2023年4月こども家庭庁設置で何が変わる?こども政策の基本方針や体制も

2022年6月、政府は「こども家庭庁設置法」「こども家庭庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律」「こども基本法」という3つの法律を成立・交付し、2023年4月にはこども政策のリーダーの役割として、こども家庭庁を設置する予定です。

政府のこども政策の推進、こども家庭庁の設置によって一体何が変わるのでしょうか?

本記事ではこども家庭庁設立の目的と主な任務、役割や体制について、こども政策の基本理念6つと2022年に行われたイベント2つについて解説していきます。

目次

  1. こども家庭庁設立の目的と任務
  2. こども家庭庁で何が変わる?役割・姿勢・体制について
  3. こども政策の基本理念とは
  4. 2022年に行われたこども家庭庁設立準備室のイベント2つ
  5. まとめ

1.こども家庭庁設立の目的と任務

令和3年中に全国225か所の児童相談所が児童虐待相談として対応した件数は207,659件の過去最多となっています。過去の推移を見てみると、年々相談数は増加傾向にあることが分かります。

内閣府では少子化という問題に加え、コロナ禍で虐待や不登校の相談が増えたことから、こども家庭庁の設置などのこども政策を推進しており、2022年6月には、以下3つの法律が成立・交付されました。

  • こども家庭庁設置法
  • こども家庭庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律
  • こども基本法

こども家庭庁は心身の発達の過程にあるこどもが自立した個人として等しく健やかに成長することのできる社会の実現を目的として設置されました。こどものいる家庭における子育て支援、こどもの権利や利益を擁護することを主な任務としています。

設立の目的と任務については、こども家庭庁設置法第3条にて下記のように記されています。

こども家庭庁は、心身の発達の過程にある者(以下「こども」という。)が自立した個人としてひとしく健やかに成長することのできる社会の実現に向け、子育てにおける家庭の役割の重要性を踏まえつつ、こどもの年齢及び発達の程度に応じ、その意見を尊重し、その最善の利益を優先して考慮することを基本とし、こども及びこどものある家庭の福祉の増進及び保健の向上その他のこどもの健やかな成長及びこどものある家庭における子育てに対する支援並びにこどもの権利利益の擁護に関する事務を行うことを任務とする。

(※引用:こども家庭庁設置法 3条)

2.こども家庭庁で何が変わる?役割・姿勢・体制について

こども家庭庁は内閣府の外局として2023年中に設置される予定です。内閣官房こども家庭庁設立準備室が公表している「こども家庭庁について」というパンフレットによると、こども家庭庁は以下2つの役割を担っています。

  • 政府の中のこども政策全体のリーダー
  • 担当する省庁が不明であった課題や新しい課題などに対応する

今までこどもに関係する業務は、学習・教育に関しては文部科学省、医療に関しては厚生労働省など様々な省庁が別々に対応していましたが、今後は、「こども家庭庁」が政府におけるこども政策全体のリーダーとなることが期待されています。

こども家庭庁が設置されることで、担当する省庁が不明であった課題や対応が不十分の問題などに取り組むことが可能になる予定です。こども家庭庁は以下の3つを基本姿勢としています。

  1. こどもの視点、子育て当事者の視点
  2. 地方自治体との連携強化
  3. NPOをはじめとする市民社会との積極的な対話・連携・協働

こどもや若者を「当事者」としてとらえて意見を聞き、政策に反映させ、地方自治体のニーズを汲み必要に応じて制度化を行い、様々な民間団体、民生・児童委員、青少年相談員などとのネットワークの強化を図ります。

組織としては内閣総理大臣・こども政策担当大臣・こども家庭庁長官をリーダーとして、主に全体の取りまとめを行う企画立案・総合調整部門、こどもの育ちをサポートする成育部門、特に支援が必要であるこどもをサポートする支援部門の3部門体制となります。

今後は2023年4月にこども家庭庁が発足し、こども・若者を集めて会を開き意見をヒアリングする、こども・若者が政府の会議などに参画できるように取り組む、パブリックコメントを募集した上でこども政策を決めるなどのプランを予定しています。

3.こども政策の基本理念とは

内閣官房のホームページ「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針」によると、こども政策の基本理念は以下の6点です。

  1. こどもの視点、子育て当事者の視点に立った政策立案
  2. 全てのこどもの健やかな成長、Well‐beingの向上
  3. 誰一人取り残さず、抜け落ちることのない支援
  4. こどもや家庭が抱える様々な複合する課題に対し、制度や組織による縦割りの壁、年齢の壁を克服した切れ目ない包括的な支援
  5. 待ちの支援から、予防的な関わりを強化するとともに、必要なこども・家庭に支援が確実に届くようプッシュ型支援、アウトリーチ型支援に転換
  6. データ・統計を活用したエビデンスに基づく政策立案、PDCAサイクル(評価・改善)

「こどもの視点や子育て当事者に立った政策立案」は、こども家庭庁で予定されているこどもや若者からの意見を聴く、こども・若者の政府の会議などへの参加などの施策につながることが期待されます。

②のWell‐beingとは「幸福」「満足できる生活状態」などの意味です。内閣官房「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針のポイント」によると、Well‐beingについては以下のように記載されています。

安全で安心して過ごせる多くの居場所を持ちながら、様々な学びや体験ができ、幸せな状態(Well‐being)で成長できるよう、家庭、学校、職域、地域等が一体的に取り組む

③の「誰一人取り残さず、抜け落ちることのない支援」は、特定のこどもが支援の対象外となってしまわず、全員が社会に参画できるようにする支援のことです。また、こどもへの福祉はこどもだけの課題解決に留まらず、日本社会の持続可能性に大きく関連するという点も注目されています。

④は教育・福祉・雇用など関係する機関・団体がネットワークを形成して支援を行い、18歳など特定の年齢で区切らず、こども・若者がスムーズに社会生活へ参加できることを目指した理念です。

⑤のプッシュ型支援とは支援を必要とする方が、官公庁や地方自治体への申請手続きをする前に、行政の側から積極的に情報提供などのアプローチを行うことを指します。アウトリーチ型とは積極的に支援対象者のいる場所に出向いて働きかけることで、こども・若者への訪問支援を指します。

⑥は、様々なデータや統計を活用しながら、こどもからの意見聴取という数値化できない(定性的)事実も個人情報に配慮しながら汲み取り、エビデンスに基づいた政策のPlan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)のサイクルを行っていきます。

4.2022年に行われたこども家庭庁設立準備室のイベント2つ

内閣官房のホームページによると、2022年1月にこども・若者と野田聖子こども政策担当大臣との意見交換会を開催しました。(※参照:内閣官房「こども・若者と野田大臣との意見交換会」)

小学校4年~大学3年生までのこども・若者23名が対面又はオンラインにより参加し「フリースクールにお金の補助をして欲しい」「ジェンダーに関してこども・若者から声を聴くだけではなく、意思決定の場にもこども若者を入れてもらえると嬉しい」「望まない妊娠を避けるための教育をしてほしい」などの意見がありました。

同年8月には「こども霞が関見学デー」と題して、小学校4年~中学3年生のこども15名が対面・オンラインで参加し、野田聖子こども政策担当大臣、三原じゅん子大臣補佐官と意見交換を行っています。(※参照:文部科学省「令和4年度こども霞が関見学デーの模様」)

まとめ

こども家庭庁設立の目的・任務、体制について、こども政策の基本理念6つ、既に開催されたイベント2つについてお伝えしてきました。

こども家庭庁設置により2022年1月と8月に行われたこども・若者との意見交換のようなイベントが増え、ヒアリングした意見・要望などにより施策が展開されることが予測されます。

こどもや若者から広く意見を募ることで、これまで問題視されてこなかった新しい課題が見えてくる可能性もあります。こども政策の動向については、2023年4月の施行後も注視してみましょう。

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田中 あさみ

経済学部在学中に2級FP技能士(AFP)の資格を取得。ライターとして不動産投資を含む投資や年金・保険・税金等の記事を執筆しています。医療系の勤務経験がありますので、医療×金融・投資も強みです。HEDGE GUIDEでは不動産投資を始め、投資分野等を分かりやすくお伝えできるよう日々努めてまいります。