アパートローンの団信(団体信用生命保険)は加入するべき?メリット・デメリットを比較

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アパートローンを活用する際に、金融機関から団体信用生命保険への加入に関して意向を問われることがあります。その際、団体信用生命保険のメリットやデメリットがわからず、加入するべきか悩む方も多いでしょう。

そこで今回のコラムでは、団体信用生命保険のメリットとデメリットを紹介していきます。加入を検討する際に参考にしてください。

目次

  1. アパートローンの団体信用生命保険とは
    1-1.団体信用生命保険の仕組み
    1-2.団体信用生命保険に加入する方法
    1-3.団体信用生命保険の種類
  2. 団体信用生命保険に加入するメリット
    2-1.連帯保証人がいなくてもアパートローンが組める
    2-2.万が一のことがあってもアパートを家族に残せる
    2-3.保険金には所得税が課税されない
  3. 団体信用生命保険に加入するデメリット
    3-1.保険料の支払いをする必要がある
    3-2.住宅ローンと比較して家族への影響が少ない
    3-3.健康状態によってローンが組めないことがある
  4. 団体信用生命保険に加入するメリットとデメリットの比較
  5. まとめ

1 アパートローンの団体信用生命保険とは

住宅ローンと同様に、アパートローンを組む際にも金融機関から加入の意向を聞かれることがあります。アパートローンに関する団信について、まずは解説していきます。

1-1 団体信用生命保険の仕組み

団信とは、ローン契約者が万が一事故や死亡などによってローンの返済が難しくなった場合に、ローンの残高がゼロになる保険です。

団信の仕組みは、債権者である金融機関が保険契約者および保険受取人、融資を受けているローン契約者(債務者)が被保険者となり、債務者であるローン契約者の支払いが難しくなると保険金が金融機関に支払われることによって、ローン返済に充当する形でローン残高がゼロになります。

住宅ローンとは異なり、アパートローンの場合は投資用物件であるアパートが収益を生んでいるため、たちまち返済が難しくなってしまうような事態にならないケースもあるでしょう。しかし、団信に加入しておくことで、残された家族はローン返済が免除されるため、ローン返済に関する不安が軽減されます。

なお、金融機関によっては、団信への加入が必須条件になっているケースと、任意で団信に加入できるケースがあります。

主要金融機関の対応は下記のようになっています。

金融機関 商品名 団信への加入 保険料
三井住友銀行 直担アパートローン 指定の団信に加入することが可能 0.3%上乗せ
横浜銀行 アパートローン 所定の地銀協一般団信への加入が可能 横浜銀行が負担
千葉銀行 金利選択型アパートローン 加入が必須条件 千葉銀行が負担
三菱UFJ信託銀行 賃貸マンション・アパートローン 希望により団信に加入することが可能 0.3%上乗せ

このように団信への加入に関して、必須になっていたり、任意だったりと金融機関によって対応がまちまちです。また保険料の支払いを金融機関が負担するケースもあるので、利用する際は慎重に確認するようにしましょう。

1-2 団体信用生命保険に加入する方法

団信は、「ローンの返済ができない際に補填する」という性質から、ローン先の金融機関と生命保険会社の連携によって用意されるケースが多くあります。団信に加入する際は、ローンを契約する際に金融機関で同時に申し込みを行う方法が大半となるでしょう。

ただし、ローン契約先の金融機関が団信への加入を任意としている場合は、他の保険会社の商品に申し込むことも可能です。この場合は他の代理店経由で申し込んだり、インターネットで保険料が割安な商品を見つけることも可能です。

ただし、金融機関と提携している団信に加入するケースでは、優遇金利を用意していることもあります。契約前には、融資を受ける金融機関を通して各生命保険会社の情報を把握しておくと良いでしょう。

1-3 団体信用生命保険の種類

団信は、取り扱う生命保険会社によって種類が異なりますが、おおむね下記のような種類が用意されています。

  • 通常の団信:死亡の際や高度障害を抱えた場合に適用される
  • がん特約つき:死亡や高度障害を抱えた場合のほか、がんと診断された際に適用される
  • 3大疾病特約つき:死亡や高度障害を抱えた場合に加えて、日本の3大死因とされるがん、心筋梗塞、脳卒中と診断された際に適用される
  • 8大疾病特約つき:死亡や高度障害に加えて、日本の3大死因とされるがん、心筋梗塞、脳卒中のほか、生命保険会社によって指定された糖尿病や高血圧症、慢性腎不全、肝硬変、慢性膵炎などの疾病と診断された際に適用される

金融機関が複数の団信を用意している場合、ローン契約者の意向で選ぶことができますので、保証内容やご自身の健康状態に対する不安などを加味して検討されると良いでしょう。

2 団体信用生命保険に加入するメリット

団信に関する仕組みについて把握したところで、代表的な3つのメリットについて解説していきます。

2-1 連帯保証人がいなくてもアパートローンが組める

連帯保証人は借入金の返済が滞った場合、代わりに返済義務を負うことになります。一方で、団信は保険金がローン残高に充当されるという性質を持っています。そのため団信に加入していれば、ローン残高の回収が可能になるため、連帯保証人がいない方でもアパートローンが組むことができることがあります。

2-2 万が一のことがあってもアパートを家族に残せる

団信は、ローン契約者に万が一のことがあった場合に、保険金がローン残高に充当される仕組みになっています。例えば、団信に加入していない方が死亡すると、家族が借入金を受け継いで返済をしていくことになります。その場合、ローン返済がスムーズにいかないと、残ったアパートを売却してローン返済に充てることも考えられます。

一方、団信に加入されている方であれば、保険金によってローン残高が支払われるため、ローンを完済した後のアパートが家族に残ることになります。

ローン契約者が世帯主の場合、家計を支える大黒柱を失うことになりますが、団信に加入していれば投資用不動産が残り、家族の生活を守ることができるのです。

2-3 保険金には所得税が課税されない

生命保険の場合、満期の際に保険金を受け取ると一時所得として扱うことになるため、所得税の課税対象になります。これに対して団信は所得としてみなされないため、課税対象にはなりません。アパートローンの借入金が家族に相続されるよりも前に相殺されるため、相続人の所得にはならないのです。

また高度障害などを理由に保険金がローン残高に充当される場合も、本人の支払い能力がなくなったことが理由となるため、所得とはならないことになります。そのため所得税が課税されません。

※出典:国税庁「団体信用生命保険に係る課税上の取扱いについて

3 団体信用生命保険に加入するデメリット

一方、団信に加入するデメリットもあります。ここでは代表的な3つのデメリットについて解説していきます。

3-1 保険料の支払いをする必要がある

団信に加入する場合、保険料の支払いをする必要があります。保険料の支払いは、ローン金利に0.1%〜0.3%程度ほど上乗せされて請求されるケースがほとんどです。

0.1~0.3%の上乗せと見ると小さく感じられますが、借入額が大きいほど支払う保険料の総額も高くなり、アパート経営の投資効率やキャッシュフローが悪化します。団信に加入するメリットがある一方で、保険料がかかることはデメリットの一つと考えられます。

【関連記事】アパートローンの金利相場は?金融機関・属性・物件などアパートローンの実例も

3-2 住宅ローンと比較して家族への影響が少ない

居住用の住宅へ活用される住宅ローンと比較して、アパートローンの団信から得られる効果や家族への影響は少ないと言えます。

住宅ローンの場合、ローンの返済原資は給与所得などの労働の対価によって支払われることが大半です。事故や病気によって支払いが難しくなってしまった場合は、住まいを失ってしまう可能性もあることから、家族への影響が大きく、団信に加入することのメリットは大きいと考えることができます。

一方、アパート経営の場合は家賃収入がローンの返済原資となっているため、世帯収入が大きく下がってしまった場合でもたちまちローンの返済に滞ってしまう可能性は低いと言えるでしょう。売却を行ったとしても住まいを失うわけではないため、生活への影響は非常に限定的です。

ただし、団信を活用することでローンの返済義務がなくなり、家賃収入を生活費に補填したり、子供の養育費に充てやすくなるというメリットもあります。家族にアパート経営のノウハウがない、自身がないという場合にも、団信に加入する意味は大きいと言えます。

3-3 健康状態によってローンが組めないことがある

団信は生命保険であるため、加入するには健康状態の告知義務があります。この際、健康状態に不安があると、団信に加入できない可能性があります。

例えば、団信への加入がアパートローンの必須条件となっている場合、団信に加入できなければ条件をクリアすることができないため、ローンを組むことはできません。資金調達の難易度があがり、小規模な物件への切り替えや現金購入など別の対策を講じる必要も出てくるでしょう。

4 団体信用生命保険に加入するメリットとデメリットの比較

団信に加入するメリットとデメリットは、上記で紹介したもの以外にもあります。比較しやすいように表にしましたので、確認してください。

メリット デメリット
  • 連帯保証人がいなくてもアパートローンを組むことができる
  • 金融機関が保険料を負担する場合もある
  • 万が一のことがあってもアパートを家族に残せ、生活を支えることができる
  • アパート経営のリスクが減る
  • 保険金には所得税が課税されない
  • 複数の団信に加入することができる
  • 家族の不安を軽減することができる
  • 健康状態によってローンが組めないことがある
  • ローン契約者が保険料を支払う場合、キャッシュフローが悪化する
  • 保険料はローン残高に応じて高くなる
  • 解約ができない商品もある
  • 相続税が発生する可能性がある
  • 保険金受取人が金融機関になるため生命保険控除の対象外となる
  • 対象となる疾病が限定されている(医療保険としては保証内容が薄い)

団信への加入がローンを組む必須条件になっているケースでは、加入することが条件になりますが、任意の場合は加入するかどうかはローン契約者に決定権があります。団信のメリットとデメリットと比較して、慎重に検討するようにしましょう。

まとめ

アパートを購入する際に団体信用生命保険に加入することで、アパート経営のリスクが減る、アパートは家族に残る、家族の不安が軽減されるといった複数のメリットがあります。しかし、健康状態によってローンが組めなかったり、保険料の支払いが発生するといったデメリットもあります。

住宅ローンとは異なり、アパートローンの場合は投資用資産が家族に残るため、ローンの返済が困難になるというケースは少数と考えられます。ただし家族がアパート経営を継続しないことも考えられるため、自身に万が一のことがあった場合を想定し、団信に加入するかどうかご家族と相談されておくのも良いでしょう。

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倉岡 明広

経済学部経済学科卒業後、出版社や編集プロダクション勤務などを経てフリーライターとして独立。雑誌や新聞、インターネットを中心に記事を執筆しています。初心者が抱く不動産投資の疑問や質問を解決できるよう丁寧な記事を執筆していきます。