メタバースとは主に、インターネット上に構築された仮想空間で、自分のアバター(分身)を作製し、他のアバターとの交流や、コンサートに参加するなど非現実的な体験ができるサービスを指します。
米国のEmergen Research社の分析によると、同社では世界のメタバース市場規模は2028年に約8,300億ドルに達すると予想しています(2020年は約480億ドル)。
株式市場にとってもメタバース銘柄への期待は高く、第2、第3のアマゾンやアップルのような企業が現れる可能性もあります。そこで今回は注目の日米メタバース関連銘柄について解説します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※2022年2月14日時点の情報をもとに執筆しています(株価は2022年2月10日(日本時間、終値)時点)。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
目次
- メタバースに必要なもの
1-1.VRゴーグル
1-2.VR対応デバイス
1-3.メタバースのアプリ - 関連銘柄
2-1.META PLATFORMS INC(FB)
2-2.インテル(INTL)
2-3.ソニーグループ(6758)
2-4.NVIDIA(NVDA)
2-5.パナソニック(6752) - まとめ
1 メタバースに必要なアイテムと関連企業
執筆時点では、メタバースを体験するにはVR対応のゴーグルなどが必要です。メタバースの市場規模拡大が期待されるため、デバイスメーカーも世界の投資家から注目されています。
市場参入企業も多く、まるで1800年代に起きたゴールドラッシュのようです。当時、全米から我先にと、金の採掘者が西海岸に集まりました。しかし、幸福を手にいれたのは一握りの人のみでした。富を築いたのは採掘者ではなく、彼らにシャベルやバケツ、食料、ジーンズなどを販売していた業者だったのです。
メタバースに必要なアイテムを見ていきましょう。
1-1 VR(Virtual Reality)ゴーグル
VRゴーグルは、仮想現実を体験するために必要なツールです。360°の画像をそこに映すことで手軽に仮想現実を体験できます。スマホ用のVRゴーグルは数千円から売られていますが、本格的な体験をしたい方にはPC用のVRが最適です。
メーカーとしては、米国のオキュラス(FB)、日本ではエレコム(6750)やソニーグループ(6758)が挙げられます。
1-2 VR対応デバイス
デバイスとは、パソコンやスマートフォンなど、またはそれらに接続して使う装置の総称です。周辺機器としては、モニター・キーボードのほか、パソコンの内部にあるCPU、メインメモリやグラフィックメモリ、ディスクドライブなども含まれます。
ゲーム用のPCは普通のPCと異なり独立したグラフィックボードを搭載し、3D(3次元)など高度なグラフィックをスムーズに映しだすことができるため、VRに必要なアイテムです。このPCの性能を最大限に生かすためには高性能なCPU(Central Processing Unit)が必要です。
CPUのメーカーはインテルとAMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)が2分。インテルのCore iシリーズとAMD Ryzenシリーズが性能を競っています。
1-3 VRソフト
VRを体験するためには、ソフトが必要です。ソフトには、VR動画とVRゲームの2種類があり、VR動画は、VRゴーグルの中で仮想旅行や乗り物体験などができるソフトです。ビジネス活用の事例として、不動産の内覧や旅行のPR動画などに活用されています。
VRゲームは、自身の目線でモンスターと戦ったり、敵を撃退したり、また複数の人と同時にプレイしたりできます。ゲームソフト販売・開発会社としては、ソニーグループ(6758)やスクエア・エニックス(9684)、カプコン(9697)、コーエーテクモホールディングス(3635)、などが挙げられます。
2 メタバース関連銘柄
ここではメタバース関連銘柄のファンダメンタルズや株価水準について解説します。
2-1 META PLATFORMS INC(FB)
世界で新型コロナ感染が拡大するなか、人との接触が不必要なオンライン会議が一般的になりました。META(旧フェイスブック)は2021年7月にコンピュータグラフィックスで作成した仮想空間で会議やセミナーを開くことができるホライゾン・ワークルームを開設。同年2021年10月に社名をMETAに変更すると発表しました。同時にザッカーバーグCEOは、メタバースに資金を投じる姿勢を明らかにしました。
METAの強みは傘下のオキュラス(VRゴーグルメーカー)と共同で事業をすすめることが可能なことです。
META(FB)の株価は228.07ドル、PERが16.56倍、現在配当は実施していません。2021年第4四半期の決算で、2022年1~3月期売上高見通しが市場予想を下回る値だったことが嫌気され株価は大幅下落しました。市場が過剰反応した可能性があり、株価は比較的割安な水準まで低下しています。今後の株価は回復に向かう可能性があります。
2-2 インテル(INTL)
インテルは2021年11月にゲーミングPC用の第12世代Core iシリーズを発表しました。これは競合のAMD第4世代CPUを価格面、機能面で大きく上回りました。ゲーミングPCにおけるインテル製CPUを搭載しているPCのシェアが多いことからも、この第12世代Core iシリーズはAMDの脅威となっています。
株価は48.86ドル、予想PERは13.82倍、配当利回りが3.07%です。予想PERはダウ平均(18.31倍)やナスダック平均(27.78倍)を下回っています。株価水準が相対的に割安なため、長期保有を前提に投資するには良い水準です。
2-3 ソニーグループ(6758)
ソニーは、オンラインゲーム「フォートナイト」を開発した米エビックゲームに出資。フォーナイトはオンラインで世界中のプレーヤーとゲームを競ったり、協力し目標を達成したりするバーチャルイベントを開催しています。ソニーはプレステーション向けにソフトの提供を受けてきましたが、フォートナイトを映画や音楽にも発展させようとしています。
ソニーの株価は12,855円、予想PER19.62倍、配当利回りが0.51%です。日経平均株価の予想PERは16.95倍と株価に割高感があるものの、メタバース関連銘柄として株価の上昇余地がありそうです。
2-4 NVIDIA(NVDA)
NVIDIAはGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)のメーカーです。GPUは最新のグラフィックスやAIの処理に適しており、同社は世界200社以上と提携しています。例えばトヨタやテスラなどが自動運転の頭脳に同社の技術を採用しています。
また、仮想空間における共同作業の場として、オムニバースを提供しています。オムニバースとは仮想空間内で共同作業を行うためのプラットフォームです。建築やゲームにおける3D CGの制作で、複数の制作者が同一空間内で共同かつ同時に取り組むことが可能です。
株価は258.24ドル、予想PERが55.11倍、配当利回りが0.07%です。成長期待が高い企業のため予想PERはダウ平均(18.31倍)やナスダック平均(27.78倍)を上回り割高感があります。2022年3月に米国では0.5%の政策金利の引き上げが予想されているため、割高感がある同社の株は売られやすい状況にあります。
2-5 パナソニック(6752)
パナソニックの100%子会社シフトールがVRゴーグルを発表しました。このゴーグルはOculus Quest2の重量503グラムに対し、約250グラムと軽く、視度調整機能が備えられています。
そのほか、メタバース内で会話を楽しんだり、テレビ会議をしたりする際に自身の声が周囲に響くのを防ぐミュートークや、VR空間で寒暖を体験できるペブルフィールが販売される予定です。
パナソニックの株価は1,233円、予想PERが11.76倍、配当利回りが2.03%。同社の家電製品の値上げが報道されたこともあり(2022年4月から)、今後の収益改善が期待されます。株価は相対的に割安な水準であり、長期投資のタイミングとしては良いでしょう。
まとめ
新型コロナウイルス感染拡大も後押しし、メタバースが注目されています。メタバースの世界は、いろいろな分野に今後拡大することが予想されます。家にいながら海外旅行が体験できたり、コンサートに参加したり、会社を立ち上げたり、可能性が広がります。
今回は紹介した以外にもメタバース関連銘柄は多々あります。株価に変動はつきものです。投資はご自身で調査を進め、判断してください。
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藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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