証券口座、一般口座と特定口座の違いは?メリット・デメリットを比較

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証券口座には様々な種類があります。取引したい金融商品の種類や確定申告の有無によって、一般口座または特定口座かなど開設するべき口座のタイプが変わることもあるので、事前に知っておくことが大切です。

この記事では、一般口座と特定口座の特徴やメリット・デメリットについて詳しく説明します。新規の口座開設を検討している方、投資初心者の方は参考にしてみてください。

※この記事は2021年10月時点の税制に基づき執筆しています。最新情報および税務上の取扱については税理士または税務署へご確認頂きますようお願い致します。

目次

  1. 一般口座と特定口座の違い
  2. 一般口座のメリット・デメリット
  3. 特定口座のメリット・デメリット
    3-1.特定口座(源泉徴収あり)の場合
    3-2.特定口座(源泉徴収なし)の場合
  4. 一般口座と特定口座のどちらを選ぶべき?
    4-1.一般口座が向いている人
    4-2.特定口座(源泉徴収あり)が向いている人
    4-3.特定口座(源泉徴収なし)が向いている人
  5. まとめ

1 一般口座と特定口座の違い

株や投資信託などの金融商品を証券会社で取引する場合、証券口座(証券総合取引口座)の開設が必要になります。口座開設の際は口座の種類を選ぶ必要があり、これは店舗型証券会社だけでなくネット証券会社でも同様です。

証券口座の種類は、「一般口座」「特定口座」「NISA口座」の3つに大きく分かれます。特定口座はさらに「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」に分かれるため、新しく証券口座を開設する場合、一般口座、特定口座(源泉徴収あり)、特定口座(源泉徴収なし)、NISA口座の4種類から口座を選択することになります。

なお、NISA口座は少額投資非課税制度の適用を受ける場合のみ利用する口座のため、それ以外の通常の金融取引では、一般口座または特定口座のどちらかを選択をします。

特定口座を選ぶ場合、口座開設先の証券会社が投資家の譲渡損益等を計算してくれる点が大きな特徴です。証券会社が投資家に代わって特定口座内の1月から12月までの譲渡損益等を計算し、「年間取引報告書」を発行してくれます。

「年間取引報告書」では、株式などを「いくらで買って」「いくらで売った」という総額だけでなく売買手数料なども考慮して計算されるため、所得税の計算で必要な取引に要した費用などを差し引いた純粋な利益や損失額の把握が可能です。

さらに、特定口座(源泉徴収あり)の場合、売却などの取引をするたびに年初からの譲渡損益を計算し、利益が出ていれば20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%の合算)の源泉徴収を行い、損失が出ていればすでに徴収した税額から還付などもしてくれます。

これにより、特定口座(源泉徴収あり)を選択すると損益の計算だけでなく納めなければならない税金も売却取引などの都度源泉徴収されるため、確定申告や納税などの手続きは原則不要です。

これに対して、一般口座では「年間取引報告書」が発行されないため、全ての取引や売買手数料を自ら計算して損益を出さなければなりません。これが一般口座と特定口座の大きな違いです。

以上のことから、証券会社で損益を計算して「年間取引報告書」を発行してくれる特定口座、少額投資非課税制度の適用を受けられるNISA口座、それ以外の口座を一般口座と区別することができます。

2 一般口座のメリット・デメリット

メリット ・譲渡所得が年間20万円未満なら確定申告および譲渡所得税の納税義務なし
・未公開株の取引が可能
デメリット 確定申告が原則必要

未公開株とは上場していない企業の株式を指します。未公開株は原則として特定口座で管理できないため、取引に関心のある方にとっては一般口座を選択する大きなメリットになります。

一方、上記の通り、一般口座では確定申告が原則必要です。また、株式等の譲渡所得を手数料なども含めて全て自分で計算しなければならず、手間がかかります。ただし、年間の利益が20万円以下の場合は確定申告が不要になり、所得税の納税義務もありません(住民税の申告および納税は必要です)。

3 特定口座のメリット・デメリット

特定口座には、「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2種類があります。これは所得税の仕組みを理解すると違いが良く分かるようになります。

所得税とは個人に課される税金で、基本的にはその年の1月から12月の給与や年金、土地建物の売買益(譲渡所得)、懸賞の当選金(一時所得)などを全て合計し、求められた総所得金額から、所得控除を差し引いた課税所得に対して税金が課される総合課税が原則です。

しかし、株式等の譲渡によって発生する所得は他の所得金額と合計しない申告分離課税となっており、給与や年金などの所得と分けて税金を計算します。

以前は株式等の譲渡所得に対して源泉分離課税(注)の選択も可能でしたが、2003年に廃止され、申告分離課税に一本化されました。これにより、上場株式や投資信託、債券などの株式等を売却した場合、譲渡益が発生すれば確定申告が原則必要となりました。

なお、源泉分離課税とは、他の所得とは全く分離して所得税の計算と納税が行われる制度です。株式等の売却については売却代金が支払われる際に税金が源泉徴収されて納税完了となる仕組みのため、確定申告や納税等の手続きは一切不要でした。

確定申告は手間がかかるだけでなく専門知識なども必要になります。そこで、個人投資家の申告負担を軽減するために始まった制度が特定口座制度です。

特定口座制度では、証券会社で取引の詳細な計算を行い「年間取引報告書」を発行してくれるので、確定申告が比較的簡単にできるようになります。そのため、特定口座(源泉徴収なし)は「簡易申告口座」と呼ばれることもあります。

また、会社勤めの方で2か所以上から給与をもらっていない方などは、年末調整によって所得税に関する手続きが全て完了するため、確定申告は原則不要です。このような申告不要の方が株式等の譲渡所得だけのために確定申告をしなくて済むように、特定口座(源泉徴収あり)も設けられました。

特定口座は、株式等の譲渡所得が申告分離課税に一本化されて生まれた口座であり、確定申告の簡素化や申告自体を不要にすることが目的です。そのため、特定口座を開設することができるのは個人のみで、法人などは特定口座を開設することができません。

また、原則として証券会社1社につき1つの特定口座を作ることができますが、源泉徴収あり・なしでは売却時の処理が異なるため、それぞれの選択変更については年1回(その年の最初の売却取引まで)などの制限があります。

それでは、源泉徴収あり・なしの特定口座について、それぞれのメリット・デメリットを確認してみましょう。

3-1 特定口座(源泉徴収あり)のメリット・デメリット

メリット ・確定申告が原則不要
・年間取引報告書が発行される
・確定申告をしない場合、総所得金額に株式等の譲渡所得を含めずに済むため、配偶者控除や扶養控除などの所得制限のある優遇措置を受ける際は有利になることがある
デメリット 給与や年金で収入を得ている場合、原則20万円以下なら確定申告や納税をせずに済む一方、特定口座(源泉徴収あり)では証券会社によって自動的に申告と納税が行われるため、不要な税金を納める可能性がある

特定口座(源泉徴収あり)の最も大きなメリットは、確定申告や納税などの手続きが不要になる点です。毎年の確定申告書の作成・提出をせずに済むため、そのぶん、本業や投資に集中することができます。

また、確定申告をしない場合、所得税の計算基礎となる総所得金額に株式等の譲渡所得が合算されない点もメリットです。これにより、配偶者控除や扶養控除などの所得制限のある方も年間の総所得がいくらになるのかを気にする必要がありません。

ただし、「源泉徴収あり」の特定口座では、不要な税金を払う可能性があります。例えば、給与や年金で収入を得ている場合、他の所得が発生してもその所得金額が20万円以下なら原則として確定申告不要ですが(2か所以上から給与を受け取っている場合は対象外)、この口座では自動的に源泉徴収によって税金の納付が完了するため、払う必要のない税金を差し引かれることになります。

なお、特定口座でも損失が発生している場合は確定申告をすることで3年間譲渡損失を繰り越すことができます。例えば、今年30万円の損失が発生した場合、「年間取引報告書」を使用して確定申告することで、来年以降の3年間で30万円の利益との相殺が可能です。

3-2 特定口座(源泉徴収なし)のメリット・デメリット

メリット ・年間取引報告書が発行される
・給与や年金で収入を得ている方でも株式等の譲渡所得が年間20万円以下の場合、確定申告や所得税の納税が不要
デメリット ・確定申告する場合、譲渡所得として総所得金額に含まれるため、配偶者控除や扶養控除などの所得制限のある優遇措置を受ける際に不利になる可能性もある
・国民健康保険は確定申告によって保険料の算定基礎である総所得金額が増えるため、場合によっては保険料が上がる
・株式等の譲渡所得が年間20万円以下の場合でも住民税の申告は必要

特定口座(源泉徴収なし)を利用する場合、確定申告は原則必要ですが、「年間取引報告書」が発行されるので、申告手続きが比較的簡単になります。

また、給与や年金で収入を得ている方でも、株式等の譲渡所得が年間20万円以下なら確定申告や所得税の納税が不要となる点もメリットです。

しかし、株式等の譲渡所得を確定申告する場合、申告した金額が総所得金額に含まれます。これにより、所得制限のある扶養控除や配偶者控除を受けられなくなったり、国民健康保険の保険料が増えたりする可能性もあるため、デメリットとして認識しておくことが大切です。

なお、株式等の譲渡所得が20万円以下の場合でも住民税の申告は必要になるため、注意点として併せて把握しておきましょう。

4 一般口座と特定口座のどちらを選ぶべき?

どちらの証券口座を選べばいいのかは、投資目的や取引スタイルによって以下のように異なるので、確認していきましょう。

4-1 一般口座が向いている人

一般口座は、未上場株を取引しない方にとってはメリットの少ない口座です。一方、未上場株は上場株に比べてリスクが高く、大きなリターンも期待できるため、関心のある方には一般口座も選択肢になり得ます。

4-2 特定口座(源泉徴収あり)が向いている人

確定申告や納税などの手間を省きたい方、税金や保険などの勉強に時間を掛けたくない方は特定口座(源泉徴収あり)が向いています。

特に、扶養控除や配偶者控除など所得制限のある優遇措置を適用している場合、わずかな所得の変化で大きな機会損失に繋がることがあるほか、国民健康保険の場合も思わぬ保険料の増額に繋がる可能性があるため、総所得金額の変動しない特定口座(源泉徴収あり)での取引が適しています。

4-3 特定口座(源泉徴収なし)が向いている人

年間20万円以下などの少額の利益を見込んでいる場合、特定口座(源泉徴収なし)が適しています。株式等の譲渡所得が20万円以下なら確定申告も原則不要になるため、住民税の申告を怠らなければ、手間をあまりかけずに税負担を抑えることができます。

また、一般口座や他の証券会社の特定口座を併用して取引を行っている場合、確定申告によって損益通算が可能です。そのため、複数の証券口座を利用している方が特定口座(源泉徴収なし)を選択するケースもあります。

まとめ

一般口座と特定口座(源泉徴収あり)、特定口座(源泉徴収なし)にはそれぞれのメリット・デメリットがあります。そのため、これらの特徴をしっかりと把握し、自身の投資スタイルや確定申告の有無などを考慮しながら口座を選択することが重要です。

初めて口座を開設する方で判断するのが難しい場合は、特定口座(源泉徴収あり)で取引を開始してから、必要に応じて源泉徴収なしに切り替えることも可能なので、検討してみてください。

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HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム

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