管理業務を委託できるアパート経営は、本業が忙しいサラリーマンにとってメリットのある副業方法の一つです。しかし、「副業としてアパート経営を始めても大丈夫なの?」「実際に始めるにはどうすればいいの?」と立ち止まっている人も多いのではないでしょうか。
そこで今回のコラムでは、アパート経営を副業として始めるにはどうしたらいいのか、手順を追いながら解説していきます。加えて、事前に確認しておきたいリスクも紹介します。
目次
- 就業規則を確認する
- アパート経営を始めるための届けを出す
2-1.開業届を提出する
2-2.青色申告承認申請書を提出する - アパート経営を始める
3-1.物件を購入する
3-2.管理会社を選ぶ - 副業を始めるに当たってリスクを確認
4-1.就業規則違反には罰則も
4-2.管理業務の確認を - まとめ
1 就業規則を確認する
アパート経営に限らず、副業を始めたいと思ったときにまず必要なのは就業規則の確認です。本業への支障が考えられるため、かつて日本国内のほとんどの企業は副業を禁止していました。
しかし昨今は、他の業務に携わることでキャリアが形成され、本業に活かされることもあるという考え方に変わり、副業をOKとしている企業が増えています。
特に2018年に厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」をまとめ、副業を推奨するようになっています。そのため副業OKの企業が増えているのですが、すべての企業が副業を認めている訳でもありません。ですから、副業を始めたいと思ったときは、まずは働いている会社の就業規則を確認しましょう。
企業によっては、副業すべてが禁止されていたり、副業のジャンルによって禁止されていたり、それぞれで考え方は違います。また副業が許されていても届出制、許可制など企業によってスタイルも違います。詳しく分からない場合、また就業規則に副業に関する記載がない場合は、「書いてないから副業をしてもいいんだ」と勝手に判断せず、人事部あるいは総務部などに相談するようにします。
ただし、公務員はサラリーマンとは異なっていて、そもそも副業が禁止されています。以下の国家公務員法と地方公務員法の3つの条文にその旨が明記されています。
- 国家公務員法103条
- 国家公務員法104条
- 地方公務員法38条
なお、公務員の不動産投資は条件付きで認められています。具体的には所轄庁の長等の「承認」が得られれば、公務員の方がマンション・アパートや土地の賃貸を行うことも可能です。
【関連記事】公務員は不動産投資に向いている?副業の注意点も併せて解説
就業規則の確認ができたら、会社の規則に則って副業を開始する準備を始めます。届け出を出す際にどのような書類が必要なのかも確認しておきましょう。
2 アパート経営を始めるための届けを出す
副業としてアパート経営を始める際に公的な書類を提出する決まりはありません。ただし、本業以外の年間所得が20万円以上になると、確定申告を行わないといけません。そのためアパート経営を開始する際は開業届を提出しておきます。
また確定申告の際に優遇が受けられるように青色申告承認申請書も提出しておくと良いでしょう。
2-1 開業届を提出する
サラリーマンの場合、本業でもらう給与のほかに年間20万円以上の所得があると、確定申告を行い、適切に納税を行わなければなりません。そのために必要になるのが開業届の提出です。
開業届は正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」という名称で、税務署に事業を始めたことを通知する届け出です。納税地を所管する税務署長へ提出することで、事業を開始し納税する意思があると認められます。書類は税務署で貰えるほか、国税庁のウェブサイトでダウンロードすることができます。
必要事項を記入して提出しますが、その際は税務署の窓口に提出する方法と郵送する方法があります。開業してから1ヵ月以内が提出の期限とされてるので、早めに準備をしておきましょう。
開業届は不動産投資を開始するすべての人が提出しないといけない訳ではありません。ただし開業届を提出することで副業をスタートさせるという気持ちにもなります。また、確定申告の際に青色申告ができるため税制上の優遇が受けられるようになりますので、副業を始める際には提出を検討してみると良いでしょう。
2-2 青色申告承認申請書を提出する
会社に勤めていると源泉徴収と年末調整という形で税金を支払うことになるため、サラリーマンには馴染みがありませんが、確定申告には2つの方法があります。それが白色申告と青色申告です。
白色申告と青色申告の大きな違いは、記帳方法と優遇があるかないかです。白色申告は単式簿記という簡単な記帳方法で構いませんが、青色申告は複式簿記といって税務処理を細かく記帳することが原則として義務付けられています。
青色申告の方が日々の記帳や確定申告の書類を作成するのに手間がかかるのですが、その分いくつかの優遇を受けることができます。
受けられる主な税制優遇は、下記の3点です。
- 最大65万円の特別控除が受けられる
- 専従者(配偶者や親族)への給与が経費として認められる
- 賃貸経営が赤字になったときに、その金額を3年間繰越できる
※出典:国税庁「青色申告制度」
そのためアパート経営を開始したら、基本的に青色申告を検討しておくと良いでしょう。特に初年度は経費がかかり、赤字になることも多いため、その金額を繰り越せるのは税制面で大きなメリットとなります。
青色申告をするためには青色申告承認申請書を税務署に提出しますが、事業開始後2ヵ月以内が提出期限です。開業届と同時に提出すると二度手間にはなりません。なお、家族に経理業務などをしてもらい、給与を支払う場合は同時に「青色事業専従者給与に関する届出書」も提出します。
3 アパート経営を始める
アパートを購入し、引き渡しが終わるとすぐにアパートのオーナーとなります。物件購入と届出の提出はどちらが先でも構いませんが、本業の支障にならないようにすることが求められます。
3-1 物件を購入する
新築物件か中古物件かで若干の違いがありますが、物件を購入する流れはほとんど同じです。
- 物件の選定
- 金融機関への融資の申し込み
- 不動産売買契約の締結
- 建物の登記
新築の場合はこの後にアパートの建築に移行しますが、中古物件の場合は引き渡し日が来たらそのままアパート経営がスタートします。
物件の見学や不動産売買契約の締結などは休日でもできますが、金融機関への融資の申し込みは営業時間内に行われます。本業の就業時間と重なる方は有給休暇を取得するなどし、本業に差し支えないよう適切な行動をしましょう。
3-2 管理会社を選ぶ
アパート経営は物件を購入したら終わりではなく、そこからがスタートです。そのために重要なのが管理会社との契約です。特にサラリーマンであれば、本業に影響を出さないためにも管理会社の存在はとても大切になります。
物件を販売する不動産会社に管理部門がある場合や、提携している管理会社を紹介してくれるケースもあります。もし中古物件であれば、管理会社を継続してお願いすることも検討してみると良いでしょう。
管理会社を選ぶ際は下記の点がポイントになります。
- 仲介部門があるかどうか
- 高い入居率を維持しているか
- 地域密着型か、大手の管理会社か
管理委託契約書に双方が署名と捺印をすると管理契約が締結されます。契約書に書かれた契約開始日から管理を任せることになります。
4 副業を始めるに当たってリスクを確認
副業でアパート経営を行う場合には気をつけるべきリスクがあります。本業に支障が出ないように、またアパート経営が行き詰まらないためにも注意してください。
4-1 就業規則違反には罰則も
会社員の副業を禁止する法律はなく、就業規則を守らなければならない法的な拘束力もありません。
しかし、副業を始める際は務めている会社の就業規則に従って行うことが大切です。それは本業、あるいは所属する企業に何らかの損害を与えることもあるからです。
例えば、情報漏洩や社会的な信用を失墜させるようなことにつながることもあります。そうしたトラブルに発展することがないように気をつけましょう。
万が一、トラブルになった際には解雇などの懲罰が下されることがあります。法的に問題はなくても、副業を始めるにはこうしたリスクがあることも把握しておいてください。
4-2 管理業務の確認を
前述しましたが、任せる部分が多くなる管理会社は重要な役割を担っています。そのため管理会社の選定を間違えてしまうと、後々トラブルに発展するリスクもあります。
例えば管理業務は、主に下記のような業務が委託出来ます。
- 入居募集
- 集金代行
- 入居管理
- 清掃
- 設備管理
しかし、管理会社によっては「清掃業務はしていない」など委託できる業務に違いがあります。その場合は、オーナー自身が行ったり、別の業者に委託しなければなりません。
一方、集金はオーナー自身が行うため、「集金代行業務」は必要ないといったケースもあります。そのため管理会社にどこまでお願いするか、どこまでお願いできるのかをあらかじめすり合わせておきましょう。委託していない業務の費用は発生するのかも確認事項になります。
その他、下記のようなポイントはトラブルになりがちです。
- 管理費は「家賃総額の◯%」か「1室◯◯円」か
- 滞納が発生した場合の家賃の肩代わりはするのか
- 空室の場合には管理費用は発生するのか
- 契約期間
- 解約するための条件
契約書に記載していないこともありますので、気になったことは契約を結ぶ前にしっかり確認しておきましょう。
一方、管理会社と良好な関係を築くことで、副業としてのアパート経営がスムーズに進められ、本業に集中できることもあります。この点も心得ておくと良いでしょう。
まとめ
アパート経営で副業を行う場合は、目先の収入だけではなく、長期的な目線でリスク対策をしっかり行うことも大切です。副業としてのアパート経営は、経営者目線が養われ、空室対策やクレーム対応など本業のプラスになるような経験もできます。
まずは会社の就業規則を確認し、アパート経営を検討することが問題が無いか確かめておきましょう。そのうえで、自身の投資目的に合ったアパートを探していくことを検討されてみてください。
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倉岡 明広
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