海外在住者(非居住者)の日本不動産売却の手順は?必要書類や税金も解説

※ このページには広告・PRが含まれています

海外在住で日本の不動産売却を検討していると、「日本在住者の不動産売却と何が違うのか」「海外在住者でも税金がかかるのか」「用意する書類はどのようなものか」などのような疑問を持たれるのではないでしょうか。

海外在住者が日本の不動産を売却するためには、所有権移転登記以外の手続きでも司法書士の協力を得ることが必要です。また、海外在住者が不動産を売却すると、源泉徴収税が発生します。なお、司法書士の手続きを進めるためには、在留証明書などの書類が必要となります。

この記事では、海外在住者が日本の不動産を売却するための手順や、必要書類のほか、税金についても解説します。

目次

  1. 海外在住者(非居住者)の定義
  2. 海外在住者が日本の不動産を売却する手順
    2-1.不動産会社と司法書士を探す
    2-2.必要な書類を準備する
    2-3.買主を探す
    2-4.買主と不動産売買契約を締結する
    2-5.引渡し決済する
    2-6.確定申告をする
  3. 海外在住者が日本の不動産を売却するときに用意する書類
    3-1.在留証明書
    3-2.サイン証明書
    3-3.代理権限委任状
  4. 海外在住者が日本の不動産を売却した時の税金について
    4-1.源泉徴収税について
    4-2.売却した翌年に確定申告が必要
  5. まとめ

1.海外在住者(非居住者)の定義

会社の海外支店などに1年以上の期間にわたって勤務する人は、「非居住者」とみなされます。

所得税法では、日本国内に住所を有しているうえ、現在まで1年以上居所を有する個人を「居住者」と定義しています。そして、これ以外の個人が「非居住者」となります。※参照:「所得税法 第二条

日本に家があっても、1年以上海外に滞在している(=海外に居所がある)場合は非居住者となります。なお、非居住者であっても、日本国内で発生した所得に関しては日本国内で所得税が課税されます。

2.海外在住者が日本の不動産を売却する手順

ここからは、海外在住者が海外から日本の不動産を売却する手順について解説します。重要なポイントは、最初の不動産会社と司法書士を選ぶところです。不動産売却をスムーズに行うには協力的なパートナーを見つけることが大切です。

2-1.不動産会社と司法書士を探す

日本国内から不動産を売却する場合にも、まずは不動産会社を探すことになります。しかし、海外から日本の不動産を売却する場合には、不動産会社に加えて司法書士を探すことが必要です。

不動産会社には不動産仲介の手続きを依頼し、司法書士には法的な手続きを依頼します。

なお、不動産会社ならどこでも海外在住者の不動産売却について対応してくれるというわけではありません。経験がないからという理由や、手間がかかるからといった理由で断られる可能性もあるため、あらかじめ確認しておきましょう。

このような事例の少ない不動産売却を依頼する際は、複数の不動産会社へ一括して問い合わせができる不動産一括査定サイトが活用できます。

物件情報を登録する際、備考欄に「海外居住である」旨を書き加えておくことで、売却対応できる不動産会社からのみ返信がくる可能性が高まります。

主な不動産一括査定サイト

サイト名 運営会社 特徴
SUUMO(スーモ)不動産売却[PR] 株式会社リクルート 大手から中小企業まで約2,000の店舗と提携。独自の審査基準で悪質な不動産会社を排除。60秒で入力が終了し、無料査定がスタートできる。
すまいValue[PR] 不動産仲介大手6社による共同運営 査定は業界をリードする6社のみ。全国875店舗。利用者の95.5%が「安心感がある」と回答
LIFULL HOME’Sの不動産売却査定サービス[PR] 株式会社LIFULL 全国3826社以上の不動産会社に依頼できる。匿名での依頼も可能
リガイド(RE-Guide)[PR] 株式会社ウェイブダッシュ 17年目の老舗サイト。登録会社数900社、最大10社から査定を受け取れる。収益物件情報を掲載する姉妹サイトも運営、他サイトと比べて投資用マンションや投資用アパートの売却に強みあり
HOME4U[PR] 株式会社NTTデータ スマートソーシング 全国2100社から6社まで依頼可能。独自審査で悪徳会社を排除

【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧

2-2.必要な書類を準備する

不動産会社と司法書士が決まったら、司法書士に渡すための書類を用意します。書類を取得するためには、滞在先にある日本国領事館もしくは日本国大使館で申請が必要です。なお、必要書類についてはこの後に詳細を解説します。

2-3.買主を探す

不動産会社と司法書士を見つけたら、不動産会社と媒介契約を締結して売却活動を開始します。仲介による不動産売却では、売却活動の開始から決済完了までに3ヶ月程度必要です。なお、買い手が見つからなければ、3ヶ月以上かかることもあります。

媒介契約の種類によっては、不動産会社から売主に定期的な報告が義務付けられているので、打ち合わせ方法などを前もって決めておくとよいでしょう。

2-4.買主と不動産売買契約を締結する

売却活動を経て無事に不動産の買主が見つかったら、売買契約を締結します。契約書などは不動産会社が用意してくれますが、必ず事前に契約内容を確認しておきましょう。

なお、売買契約の締結と引渡し決済については、取引慣例上、売主と買主との双方が立ち会いのもと手続きを行うことが多いでしょう。手続きのために帰国できれば問題ありませんが、帰国できない場合は、親族や司法書士を代理人として手続きすることも可能です。

2-5.引渡し決済する

契約の締結まで完了したら、その次は不動産の引渡し決済に移ります。引渡し決済の手続きは、決済資金の入金を確認後、買主に鍵を渡して書類のやり取りを済ませたら完了です。

なお、ローン返済中の不動産を売却する場合は、決済金の入金を確認後に金融機関に繰り上げ返済し、抵当権の抹消手続きを行います。引渡し決済日が決まった時点(売買契約時)に、金融機関に連絡と手続きの確認をしておくとよいでしょう。

ただし、金融機関によっては繰り上げ返済と抵当権の抹消手続きに際して対面での手続きを求められることもあります。対面が難しい場合は海外居住であることを伝え、事前に相談をしておきましょう。

2-6.確定申告をする

不動産を売却したら、引渡し決済した翌年に確定申告が必要です。確定申告についても、本人が帰国できない場合は、親族などを代理人とするか税理士に手続きを依頼します。

3.海外在住者が日本の不動産を売却するときに用意する書類

海外在住者が日本の不動産を売却するときには、不動産売却の書類に加えて別の書類が必要です。下記、主な必要書類の一覧です。

  • 在留証明書
  • サイン証明書
  • 代理権限委任状

それぞれの取得方法や用途について詳しく見て行きましょう。

3-1.在留証明書

在留証明書は海外在住者が海外における住所を証明するための書類で、日本における住民票などの代わりとなります。発行者は滞在先の日本国領事館もしくは日本国大使館です。

発行の依頼にあたっては、注意を要するポイントが2点あります。発行手続きと発行までの期間についてです。

発行手続きにあたっては、基本的には本人が領事館もしくは大使館を訪問する必要があります。どちらも日本の祝日に合わせて休みを取っていることもあるので、あらかじめ電話か大使館のウェブサイトで確認しておきましょう。

また、手続きしてから書類発行までの間に数日かかることもあります。書類発行までの期間についても事前に電話などで確認しておくとよいでしょう。

なお、在留証明書の発行にあたっては、下記の書類を用意しておく必要があります。

  • パスポート
  • 戸籍謄本(本籍地確認用)
  • 海外の現住所にいつから居住しているか証明する書類

現住所の証明書類については、公共料金の請求書や家の賃貸借契約書などが該当します。

3-2.サイン証明書

サイン証明書とは、日本でいうところの印鑑証明書に該当する書類です。こちらも在留証明書と併せて滞在先の国にある領事館か大使館で申請手続きします。

また、サイン証明書には「貼付形式のもの」と「単独形式のもの」という2種類があります。不動産売買の場合は引渡し決済時に貼付形式のものが必要です。

なお、サイン証明書を取得するためには、下記の書類を用意しておく必要があります。

  • パスポート
  • 売買契約書など売買手続きにあたって署名を要する書類
  • 手続き手数料(サイン証明書1通につき1,700円相当額を現地通貨で支払い)

「売買契約書など売買手続きにあたって署名を要する書類」については、領事館もしくは大使館へ行く前に署名せず、領事館もしくは大使館へ行った時に係官の面前で署名する必要があります。

3-3.代理権限委任状

売買契約の締結時や引渡し決済の時などに、本人が帰国できず親族や司法書士などを代理人とする場合は、代理権限委任状が必要です。

代理権限委任状については司法書士に依頼すれば作成してもらえる可能性があるため、手続きに際して帰国できない場合はあらかじめ相談しておくとよいでしょう。

自身で作成する場合、委任状の書式には特に決められたものはありませんが、最低限必要な記載事項は次のとおりです。

  • 委任者
  • 受任者
  • 委任内容(登記の申請を委任すること)
  • 不動産の表示(どの不動産について登記の申請をするか)
  • 委任日

(※法務局「「代理権限証明情報」について」より引用)

4.海外在住者が日本の不動産を売却した時の税金について

すでに解説した通り、非居住者であっても日本国内で不動産を売買した場合は、税金が課税されます。ここからは、非居住者に課税される税金について解説します。

4-1.源泉徴収税について

源泉徴収税の税率は10.21%(所得税10%・復興特別所得税0.21%:2020年9月現在)です。また、納税は買主側で行うことになるので、引渡し決済の時、売主には売買代金のうち89.79%が入ってきます。

ただし、以下の条件が全て当てはまる場合は、源泉徴収が不要です。

  • 売買金額が1億円以下
  • 買主が6親等以内の親族
  • 買主の物件用途が居住用

買主は納税を済ませた後、売主に「非居住者等に支払われる不動産の譲受けの対価の支払調書」という書類を発行します。売主は不動産を売買した翌年に確定申告を行い、買主から受け取った支払調書を提出して還付を受けることになります。

また、これらの税金や不動産会社への仲介手数料、司法書士への報酬などの経費を合算すると、売買決済時の手残り金が契約金額の約90%となる点に要注意です。ローン返済中の物件を売却する場合に契約金額全額をもってローンを繰り上げ返済しようとしていると返済計画に支障が出るため、諸経費についても注意をしておきましょう。

4-2.売却した翌年に確定申告が必要

不動産を売却したら日本国内での所得が発生するため、翌年の期間中に確定申告が必要です。

加えて、海外在住者は日本での所得について代わりに申告手続きを行う「納税管理人」を選出する必要があります。なお、納税管理人は法人でも個人でも選出することが可能です。(※国税庁「海外転勤と納税管理人の選任」を参照)

納税管理人を決めたら、税務署に「所得税の納税管理人の届出書」という書類を提出し、代理で申告手続きをしてもらいます。

まとめ

海外在住者が日本の不動産をスムーズに売却するにあたり、重要なポイントとなるのは不動産会社と司法書士を探すステップです。特に、滞在地と日本との時差が大きい場合は、メールやチャットツールなどを使ってコミュニケーションする機会が増えるでしょう。

コミュニケーションのレスポンスが速く、仕事が丁寧なパートナーを見つけられれば、スムーズに手続きを進められます。反対に、コミュニケーションに難があると、ストレスが非常に大きくなるでしょう。

また、手続きをスムーズに進めるためには、売却する不動産の情報や書類を整理しておくなど、売主側の準備も重要になります。

The following two tabs change content below.

HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チームは、不動産投資や金融知識が豊富なメンバーが不動産投資の基礎知識からローン融資のポイント、他の投資手法との客観的な比較などを初心者向けにわかりやすく解説しています。/未来がもっと楽しみになる金融メディア「HEDGE GUIDE」