収益物件とマイホームの購入を予定している場合、どちらを先に始めるかで問題になることがあります。始める順番は、ローンの組みやすさや返済計画等に影響してくるため、個人の投資目的、収入、今後の予定などをポイントに検討することが大切です。
この記事では、不動産投資とマイホーム購入のどちらを先に始めるかについて、それぞれのメリット・デメリットを詳しくご紹介します。収益物件を先に購入するか、マイホームの購入を優先するかで迷っている方は、ご参考ください。
目次
- 不動産投資を先にするメリット
1-1.収益物件の選択肢が広がる
1-2.総所得を増やせる可能性がある
1-3.物件の流動性が高く現金化しやすい
1-4.物件の買い増しを図りやすい - 不動産投資を先にするデメリット
2-1.住宅ローンを組みにくくなる
2-2.マイホームを購入できない可能性もある - マイホーム購入を先にするメリット
3-1.好みのマイホームを選びやすい
3-2.フラット35を利用しやすい
3-3.賃貸併用住宅も選択肢に入る - マイホーム購入を先にするデメリット
4-1.不動産投資ローンを組みにくくなる - まとめ
1.不動産投資を先にするメリット
不動産投資を先に行うメリットは以下の通りです。
1-1.収益物件の選択肢が広がる
不動産投資用の物件を購入する際、多くの人は金融機関の投資用ローンを利用します。金融機関から借りることができる金額のことを「与信枠」といい、与信枠は個人の職業や勤務歴、勤務先の規模や年収等の属性によって異なってきます。
金融機関からの評価が高い場合、年収の10倍程度のローンを組める場合もあります。例えば、借主の年収500万円、与信枠5,000万円の場合、すでに住宅ローンで2,500万円を借りていたとすると、別の金融機関から借りられる金額は、5,000万-2,500万円=2,500万円程度となります。
与信枠の上限があることから、先に住宅ローンを使って物件を購入していると投資用ローンで借りられる金額が少なくなります。
一方、住宅ローンを借りていない場合には与信枠の上限で融資を受けられるため、与信を最大まで活かした物件を狙うことも可能です。できるだけ幅広い投資物件から検討したい方にとって、住宅ローンよりも先に不動産投資を始めるほうが向いていると言えます。
1-2.総所得を増やせる可能性がある
不動産投資を先に始めると総所得を増やせる可能性があり、将来的により良い自宅を購入できる可能性も高まります。
先ほどの事例で5,000万円の物件を購入し、年間100万円ほどの不動産所得を得ることができた場合、総年収は本業の500万円の収入と合わせて600万円となります。
不動産投資を行う前に貯金として毎年100万円貯めていた場合、不動産所得の100万円と合わせて年間200万円ずつ増やすことも検討できるでしょう。不動産投資を先に行うことで収入を増やし、将来のための貯蓄をしやすくなる可能性があります。
1-3.物件の流動性が高く現金化しやすい
不動産投資用の物件は、ファミリータイプの物件より現金化しやすいのもメリットです。住宅ローンで購入する物件は、家族で住むための一定の広さのあるファミリータイプの物件が多く、単身者用のワンルームマンションなどと比較して流動性の低い物件となります。
一方、投資用物件には都心のワンルームマンションなどが多く、物件価格の低さや賃貸需要の多さから流動性が高い特徴があります。購入希望者を見つかりやすく、ファミリータイプの物件と比較して短期間で売れる可能性が高いと言えるでしょう。
投資用物件の運用が上手く行かなかった場合でも、速やかな現金化が可能であれば、ローンの支払いが難しくなったときでも売却してローンを完済することができます。不動産投資を先に始めることは、リスク対策の意味でも有効な手段と言えます。
1-4.物件の買い増しを図りやすい
金融機関の融資審査では、不動産投資の経験も評価対象としてチェックします。すでに不動産投資をしており、継続的に収益を得ていれば与信枠を増やしてくれることがあります。
また、不動産投資での収入が増えていけば、所得に応じて与信枠も増加しやすくなります。不動産投資の経験が豊富な人ほど与信枠も増えやすく、次の物件購入にも繋げやすい好循環が生まれます。
2.不動産投資を先にするデメリット
不動産投資を先に行うデメリットは以下の通りです。
2-1.住宅ローンを組みにくくなる
不動産投資ローンと住宅ローンは、その性質が大きく異なります。住宅ローンは長く住むための家を購入するローンで金利が低く設定されている一方、不動産投資ローンは事業目的の事業用ローンであるため、貸付金利も住宅ローンより少し高くなっています。
しかし、不動産投資ローンを先に利用していると与信限度枠が減るため、マイホームを購入する時の住宅ローンを組みにくくなります。
投資用ローンの借入を行っている場合、すぐに住宅ローンを借りようとしても金融機関は渋る可能性があります。不動産投資で利益を出していなければ、評価はさらに厳しくなります。
2-2.マイホームを購入できない可能性もある
事業性の高い不動産投資は、必ずしも利益が出るとは限らない元本割れのリスクがある投資方法です。
賃貸経営では、部屋が埋まらない空室リスク、建物の経年劣化による修繕リスク、賃料の減額リスク、入居者による家賃の滞納リスクなどがあり、毎月の家賃収入をローンの返済金額が上回る可能性もあります。
収入を増やす目的で物件を購入しても利益が出ないだけでなく、毎月支出が増えて赤字経営に陥る可能性もあります。経営状況によっては、マイホームの購入が先延ばしになってしまう可能性もあります。
3.マイホーム購入を先にするメリット
次は投資用物件の購入よりも、マイホーム購入を先に行う場合のメリットとデメリットを見ていきましょう。
3-1.好みのマイホームを選びやすい
マイホームの購入を優先する場合、与信枠も上限まで使えるので、住宅ローンを活用することで広めの住宅や新築住宅など自分の理想にあった住宅を購入しやすくなります。
投資用ローンで与信枠を使っていると借り入れ可能な金額が減り、購入できる住宅や立地も制限されます。マイホームの購入で妥協したくない場合、先に住宅購入を行うことで住宅ローンを最大限活用することができるメリットがあります。
3-2.フラット35を利用しやすい
住宅ローンの金利は投資用ローンよりも低いのが特徴です。例えば、35年間固定で借りることができるフラット35の場合、金利は約1.3%〜となっています(2021年4月5日執筆時点)。全期間固定なので返済計画を立てやすいなどのメリットがあります。
ただし、フラット35には、総返済負担率が年収の30〜35%以下という利用条件があります。総返済負担率とは年収に占めるすべての借入れの年間合計返済額の割合のことで、「すべての借入れ」にはフラット35以外の住宅ローン、教育ローン、自動車ローンや、不動産投資ローンも含まれます。
不動産投資ローンは基本的に家賃収入で返済しますが、賃貸経営は空室リスクや修繕リスクなど様々なリスクがあるため、家賃収入だけでは足りず、本業の収入から補う可能性もあります。
フラット35の利用条件である総返済負担率30〜35%を上回る可能性も出てくるため、不動産投資ローンを先に利用しているとフラット35を利用できない場合もあります。
逆にマイホームの購入を優先する場合、ほかに借りているローンがなければ、返済計画の立てやすいフラット35を利用しやすいメリットがあると言えるでしょう。
3-3.賃貸併用住宅も選択肢に入る
住宅ローンを使って投資用物件を購入することはできませんが、賃貸併用住宅であれば検討できる可能性があります。
賃貸併用住宅とは、建物の一部の部屋を人に貸し出せる部屋にすることで、自宅に住みながら家賃収入も得られる住宅のことを指します。賃貸部分が住宅総面積の50%未満の場合、賃貸併用住宅に住宅ローンを利用できる可能性があります。
住宅を買うか、投資用物件を買うのか迷った時には、賃貸併用住宅を購入して家賃収入を得て住宅ローンの返済をしていくという方法も一つの選択肢になります。
ただし、賃貸併用住宅は戸建住宅よりも風呂やキッチンなどの設備が部屋数だけ必要になるので、建築費が高額になるデメリットもあります。そのため、賃貸併用住宅の購入を検討する際は、毎月の家賃収入に対するローン返済金額の割合について、しっかりとシミュレーションを行うことが大切です。
4.マイホーム購入を先にするデメリット
一方、マイホームの購入を優先するデメリットは以下の通りです。
4-1.不動産投資ローンを組みにくくなる
マイホームの購入を優先すると、投資用ローンの融資を組みにくくなります。収入額に対して毎月の住宅ローンの返済の割合が高いと、金融機関からリスクの高い借主と判断され、融資を行ってくれないこともあります。
また、不動産投資ローンを借りられた場合でも、与信枠のほとんどを住宅ローンで使っていれば、購入できる収益物件の選択肢も限られてきます。
このように住宅ローンを先に借りてマイホームを購入すると、不動産投資を先延ばしにする可能性が高くなります。
まとめ
不動産投資を積極的に進めていきたい人は、住宅ローンを先に借りて不動産投資ローンの融資枠を狭めるのではなく、物件の買い増しを優先することで投資によるキャッシュフローを良化できる可能性もあります。
一方、不動産投資には事業経営の側面もあり、収入を確実に得られるわけではありません。賃貸経営とローン返済を同時に並行すると、空室が発生したときには本業からの持ち出しになる可能性もあります。
将来を見据えて生活拠点の確保を優先したい場合は、マイホームの購入や賃貸併用住宅の利用が検討候補になるでしょう。
不動産投資とマイホーム購入のどちらを先にするかは、投資目的や今後のライフプランによっても異なります。自身の状況をよく整理してから選ぶことが大切です。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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