたり申し込んだりする際に通信費がかかることがあります。
このような経費も、貸付型、ファンド型のクラウドファンディングのリターンについて、雑所得の計算をおこなう際、その一部を経費として計上することができる場合があります。所得税法の法令では、その年に生じた業務に必要な費用の額を必要経費として計上することを認められているためです。(※国税庁「所得税法(基礎編)令和3年度版」)
ただし、家事費および家事関連費は原則として必要経費から除かれることになっています。そのため、経費計上するには、家庭用に利用された部分を除き、クラウドファンディング投資のために利用した部分を明確に区分することが求められます。
3.投資型クラウドファンディングの経費と税制についての注意点
投資型クラウドファンディングの経費と税制についての注意点は、株式型と貸付型、ファンド型とでは、取扱いが大きく異なるということです。
株式型では、投資家が受け取るリターンは、所得税法上、上場株式等以外の配当所得という取扱いになるため、原則として必要経費の計上は認められません。
一方、貸付型、ファンド型では、投資家が受け取るリターンは、所得税法上、雑所得に該当します。雑所得の計算では、必要経費の計上が認められるため、収入を得るために直接要した費用である手数料を必要経費とすることができます。
また、交通費や通信費なども、クラウドファンディング投資のために利用した部分を明確に区分することで、必要経費とすることが可能となります。
なお、雑所得の計算上、損失が発生した場合、給与所得などの他の総合課税の所得と損益通算することはできません。ただし、雑所得の区分内での損益通算は可能であるため、副業や民泊などの所得、暗号資産の売却益などがある場合は、損益通算することできます。
まとめ
投資型クラウドファンディングのうち、株式型では、投資家が受け取るリターンは、所得税法上、上場株式等以外の配当所得という取扱いになります。
一方、貸付型・ファンド型では、投資家が受け取るリターンは、所得税法上、雑所得に該当します。雑所得の計算では、手数料など収入を得るために直接要した費用を必要経費として控除することが認められています。
交通費や通信費など、その年に生じた他の費用のうち、クラウドファンディング投資に必要な部分を明確に区分した部分については、必要経費に計上可能です。
なお、クラウドファンディングの制度は、まだ税法の整備が追い付いていない側面もあります。税制改正も頻繁に行われているため、国税庁のホームページを確認したり、運用額が大きく税務リスクが高まっている場合には税理士などの専門家に相談したりすることも検討してみましょう。
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佐藤 永一郎
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