毎日を忙しく働く医師にとって、管理・運営を管理会社へ委託できるアパート経営は相性が良い資産形成方法です。金融機関からの評価も高くなりやすく、良い融資条件でアパートを取得できる可能性もあります。
しかし、高属性であることを背景に、悪質な不動産業者から不適切な案内を受けるリスクもあります。しっかりと物件を精査しながら、慎重に投資判断をすることが大切です。
そこで今回のコラムでは、医師のアパート経営についてメリットとデメリット、そして注意点について解説していきます。
目次
- 医師がアパート経営を始めるメリット
1-1.給与所得とアパートの会計上の赤字を損益通算できる
1-2.金融機関の融資審査で高い評価を得やすい - 医師がアパート経営を始めるデメリット
2-1.アパート経営に関する時間を取られる
2-2.悪質な業者に狙われることもある - 医師がアパート経営を始める際の注意点
3-1.医師としての仕事とアパート経営を両立させる
3-2.アパートローンの借りすぎに注意する - まとめ
1 医師がアパート経営を始めるメリット
医師がアパート経営を行う場合のメリットとして主には、次の2つが考えられます。
1-1 給与所得とアパートの会計上の赤字を損益通算できる
厚生労働省が2019年に発表した「第22回医療経済実態調査」によると、一般病院全体の医師の平均年収は約1,300万円で、病院長になると約2,500万円です。一方、国税庁の「民間給与実態統計調査(令和2年)」によると、給与所得者の平均給与は439万円となっており、医師の方が高収入となっています。累進課税により高収入の医師は高い税金を納めている傾向があります。
アパート経営では、建物部分の減価償却費を計上して会計上の赤字とすることで、給与所得と損益通算することが可能です。その他、主にアパート経営で計上できる経費は以下の通りです。
- 修繕費
- 借入金利息
- 広告宣伝費
- 通信費
- 接待交際費
- 租税公課
- 交通費
- 管理費
- 消耗品費
- 減価償却費、など
これらの経費を計上することでアパート経営の所得がマイナスになると、本業の所得を圧縮することが可能です。
ただし、減価償却費は法定耐用年数内でしか計上することが出来ず、耐用年数を超えると計上ができなくなります。また、売却時には不動産取得費から減価償却費の計上部分が差し引かれ、譲渡所得税の課税対象が大きくなるというデメリットがあります。
このため、減価償却費の計上・損益通算の効果のみを期待してアパートを取得してしまうと、後にキャッシュフローが合わなくなってしまうことがあります。損益通算はアパート経営のメリットの一つではありますが、過分に期待せず、シミュレーション時点ではアパート単体の収益性についても慎重に検証することが大切です。
【関連記事】アパート経営で「車」「パソコン」「通信費」は経費計上できる?主な費用科目を解説
1-2 金融機関の融資審査で高い評価を得やすい
アパート経営を始めるには通常、金融機関から資金を借りて物件を購入します。この際、金融機関は融資の可否を審査しますが、このときの審査項目となるのが物件の担保評価に加えて、申込者の属性です。申込者の属性は返済能力があるか確認するためのもので、主に下記の点が審査対象になります。
- 年齢
- 職業
- 年収
- 家族構成
- 自己資金額
- 保有資産、など
申込者の収入が高く用意できる自己資金も多ければ、返済能力が高いと判断される可能性があります。融資審査に通りやすい上に、低金利を設定されたり、長い融資年数を引けたりなどの良い条件で融資を受られることも考えられます。金融機関から良い条件で融資を受けやすいという点は、医師がアパート経営を始める大きなメリットの一つです。
2 医師がアパート経営を始めるデメリット
一方、医師がアパート経営を始める際に注意しておきたいデメリットがあります。下記を参考にしてください。
2-1 アパート経営に関する時間を取られる
アパート経営は管理業務や会計業務の大部分を委託できるため、「何もしなくても収入が得られる」と認識されていることもありますが、それらの最終的な判断を行うのはオーナーであり、適切に投資判断を行う必要があります。
特にアパート経営となると、入居者も複数人おり、建物もあるため、トラブルが起きた場合などにはオーナーの判断を求められることが多くなります。
例えば、入居者からのクレームや近隣住民とのトラブルなどが発生した際に、忙しさのあまり対応できないと、近隣での評判が悪くなったり、入居者が離れていくことにもなりかねません。そのため医師としての業務に加えて、このようなアパート経営に関する業務も適切に行う必要があるのです。
またアパートを選ぶ際にも下記のようにするべき手順があり、医師としての業務を逼迫する可能性があります。
- 新築か中古アパートか決める
- 物件を探す
- 物件の見学をする(新築の場合は土地の見学)
- 買い付けの申し込みを行う
- 売買契約を締結する(新築の場合は契約締結後に設計を提案してもらい、工事が着工される)
- 融資の申し込みを行う
- 引き渡しが行われる
- 建物の登記を行う
- 空室があれば入居者の募集を行う(新築の場合は全室の入居者を募集する)
- アパート経営が始まる
物件を探すにもインターネットで探したり、不動産会社と打ち合わせをしたりなどの時間が必要になります。また物件を契約する際には頭金を用意したり、必要な書類を集めたりといったこともしなければなりません。普段から多忙な医師の方にとっては時間が取られてしまいデメリットと感じることもあります。
2-2 悪質な業者に狙われることもある
医師が高収入であることを逆手にとって、悪質な業者から物件提案を受ける可能性がある点は、医師がアパート経営を検討する際に注意しておきたいポイントです。キャッシュフローが得られない物件や、節税効果を強調した収益性の低い物件などを勧めたり、利益を出すために管理業者が必要のない修繕を行ったりというケースも考えられます。
前述したように、医師としての業務が多忙であっても、物件選びを始めるときから時間を取られることになります。適切な判断が行えるよう、物件の選定や不動産投資のパートナーとなる不動産会社選びについては、慎重に検証する必要があります。
3 医師がアパート経営を始める際の注意点
これまで紹介したメリットとデメリットを踏まえて、注意点を抑えておきましょう。
3-1 医師としての仕事とアパート経営を両立させる
マンションの1室を所有するワンルームマンション投資に比べて、アパート経営はオーナーが経営に関わる時間や労力が多いことが考えられます。部屋数が多いため入居者が多くなり、さらに一棟の建物を所有するためです。修繕や設備の更新などもオーナーとして判断を求められることになります。
このほか、複数のリスクがあり、それらへの対応策も立てておく必要があります。管理会社からアドバイスを受けることができますが、その管理会社を選んだり、コミュニケーションを適切にとっていくのもオーナーとしての役割です。医師としての業務を行いながらも、効率よくアパート経営に関する知識を学んでいくようにしましょう。
3-2 アパートローンの借りすぎに注意する
メリットの項目で紹介しましたが、医師は高い属性評価を得やすく、融資審査によって良い融資条件を提示される傾向があります。そのため、アパートローンの融資可能金額に余裕があるケースもあります。
しかし、与信があるからと言って、限度額いっぱいの借り入れをするのはリスクがあります。返済比率が高くなり、運転資金が赤字になる可能性があるからです。特にアパート経営は想定外の修繕が必要になったり、急に手持ち資金が不足することもあります。そのため、ある程度は資金に余裕を持って運営していく必要があるのです。
1棟目で無理な返済計画を立て、返済が滞るなどの事態に陥ってしまうと、その後の融資審査が厳しくなることも考えられます。1棟目は余裕を持ってローンを返済し、返済実績を作っておくことで2棟目につなげるといった戦略もとれるため、返済比率のバランスにも注意しながら検討していきましょう。
まとめ
アパート経営にはメリットとデメリットがありますが、今回のコラムでは医師に限定してメリットとデメリットを紹介しました。
高属性の医師は金融機関から高い評価を受け、良い融資条件でアパートローン契約をできる可能性が高いと言えます。それ自体は大きなメリットであると言えますが、その分、注意することも必要です。
まずは、適切な案内を行ってくれ、アパート経営を手助けしてくれるパートナーである不動産会社選びが重要となります。複数の業者を比較しながら、提案される物件や担当者の対応力なども確認し、じっくりと検討していきましょう。
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倉岡 明広
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